作品ID:832
あなたの読了ステータス
(読了ボタン正常)一般ユーザと認識
「White×Black=Glay?」を読み始めました。
読了ステータス(人数)
読了(13)・読中(0)・読止(0)・一般PV数(141)
読了した住民(一般ユーザは含まれません)
White×Black=Glay?
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中
前書き・紹介
White×Black=Glay? ?15色目?
前の話 | 目次 | 次の話 |
情報戦士に限界は存在しないが、造られた情報戦士には限界が存在する。
例としてあげるならば、倉中蒼理と藤村樹析。
倉中蒼理は生まれながらにして、情報戦士の能力を持っていた。
そもそもキャリーケースを情報の引き出しにする者は少ない。
昔はキャリーケースもあったが、時代が流れるにつれて携帯電話などの電子機器を引き出しとして使用する場合が多くなった。
キャリーケースをアナログとすると、電子機器はデジタル。
情報戦士たちも時代が流れるにつれて、その引き出しもデジタルへと変えていった。そして、現在の携帯電話などの電子機器になっていったのだ。
だが、例外が存在する。
倉中蒼理のようなキャリーケースといったアナログを引き出しとして、今も使用している情報戦士だ。
倉中蒼理は、キャリーケースに出来事や経験などを書類というアナログ媒体に変換して、保存する。必要時にはキャリーケースから必要なだけの書類を取り出す。
もちろん、書類に変換し、キャリーケースに保存するので、携帯電話やパソコンといったデータ変換をして保存ということは望めない。
それにアナログ媒体での保存の場合は、時間がかかり、その機動性も低い。
だから情報戦士たちはアナログからデジタルへの変更をしていくのだ。
その中で、デジタル変更をせず、アナログ媒体を使用し続けていく情報戦士たち。
それは単純に、慣れてきたものというのもある。それまで使用し続けてきたアナログから、全く別物のデジタルへと変更することに、ためらいを覚えた者も居た。結局は変更したわけだが。
それでも変更しなかった情報戦士たちには、とある理由がある。
藤村樹析の場合は、造りだされた情報戦士に分類される。
ミュージック・ヒューマンというNEV主導の実験により、覚醒した能力。それが情報戦士の能力だった。
要するに、藤村樹析に使う『情報戦士』は、偶然の産物でしかなく、それ以上を完璧を求めるNEVが追求するはずもなかった。だから、藤村樹析はNEVを追放された。
さて。
藤村樹析は強制的にNEVに拉致され、NEVの実験に参加させられ、情報戦士としての能力を覚醒させられたわけだが……。
思い出してみよう。
藤村樹析は何故、NEVでに拉致されて、実験に参加させられたのか。能力を覚醒させられたのか。
全ては、それまで居住していた地域をNEVが襲撃し、そのとき逃走しようとしたときに、たった1人になったことからだった。
倉中蒼理。義理の姉とはいえ、それでも決して短いとはいえない時間を共にしてきた。
だが、その家族は協力を得て、たった1人、おいていった。
あのとき、倉中蒼理が藤村樹析の手を取って、一緒に逃走していたら。
もしかしたら、藤村樹析もNEVに拉致され、その後を強制的に決め付けられることにはならなかったはず。
「倉中、居る!?」
「え、春袈、さん?」
自らが居住するログハウスからそう遠くない位置に建てられたログハウスのドアを勢いよく開け放つ。反動でドアが閉まる。
それまで木製の椅子に膝を抱え、震えながら座る倉中蒼理が居る。
「藤村樹析が……!」
ログハウスに飛び込んだ鋼夜春袈だって、その可能性を捨てたわけじゃない。捨てるどころか、それを1番に考えてきた。
「……樹析?」
「逃げよう、逃げないと……っ!」
「……あの、樹析が居るんですか?」
蒼理が、椅子から立ち上がって、首をかしげる。
目の前で金髪に覆われた顔が疑問に変わる。
「だから、逃げようって」
「どうしてですか?」
これには、春袈が首をかしげた。だが蒼理は真面目に答える。
「アタシ……樹析が無事だってことを知りたいんです。会いたいんです」
「会いたいって……!」
忘れていた。その可能性だけは覚えていたのに。
今の蒼理は記憶障害、それも一部分だけの欠陥型の記憶障害を背負っている。
その記憶の欠陥の中に、藤村樹析のこともあった。
そしてそれを思い出したことは知っていたのに。
