作品ID:842
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White×Black=Glay?
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中
前書き・紹介
White×Black=Glay? ?15.4色目?
前の話 | 目次 | 次の話 |
記憶喪失もそうだが、記憶の欠陥の場合でも、外からのショックで記憶が戻ることもある。
この場合の倉中蒼理がそれに当てはまる。
金髪を揺らしながら、回転で物が散乱したログハウス内を歩く倉中蒼理。
「リーダー、まさか、記憶戻ったんですか?」
「……判断できないけど、多分。キャリーケースを探してるみたいだったから……」
長い黒髪を揺らして、鋼夜春袈に近づく、桃風羽夜華は首をかしげる。
「倉中が記憶を取りもどしたなら……今、外には藤村樹析が居るんでしょ?」
「でも今の藤村樹析が倉中さんを相手にするだけの余裕なんて……」
「? 余裕?」
「外には、藤村樹析だけじゃなくて、楓つつじも居るんです……! 楓つつじを相手にしながら……リーダー?」
青褪める春袈の様子を疑問に思った羽夜華は、ひとつの結論にたどりついた。
「……もしかして、楓つつじの存在……」
「羽夜華、姉妹を保護して……!」
「リーダー?」
「楓つつじ……? どうしてこのタイミングで、いや羽夜華! 早く草花達を保護しないと……!」
焦っているような春袈に、緊急のことなのだと理解して、羽夜華はログハウスを飛び出る。
草花舞葉、という名がいつから自分にあったのかは、わからない。ただ、なんとなく、産まれたときに与えられた名ではないのだろう、と思う。妹の黒刃のことになると予想すらつけられないが。
気づいたらNEVという知らない場所に居た。気づいたら魔王と呼ばれる人のところに居た。気づいたらミュージック・ヒューマンという理解できない実験に被験者として参加していた。
気づいたら……いつの間にか知らない場所に居た。
何も分からない。いつも「気づいたら」。
自分のコトなのに。自分のコトなのに、何も分からない。何もかも「気づいたら」始まっている。
……何も分かっていなかった自分が手に入れたチカラ。
人はそれを予知夢と言った。
ログハウスを出ていた草花舞葉は、自分の左だけ長い前髪がその暴風で舞うのを視界の端で捉えながら、後ろに居る妹、黒刃の手をぎゅっと握った。
黒刃の手は冷たい。あの日以来、ずっと冷たいまま。人間としての温もりが感じられないまま。
その冷たい手がブルブルと震える。大丈夫。黒刃は自分が護る。
「黒刃、大丈夫だよ」
さらに力強く黒刃の手を握る。少しだけその震えがおさまる。
暴風に煽られ、舞った砂埃。目に入りそうになる。黒刃を庇うように膝をつく。
少しだけ風が止む。その隙に目を開き、まだ少しだけ砂埃が舞う視界の中から、3つの影を見つける。
そのまま影たちを見続けていると、影の1つは、七色に光るヘッドフォンを耳に装着し、目立ち要素満載なショートカットの銀髪、しかしその綺麗だっただろう銀髪は、今、砂で汚れてしまっている。
その特徴がある姿を忘れるわけがない。……藤村樹析。
今、あの鋼夜春袈率いるチーム、自分たちも保護してもらっているチームで、同じく保護という名目で居る倉中蒼理の義理の妹。
あんな特徴的な姿、忘れるはずがない。
そして2つ目。樹析の銀髪とは逆に、綺麗な金髪をもった倉中蒼理。だけど……その表情がまったく違う。
どこか、睨みつけるように他の影2つを見ている。
そして3つ目。
あの姿――。
舞葉の目がこれ以上ないほどに見開かれる。
樹析以上に忘れる事のできない存在と名。
あの存在がなければ、今、舞葉と黒刃は此処に居ない。
「楓、つつじ……っ!」
後ろから黒刃の緊迫した声が、耳に入る。
「黒刃?」
めったに聞かない黒刃のそんな声。疑問に思って、舞葉は黒刃を見る。
そこでは、黒刃が、楓つつじと思わしき影を睨みつけている。
基本的に、自分は体力がない。短期戦向きといえば聞こえはいいが、要するに長時間、派手な戦闘をすれば、先に体力切れになり、戦闘どころかそれからの脱出すら無理、ということなのだ。
それはつまり、今、現状で自分が勝てる要素などないことを示している。
――あんな猛スピードで降下するんじゃなかった……!
