作品ID:2034
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セブンスナイト ―少年騎士の英雄記―
小説の属性:ライトノベル / 異世界ファンタジー / 批評希望 / 初投稿・初心者 / R-15 / 連載中
前書き・紹介
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『青の騎士』との邂逅
前の話 | 目次 | 次の話 |
「――ここまでが、私が知り得る限りの経緯でございます」
「ふむ……禍族に襲われ『騎士』となる、か。良くある話だな。ともあれ町を襲った禍族と、道中に発見した禍族を倒したこと……闘いに慣れぬ体で良くぞここまで行った。こちらとしてもおぬしに礼を尽くそう」
今までの経緯を話し終えたウィリアムは、一度頭を下げそのまま後ろに下がる。
洗礼されているとは言わずとも筋の通った礼に、議長席に座る男性は静かに目を細めるもすぐに視線をブランドンに映した。
「さて、ここまでの経緯は大体把握した。ブランドン、確かまだ報告があるとのことだったが?」
「は、はっ!」
真っ赤なジェストコールを翻し、一歩前に出て片膝をついたブランドン。
その後顔を上げると多少口籠りながらも報告するために口を開いた。
「『緑の騎士』、ウィリアムは『騎士』と成る際に“声”を聴いたらしく……」
「ほぉ?」
議長席に座る男性の視線がブランドンから外れ、再び後ろに下がっているウィリアムへと向けられる。
もちろん議長席に座る男性だけではない。
この部屋にいる全ての者たちが、一斉にウィリアムへと視線を向けたのだ。
「つまり、ウィリアム……おぬしは『騎士』と成る前に『騎士の力』に認められていたと?」
「正直に申しますと、良く分からないのです」
話を振られたウィリアムは、問われる質問にただ首を横に振ることしか出来ない。
本当に知らないのだから仕様がないのである。
(なぁバラム、お前は俺を認めていた……で合ってる?)
(……ふむ、“資格がある”可能性と言う意味では認めていたな)
ウィリアムはバラムの返答に余計頭を悩ませた。
“資格がある”とはなんなのか、一体何に対する“資格”なのか。
「今、バラム……『騎士の力』に聴いたところ、“資格がある”可能性があるので認めていたらしいです」
「――――」
とりあえず聴いたままをそのままウィリアムはこの場の全員に伝える。
が、その瞬間この部屋全体が緊張で一気に冷えていくのが分かり、思わずウィリアムは体中に力を込めた。
議長に座る男性を見てみれば、その瞳に浮かぶのは明らかな“動揺”。
「……ウィリアム、おぬしは『騎士の力』が今も聞こえる。そう言っているのか?」
ようやくそこでウィリアムは思い出す。
今までの中で『騎士』と成った後も『騎士の力』の声が聴こえるのは、自身が初めてなのだと。
慌ててチラリとブランドンに視線を向ければ、額に右手を当てて顔を俯かせていた。
そして悟る、やっちまったと。
「は、はい。私は今もなお『騎士の力』の声が聴こえています。そして私が――」
「――待て」
慌てて説明しようとしたウィリアムを、議長席に座る男性が制止する。
一体なんなのかと不思議がる彼を置いてきぼりに、男性は「皆さん」と机を囲む人々に声を掛けた。
「ここから『騎士』の話。“巫女様”の元へ向かい話を続けても宜しいだろうか?」
机を囲む人々が、その問いに対して瞬時にアイコンタクトを巡らせると一同に頷く。
(“巫女様”……?バラムは知ってたり?)
(いや、知らぬ。我らは基本、声が聴こえる者が居るときのみ目覚めているからな、普段は眠っているのだ)
『騎士の力』であるバラム達は、殆ど眠っていたということなのだろうかとウィリアムは考える。
今でこそウィリアムという“声が聴こえる者”が居るので常に起きているが、それもウィリアムが初めてだったはず。
つまり、『騎士』と成った時のみの僅かな時間だけ目覚めて、その後また眠ることが多いため外の情報が入ってこないのだろう。
(目が覚めては宿り主を入れ替え、また眠りについて……の連続ってこと?)
