作品ID:1997
あなたの読了ステータス
(読了ボタン正常)一般ユーザと認識
「REincarnation」を読み始めました。
読了ステータス(人数)
読了(96)・読中(1)・読止(0)・一般PV数(310)
読了した住民(一般ユーザは含まれません)
■灰縞 凪
REincarnation
小説の属性:一般小説 / 異世界ファンタジー / お気軽感想希望 / 初投稿・初心者 / 年齢制限なし / 休載中
前書き・紹介
世界は、彼女の予想を裏切り続ける。
3. 再カイ
前の話 | 目次 | 次の話 |
『――きろ、起きろ!』
聞き覚えのある男の声が聞こえる。昨日聞いたフユイチさんとは違うけど、懐かしい声だ。
私はゆっくりと目を開けた。そこには、再び「リアルな夢」の世界が広がっていた。私に声をかけていたのは、一昨日出会ったコクゲンさんだった。彼は私の体を、大きな手で優しく揺さぶっている。
「カザハ! 目は覚めたか?」
「あっ……はい」
フカフカのベッドから体を起こす。コクゲンさんは、私の様子を見て、私がカザハ・アラウドではないことを見抜いたのか、私に小声で確認の質問をした。
『もしかして……スカトラさんか?』
私は首を縦に振った。それを見たコクゲンさんは、周りを見渡した。周りに誰もいないことを確認すると、一度咳払いをして言った。
「昨日のこちら側に関する記憶はないか?」
「ええ、ありません。昨日は、元の世界にいたみたいですから……」
「では昨日、その体から発せられた言葉に関しても、記憶がないんだね?」
含みのある言い方だ。昨日の私が、何か変なことでも言ったのだろうか。
「は、はい……私、昨日何か言いましたか?」
「うむ、実はだな……昨日、聞いたことがない単語が出てきた」
聞いたことない単語、とはどういうことだろう。私は頷いて先を促した。コクゲンさんは、ある3つの単語を口にした。
「スカトラさんに訊きたいのだが、『カムロ』、『ディフェイロ』、『方舟計画』の中で、聞き覚えのある単語はあるかな?」
私はどの単語にも、聞き覚えがなかった。前半2つは何らかの固有名詞だろうと、推測できる。『方舟』は私の知っているものだとすると、聖書に出てくる逸話のものだろうか。『方舟』に関する『計画』とは一体どういうものだろう。見当もつかない。
「いえ、3つとも聞き覚えはありません。ただ、『方舟』に関しては、前の世界で神話に関する話であったような気がします」
「ふむ、やはりそうか……。実は、私たちの方でも、『方舟』に関する逸話はあるのだが、それに関連した計画が分からなくてな」
コクゲンさんは顎に手を当て、しばらく考えていたが、やがて諦めたようで、私に礼を言って部屋を後にしようとした。
しかし、彼はドアの前でこちらに振り向き、真剣な表情で釘を刺した。
「スカトラさん、君が戻ってきたことや、さっきの話はグリーとアキハには内密に頼む。昨日のカザハとの約束なんだ」
「それはいいんですけど、あの」
先ほどの様子から、何かあるなとは思っていたが、まさか口止めされていたとは、少し意外だった。
しかし、私が引き留めたのは、他のことが気になったからだ。一昨日こちらに来た時から、引っかかっていたことがあった。コクゲンさんは、私に引き留められたのが意外な様子だった。
「どうしたんだい?」
「こちらも1つ訊きたいんですけど、どうしてそんなに飲み込みが早いんですか? 一昨日、私の話も信用できるものじゃなかったはずです」
「確かにそうだな……分かった、訳を話そう」
コクゲンさんは、開けかけた扉を閉め、社長室に置いてありそうな肘掛け付きのイスに座った。机には、何やら紙が数枚まとめて置いてある。体格が良いコクゲンさんが座ると、なかなか絵になる。
彼は、咳払いをして、低めのトーンで話し始めた。
「実はな……君がこの世界に来ているのは、『負の魔法』が関係しているかもしれない、と感じたからだ」
「負の魔法?」
コクゲンさんは、私の問いかけに頷き、説明を始めた。
「一昨日、君はアキハやバスティンチから魔法に関して聴き、実際に見たと思う。その時の魔法は、人々の暮らしを豊かにしたり、便利にしたりするものだったと思う。だが、実は災厄をもたらす魔法があることが近年発覚した」
