作品ID:2035
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セブンスナイト ―少年騎士の英雄記―
小説の属性:ライトノベル / 異世界ファンタジー / 批評希望 / 初投稿・初心者 / R-15 / 連載中
前書き・紹介
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少年の運命
前の話 | 目次 | 次の話 |
「――ようこそいらっしゃいました、皆々様」
屋敷の一番奥、そこに“巫女様”は待っていた。
その声は非常に澄み切っており、色沙汰に関してはほぼ無関係だったウィリアムでさえ鼓膜を揺らす音に聞き惚れる。
けれどその声の発生者は一枚の幕によって姿を見ることは叶わない。
(影から見えるけど、声の通り女性なのか。しかもかなり若そうだ)
(ふむ……やはりそうか。ウィリアムよ、騙されるな、目の前に居る女性は『セブンスナイツ』が生まれてから生き永らえてきた存在だ)
突拍子もないバラムの言葉に、ウィリアムは驚きの声すら忘れて目を大きく剥く。
これほど美しい声を持っているのに、影から一瞬でわかるほど美しさのオーラが出ているのに、数百……いや数千年も生きているとわかったのだから仕方がないだろう。
どうやらエンテも近くにいるブランドンから教えられたようで、鼻の下を伸ばしていたエンテは驚きすぎて白目になっていた。
お近づきになろうとした美しい女性の中身が、BBAだったのだからもうウィリアムとしては合掌を送ることしか出来ない。
「深優、榛名。少々部屋から出て行っても構いませんか?少しばかりこの方たちと“だけ”でお話がしたいのです」
「……かしこまりました」
幕の奥にいるであろう“巫女様”は、側に付き添い護衛と監視を行っていた二人の女性に退室するよう求める。
“巫女様”の命令……お願いは絶対なのか静かに頭を下げ、目麗しい女性たちはウィリアムたちへ目線を向けながらも部屋を出て行く。
「黒髪と黒目、俺初めて見たっす……」
呟いたエンテの言葉に、ウィリアムは内心でそれに同意する。
ミユ、ハルナと呼ばれた女性たちは、片方は黒髪に深緑の瞳を、もう片方は鮮やかな青髪に漆黒の瞳を宿していた。
しかしこの国の中で黒髪、または黒目というのはまず見掛けない色。
珍しい、なんて言葉で終わらないくらいには貴重な体験だったとウィリアムは思う。
「ふ、驚いたかウィリアムにエンテ。髪か瞳、必ずどちらかに“黒”が宿るのが『巫女族』の特徴らしい。私も最初見た時は驚いたものだ」
「あれは、『巫女族』特有のものだったのですね」
公の場である為、議長モードに変化したライアンはウィリアムとエンテに堅苦しい言葉で説明を行った。
といっても、本来は優しい人物だということは既に二人は知っている為、初対面ほどの緊張感も無く普通に受け答えをする。
「ふふふ。仲が宜しいことですわ。ですが今は説明をしてもらえないでしょうか――」
ふわふわとした暖かな雰囲気を持つ“巫女様”は、そこまで言うと……次の瞬間、身も凍るほどの真剣な声色で問う。
「――『セブンスナイツ』史上、初めての出来事を」
「……あぁ、すまない巫女殿。そちらも忙しい身であるのに、急に出向くような真似をしてしまい、一先ず謝罪をしよう」
議長であるライアンは声に緊張の色を持たせて頭を浅く下げる。
あの国を纏めていた子孫たちのトップである議長……ライアンが異様な緊張を持っていることに、ウィリアムは改めて“巫女様”に対し戦慄した。
それほどまでに大切な存在なのだと、それほどまでに重要な存在なのだと。
「では本題に。先日、町に突如現れた禍族に対処するため、一般市民であるウィリアムが『緑の騎士』となったことはそちらも承知しているだろう」
「えぇ、禍族の出現を察知したのも、新たな『騎士』が出現したと察知したのもわたくしが行ったことですから」
ウィリアムはそこでようやく禍族が出現したときの『騎士』の行動が、何故あんなに早かったのかを察する。