判断を間違えた、と言えばそれはそうだが、それ以外にも理由はあった。
楓つつじ。草花姉妹の、というよりは姉妹の姉にあたる、草花舞葉の師。もちろん妹の黒刃とも顔見知りだろう。
そんな楓つつじがこのタイミングで現れた。
そのことに気づき、七色のヘッドフォンを耳に装着した藤村樹析は、なんとしてもこの楓つつじの目的を阻止しなくてはいけなかった。
楓つつじの目的。
おそらく、草花姉妹の確保だろうと思った。
だから先を行く楓つつじを見逃すまいと、必死に食らいついた。
自分が来た理由は確かに自分の義理の姉である倉中蒼理への訪問もそうだが、その他にもう1つある。
鋼夜春袈が捜し求めるウォークマン。それの手がかりを提出する。
樹析としても早くウォークマンを捜しだしてもらいたい。
だから、樹析もウォークマンを捜すことに協力する。
それだというのに……ここに来て、楓つつじが来た。
鋼夜春袈、桃風羽夜華、草花舞葉 黒刃、倉中蒼理、そして自分、藤村樹析。
1名、天使。2名、情報戦士。3名、人間の計6名。
ばらっばらな、この存在たちを集めたのは、ただ1つ。
ウォークマンを捜し、その秘密を暴くという目的の一致。
ばらばらな存在を集めた存在、ウォークマン。
それだけの影響力があるであろうウォークマン。
どうしてもそのウォークマンをこの目で見たくなった。
だから、協力する。
だから、自分はその目的達成のために邪魔な存在を排除する。
1人も欠けてはならない。
だから、草花姉妹を狙う楓つつじは排除する。
もう既に息は切れ、その体力も尽きかけにある。
だが、それでも排除するという意思は変わらない。
……瞬きをすれば、すでに眼前に迫る氷塊。
それを最小限の動きで避け、ヘッドフォンから口元に固定されたヘッドマイク、その途中で枝分かれして存在するスピーカー。そのスピーカーから数え切れないほどの橙色をした弾丸が放たれる。
……しかしその弾丸は相手に当たる前に霧散する。
集中力が切れかけている。
それでも、排除しなければ。
ぼんやりと霞みがかった視界に、再び迫る鋭利な氷塊――。
それを避けきれないと判断する。ぐらつく体。地面に落ちる前に、氷塊が自分の体を貫こうとする。
だが、予想は外れる。
途中、挟まった1枚の書類が、氷塊を飲み込んだ。
この場合の倉中蒼理がそれに当てはまる。
金髪を揺らしながら、回転で物が散乱したログハウス内を歩く倉中蒼理。
「リーダー、まさか、記憶戻ったんですか?」
「……判断できないけど、多分。キャリーケースを探してるみたいだったから……」
長い黒髪を揺らして、鋼夜春袈に近づく、桃風羽夜華は首をかしげる。
「倉中が記憶を取りもどしたなら……今、外には藤村樹析が居るんでしょ?」
「でも今の藤村樹析が倉中さんを相手にするだけの余裕なんて……」
「? 余裕?」
「外には、藤村樹析だけじゃなくて、楓つつじも居るんです……! 楓つつじを相手にしながら……リーダー?」
青褪める春袈の様子を疑問に思った羽夜華は、ひとつの結論にたどりついた。
「……もしかして、楓つつじの存在……」
「羽夜華、姉妹を保護して……!」
「リーダー?」
「楓つつじ……? どうしてこのタイミングで、いや羽夜華! 早く草花達を保護しないと……!」
焦っているような春袈に、緊急のことなのだと理解して、羽夜華はログハウスを飛び出る。
草花舞葉、という名がいつから自分にあったのかは、わからない。ただ、なんとなく、産まれたときに与えられた名ではないのだろう、と思う。妹の黒刃のことになると予想すらつけられないが。
気づいたらNEVという知らない場所に居た。気づいたら魔王と呼ばれる人のところに居た。気づいたらミュージック・ヒューマンという理解できない実験に被験者として参加していた。
気づいたら……いつの間にか知らない場所に居た。
何も分からない。いつも「気づいたら」。
自分のコトなのに。自分のコトなのに、何も分からない。何もかも「気づいたら」始まっている。
……何も分かっていなかった自分が手に入れたチカラ。
人はそれを予知夢と言った。
ログハウスを出ていた草花舞葉は、自分の左だけ長い前髪がその暴風で舞うのを視界の端で捉えながら、後ろに居る妹、黒刃の手をぎゅっと握った。
黒刃の手は冷たい。あの日以来、ずっと冷たいまま。人間としての温もりが感じられないまま。
その冷たい手がブルブルと震える。大丈夫。黒刃は自分が護る。
「黒刃、大丈夫だよ」
