作品ID:841
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White×Black=Glay?
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中
前書き・紹介
White×Black=Glay? ?15.3色目?
前の話 | 目次 | 次の話 |
その共通点をあげるならば、ミュージック・ヒューマンの被験体、だろう。
本来、ミュージック・ヒューマンには関係のなかった存在が、その被験体と関わることで、実験の方にも関係してしまった。
その存在は、予測不可能のものであったに違いない。
予測不可能であったからこそ、あのNEVでさえ何も行動できなかった。できるはずもなかった。
楓 つつじ。
草花舞葉の師であり、舞葉と妹の黒刃をNEVから連れ去った人物でもある人間。
「草花達がNEVから脱走したってコトは知ってたけど……まさか、楓つつじが脱走させたなんて、誰も思わないっての……!」
七色に、不規則に変わるヘッドフォンを耳に装着した藤村樹析は、空を見上げて舌打ちした。
先ほど、吹っ飛ばされた桃風羽夜華は、樹析の様子を疑問の目で見ている。
樹析の視線の先を追っても、そこには朱色に染まりつつある空があるだけ。
だが、樹析は羽夜華には分からない、理解ができない言葉を発し続けていく。
「草花姉が予知夢を見るようになったという情報を入手したときは、楓つつじの存在なんて考えもしなかったが……」
「草花姉が予知夢……?」
知らなかった事実。
まさかあの草花舞葉が予知夢を?
「知らなかった? 草花姉はとある時期から予知夢を見るようになった」
金色の瞳を細めて、空中を睨み続ける樹析に首をかしげる。
「それを見るようになったのは……楓つつじに連れられNEVを脱走したとき」
樹析がその言葉を最後に、地面を蹴り、空中に舞う。人間離れした脚力で、空中を駆ける。途中で失速すれば、その度に空中を蹴る。……ありえない光景を下から見た羽夜華は、呆然とその場に立ち尽くすしかなかった。
だが、何かを思い出したように、羽夜華も地面を蹴った。
地面を、空中を蹴りあがってきた。
七色に変わり続けるヘッドフォンから繋がる、ヘッドマイクとスピーカーが凍っていることに気づく。
「……氷?」
ヘッドマイク、スピーカーから目を離し、正面を向く。と同時に、それを避けた。
弾丸のように猛スピードで飛んできたそれ……楓つつじは、避けられた直後、Uターンしてきた。
それに顔を引きつらせながらも、樹析は回避行動をとる。
それでも、楓つつじの猛攻は止まらない。避けられてもUターンし、執拗に樹析を狙う。
「そこまでして落とそうって? ……アンタが気になるのは、草花達じゃないの?」
嘲笑し、樹析はヘッドフォンに手をかける。手を放し、再び視界に捉えられたヘッドフォンは七色のそれではない。
色が固定され、ヘッドフォンが選択した色は……白。
羽夜華との戦闘では衝撃波や雷を放ったスピーカーが、純白のガラスの破片が高速で飛ぶ。
不規則に動く破片は、確実に楓つつじを狙っている。
相手が弾丸のごときスピードで攻撃してくるのなら、そのスピードを少しだけでも削いでやればいい。
たとえダメージは与えなくとも、少しでもそのスピードを削ぐことができれば……確実にダメージを与えられる攻撃を仕掛けることができる。
止むことのなき純白の破片。やがて樹析の視界を埋め尽くす。
真っ白な視界の中で、しかし樹析はそれを捉えることができた。
「相手にできないって? 戦線離脱ー?」
スピードを保ったまま、楓つつじは、樹析の前から去ろうとする。