“巫女様”がどうやってかは知らないが、禍族や『騎士』の力を察知できるからこそ地域に散りばめられた『騎士』が即時動くことが出来るのだ。
「そのウィリアムは『騎士』と成った時に、『騎士の力』を聴いたらしく……どうやら以前から力に認められていたらしい」
「……そこまではわたくしとしては“良く聞く話”程度ですわ、ライアンさん。それがここまで来た理由なのかしら?なら――」
「――いや違う」
明らかに呆れたような、どこか諦めのような雰囲気で早口に話を終わらそうとする“巫女様”に、ライアンは遮る。
その瞳に宿すのは、真正面で実直な真摯。
「今も聴こえるらしい、『騎士の力』の声が」
「ぇ……?」
どうしようもなく掠れた声がウィリアムの鼓膜を揺らす。
まるで絶望の淵にいた所を誰かに救われたかのように、大きな期待と小さな希望の想いがその声に詰まっていた。
瞬間、幕がばさりと音を立てて捲り上げられる。
「――現れた!!」
ウィリアムの視界に入ったのは、美しく長い黒髪と光を反射する純粋な黒の瞳。
赤と白が目立つ巫女装束を凹凸が乏しい体に纏い、人形かと見間違えるような整った顔を焦りと驚愕で歪めていた。
明らかに周りと違って、その顔の彫りが薄いのが印象的に感じる。
(やはり、貴女か……!)
“巫女様”であろう若く見える女性は、一心不乱に周りを気にせずウィリアムの元へと一直線に向かった。
息もかかるような至近距離にまで接近されたウィリアムは、その美しい顔に思わず見惚れて顔を赤く染める。
「ウィリアムさん、貴方の“印”はどこですか!?見せてくださいッ!」
「え、あっはい」
美女に迫られている状況で考える余裕なぞとっくに失っているウィリアムは、言われた通りに“印”のある左手を差し出した。
(なっ!何をやっている、ウィ――)
「――■■■■■、■■■■■■■」
“巫女様”が差し出された左手にある“印”に手を当て何かを呟いた瞬間、ウィリアムの脳に凄まじいまでの電流が奔る。
何か巻き付いているようで、何か崩れ去っているようで、何か守られているような痛みがウィリアムに突き刺さった。
痛みにもがくのも一瞬、すぐさま脳に直接突く痛みは引いていきウィリアムは体中を汗まみれにしながら荒い息を吐く。
「はぁっ……!はぁっ……!い、一体何を……?」
「申し訳ございません。貴方を護る為に少々『騎士の力』に施しを」
急の出来事で頭が追い付いていなかったエンテたち三人。
けれど、ウィリアムが苦しげに息を荒げているのを確認して状況の把握よりも先に彼の元へと駆けた。
(バラム、お前は何が起こったのか分かるか?)
(…………)
先ほどの激痛はいったいなんだったのかと、ウィリアムは『騎士の力』本人であるバラムに問うが、いつまで経っても返事をする気配がない。
嫌な予感がしたウィリアムは、慌てて何度もバラムに声を掛けるが一切反応がなかった。
ならば“巫女様”に聞くしかないだろうと、顔を上げて彼女を睨み付ける。
「“巫女様”、バラムは……『騎士の力』の声が俺の掛け声に反応しません。一体何をしたんですかッ!」
「心配なさらないでください。脳にダメージが入った為、一時的に休息を行っているだけです。『騎士の力』の声……バラムは2,3日後には目を覚まします」
その“巫女様”の、本来なら安心するであろう笑みに嫌悪感を抱かずにはいられないウィリアム。
当然だろう。
何の前触れも無く脳に激痛を負わされ、更には友の気を失わせたのだから。
逆に怒りに我を忘れて“巫女様”に飛びかかったとしても、それは仕方がないレベルだ。
無言で“巫女様”を睨み続けるウィリアムの前に、真剣な表情をしたエンテが立つと静かに目を細める。
「“巫女様”、ウィリアムを一体何から護るっつうんですか?そこんとこ、教えてくれなきゃコイツも俺も怒りを治められないっすよ」
「……えぇ、もちろん説明するつもりです」
あくまで仕方のない行為なのだと、“巫女様”はそう告げてからブランドンに視線を向けた。