何故、藤村樹析の名を出したんだ。
「春袈さん?」
「でも、藤村樹析は、倉中を……!」
「樹析が、アタシを?」
思わず、目を見開いた。
覚えていないのか。藤村樹析のことは全て思い出したわけではないのか。
いや、全て思い出したならば、真っ先に自己嫌悪の念が浮かぶか。
〈自分が……自分が何をしたか、理解できていない……?〉
混乱ばかりが春袈の頭の中を埋め尽くしていく。
「倉中……倉中は、覚えてない?」
「? 何をですか?」
首をかしげる蒼理の表情には疑問しか浮かんでいない。
「藤村樹析を……裏切ったって……」
――アタシ、あのコ、裏切りました……
記憶の欠陥、今の状態に陥る前、朝龍楯羽によって意識を混乱させられ、ようやく意識を取り戻した蒼理が言った言葉。
「アタシが、樹析を裏切った?」
だが、それにも蒼理は首をかしげた。
何も覚えていないに等しい。
藤村樹析という人物のことは覚えているのに。それに関することはほとんど覚えていないなんて。
「春袈さん、それ、どういうことですか?」
問いを投げかけられる。返答できない。返答できるほどの答えを持っていない。
だが、その問いに答えるよりも、今は……
「倉中、逃げよう。ここだと、見つかりやすい」
「ですから、どうして逃げるんですかっ!!」
首を横に振る蒼理の腕を引っ掴み、ログハウスを出ようとする。
だが、ドアノブを掴んだところで、春袈が硬直した。
金属には、電気、だろうか。
もし、今自分が触ったドアノブが金属でできていて、向こうもたった今ドアノブに触れたとしたら……。
この選択は間違っていなかったと思う。
ドアノブという金属を通して、ドア一枚隔てた向こうへと攻撃する。
ドアノブが金属ならば。このドアノブが金属ならば、今通した電気も向こうに伝わったか。
硬直した春袈。その姿を疑問に思った蒼理は、春袈の肩に触れる。
だが、触れる直前、頭の中に薄い色で彩られた世界が広がる。
手を伸ばした状態で固まる蒼理の脳内。
ドア一枚を隔てて、向こうは今、この春袈のようにドアノブに触れて硬直したままの女性。
そしてもう1つの向こうには、黄色のヘッドフォンを耳に装着して、ドアノブを握ったままの状態で立っている少女。少女の足元には、キャリーケースがある。
視界が先ほどのような薄い色ではない世界に戻ったとき、蒼理の脳内で何かがはまる。
「電気……?」
ありえる。このドアノブは金属でできている。このドアノブに電気が流れていた状態で、春袈が触れたとしたら、春袈が硬直してもおかしくはない。
だとしたら、今の春袈に触れるのは、少しだけ躊躇われる。
それに、今の蒼理には状況を判断する能力が少しだけ欠けている。
やっと義理の妹と会えるかと思ったら、自分を保護してもらっているリーダーに逃げろと言われて、そのリーダーは今、目の前で硬直状態。
分からない。それに、さっきの薄い色の世界……。
分からないことだらけで、今の蒼理は状況判断能力が欠けた状態。
状況を判断する事ができなければ、現状を打破する術を探すことも不可能。
何もできないまま、蒼理は春袈を見続けるが、とたん、その視界が開けた。
情報戦士に隙はないが、造りだされた情報戦士には隙がある。
だから、その影に、通常なら気づけたものを、今回だけは気づけなかった。
その金属音で、自分は何かをぶつけられていると確信した。
少し動けば、その何かで自分を攻撃する。何か、とは武器、なのだろう。
「……倉中蒼理が目的だというならば……」
後ろから声がする。
「倉中蒼理を貴女と会わせるわけにはいきません」
その声だけならばわかる。知っている。義理の姉が所有していたキャリーケースにあった。
「……桃風羽夜華?」
「名前は知ってるんですね」
どうやら当たり、らしい。
「私の名前、キャリーケースから?」
「まあ、はい」
「……藤村樹析だと聞けば、頷きますか?」
コクリと頷くと、ドアノブを介して春袈に電気を向けた、短い銀髪の少女、藤村樹析からは見えないが、後ろでヴォイスレコーダーを樹析の首に当てる直前で止めた羽夜華が、なぜかニッコリと微笑んだ。
「結局は造られただけでしょう。……私、そんな存在には負けませんよ」
「それだけ? 確かに、桃風羽夜華は情報には秀でていると知ってるけど……」
その時、後ろでカチリと何かを押す音。
その音を認識し、正体を判明させる前に、羽夜華が動いた。
「……私にとっての武器は、声、です」
カチカチと連打する音。そのとき最後に聞いた音は、パチリというそれまでとは別の音で。