だがそれを逃がすほど、この情報戦士は甘くなかった。
すぐにヘッドフォンの色を白から赤へ変える。
「……いくらかダメージ来るけど……仕方ないか」
スピーカーが純白の破片から、血の色のような赤黒い、小さな、掌サイズの円盤を無数に出す。
もちろん、遠ざかっていくその姿にダメージを与える事はできない。だが、この場合それぐらいでいい。
何しろ、この円盤、相手に当たれば当たるほど、いくらかダメージが樹析に戻ってくる。
そろそろ樹析にとっては危うい距離が楓つつじとの間に存在し始めた。
慌てるわけではないが、これ以上離されたら、攻撃できない。
樹析も楓つつじを追うように、空中を蹴り、降下していく。
下から上、よりも上から下のほうが重力が存在するため、そのスピードも変わっていく。
先程よりも少しだけ速い降下スピードに、それでも目を閉じずに楓つつじを追う。
「速いな……氷だけじゃないの? 加速付加?」
そのスピードに推測を立てていく。
その間にも樹析と楓つつじの間には距離が開いていく。……降下していくスピードでも負ける。上昇していくスピードでも。おそらく、スピードという舞台で樹析が楓つつじに勝てることなどない。
それほどのスピードを誇る楓つつじ。
その楓つつじが、一戸のログハウスの前に降り立った。
空中の追いかけっこが収束に向かいつつある中、地上のログハウスでは。
「リーダー!」
ドアを乱暴に開けて、羽夜華はそのログハウスに飛び込んだ。
「え、羽夜華?」
きょとんとしている、金色に黒のメッシュが入った髪が特徴的な鋼夜春袈。
「草花姉妹、何処に居ますっ!?」
「え? 草花姉妹? ……居住ログハウスに居ると思うけど、どうかした?」
「いえ、じゃあ、早く行かないと……!」
先ほど、樹析が言った「草花」、「楓つつじ」という名前。
おそらくその「楓つつじ」は、「草花」――草花舞葉、黒刃の姉妹が目的なのだろう。
だから、今すぐにでも草花姉妹を保護しなければいけない。
スニーカーを踏みしめ、地面を蹴る。
「リーダー達は此処に居てくださ――っ!!」
突然の爆風。固定されていたはずのログハウスが簡単に吹っ飛ぶ。ゴロゴロと転がるログハウス。
その回転が止まった。
物が散乱し、鋼夜春袈と春袈とともに居る倉中蒼理が、よろよろと立ち上がっているところを目撃した羽夜華は、無意識に舌打ちしていた。
「……倉中?」
背後から疑問の声が聞こえ、そちらを振り向くと。
綺麗な金髪を揺らし、まるで睨みつけるように上空を見つめる蒼理が居た。
本来、ミュージック・ヒューマンには関係のなかった存在が、その被験体と関わることで、実験の方にも関係してしまった。
その存在は、予測不可能のものであったに違いない。
予測不可能であったからこそ、あのNEVでさえ何も行動できなかった。できるはずもなかった。
楓 つつじ。
草花舞葉の師であり、舞葉と妹の黒刃をNEVから連れ去った人物でもある人間。
「草花達がNEVから脱走したってコトは知ってたけど……まさか、楓つつじが脱走させたなんて、誰も思わないっての……!」
七色に、不規則に変わるヘッドフォンを耳に装着した藤村樹析は、空を見上げて舌打ちした。
先ほど、吹っ飛ばされた桃風羽夜華は、樹析の様子を疑問の目で見ている。
樹析の視線の先を追っても、そこには朱色に染まりつつある空があるだけ。
だが、樹析は羽夜華には分からない、理解ができない言葉を発し続けていく。
「草花姉が予知夢を見るようになったという情報を入手したときは、楓つつじの存在なんて考えもしなかったが……」
「草花姉が予知夢……?」
知らなかった事実。
まさかあの草花舞葉が予知夢を?