「ブランドンさん、貴方はウィリアムさんとエンテさんをここまで護衛する際に、禍族と遭遇したはずです。違いますか?」
「えぇ、その通りで御座います。ですが、今の話にどう関係が……?」
首を傾げるブランドンに、“巫女様”は頷くと説明を始める。
「可笑しいとは思いませんでしたか、ブランドンさん?禍族というのは一ヶ月に一度出れば多いペースですわ」
「確かに、あの禍族との遭遇は少々不可解に思っておりました」
禍族というのは一ヶ月に一度出現すれば多い方だ。
そういうペースだったからこそ、今の今まで人間は存続し得ることが出来たのである。
だからこそ王都に向かう途中で禍族と遭遇する……というのは本来ならば在り得ない事実。
一ヶ月どころか半月も経っていないというのに、二度も禍族と遭遇している。
しかも大陸のどこかに現れるのではなく“ほぼ同じ所”でだ。
そこまで状況を整理したところで、ウィリアムはようやく理解する。
「もしかして……俺が原因ですか?」
「えぇ、大正解です」
一度目の禍族も、二度目の禍族も“ウィリアムの近くで”出現していた。
更に、二度目の禍族は人間が大量にいる村を目の前にしながら、敢えてウィリアムたちの方へ向かってきたのである。
全てが偶然だと、どうして言えるのだろうか。
「貴方は『騎士の力』、その声を聞くことが出来る。それが意味するのは――」
「ま、まさか“巫女殿”……彼が?」
汗を一筋流すライアンから出た問いに、コクリと頷く“巫女様”。
純粋な黒の瞳がウィリアムの深緑の瞳を一直線に貫き、まるで心まで貫かれたかのような空想に襲われる。
それほどまでに、ウィリアムを見つめる瞳は真剣なもの。
まるで神をも思わせる雰囲気を漂わせる“巫女様”は、一呼吸を置いてウィリアムへ告げる。
「――『七色の騎士《セブンスナイト》』、その最有力候補です」
その日、少年の運命は決まった。
屋敷の一番奥、そこに“巫女様”は待っていた。
その声は非常に澄み切っており、色沙汰に関してはほぼ無関係だったウィリアムでさえ鼓膜を揺らす音に聞き惚れる。
けれどその声の発生者は一枚の幕によって姿を見ることは叶わない。
(影から見えるけど、声の通り女性なのか。しかもかなり若そうだ)
(ふむ……やはりそうか。ウィリアムよ、騙されるな、目の前に居る女性は『セブンスナイツ』が生まれてから生き永らえてきた存在だ)
突拍子もないバラムの言葉に、ウィリアムは驚きの声すら忘れて目を大きく剥く。
これほど美しい声を持っているのに、影から一瞬でわかるほど美しさのオーラが出ているのに、数百……いや数千年も生きているとわかったのだから仕方がないだろう。
どうやらエンテも近くにいるブランドンから教えられたようで、鼻の下を伸ばしていたエンテは驚きすぎて白目になっていた。
お近づきになろうとした美しい女性の中身が、BBAだったのだからもうウィリアムとしては合掌を送ることしか出来ない。
「深優、榛名。少々部屋から出て行っても構いませんか?少しばかりこの方たちと“だけ”でお話がしたいのです」
「……かしこまりました」
幕の奥にいるであろう“巫女様”は、側に付き添い護衛と監視を行っていた二人の女性に退室するよう求める。
“巫女様”の命令……お願いは絶対なのか静かに頭を下げ、目麗しい女性たちはウィリアムたちへ目線を向けながらも部屋を出て行く。
「黒髪と黒目、俺初めて見たっす……」
呟いたエンテの言葉に、ウィリアムは内心でそれに同意する。
ミユ、ハルナと呼ばれた女性たちは、片方は黒髪に深緑の瞳を、もう片方は鮮やかな青髪に漆黒の瞳を宿していた。
しかしこの国の中で黒髪、または黒目というのはまず見掛けない色。
珍しい、なんて言葉で終わらないくらいには貴重な体験だったとウィリアムは思う。
「ふ、驚いたかウィリアムにエンテ。髪か瞳、必ずどちらかに“黒”が宿るのが『巫女族』の特徴らしい。私も最初見た時は驚いたものだ」
「あれは、『巫女族』特有のものだったのですね」
