作品ID:2283
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ナイフが朱に染まる
小説の属性:一般小説 / ミステリー / お気軽感想希望 / 初投稿・初心者 / R-18 / 完結
前書き・紹介
(第16話)新川刑事から電話があったが、彼は何者かに襲われた。一体なにがあったんだ?
前の話 | 目次 | 次の話 |
あれからミネ子ちゃんからの電話がなくなり、ピタリと家にもこなくなってしまった。
今日は日曜日。
どこも出かけずに、じっと家にいた。
もぞもぞとコタツの中から顔をだして窓の外を見遣る。
寝ぼけ眼でじっと見る。
外はまだ明るいがもう師走になり雪も降りだしてきた。
僕はずっとミネ子ちゃんと大喧嘩をした時から引きずっていて、
仕事にも身が入らなくなり、マコトと一緒に帰るのもだんだんと後ろめたくなってきた。
僕がつまらない事ばかり拘るものだからミネ子ちゃんをキズつけた。
高校の頃の憧れの女性から愛され、薔薇色の人生を迎えようとしているのに、僕は浮気なんかをして全てぶち壊してしまった。
伊藤は失踪したきりであれから特に変わったことや、付け狙われているとか言う事件がなかった。
もう、脅迫状なんてどうでもいいと思ってしまう。
あとは警察に任せて、マコトと出社と退社するのは辞めようかな……と思った矢先、こたつの上に置いたスマホから電話が鳴った。
「誰だ。日曜だっていうのに」
重い体を起こしてコタツの中から這い上がり、電話に出てみた。
「もしもし」
『西城助男さんですか?』
「そうですが、どちら様ですか」
『お休みのところ申し訳ありません。
私、警視庁捜査第一課の新川圭介と申します』
声を聞いた途端、眠気が吹っ飛ぶ。
居酒屋で出刃包丁が刺さったときに来た刑事だ。
「あっ、刑事さん。どうもです」
『こちらこそスミマセン。
現在、伊藤容疑者を引き続き追っているのですが、
捜査が難航しており未だに足取りを掴めておりません……』
ハキハキとした話し方をする爽やかな印象の若い刑事だ。
前に電話くれたときもこの刑事なのだが、逐一報告してくれる上、一生懸命取り組む姿勢が見えてとても好感がもてる。
『スミマセン。今ご自宅にいますか。お一人でしょうか?』
電話の向こうでの新川の様子がいつもと違って緊迫している。
「え?はい……いま家にいて一人ですが」
『そうですか。
あの、一つ出刃包丁に関する捜査の進展がありまして、指紋照合しましたが、店の従業員のものではないことが分かりました』
それは僕もなんとなくそうだとは思ってた。
なんだ、今頃分かったのか。
思わず溜息をついてしまった。
『ご連絡が遅くなり申し訳ありませんでした。
他にも事件がありましてなかなか指紋照合の結果が出なかったものですので』
「あいや、いいですよ。分かったところで仕方がないことですし」
『いえいえ。僕一人でだったらすぐに結果が分かるのですが、
専門的な分野ですので・・・いやはや本当に』
「いえいえ、刑事さん。謝らないでくださいよ」
こんなに謝られてはこっちこそ申しわけない気持ちになる。
警察はいくつかの難解な事件を持って忙しいから仕方がないことだと僕は理解をした。
『はやく伊藤容疑者をとっ捕まえて指紋照合と尋問をしたいです!
全力を尽くして参ります!』
電話の声から新川の誠意が感じられ、俄然好感がもてた。
そこそこ挨拶をしてから電話を切ろうとしたときに新川が言った。
『ところで西城さん。僕が捜査をして気づいたことですが、
アナタの周りに不審者らしきものはいませんか?』
「え?不審者とは?」
『ええ。僕は西城さんの会社の前で張り込みをしている時に、清掃服を着た女性が玄関から出てきまして、西城さんとマコトさんの跡を尾行しているように思いました。まあ、従業員ですし尾行は一回きりでしたのでそんなに気にはならなかったのですが、捜査に関係しているかもしれないので一応お伝えしました』
「女性の清掃員……」
そんな従業員いたっけ。
顔から脂汗が浮いてきた。
僕の会社は清掃員を雇っていないはず。
トイレ掃除とかゴミの片づけは新人がいつもすることだ。
「清掃員なんて雇ってないですが」
『え!』
新川は驚嘆した。
『従業員の方じゃなかったんですか。これは大変だ!