これがその資料だ、と言って、コクゲンさんは私に、机の上にあった数枚の紙を手渡した。表紙には、『魔法の効能に関する考察』というタイトルと『魔法研究学会会長 コクゲン・アラウド』と書かれていた。
私は紙を受け取り、ページを1枚めくった。そこには、研究対象と範囲が記されており、例を挙げつつ魔法の分類をしていた。
その最後の項に、『負の魔法』という記述があった。
「負の魔法は、持ち主の意思とは関係なく発動し、持ち主や持ち主の周りに、悪影響を及ぼす魔法だ。それに、カザハがかかってしまったのだと考えている。日毎に君とカザハが入れ替わる、それも負の魔法の一種ではないか、とな」
なるほど、一理あるかもしれない。
だがそうなると、私が「災厄」だということになってしまう。それに反論するため、私はソフトに言い返した。
「分かりました。ですが、コクゲンさん。私とカザハさんが入れ替わったとして、何か実害が出るでしょうか?」
「それは分かっている。スカトラさんが『災厄』だと言っているわけではない。誤解を招いてしまったのなら、申し訳ない」
「い、いえ。そういうわけではないです」
コクゲンさんは申し訳なさそうに答えた。別に、私を邪険に扱っているわけではなさそうだ。
どちらにしろ、負の魔法に関する更なる研究が必要そうだ。
「申し訳ない。とにかく、何か進展があったら、また伝達する」
コクゲンさんは、音を立てないようにして部屋を後にした。
それと入れ替わるようにして、カザハの姉、グリー・アラウドが、部屋に入ってきた。彼女は、私を見ると不気味な笑みを浮かべた。
「やあ、お目覚めかな?」
「あ、お姉さま。ご機嫌よろしゅう」
私は、お嬢様言葉で挨拶を返した。コクゲンさんの話を聞く限りでは、私が再び転生したことは言わない方が良さそうだ。
グリーは私をじろじろ見つめると、また不吉な笑みを浮かべた。
「そういえばスカトラ。さっき、お父様と何か話していたみたいだけど、何の話をしていたの?」
「あ、えっと……お姉さまとの距離感についてお話を」
「ふーん、まあなんでもいいけどね」
グリーは、再び私の核心を突くような質問をしてきたが、どうにかかわした。彼女は少し疑問を持っているようだったが、それ以上は詮索してこなかった。
グリーはそのまま、イスに座った。コクゲンさんの温もりを感じたのか、一度中腰になってイスの表面を手で払った。
気まずい。誰か、この状況を打破できる人間はいないのか。
私の祈りが届いたのか、グリーは私から視線をそらし、開けっ放しだった扉を見つめた。すると、その扉からバスティンチさんが入ってきた。彼は、グリーの姿を見ると少し驚いたが、すぐに元の真面目な顔に戻り、深々と頭を下げた。
「グリーお嬢様、こちらにいらっしゃいましたか。カザハお嬢様も、おはようございます。朝食の準備が出来ました」
「あ、ありがと――」
「待ちなさい、バスティンチ」
私がベッドから出て、彼に付いて行こうとすると、私を手で制しバスティンチさんを睨み付けた。彼女は警戒心を露骨に出しながら、質問をした。
「今朝の朝食は、誰が作ったものかしら?」
「それは、アキ……お母様では?」
「いえ。お母様は、先ほどご起床なさったのよ。そんなすぐに出来ないわ。それに、お父様は料理するわけないでしょ」
「あっ」
グリーの質問を聞き、一昨日のアキハさんの発言を思い出した。
バスティンチさんは、家事に関しては完璧だが、料理だけは壊滅に下手なのだ。彼が料理をしたとすると、朝からハードになってしまう。
私とグリーの危惧を知ってか知らずか、バスティンチさんは口角を少し上げ、嬉しそうに言った。
「『私』が作らせていただきました。昨日の体調不良は完治いたしましたので、ご安心ください」
「そうじゃなくて……はあ、まあいいわ。カザハ、行くわよ」
「え、あ、はい!」
私とグリーは憂鬱なまま、食事用のテーブルがある部屋へと向かった。そんな私たちとは対照的に、バスティンチさんの表情は晴れやかだった。