公の場である為、議長モードに変化したライアンはウィリアムとエンテに堅苦しい言葉で説明を行った。
といっても、本来は優しい人物だということは既に二人は知っている為、初対面ほどの緊張感も無く普通に受け答えをする。
「ふふふ。仲が宜しいことですわ。ですが今は説明をしてもらえないでしょうか――」
ふわふわとした暖かな雰囲気を持つ“巫女様”は、そこまで言うと……次の瞬間、身も凍るほどの真剣な声色で問う。
「――『セブンスナイツ』史上、初めての出来事を」
「……あぁ、すまない巫女殿。そちらも忙しい身であるのに、急に出向くような真似をしてしまい、一先ず謝罪をしよう」
議長であるライアンは声に緊張の色を持たせて頭を浅く下げる。
あの国を纏めていた子孫たちのトップである議長……ライアンが異様な緊張を持っていることに、ウィリアムは改めて“巫女様”に対し戦慄した。
それほどまでに大切な存在なのだと、それほどまでに重要な存在なのだと。
「では本題に。先日、町に突如現れた禍族に対処するため、一般市民であるウィリアムが『緑の騎士』となったことはそちらも承知しているだろう」
「えぇ、禍族の出現を察知したのも、新たな『騎士』が出現したと察知したのもわたくしが行ったことですから」
ウィリアムはそこでようやく禍族が出現したときの『騎士』の行動が、何故あんなに早かったのかを察する。
“巫女様”がどうやってかは知らないが、禍族や『騎士』の力を察知できるからこそ地域に散りばめられた『騎士』が即時動くことが出来るのだ。
「そのウィリアムは『騎士』と成った時に、『騎士の力』を聴いたらしく……どうやら以前から力に認められていたらしい」
「……そこまではわたくしとしては“良く聞く話”程度ですわ、ライアンさん。それがここまで来た理由なのかしら?なら――」
「――いや違う」
明らかに呆れたような、どこか諦めのような雰囲気で早口に話を終わらそうとする“巫女様”に、ライアンは遮る。
その瞳に宿すのは、真正面で実直な真摯。
「今も聴こえるらしい、『騎士の力』の声が」
「ぇ……?」
どうしようもなく掠れた声がウィリアムの鼓膜を揺らす。
まるで絶望の淵にいた所を誰かに救われたかのように、大きな期待と小さな希望の想いがその声に詰まっていた。
瞬間、幕がばさりと音を立てて捲り上げられる。
「――現れた!!」
ウィリアムの視界に入ったのは、美しく長い黒髪と光を反射する純粋な黒の瞳。
赤と白が目立つ巫女装束を凹凸が乏しい体に纏い、人形かと見間違えるような整った顔を焦りと驚愕で歪めていた。
明らかに周りと違って、その顔の彫りが薄いのが印象的に感じる。
(やはり、貴女か……!)
“巫女様”であろう若く見える女性は、一心不乱に周りを気にせずウィリアムの元へと一直線に向かった。
息もかかるような至近距離にまで接近されたウィリアムは、その美しい顔に思わず見惚れて顔を赤く染める。
「ウィリアムさん、貴方の“印”はどこですか!?見せてくださいッ!」
「え、あっはい」
美女に迫られている状況で考える余裕なぞとっくに失っているウィリアムは、言われた通りに“印”のある左手を差し出した。
(なっ!何をやっている、ウィ――)
「――■■■■■、■■■■■■■」
“巫女様”が差し出された左手にある“印”に手を当て何かを呟いた瞬間、ウィリアムの脳に凄まじいまでの電流が奔る。
何か巻き付いているようで、何か崩れ去っているようで、何か守られているような痛みがウィリアムに突き刺さった。
痛みにもがくのも一瞬、すぐさま脳に直接突く痛みは引いていきウィリアムは体中を汗まみれにしながら荒い息を吐く。
「はぁっ……!はぁっ……!い、一体何を……?」
「申し訳ございません。貴方を護る為に少々『騎士の力』に施しを」
急の出来事で頭が追い付いていなかったエンテたち三人。
けれど、ウィリアムが苦しげに息を荒げているのを確認して状況の把握よりも先に彼の元へと駆けた。
(バラム、お前は何が起こったのか分かるか?)
