作品ID:2325
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『鉄鎖のメデューサ』
小説の属性:一般小説 / 異世界ファンタジー / お気軽感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
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第18章
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「やったぞ!」「捕まえた!」
背後から聞こえてきた群集の叫びにロビンの足が止まり、振り返ったその目が大きな網をゆっくりと吊り上げるゴーレムの姿を捉えた。
数歩戻りかけた歩みが疾走に転じる寸前、その肩を大きな手ががっしり掴んだ。
「話を聞かせてもらおう」
そういった黒髪の大男の脇にやってきた金髪の青年が、厳しい視線を向けてきた。
「格好だけ似せた猿知恵か。宝玉をごまかせるとでも思ったか。雑魚は任せたぞ、スノーレンジャー」
青年は手にした宝玉を袋に戻すとロビンにはもう目もくれず、大きな網を手に彼方に立つゴーレムに向かって勝ち誇った様子で歩み去った。
すると、彼方から叫ぶ声が聞こえた。舌足らずな叫びが。
「ろびんツカム、ナイ! ろびんツカム、ダメ!」
「えっ?」
あっけにとられた声の大男の手が緩むやロビンは身をもぎ離し駆け出そうとしたが、仲間らしき長身の男に捕まった。けれど、その男も驚きを隠せずにいた。
「メデューサがしゃべった……?」
その呟きに被さるように、また声がした。
「ろびん!」
「クルルーっ!」
ロビンもまた叫び返すと、鋼のごとき腕の中でめちゃくちゃに暴れた。腕の力は微塵も緩みなどしなかったが、男たちの顔には得体のしれないものにうっかり触れたときの脅えめいた表情さえ浮かんでいた。
「ロビンって、おまえの名前か?」「あれはおまえを呼んでいるのか?」「おまえ、あれと話ができるのか?」
とうとうロビンの感情が爆発した。
「なにが変なの! なにが悪いの! クルルはとっても森に帰りたいんだ。だから僕は連れていきたいんだ。ラルダさんに教えてもらって三人でいこうとしただけなのに、なんで寄ってたかって邪魔するのさ! ひどいや! あんなのひどいやっ!」
涙をぼろぼろ流しながら暴れる少年を、大の男二人はすっかり持て余していた。そのとき背後から、女の声が呼びかけた。
「リチャード、そんなに乱暴にしては話になりませんわよ」
男たちの背後から現れた乙女の豊かな金髪と白い顔は、周囲の闇さえ払うかのようだった。その美貌がにっこり笑った。
「わたくしには話を聞かせてくれますわね? ロビン君」
少年はまさかそれがかの悪名高き魔女であるとは思いもしなければ、頭上で男たちが得もいわれぬ表情の顔を見交わしたのにも全く気づかなかった。
「橋から落ちたメデューサを助けて気持ちを通じさせただけではなく、言葉まで教えたというのか……」
「……驚いたな」「全くだ……」
アーサーも含めた三人の男たちが口々に呟きあう中、ロビンはメアリに縋るようにたずねた。
「ねえ、クルルはどうなるの。放してもらえないの?」
「ホワイトクリフ卿がどう考えるかなのだけれど……」
いい淀んだメアリの口調が、厳しいまなざしのあの青年の顔を呼び起こした。
「さっきのあの人? だめだよ! クルル殺されちゃうよ!」
「とはいっても警備隊の作戦で捕らえたのに違いないしな」
「卿にはなにをいっても聞き入れてくれないだろうし……」
「だからといって、まさか逃がすわけにもいかないし……」
そんな声など届くはずもない彼方では、ゴーレムが悠々と網を漕ぎ手らしき男がいるほうの舟へと積み込んでいた。
「見物人が近づくと危険だから河舟で本部まで運ぶというんだ。あんな無茶をしておいて今更なにをといいたいが……」
アーサーが憤懣やるかたなき面持ちでいうと、網を積んだ舟が岸辺を離れた。だが若きナイトが満足げに頷いたとたん、残った舟へゴーレムが乗り込んだ! たちまち舟は石の足に踏み抜かれゴーレムもろとも大河に沈んだ。
「なにっ!」
四人のスノーレンジャーも驚いたが、彼方の青年の驚きはその比ではなかった。手にした袋を取り落としたのにも気づかずに、彼は河へ駆けていった。その前に走り込んだ警備隊員がなにかを告げるや叫びが彼方から聞こえてきた。
「グレゴリーが縛られていた? では、ゴーレムを動かしていたのは誰なんだ!」
メアリが跳びだし、若きナイトが落とした袋を掴んで戻った。取り出した宝玉の中の光が、中心から移動し始めていた。
「追いますわよ、みんな!」
「そうだ、事件は解決なんかしてないぞ。街を危険から守るのが我らスノーレンジャーの役目だ!」
アーサーはロビンにいたずらっぽくウインクした。
「メデューサの番人が専門ってわけじゃない」
「じゃあ僕もつれてって!」
少年の言葉にリチャードがかぶりを振った。
「だめだ。危険かもしれん」
「でも僕がいっしょなら、みんなが味方だってクルルにも分かるよ。間違って石にされたりしないよ!」
四人は顔を見合わせ、頷きあった。
「じゃあ決まりだ。いくぞ大将、頼りにしてるぜ!」
エリックがロビンを肩車するやいなや、彼らは光の点を追って駆けだした!