(まぁ今まではな)
何か意味を込めたかのような言い方にウィリアムは首を傾げて考え出すも、すぐに議長席に座る男性が立ちあがるのを見て、思考を現実に戻した。
「では『赤の騎士』ブランドン、『緑の騎士』ウィリアム、その友のエンテ。私に着いて来い」
「了解いたしましたッ」
「はっ」
「う、うっす」
ただ、立ち上がったのは議長席に座っていた男性のみで、他の場所に座っている人々は立ち上がろうともせずただ見送るのみ。
何故ついてこないのだろうかと違和感を覚えつつ、男性に連れられウィリアムたちは部屋から退室した。
瞬間――
「ん~~っ!流石に肩凝るねぇ……」
「へ?」
――議長席に座っていた男性の雰囲気が、一気に柔らかいものに変わるのを見て思わずウィリアムたちは呆けた声を出す。
その間抜けな顔を見て、クスリと男性は「ごめんごめん」と優しく微笑み優雅に一礼する。
「改めて……初めましてウィリアム君、エンテ君。まだ僕の挨拶がまだだったね」
頭を上げると、若く美しい顔をした男性は右手を差し出した。
「『青の騎士』ライアン・キナクス。ウィリアム君と同じ『セブンスナイツ』の一人であり、『連盟国家・エンデレナード』の議長だ」
「『青の騎士』……!」
煌びやかになびく銀髪のマッシュを揺らして、イケメンの男性は右腕の袖を捲り上げ見せるのは、前腕にある“印”。
三角が途中で分断されていたり、また途中で合体していたりするような複雑な文様で描かれた籠手が、その“印”には描かれていた。
「僕は代々王族……今の議長の一族に受け継がれてきた『青の騎士』、その末裔」
「ブランドンさんが言ってた、“先代『騎士』に託され『騎士』と成る者”っつうのは議長の一族の話だったんすか……」
何とも納得したような、悔しがるような難しい表情を浮かべるエンテ。
この『騎士』の成り方が良くあるのも当然だろう、毎回『青の騎士』だけは子孫へと受け継がれていくのだから。
ただ、それは一般では難しいのだとエンテは悟り表現しにくい顔になったのだ。
「とりあえず自己紹介を済ませた所で、例の“巫女様”に会いに行くよ――」
ライアンは視線をウィリアムへと至極真剣な表情で向ける。
「――僕も、君についてもっと知らなければならない」
「俺も、自分が一体なんなのか……知りたいです」
そう言って自身の胸に手を当てるウィリアム。
この場でバラムに問いただすことは出来るだろう、けれどそれは今じゃない。
言っている“巫女様”と、ライアンの前でするべきだろうとウィリアムは思ったのである。
「じゃあ行こう、きっと『巫女族』が“巫女様”に伝えに言っているはずだ」
「……はい」
“巫女様”に合えば何かが分かる、ウィリアムはそんな予感でざわつく胸を押さえつけながら、ライアンの背中を追い始めた。
存外、“巫女様”の居る場所というのは近かった。
王城の離れにある、木材で出来た巨大な横に広い家に居るらしいのである。
「……これが、“巫女様”の屋敷?というやつですか?」
「あぁ、そうだよ」
少し見渡せば、木材で基礎を固めており屋根には妙な形をした石のようなものが積まれているのが分かった。
あまりにその屋敷と呼ばれる場所は、周りに比べて異質。
石やレンガで作られている建物が多いので、異質と言えば当然なのだが。
「お待ちしておりました、ライアン様、ブランドン様、ウィリアム様、エンテ様」
周りに気を取られていたのか、不意に現れる女性の姿に驚くウィリアムとエンテ。
ブランドンとライアンは慣れているのか、対して気にしている様子もなくただ女性の言葉に頷く。
(なんだろう、この服……?)
不意に現れた女性にも驚いたが、ウィリアムが何より驚いたのは女性が纏う服だった。
何とも動き辛そうな、ゆったりとした服……というより鮮やかなただの布を何枚も羽織っているような服に、これまた違和感を覚える。
上半身を白い布で包んでおり、どうやら中心にある橙の糸で止めているようで、下半身は鮮やかな赤のスカートをはいていた。
見たことも無い服に頭を傾げるウィリアムに、反応する声がある。
(なんだウィリアムよ、知らんのか)
(?……知ってるのか、バラム?)