「言葉を発すれば発すほど……自分を苦しめます」
パチリという音の直後、自分は、地面から吹き上げた何かに舞い上がった。
例としてあげるならば、倉中蒼理と藤村樹析。
倉中蒼理は生まれながらにして、情報戦士の能力を持っていた。
そもそもキャリーケースを情報の引き出しにする者は少ない。
昔はキャリーケースもあったが、時代が流れるにつれて携帯電話などの電子機器を引き出しとして使用する場合が多くなった。
キャリーケースをアナログとすると、電子機器はデジタル。
情報戦士たちも時代が流れるにつれて、その引き出しもデジタルへと変えていった。そして、現在の携帯電話などの電子機器になっていったのだ。
だが、例外が存在する。
倉中蒼理のようなキャリーケースといったアナログを引き出しとして、今も使用している情報戦士だ。
倉中蒼理は、キャリーケースに出来事や経験などを書類というアナログ媒体に変換して、保存する。必要時にはキャリーケースから必要なだけの書類を取り出す。
もちろん、書類に変換し、キャリーケースに保存するので、携帯電話やパソコンといったデータ変換をして保存ということは望めない。
それにアナログ媒体での保存の場合は、時間がかかり、その機動性も低い。
だから情報戦士たちはアナログからデジタルへの変更をしていくのだ。
その中で、デジタル変更をせず、アナログ媒体を使用し続けていく情報戦士たち。
それは単純に、慣れてきたものというのもある。それまで使用し続けてきたアナログから、全く別物のデジタルへと変更することに、ためらいを覚えた者も居た。結局は変更したわけだが。
それでも変更しなかった情報戦士たちには、とある理由がある。
藤村樹析の場合は、造りだされた情報戦士に分類される。
ミュージック・ヒューマンというNEV主導の実験により、覚醒した能力。それが情報戦士の能力だった。
要するに、藤村樹析に使う『情報戦士』は、偶然の産物でしかなく、それ以上を完璧を求めるNEVが追求するはずもなかった。だから、藤村樹析はNEVを追放された。
さて。
藤村樹析は強制的にNEVに拉致され、NEVの実験に参加させられ、情報戦士としての能力を覚醒させられたわけだが……。
思い出してみよう。
藤村樹析は何故、NEVでに拉致されて、実験に参加させられたのか。能力を覚醒させられたのか。
全ては、それまで居住していた地域をNEVが襲撃し、そのとき逃走しようとしたときに、たった1人になったことからだった。
倉中蒼理。義理の姉とはいえ、それでも決して短いとはいえない時間を共にしてきた。
だが、その家族は協力を得て、たった1人、おいていった。
あのとき、倉中蒼理が藤村樹析の手を取って、一緒に逃走していたら。
もしかしたら、藤村樹析もNEVに拉致され、その後を強制的に決め付けられることにはならなかったはず。
「倉中、居る!?」
「え、春袈、さん?」
自らが居住するログハウスからそう遠くない位置に建てられたログハウスのドアを勢いよく開け放つ。反動でドアが閉まる。
それまで木製の椅子に膝を抱え、震えながら座る倉中蒼理が居る。
「藤村樹析が……!」
ログハウスに飛び込んだ鋼夜春袈だって、その可能性を捨てたわけじゃない。捨てるどころか、それを1番に考えてきた。
「……樹析?」
「逃げよう、逃げないと……っ!」
「……あの、樹析が居るんですか?」
蒼理が、椅子から立ち上がって、首をかしげる。
目の前で金髪に覆われた顔が疑問に変わる。
「だから、逃げようって」
「どうしてですか?」
これには、春袈が首をかしげた。だが蒼理は真面目に答える。
「アタシ……樹析が無事だってことを知りたいんです。会いたいんです」
「会いたいって……!」
忘れていた。その可能性だけは覚えていたのに。
今の蒼理は記憶障害、それも一部分だけの欠陥型の記憶障害を背負っている。
その記憶の欠陥の中に、藤村樹析のこともあった。
そしてそれを思い出したことは知っていたのに。
何故、藤村樹析の名を出したんだ。
「春袈さん?」
「でも、藤村樹析は、倉中を……!」
「樹析が、アタシを?」
思わず、目を見開いた。
覚えていないのか。藤村樹析のことは全て思い出したわけではないのか。
いや、全て思い出したならば、真っ先に自己嫌悪の念が浮かぶか。
〈自分が……自分が何をしたか、理解できていない……?〉
混乱ばかりが春袈の頭の中を埋め尽くしていく。
「倉中……倉中は、覚えてない?」
「? 何をですか?」