背後から聞こえてきた群集の叫びにロビンの足が止まり、振り返ったその目が大きな網をゆっくりと吊り上げるゴーレムの姿を捉えた。
数歩戻りかけた歩みが疾走に転じる寸前、その肩を大きな手ががっしり掴んだ。
「話を聞かせてもらおう」
そういった黒髪の大男の脇にやってきた金髪の青年が、厳しい視線を向けてきた。
「格好だけ似せた猿知恵か。宝玉をごまかせるとでも思ったか。雑魚は任せたぞ、スノーレンジャー」
青年は手にした宝玉を袋に戻すとロビンにはもう目もくれず、大きな網を手に彼方に立つゴーレムに向かって勝ち誇った様子で歩み去った。
すると、彼方から叫ぶ声が聞こえた。舌足らずな叫びが。
「ろびんツカム、ナイ! ろびんツカム、ダメ!」
「えっ?」
あっけにとられた声の大男の手が緩むやロビンは身をもぎ離し駆け出そうとしたが、仲間らしき長身の男に捕まった。けれど、その男も驚きを隠せずにいた。
「メデューサがしゃべった……?」
その呟きに被さるように、また声がした。
「ろびん!」
「クルルーっ!」
ロビンもまた叫び返すと、鋼のごとき腕の中でめちゃくちゃに暴れた。腕の力は微塵も緩みなどしなかったが、男たちの顔には得体のしれないものにうっかり触れたときの脅えめいた表情さえ浮かんでいた。
「ロビンって、おまえの名前か?」「あれはおまえを呼んでいるのか?」「おまえ、あれと話ができるのか?」
とうとうロビンの感情が爆発した。
「なにが変なの! なにが悪いの! クルルはとっても森に帰りたいんだ。だから僕は連れていきたいんだ。ラルダさんに教えてもらって三人でいこうとしただけなのに、なんで寄ってたかって邪魔するのさ! ひどいや! あんなのひどいやっ!」
涙をぼろぼろ流しながら暴れる少年を、大の男二人はすっかり持て余していた。そのとき背後から、女の声が呼びかけた。
「リチャード、そんなに乱暴にしては話になりませんわよ」
男たちの背後から現れた乙女の豊かな金髪と白い顔は、周囲の闇さえ払うかのようだった。その美貌がにっこり笑った。
「わたくしには話を聞かせてくれますわね? ロビン君」
少年はまさかそれがかの悪名高き魔女であるとは思いもしなければ、頭上で男たちが得もいわれぬ表情の顔を見交わしたのにも全く気づかなかった。
「橋から落ちたメデューサを助けて気持ちを通じさせただけではなく、言葉まで教えたというのか……」
「……驚いたな」「全くだ……」
アーサーも含めた三人の男たちが口々に呟きあう中、ロビンはメアリに縋るようにたずねた。
「ねえ、クルルはどうなるの。放してもらえないの?」
「ホワイトクリフ卿がどう考えるかなのだけれど……」
いい淀んだメアリの口調が、厳しいまなざしのあの青年の顔を呼び起こした。
「さっきのあの人? だめだよ! クルル殺されちゃうよ!」
「とはいっても警備隊の作戦で捕らえたのに違いないしな」
「卿にはなにをいっても聞き入れてくれないだろうし……」
「だからといって、まさか逃がすわけにもいかないし……」
そんな声など届くはずもない彼方では、ゴーレムが悠々と網を漕ぎ手らしき男がいるほうの舟へと積み込んでいた。
「見物人が近づくと危険だから河舟で本部まで運ぶというんだ。あんな無茶をしておいて今更なにをといいたいが……」
アーサーが憤懣やるかたなき面持ちでいうと、網を積んだ舟が岸辺を離れた。だが若きナイトが満足げに頷いたとたん、残った舟へゴーレムが乗り込んだ! たちまち舟は石の足に踏み抜かれゴーレムもろとも大河に沈んだ。
「なにっ!」
四人のスノーレンジャーも驚いたが、彼方の青年の驚きはその比ではなかった。手にした袋を取り落としたのにも気づかずに、彼は河へ駆けていった。その前に走り込んだ警備隊員がなにかを告げるや叫びが彼方から聞こえてきた。
「グレゴリーが縛られていた? では、ゴーレムを動かしていたのは誰なんだ!」
メアリが跳びだし、若きナイトが落とした袋を掴んで戻った。取り出した宝玉の中の光が、中心から移動し始めていた。
「追いますわよ、みんな!」
「そうだ、事件は解決なんかしてないぞ。街を危険から守るのが我らスノーレンジャーの役目だ!」
アーサーはロビンにいたずらっぽくウインクした。
「メデューサの番人が専門ってわけじゃない」
「じゃあ僕もつれてって!」
少年の言葉にリチャードがかぶりを振った。
「だめだ。危険かもしれん」
「でも僕がいっしょなら、みんなが味方だってクルルにも分かるよ。間違って石にされたりしないよ!」
四人は顔を見合わせ、頷きあった。
「じゃあ決まりだ。いくぞ大将、頼りにしてるぜ!」
エリックがロビンを肩車するやいなや、彼らは光の点を追って駆けだした!
後書き
未設定
作者:ふしじろ もひと |
投稿日:2021/10/28 02:17 更新日:2021/10/28 02:17 『『鉄鎖のメデューサ』』の著作権は、すべて作者 ふしじろ もひと様に属します。 |
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