(…………)
先ほどの激痛はいったいなんだったのかと、ウィリアムは『騎士の力』本人であるバラムに問うが、いつまで経っても返事をする気配がない。
嫌な予感がしたウィリアムは、慌てて何度もバラムに声を掛けるが一切反応がなかった。
ならば“巫女様”に聞くしかないだろうと、顔を上げて彼女を睨み付ける。
「“巫女様”、バラムは……『騎士の力』の声が俺の掛け声に反応しません。一体何をしたんですかッ!」
「心配なさらないでください。脳にダメージが入った為、一時的に休息を行っているだけです。『騎士の力』の声……バラムは2,3日後には目を覚まします」
その“巫女様”の、本来なら安心するであろう笑みに嫌悪感を抱かずにはいられないウィリアム。
当然だろう。
何の前触れも無く脳に激痛を負わされ、更には友の気を失わせたのだから。
逆に怒りに我を忘れて“巫女様”に飛びかかったとしても、それは仕方がないレベルだ。
無言で“巫女様”を睨み続けるウィリアムの前に、真剣な表情をしたエンテが立つと静かに目を細める。
「“巫女様”、ウィリアムを一体何から護るっつうんですか?そこんとこ、教えてくれなきゃコイツも俺も怒りを治められないっすよ」
「……えぇ、もちろん説明するつもりです」
あくまで仕方のない行為なのだと、“巫女様”はそう告げてからブランドンに視線を向けた。
「ブランドンさん、貴方はウィリアムさんとエンテさんをここまで護衛する際に、禍族と遭遇したはずです。違いますか?」
「えぇ、その通りで御座います。ですが、今の話にどう関係が……?」
首を傾げるブランドンに、“巫女様”は頷くと説明を始める。
「可笑しいとは思いませんでしたか、ブランドンさん?禍族というのは一ヶ月に一度出れば多いペースですわ」
「確かに、あの禍族との遭遇は少々不可解に思っておりました」
禍族というのは一ヶ月に一度出現すれば多い方だ。
そういうペースだったからこそ、今の今まで人間は存続し得ることが出来たのである。
だからこそ王都に向かう途中で禍族と遭遇する……というのは本来ならば在り得ない事実。
一ヶ月どころか半月も経っていないというのに、二度も禍族と遭遇している。
しかも大陸のどこかに現れるのではなく“ほぼ同じ所”でだ。
そこまで状況を整理したところで、ウィリアムはようやく理解する。
「もしかして……俺が原因ですか?」
「えぇ、大正解です」
一度目の禍族も、二度目の禍族も“ウィリアムの近くで”出現していた。
更に、二度目の禍族は人間が大量にいる村を目の前にしながら、敢えてウィリアムたちの方へ向かってきたのである。
全てが偶然だと、どうして言えるのだろうか。
「貴方は『騎士の力』、その声を聞くことが出来る。それが意味するのは――」
「ま、まさか“巫女殿”……彼が?」
汗を一筋流すライアンから出た問いに、コクリと頷く“巫女様”。
純粋な黒の瞳がウィリアムの深緑の瞳を一直線に貫き、まるで心まで貫かれたかのような空想に襲われる。
それほどまでに、ウィリアムを見つめる瞳は真剣なもの。
まるで神をも思わせる雰囲気を漂わせる“巫女様”は、一呼吸を置いてウィリアムへ告げる。
「――『七色の騎士《セブンスナイト》』、その最有力候補です」
その日、少年の運命は決まった。
後書き
未設定
作者:清弥 |
投稿日:2018/09/16 17:57 更新日:2018/09/16 17:57 『セブンスナイト ―少年騎士の英雄記―』の著作権は、すべて作者 清弥様に属します。 |
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