分かりました。怪しい人物ですので清掃員の捜査にもあたってみたいと―――ワァ!』
そこで突然電話は切れた。
僕はいそいでかけ直す。
「もしもし!……刑事さん。もしもしっ!………」
いくらやっても通じない。
頭から血の気が引いていく。
新川は何者かに電話を切られたのか、もしくは伊藤か清掃員に襲われたのかもしれない。
危険が非常に迫ってる気がしてきた。
女が清掃員になりすまして、僕たちを尾行してた……もしかして。
いや、僕の愛する人がそんなことをするはずがない。
だけど、ミネ子ちゃんも伊藤と同じく失踪してしまった。
まさか、今回の出刃包丁と脅迫状の事件に関係しているのでは。
こうしちゃいられない。
僕はあわてて服を着替えてタクシーに乗り込み警察署へ向かっていった。
(つづく)
今日は日曜日。
どこも出かけずに、じっと家にいた。
もぞもぞとコタツの中から顔をだして窓の外を見遣る。
寝ぼけ眼でじっと見る。
外はまだ明るいがもう師走になり雪も降りだしてきた。
僕はずっとミネ子ちゃんと大喧嘩をした時から引きずっていて、
仕事にも身が入らなくなり、マコトと一緒に帰るのもだんだんと後ろめたくなってきた。
僕がつまらない事ばかり拘るものだからミネ子ちゃんをキズつけた。
高校の頃の憧れの女性から愛され、薔薇色の人生を迎えようとしているのに、僕は浮気なんかをして全てぶち壊してしまった。
伊藤は失踪したきりであれから特に変わったことや、付け狙われているとか言う事件がなかった。
もう、脅迫状なんてどうでもいいと思ってしまう。
あとは警察に任せて、マコトと出社と退社するのは辞めようかな……と思った矢先、こたつの上に置いたスマホから電話が鳴った。
「誰だ。日曜だっていうのに」
重い体を起こしてコタツの中から這い上がり、電話に出てみた。
「もしもし」
『西城助男さんですか?』
「そうですが、どちら様ですか」
『お休みのところ申し訳ありません。
私、警視庁捜査第一課の新川圭介と申します』
声を聞いた途端、眠気が吹っ飛ぶ。
居酒屋で出刃包丁が刺さったときに来た刑事だ。
「あっ、刑事さん。どうもです」
『こちらこそスミマセン。
現在、伊藤容疑者を引き続き追っているのですが、
捜査が難航しており未だに足取りを掴めておりません……』
ハキハキとした話し方をする爽やかな印象の若い刑事だ。
前に電話くれたときもこの刑事なのだが、逐一報告してくれる上、一生懸命取り組む姿勢が見えてとても好感がもてる。
『スミマセン。今ご自宅にいますか。お一人でしょうか?』
電話の向こうでの新川の様子がいつもと違って緊迫している。
「え?はい……いま家にいて一人ですが」
『そうですか。
あの、一つ出刃包丁に関する捜査の進展がありまして、指紋照合しましたが、店の従業員のものではないことが分かりました』
それは僕もなんとなくそうだとは思ってた。
なんだ、今頃分かったのか。
思わず溜息をついてしまった。
『ご連絡が遅くなり申し訳ありませんでした。
他にも事件がありましてなかなか指紋照合の結果が出なかったものですので』
「あいや、いいですよ。分かったところで仕方がないことですし」
『いえいえ。僕一人でだったらすぐに結果が分かるのですが、
専門的な分野ですので・・・いやはや本当に』
「いえいえ、刑事さん。謝らないでくださいよ」
こんなに謝られてはこっちこそ申しわけない気持ちになる。
警察はいくつかの難解な事件を持って忙しいから仕方がないことだと僕は理解をした。
『はやく伊藤容疑者をとっ捕まえて指紋照合と尋問をしたいです!
全力を尽くして参ります!』
電話の声から新川の誠意が感じられ、俄然好感がもてた。
そこそこ挨拶をしてから電話を切ろうとしたときに新川が言った。
『ところで西城さん。僕が捜査をして気づいたことですが、
アナタの周りに不審者らしきものはいませんか?』
「え?不審者とは?」
『ええ。僕は西城さんの会社の前で張り込みをしている時に、清掃服を着た女性が玄関から出てきまして、西城さんとマコトさんの跡を尾行しているように思いました。まあ、従業員ですし尾行は一回きりでしたのでそんなに気にはならなかったのですが、捜査に関係しているかもしれないので一応お伝えしました』
「女性の清掃員……」
そんな従業員いたっけ。
顔から脂汗が浮いてきた。
僕の会社は清掃員を雇っていないはず。
トイレ掃除とかゴミの片づけは新人がいつもすることだ。
「清掃員なんて雇ってないですが」
『え!』
新川は驚嘆した。
『従業員の方じゃなかったんですか。これは大変だ!
分かりました。怪しい人物ですので清掃員の捜査にもあたってみたいと―――ワァ!』
そこで突然電話は切れた。
僕はいそいでかけ直す。
「もしもし!……刑事さん。もしもしっ!………」
いくらやっても通じない。
頭から血の気が引いていく。
新川は何者かに電話を切られたのか、もしくは伊藤か清掃員に襲われたのかもしれない。
危険が非常に迫ってる気がしてきた。
女が清掃員になりすまして、僕たちを尾行してた……もしかして。
いや、僕の愛する人がそんなことをするはずがない。
だけど、ミネ子ちゃんも伊藤と同じく失踪してしまった。
まさか、今回の出刃包丁と脅迫状の事件に関係しているのでは。
こうしちゃいられない。
僕はあわてて服を着替えてタクシーに乗り込み警察署へ向かっていった。
(つづく)
後書き
未設定
作者:白河甚平 |
投稿日:2020/03/07 15:32 更新日:2020/03/07 15:32 『ナイフが朱に染まる』の著作権は、すべて作者 白河甚平様に属します。 |
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