「知らなかった? 草花姉はとある時期から予知夢を見るようになった」
金色の瞳を細めて、空中を睨み続ける樹析に首をかしげる。
「それを見るようになったのは……楓つつじに連れられNEVを脱走したとき」
樹析がその言葉を最後に、地面を蹴り、空中に舞う。人間離れした脚力で、空中を駆ける。途中で失速すれば、その度に空中を蹴る。……ありえない光景を下から見た羽夜華は、呆然とその場に立ち尽くすしかなかった。
だが、何かを思い出したように、羽夜華も地面を蹴った。
地面を、空中を蹴りあがってきた。
七色に変わり続けるヘッドフォンから繋がる、ヘッドマイクとスピーカーが凍っていることに気づく。
「……氷?」
ヘッドマイク、スピーカーから目を離し、正面を向く。と同時に、それを避けた。
弾丸のように猛スピードで飛んできたそれ……楓つつじは、避けられた直後、Uターンしてきた。
それに顔を引きつらせながらも、樹析は回避行動をとる。
それでも、楓つつじの猛攻は止まらない。避けられてもUターンし、執拗に樹析を狙う。
「そこまでして落とそうって? ……アンタが気になるのは、草花達じゃないの?」
嘲笑し、樹析はヘッドフォンに手をかける。手を放し、再び視界に捉えられたヘッドフォンは七色のそれではない。
色が固定され、ヘッドフォンが選択した色は……白。
羽夜華との戦闘では衝撃波や雷を放ったスピーカーが、純白のガラスの破片が高速で飛ぶ。
不規則に動く破片は、確実に楓つつじを狙っている。
相手が弾丸のごときスピードで攻撃してくるのなら、そのスピードを少しだけでも削いでやればいい。
たとえダメージは与えなくとも、少しでもそのスピードを削ぐことができれば……確実にダメージを与えられる攻撃を仕掛けることができる。
止むことのなき純白の破片。やがて樹析の視界を埋め尽くす。
真っ白な視界の中で、しかし樹析はそれを捉えることができた。
「相手にできないって? 戦線離脱ー?」
スピードを保ったまま、楓つつじは、樹析の前から去ろうとする。
だがそれを逃がすほど、この情報戦士は甘くなかった。
すぐにヘッドフォンの色を白から赤へ変える。
「……いくらかダメージ来るけど……仕方ないか」
スピーカーが純白の破片から、血の色のような赤黒い、小さな、掌サイズの円盤を無数に出す。
もちろん、遠ざかっていくその姿にダメージを与える事はできない。だが、この場合それぐらいでいい。
何しろ、この円盤、相手に当たれば当たるほど、いくらかダメージが樹析に戻ってくる。
そろそろ樹析にとっては危うい距離が楓つつじとの間に存在し始めた。
慌てるわけではないが、これ以上離されたら、攻撃できない。
樹析も楓つつじを追うように、空中を蹴り、降下していく。
下から上、よりも上から下のほうが重力が存在するため、そのスピードも変わっていく。
先程よりも少しだけ速い降下スピードに、それでも目を閉じずに楓つつじを追う。
「速いな……氷だけじゃないの? 加速付加?」
そのスピードに推測を立てていく。
その間にも樹析と楓つつじの間には距離が開いていく。……降下していくスピードでも負ける。上昇していくスピードでも。おそらく、スピードという舞台で樹析が楓つつじに勝てることなどない。
それほどのスピードを誇る楓つつじ。
その楓つつじが、一戸のログハウスの前に降り立った。
空中の追いかけっこが収束に向かいつつある中、地上のログハウスでは。
「リーダー!」
ドアを乱暴に開けて、羽夜華はそのログハウスに飛び込んだ。
「え、羽夜華?」
きょとんとしている、金色に黒のメッシュが入った髪が特徴的な鋼夜春袈。
「草花姉妹、何処に居ますっ!?」
「え? 草花姉妹? ……居住ログハウスに居ると思うけど、どうかした?」
「いえ、じゃあ、早く行かないと……!」
先ほど、樹析が言った「草花」、「楓つつじ」という名前。
おそらくその「楓つつじ」は、「草花」――草花舞葉、黒刃の姉妹が目的なのだろう。
だから、今すぐにでも草花姉妹を保護しなければいけない。
スニーカーを踏みしめ、地面を蹴る。
「リーダー達は此処に居てくださ――っ!!」
突然の爆風。固定されていたはずのログハウスが簡単に吹っ飛ぶ。ゴロゴロと転がるログハウス。
その回転が止まった。
物が散乱し、鋼夜春袈と春袈とともに居る倉中蒼理が、よろよろと立ち上がっているところを目撃した羽夜華は、無意識に舌打ちしていた。
「……倉中?」
背後から疑問の声が聞こえ、そちらを振り向くと。
綺麗な金髪を揺らし、まるで睨みつけるように上空を見つめる蒼理が居た。
後書き
作者:斎藤七南 |
投稿日:2011/08/09 08:16 更新日:2011/08/09 08:16 『White×Black=Glay?』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。 |
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