(確か、“巫女装束”という『巫女族』が代々羽織る仕来りになっていたはずだ)
意外なバラムからの知識に、へぇ……と頷くウィリアム。
違和感が在りすぎて、もう別の時代に飛ばされた気分だった。
「“巫女様”がお待ちです、どうぞこちらへ……」
そう言って巫女装束を羽織った女性は、一つ頭を下げるとゆっくりとしたペースで屋敷に向かって歩いていく。
ライアンたちが女性を追っていく中でウィリアムだけは――
(まだ、生きているとでも……)
――そのバラムの声を断片的にではあるが、聞き取っていた。
「ふむ……禍族に襲われ『騎士』となる、か。良くある話だな。ともあれ町を襲った禍族と、道中に発見した禍族を倒したこと……闘いに慣れぬ体で良くぞここまで行った。こちらとしてもおぬしに礼を尽くそう」
今までの経緯を話し終えたウィリアムは、一度頭を下げそのまま後ろに下がる。
洗礼されているとは言わずとも筋の通った礼に、議長席に座る男性は静かに目を細めるもすぐに視線をブランドンに映した。
「さて、ここまでの経緯は大体把握した。ブランドン、確かまだ報告があるとのことだったが?」
「は、はっ!」
真っ赤なジェストコールを翻し、一歩前に出て片膝をついたブランドン。
その後顔を上げると多少口籠りながらも報告するために口を開いた。
「『緑の騎士』、ウィリアムは『騎士』と成る際に“声”を聴いたらしく……」
「ほぉ?」
議長席に座る男性の視線がブランドンから外れ、再び後ろに下がっているウィリアムへと向けられる。
もちろん議長席に座る男性だけではない。
この部屋にいる全ての者たちが、一斉にウィリアムへと視線を向けたのだ。
「つまり、ウィリアム……おぬしは『騎士』と成る前に『騎士の力』に認められていたと?」
「正直に申しますと、良く分からないのです」
話を振られたウィリアムは、問われる質問にただ首を横に振ることしか出来ない。
本当に知らないのだから仕様がないのである。
(なぁバラム、お前は俺を認めていた……で合ってる?)
(……ふむ、“資格がある”可能性と言う意味では認めていたな)
ウィリアムはバラムの返答に余計頭を悩ませた。
“資格がある”とはなんなのか、一体何に対する“資格”なのか。
「今、バラム……『騎士の力』に聴いたところ、“資格がある”可能性があるので認めていたらしいです」
「――――」
とりあえず聴いたままをそのままウィリアムはこの場の全員に伝える。
が、その瞬間この部屋全体が緊張で一気に冷えていくのが分かり、思わずウィリアムは体中に力を込めた。
議長に座る男性を見てみれば、その瞳に浮かぶのは明らかな“動揺”。
「……ウィリアム、おぬしは『騎士の力』が今も聞こえる。そう言っているのか?」
ようやくそこでウィリアムは思い出す。
今までの中で『騎士』と成った後も『騎士の力』の声が聴こえるのは、自身が初めてなのだと。
慌ててチラリとブランドンに視線を向ければ、額に右手を当てて顔を俯かせていた。
そして悟る、やっちまったと。
「は、はい。私は今もなお『騎士の力』の声が聴こえています。そして私が――」
「――待て」
慌てて説明しようとしたウィリアムを、議長席に座る男性が制止する。
一体なんなのかと不思議がる彼を置いてきぼりに、男性は「皆さん」と机を囲む人々に声を掛けた。
「ここから『騎士』の話。“巫女様”の元へ向かい話を続けても宜しいだろうか?」
机を囲む人々が、その問いに対して瞬時にアイコンタクトを巡らせると一同に頷く。
(“巫女様”……?バラムは知ってたり?)
(いや、知らぬ。我らは基本、声が聴こえる者が居るときのみ目覚めているからな、普段は眠っているのだ)
『騎士の力』であるバラム達は、殆ど眠っていたということなのだろうかとウィリアムは考える。
今でこそウィリアムという“声が聴こえる者”が居るので常に起きているが、それもウィリアムが初めてだったはず。
つまり、『騎士』と成った時のみの僅かな時間だけ目覚めて、その後また眠ることが多いため外の情報が入ってこないのだろう。
(目が覚めては宿り主を入れ替え、また眠りについて……の連続ってこと?)
