作品ID:2276
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私は犬と生きていく
小説の属性:一般小説 / 現代ドラマ / 批評希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
未設定
風連の死
前の話 | 目次 |
ある日から風連の様子がおかしくなった。散歩中に脚の痛みを訴えて悲鳴を上げ、うずくまった。しばらくすると何事もなかったかの様にまた歩き出す。そしてまたうずくまる、といった具合だった。
そんな事が続いたので獣医に連れて行った。脚に異常は無かった。
「腎不全による毒素が体に回って関節が痛むんですね。点滴をしましょう」
と、獣医は言う。風連は皮下点滴を受けることになった。背中に針を射される。背中にコブが出来た。点滴の液が溜まったのだ。
「定期的に点滴を受けに来て下さい」
点滴を受けた後は、しばらく風連の具合は良くなった。だがじきにまた脚を引きずるようになる。点滴を受け、そしてまた具合が悪くなる、を繰り返した。
ある日、もう寝たきりで動けなかった風連が、突然むくりと起き上がり、眼をキラキラさせて、部屋の中へ入れろと催促する。居間へ入れてやると、部屋中歩いて周りを眺め、部屋続きのキッチンも一通り眺めて回った。そしてガックリと力尽きた。横たわって弱々しく鳴き、私を呼んだ。そばに行って撫でてやると、一瞬苦しそうな顔をした後、動かなくなった。
風連は死んだ。この事実は私を揺さぶった。私は二階の部屋へ行き、両親に見つからないように膝を抱えて泣いた。嗚咽と言って良かった。今度は涙が出た。
風連が死んで以来、私は脱け殻のように日々を送った。両親は相変わらず喧嘩を続けていた。進路を決める時期になって、私は父に大学に行きたい、と申し出た。父は、
「どこにそんな金がある!」
と切れた。私は進学を諦めて働くことにした。
東京に出て、校正の仕事に就いた。何年か働き、年頃になると両親が結婚を進めてきたがする気にはなれなかった。昔の写真を見る限り、結婚当初の父と母は幸せそうに写っている。それが、時が経てば修羅場を演じるようになるのだ。私はそんなのは絶対に御免だ。そうだ、いずれまた犬を飼おう。私は人間を愛する心は作れなかったが、犬への愛だけは有るのだ。私は犬と生きていく。
そんな事が続いたので獣医に連れて行った。脚に異常は無かった。
「腎不全による毒素が体に回って関節が痛むんですね。点滴をしましょう」
と、獣医は言う。風連は皮下点滴を受けることになった。背中に針を射される。背中にコブが出来た。点滴の液が溜まったのだ。
「定期的に点滴を受けに来て下さい」
点滴を受けた後は、しばらく風連の具合は良くなった。だがじきにまた脚を引きずるようになる。点滴を受け、そしてまた具合が悪くなる、を繰り返した。
ある日、もう寝たきりで動けなかった風連が、突然むくりと起き上がり、眼をキラキラさせて、部屋の中へ入れろと催促する。居間へ入れてやると、部屋中歩いて周りを眺め、部屋続きのキッチンも一通り眺めて回った。そしてガックリと力尽きた。横たわって弱々しく鳴き、私を呼んだ。そばに行って撫でてやると、一瞬苦しそうな顔をした後、動かなくなった。
風連は死んだ。この事実は私を揺さぶった。私は二階の部屋へ行き、両親に見つからないように膝を抱えて泣いた。嗚咽と言って良かった。今度は涙が出た。
風連が死んで以来、私は脱け殻のように日々を送った。両親は相変わらず喧嘩を続けていた。進路を決める時期になって、私は父に大学に行きたい、と申し出た。父は、
「どこにそんな金がある!」
と切れた。私は進学を諦めて働くことにした。
東京に出て、校正の仕事に就いた。何年か働き、年頃になると両親が結婚を進めてきたがする気にはなれなかった。昔の写真を見る限り、結婚当初の父と母は幸せそうに写っている。それが、時が経てば修羅場を演じるようになるのだ。私はそんなのは絶対に御免だ。そうだ、いずれまた犬を飼おう。私は人間を愛する心は作れなかったが、犬への愛だけは有るのだ。私は犬と生きていく。
後書き
未設定
作者:コツリス |
投稿日:2020/02/16 15:53 更新日:2020/02/16 15:53 『私は犬と生きていく』の著作権は、すべて作者 コツリス様に属します。 |
前の話 | 目次 |
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