テーブルに着くと、フランス料理が既に並んでいた。見た目はとても美味しそうだったが、既に席についていたコクゲンさんアキハさん夫妻は、食事に手を付けていなかった。2人とも、私とグリー同様、少し戸惑っているようだ。
私は、コクゲンさんの正面に座り、彼の隣にいたアキハさんに聞こえないように小声で話しかけた。
『バスティンチさんが料理を作ったってほんとですか?』
『ああ、どうやらホントらしいが……食べてみるしかないみたいだな』
コクゲンさんは、私の背後をチラ見した。そこには、バスティンチさんが直立している。彼の視線が、私と隣に座っていたグリーの背中に突き刺さる。どうやら、食べるしかないみたいだ。
私たちアラウド家は、食事の挨拶をした後、同時にスープに口をつけた。
美味しい。全員口にこそしなかったが、驚きの表情と、一心不乱に食事を口に運ぶペースが、彼らの感想を示していた。料理担当の顔は、したり顔だった。
食事の後、最初に口を開いたのはアキハさんだった。
「ねえ、バスティンチ。あなた、いつの間にこんな美味しい料理を習得したの?」
「実は昨日、天啓を受けまして、『料理』の魔法を習得いたしました」
なるほど、通りで自信満々だったわけだ。アキハさんや他の2人も納得した様子だった。
「分かったわ。これからは、あなたに料理を任せても良さそうね」
「ええ、お任せください。では、食事の片づけをいたしますので、失礼させていただきます」
バスティンチさんが下がったのを確認すると、コクゲンさんが一度手を叩いて仕切り始めた。
「さて、今日の皆の予定について訊きたい。カザハは昨日同様、あまり体調が優れないみたいだから、気分転換に家の中でも散歩してみてくれ。アキハとグリーは?」
コクゲンさんに上手くフォローしてもらったおかげで、ボロを出さずに済んだ。彼に目配りで、感謝の気持ちを送った。
「私は、自分の部屋の整理をするつもりよ。グリーはどうするの?」
「私も、お部屋の片づけをしようかと考えています。お母様の方も、お手伝いできればと考えています」
2人とも、コクゲンさんの発言を不審に思う様子はないみたいだ。私は、心の中でホッと胸をなで下ろした。
朝の家族会議が終わり、各々が各々の仕事をするため、散っていった。コクゲンさんも、仕事へ行くと言って、家を後にした。
聞き覚えのある男の声が聞こえる。昨日聞いたフユイチさんとは違うけど、懐かしい声だ。
私はゆっくりと目を開けた。そこには、再び「リアルな夢」の世界が広がっていた。私に声をかけていたのは、一昨日出会ったコクゲンさんだった。彼は私の体を、大きな手で優しく揺さぶっている。
「カザハ! 目は覚めたか?」
「あっ……はい」
フカフカのベッドから体を起こす。コクゲンさんは、私の様子を見て、私がカザハ・アラウドではないことを見抜いたのか、私に小声で確認の質問をした。
『もしかして……スカトラさんか?』
私は首を縦に振った。それを見たコクゲンさんは、周りを見渡した。周りに誰もいないことを確認すると、一度咳払いをして言った。
「昨日のこちら側に関する記憶はないか?」
「ええ、ありません。昨日は、元の世界にいたみたいですから……」
「では昨日、その体から発せられた言葉に関しても、記憶がないんだね?」
含みのある言い方だ。昨日の私が、何か変なことでも言ったのだろうか。
「は、はい……私、昨日何か言いましたか?」
「うむ、実はだな……昨日、聞いたことがない単語が出てきた」
聞いたことない単語、とはどういうことだろう。私は頷いて先を促した。コクゲンさんは、ある3つの単語を口にした。
「スカトラさんに訊きたいのだが、『カムロ』、『ディフェイロ』、『方舟計画』の中で、聞き覚えのある単語はあるかな?」
私はどの単語にも、聞き覚えがなかった。前半2つは何らかの固有名詞だろうと、推測できる。『方舟』は私の知っているものだとすると、聖書に出てくる逸話のものだろうか。『方舟』に関する『計画』とは一体どういうものだろう。見当もつかない。
「いえ、3つとも聞き覚えはありません。ただ、『方舟』に関しては、前の世界で神話に関する話であったような気がします」
「ふむ、やはりそうか……。実は、私たちの方でも、『方舟』に関する逸話はあるのだが、それに関連した計画が分からなくてな」