(まぁ今まではな)
何か意味を込めたかのような言い方にウィリアムは首を傾げて考え出すも、すぐに議長席に座る男性が立ちあがるのを見て、思考を現実に戻した。
「では『赤の騎士』ブランドン、『緑の騎士』ウィリアム、その友のエンテ。私に着いて来い」
「了解いたしましたッ」
「はっ」
「う、うっす」
ただ、立ち上がったのは議長席に座っていた男性のみで、他の場所に座っている人々は立ち上がろうともせずただ見送るのみ。
何故ついてこないのだろうかと違和感を覚えつつ、男性に連れられウィリアムたちは部屋から退室した。
瞬間――
「ん~~っ!流石に肩凝るねぇ……」
「へ?」
――議長席に座っていた男性の雰囲気が、一気に柔らかいものに変わるのを見て思わずウィリアムたちは呆けた声を出す。
その間抜けな顔を見て、クスリと男性は「ごめんごめん」と優しく微笑み優雅に一礼する。
「改めて……初めましてウィリアム君、エンテ君。まだ僕の挨拶がまだだったね」
頭を上げると、若く美しい顔をした男性は右手を差し出した。
「『青の騎士』ライアン・キナクス。ウィリアム君と同じ『セブンスナイツ』の一人であり、『連盟国家・エンデレナード』の議長だ」
「『青の騎士』……!」
煌びやかになびく銀髪のマッシュを揺らして、イケメンの男性は右腕の袖を捲り上げ見せるのは、前腕にある“印”。
三角が途中で分断されていたり、また途中で合体していたりするような複雑な文様で描かれた籠手が、その“印”には描かれていた。
「僕は代々王族……今の議長の一族に受け継がれてきた『青の騎士』、その末裔」
「ブランドンさんが言ってた、“先代『騎士』に託され『騎士』と成る者”っつうのは議長の一族の話だったんすか……」
何とも納得したような、悔しがるような難しい表情を浮かべるエンテ。
この『騎士』の成り方が良くあるのも当然だろう、毎回『青の騎士』だけは子孫へと受け継がれていくのだから。
ただ、それは一般では難しいのだとエンテは悟り表現しにくい顔になったのだ。
「とりあえず自己紹介を済ませた所で、例の“巫女様”に会いに行くよ――」
ライアンは視線をウィリアムへと至極真剣な表情で向ける。
「――僕も、君についてもっと知らなければならない」
「俺も、自分が一体なんなのか……知りたいです」
そう言って自身の胸に手を当てるウィリアム。
この場でバラムに問いただすことは出来るだろう、けれどそれは今じゃない。
言っている“巫女様”と、ライアンの前でするべきだろうとウィリアムは思ったのである。
「じゃあ行こう、きっと『巫女族』が“巫女様”に伝えに言っているはずだ」
「……はい」
“巫女様”に合えば何かが分かる、ウィリアムはそんな予感でざわつく胸を押さえつけながら、ライアンの背中を追い始めた。
存外、“巫女様”の居る場所というのは近かった。
王城の離れにある、木材で出来た巨大な横に広い家に居るらしいのである。
「……これが、“巫女様”の屋敷?というやつですか?」
「あぁ、そうだよ」
少し見渡せば、木材で基礎を固めており屋根には妙な形をした石のようなものが積まれているのが分かった。
あまりにその屋敷と呼ばれる場所は、周りに比べて異質。
石やレンガで作られている建物が多いので、異質と言えば当然なのだが。
「お待ちしておりました、ライアン様、ブランドン様、ウィリアム様、エンテ様」
周りに気を取られていたのか、不意に現れる女性の姿に驚くウィリアムとエンテ。
ブランドンとライアンは慣れているのか、対して気にしている様子もなくただ女性の言葉に頷く。
(なんだろう、この服……?)
不意に現れた女性にも驚いたが、ウィリアムが何より驚いたのは女性が纏う服だった。
何とも動き辛そうな、ゆったりとした服……というより鮮やかなただの布を何枚も羽織っているような服に、これまた違和感を覚える。
上半身を白い布で包んでおり、どうやら中心にある橙の糸で止めているようで、下半身は鮮やかな赤のスカートをはいていた。
見たことも無い服に頭を傾げるウィリアムに、反応する声がある。
(なんだウィリアムよ、知らんのか)
(?……知ってるのか、バラム?)
(確か、“巫女装束”という『巫女族』が代々羽織る仕来りになっていたはずだ)
意外なバラムからの知識に、へぇ……と頷くウィリアム。
違和感が在りすぎて、もう別の時代に飛ばされた気分だった。
「“巫女様”がお待ちです、どうぞこちらへ……」
そう言って巫女装束を羽織った女性は、一つ頭を下げるとゆっくりとしたペースで屋敷に向かって歩いていく。
ライアンたちが女性を追っていく中でウィリアムだけは――
(まだ、生きているとでも……)
――そのバラムの声を断片的にではあるが、聞き取っていた。
後書き
未設定
作者:清弥 |
投稿日:2018/09/16 17:57 更新日:2018/09/16 17:57 『セブンスナイト ―少年騎士の英雄記―』の著作権は、すべて作者 清弥様に属します。 |
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