首をかしげる蒼理の表情には疑問しか浮かんでいない。
「藤村樹析を……裏切ったって……」
――アタシ、あのコ、裏切りました……
記憶の欠陥、今の状態に陥る前、朝龍楯羽によって意識を混乱させられ、ようやく意識を取り戻した蒼理が言った言葉。
「アタシが、樹析を裏切った?」
だが、それにも蒼理は首をかしげた。
何も覚えていないに等しい。
藤村樹析という人物のことは覚えているのに。それに関することはほとんど覚えていないなんて。
「春袈さん、それ、どういうことですか?」
問いを投げかけられる。返答できない。返答できるほどの答えを持っていない。
だが、その問いに答えるよりも、今は……
「倉中、逃げよう。ここだと、見つかりやすい」
「ですから、どうして逃げるんですかっ!!」
首を横に振る蒼理の腕を引っ掴み、ログハウスを出ようとする。
だが、ドアノブを掴んだところで、春袈が硬直した。
金属には、電気、だろうか。
もし、今自分が触ったドアノブが金属でできていて、向こうもたった今ドアノブに触れたとしたら……。
この選択は間違っていなかったと思う。
ドアノブという金属を通して、ドア一枚隔てた向こうへと攻撃する。
ドアノブが金属ならば。このドアノブが金属ならば、今通した電気も向こうに伝わったか。
硬直した春袈。その姿を疑問に思った蒼理は、春袈の肩に触れる。
だが、触れる直前、頭の中に薄い色で彩られた世界が広がる。
手を伸ばした状態で固まる蒼理の脳内。
ドア一枚を隔てて、向こうは今、この春袈のようにドアノブに触れて硬直したままの女性。
そしてもう1つの向こうには、黄色のヘッドフォンを耳に装着して、ドアノブを握ったままの状態で立っている少女。少女の足元には、キャリーケースがある。
視界が先ほどのような薄い色ではない世界に戻ったとき、蒼理の脳内で何かがはまる。
「電気……?」
ありえる。このドアノブは金属でできている。このドアノブに電気が流れていた状態で、春袈が触れたとしたら、春袈が硬直してもおかしくはない。
だとしたら、今の春袈に触れるのは、少しだけ躊躇われる。
それに、今の蒼理には状況を判断する能力が少しだけ欠けている。
やっと義理の妹と会えるかと思ったら、自分を保護してもらっているリーダーに逃げろと言われて、そのリーダーは今、目の前で硬直状態。
分からない。それに、さっきの薄い色の世界……。
分からないことだらけで、今の蒼理は状況判断能力が欠けた状態。
状況を判断する事ができなければ、現状を打破する術を探すことも不可能。
何もできないまま、蒼理は春袈を見続けるが、とたん、その視界が開けた。
情報戦士に隙はないが、造りだされた情報戦士には隙がある。
だから、その影に、通常なら気づけたものを、今回だけは気づけなかった。
その金属音で、自分は何かをぶつけられていると確信した。
少し動けば、その何かで自分を攻撃する。何か、とは武器、なのだろう。
「……倉中蒼理が目的だというならば……」
後ろから声がする。
「倉中蒼理を貴女と会わせるわけにはいきません」
その声だけならばわかる。知っている。義理の姉が所有していたキャリーケースにあった。
「……桃風羽夜華?」
「名前は知ってるんですね」
どうやら当たり、らしい。
「私の名前、キャリーケースから?」
「まあ、はい」
「……藤村樹析だと聞けば、頷きますか?」
コクリと頷くと、ドアノブを介して春袈に電気を向けた、短い銀髪の少女、藤村樹析からは見えないが、後ろでヴォイスレコーダーを樹析の首に当てる直前で止めた羽夜華が、なぜかニッコリと微笑んだ。
「結局は造られただけでしょう。……私、そんな存在には負けませんよ」
「それだけ? 確かに、桃風羽夜華は情報には秀でていると知ってるけど……」
その時、後ろでカチリと何かを押す音。
その音を認識し、正体を判明させる前に、羽夜華が動いた。
「……私にとっての武器は、声、です」
カチカチと連打する音。そのとき最後に聞いた音は、パチリというそれまでとは別の音で。
「言葉を発すれば発すほど……自分を苦しめます」
パチリという音の直後、自分は、地面から吹き上げた何かに舞い上がった。
後書き
作者:斎藤七南 |
投稿日:2011/08/02 18:59 更新日:2011/08/02 18:59 『White×Black=Glay?』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。 |
前の話 | 目次 | 次の話 |
読了ボタン