コクゲンさんは顎に手を当て、しばらく考えていたが、やがて諦めたようで、私に礼を言って部屋を後にしようとした。
しかし、彼はドアの前でこちらに振り向き、真剣な表情で釘を刺した。
「スカトラさん、君が戻ってきたことや、さっきの話はグリーとアキハには内密に頼む。昨日のカザハとの約束なんだ」
「それはいいんですけど、あの」
先ほどの様子から、何かあるなとは思っていたが、まさか口止めされていたとは、少し意外だった。
しかし、私が引き留めたのは、他のことが気になったからだ。一昨日こちらに来た時から、引っかかっていたことがあった。コクゲンさんは、私に引き留められたのが意外な様子だった。
「どうしたんだい?」
「こちらも1つ訊きたいんですけど、どうしてそんなに飲み込みが早いんですか? 一昨日、私の話も信用できるものじゃなかったはずです」
「確かにそうだな……分かった、訳を話そう」
コクゲンさんは、開けかけた扉を閉め、社長室に置いてありそうな肘掛け付きのイスに座った。机には、何やら紙が数枚まとめて置いてある。体格が良いコクゲンさんが座ると、なかなか絵になる。
彼は、咳払いをして、低めのトーンで話し始めた。
「実はな……君がこの世界に来ているのは、『負の魔法』が関係しているかもしれない、と感じたからだ」
「負の魔法?」
コクゲンさんは、私の問いかけに頷き、説明を始めた。
「一昨日、君はアキハやバスティンチから魔法に関して聴き、実際に見たと思う。その時の魔法は、人々の暮らしを豊かにしたり、便利にしたりするものだったと思う。だが、実は災厄をもたらす魔法があることが近年発覚した」
これがその資料だ、と言って、コクゲンさんは私に、机の上にあった数枚の紙を手渡した。表紙には、『魔法の効能に関する考察』というタイトルと『魔法研究学会会長 コクゲン・アラウド』と書かれていた。
私は紙を受け取り、ページを1枚めくった。そこには、研究対象と範囲が記されており、例を挙げつつ魔法の分類をしていた。
その最後の項に、『負の魔法』という記述があった。
「負の魔法は、持ち主の意思とは関係なく発動し、持ち主や持ち主の周りに、悪影響を及ぼす魔法だ。それに、カザハがかかってしまったのだと考えている。日毎に君とカザハが入れ替わる、それも負の魔法の一種ではないか、とな」
なるほど、一理あるかもしれない。
だがそうなると、私が「災厄」だということになってしまう。それに反論するため、私はソフトに言い返した。
「分かりました。ですが、コクゲンさん。私とカザハさんが入れ替わったとして、何か実害が出るでしょうか?」
「それは分かっている。スカトラさんが『災厄』だと言っているわけではない。誤解を招いてしまったのなら、申し訳ない」
「い、いえ。そういうわけではないです」
コクゲンさんは申し訳なさそうに答えた。別に、私を邪険に扱っているわけではなさそうだ。
どちらにしろ、負の魔法に関する更なる研究が必要そうだ。
「申し訳ない。とにかく、何か進展があったら、また伝達する」
コクゲンさんは、音を立てないようにして部屋を後にした。
それと入れ替わるようにして、カザハの姉、グリー・アラウドが、部屋に入ってきた。彼女は、私を見ると不気味な笑みを浮かべた。
「やあ、お目覚めかな?」
「あ、お姉さま。ご機嫌よろしゅう」
私は、お嬢様言葉で挨拶を返した。コクゲンさんの話を聞く限りでは、私が再び転生したことは言わない方が良さそうだ。
グリーは私をじろじろ見つめると、また不吉な笑みを浮かべた。
「そういえばスカトラ。さっき、お父様と何か話していたみたいだけど、何の話をしていたの?」
「あ、えっと……お姉さまとの距離感についてお話を」
「ふーん、まあなんでもいいけどね」
グリーは、再び私の核心を突くような質問をしてきたが、どうにかかわした。彼女は少し疑問を持っているようだったが、それ以上は詮索してこなかった。
グリーはそのまま、イスに座った。コクゲンさんの温もりを感じたのか、一度中腰になってイスの表面を手で払った。
気まずい。誰か、この状況を打破できる人間はいないのか。