さらに力強く黒刃の手を握る。少しだけその震えがおさまる。
暴風に煽られ、舞った砂埃。目に入りそうになる。黒刃を庇うように膝をつく。
少しだけ風が止む。その隙に目を開き、まだ少しだけ砂埃が舞う視界の中から、3つの影を見つける。
そのまま影たちを見続けていると、影の1つは、七色に光るヘッドフォンを耳に装着し、目立ち要素満載なショートカットの銀髪、しかしその綺麗だっただろう銀髪は、今、砂で汚れてしまっている。
その特徴がある姿を忘れるわけがない。……藤村樹析。
今、あの鋼夜春袈率いるチーム、自分たちも保護してもらっているチームで、同じく保護という名目で居る倉中蒼理の義理の妹。
あんな特徴的な姿、忘れるはずがない。
そして2つ目。樹析の銀髪とは逆に、綺麗な金髪をもった倉中蒼理。だけど……その表情がまったく違う。
どこか、睨みつけるように他の影2つを見ている。
そして3つ目。
あの姿――。
舞葉の目がこれ以上ないほどに見開かれる。
樹析以上に忘れる事のできない存在と名。
あの存在がなければ、今、舞葉と黒刃は此処に居ない。
「楓、つつじ……っ!」
後ろから黒刃の緊迫した声が、耳に入る。
「黒刃?」
めったに聞かない黒刃のそんな声。疑問に思って、舞葉は黒刃を見る。
そこでは、黒刃が、楓つつじと思わしき影を睨みつけている。
基本的に、自分は体力がない。短期戦向きといえば聞こえはいいが、要するに長時間、派手な戦闘をすれば、先に体力切れになり、戦闘どころかそれからの脱出すら無理、ということなのだ。
それはつまり、今、現状で自分が勝てる要素などないことを示している。
――あんな猛スピードで降下するんじゃなかった……!
判断を間違えた、と言えばそれはそうだが、それ以外にも理由はあった。
楓つつじ。草花姉妹の、というよりは姉妹の姉にあたる、草花舞葉の師。もちろん妹の黒刃とも顔見知りだろう。
そんな楓つつじがこのタイミングで現れた。
そのことに気づき、七色のヘッドフォンを耳に装着した藤村樹析は、なんとしてもこの楓つつじの目的を阻止しなくてはいけなかった。
楓つつじの目的。
おそらく、草花姉妹の確保だろうと思った。
だから先を行く楓つつじを見逃すまいと、必死に食らいついた。
自分が来た理由は確かに自分の義理の姉である倉中蒼理への訪問もそうだが、その他にもう1つある。
鋼夜春袈が捜し求めるウォークマン。それの手がかりを提出する。
樹析としても早くウォークマンを捜しだしてもらいたい。
だから、樹析もウォークマンを捜すことに協力する。
それだというのに……ここに来て、楓つつじが来た。
鋼夜春袈、桃風羽夜華、草花舞葉 黒刃、倉中蒼理、そして自分、藤村樹析。
1名、天使。2名、情報戦士。3名、人間の計6名。
ばらっばらな、この存在たちを集めたのは、ただ1つ。
ウォークマンを捜し、その秘密を暴くという目的の一致。
ばらばらな存在を集めた存在、ウォークマン。
それだけの影響力があるであろうウォークマン。
どうしてもそのウォークマンをこの目で見たくなった。
だから、協力する。
だから、自分はその目的達成のために邪魔な存在を排除する。
1人も欠けてはならない。
だから、草花姉妹を狙う楓つつじは排除する。
もう既に息は切れ、その体力も尽きかけにある。
だが、それでも排除するという意思は変わらない。
……瞬きをすれば、すでに眼前に迫る氷塊。
それを最小限の動きで避け、ヘッドフォンから口元に固定されたヘッドマイク、その途中で枝分かれして存在するスピーカー。そのスピーカーから数え切れないほどの橙色をした弾丸が放たれる。
……しかしその弾丸は相手に当たる前に霧散する。
集中力が切れかけている。
それでも、排除しなければ。
ぼんやりと霞みがかった視界に、再び迫る鋭利な氷塊――。
それを避けきれないと判断する。ぐらつく体。地面に落ちる前に、氷塊が自分の体を貫こうとする。
だが、予想は外れる。
途中、挟まった1枚の書類が、氷塊を飲み込んだ。
後書き
作者:斎藤七南 |
投稿日:2011/08/09 17:19 更新日:2011/08/09 17:19 『White×Black=Glay?』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。 |
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