私の祈りが届いたのか、グリーは私から視線をそらし、開けっ放しだった扉を見つめた。すると、その扉からバスティンチさんが入ってきた。彼は、グリーの姿を見ると少し驚いたが、すぐに元の真面目な顔に戻り、深々と頭を下げた。
「グリーお嬢様、こちらにいらっしゃいましたか。カザハお嬢様も、おはようございます。朝食の準備が出来ました」
「あ、ありがと――」
「待ちなさい、バスティンチ」
私がベッドから出て、彼に付いて行こうとすると、私を手で制しバスティンチさんを睨み付けた。彼女は警戒心を露骨に出しながら、質問をした。
「今朝の朝食は、誰が作ったものかしら?」
「それは、アキ……お母様では?」
「いえ。お母様は、先ほどご起床なさったのよ。そんなすぐに出来ないわ。それに、お父様は料理するわけないでしょ」
「あっ」
グリーの質問を聞き、一昨日のアキハさんの発言を思い出した。
バスティンチさんは、家事に関しては完璧だが、料理だけは壊滅に下手なのだ。彼が料理をしたとすると、朝からハードになってしまう。
私とグリーの危惧を知ってか知らずか、バスティンチさんは口角を少し上げ、嬉しそうに言った。
「『私』が作らせていただきました。昨日の体調不良は完治いたしましたので、ご安心ください」
「そうじゃなくて……はあ、まあいいわ。カザハ、行くわよ」
「え、あ、はい!」
私とグリーは憂鬱なまま、食事用のテーブルがある部屋へと向かった。そんな私たちとは対照的に、バスティンチさんの表情は晴れやかだった。
テーブルに着くと、フランス料理が既に並んでいた。見た目はとても美味しそうだったが、既に席についていたコクゲンさんアキハさん夫妻は、食事に手を付けていなかった。2人とも、私とグリー同様、少し戸惑っているようだ。
私は、コクゲンさんの正面に座り、彼の隣にいたアキハさんに聞こえないように小声で話しかけた。
『バスティンチさんが料理を作ったってほんとですか?』
『ああ、どうやらホントらしいが……食べてみるしかないみたいだな』
コクゲンさんは、私の背後をチラ見した。そこには、バスティンチさんが直立している。彼の視線が、私と隣に座っていたグリーの背中に突き刺さる。どうやら、食べるしかないみたいだ。
私たちアラウド家は、食事の挨拶をした後、同時にスープに口をつけた。
美味しい。全員口にこそしなかったが、驚きの表情と、一心不乱に食事を口に運ぶペースが、彼らの感想を示していた。料理担当の顔は、したり顔だった。
食事の後、最初に口を開いたのはアキハさんだった。
「ねえ、バスティンチ。あなた、いつの間にこんな美味しい料理を習得したの?」
「実は昨日、天啓を受けまして、『料理』の魔法を習得いたしました」
なるほど、通りで自信満々だったわけだ。アキハさんや他の2人も納得した様子だった。
「分かったわ。これからは、あなたに料理を任せても良さそうね」
「ええ、お任せください。では、食事の片づけをいたしますので、失礼させていただきます」
バスティンチさんが下がったのを確認すると、コクゲンさんが一度手を叩いて仕切り始めた。
「さて、今日の皆の予定について訊きたい。カザハは昨日同様、あまり体調が優れないみたいだから、気分転換に家の中でも散歩してみてくれ。アキハとグリーは?」
コクゲンさんに上手くフォローしてもらったおかげで、ボロを出さずに済んだ。彼に目配りで、感謝の気持ちを送った。
「私は、自分の部屋の整理をするつもりよ。グリーはどうするの?」
「私も、お部屋の片づけをしようかと考えています。お母様の方も、お手伝いできればと考えています」
2人とも、コクゲンさんの発言を不審に思う様子はないみたいだ。私は、心の中でホッと胸をなで下ろした。
朝の家族会議が終わり、各々が各々の仕事をするため、散っていった。コクゲンさんも、仕事へ行くと言って、家を後にした。
後書き
未設定
作者:惨文文士 |
投稿日:2018/05/26 22:48 更新日:2018/05/26 22:48 『REincarnation』の著作権は、すべて作者 惨文文士様に属します。 |
前の話 | 目次 | 次の話 |
読了ボタン