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作品ID:1053
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Verdecken Reich

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前書き・紹介


第1章 第1節 亡霊屋敷の噂

前の話 目次 次の話

1



「そういえば理佳君、今日の新聞見ましたか?」

「うん、『レイヒ・ヒルムフィヒテの亡霊屋敷』のことが一面に出てたね」



 ツヴェルクでも指折りの名家として知られる満上家。

その屋敷の廊下で使用人と思われる少女が、屋敷を訪ねてきた一人の少年に背間話を持ち掛けていた。少女の方は蓬色の髪にブラウンの瞳をしていて、背まで伸びた髪を後ろで三つ編みにしている。理佳と呼ばれた少年は黒髪黒眼で、子供っぽい顔立ちしている。髪型は普通の短髪ストレートだ。



 ツヴェルクの北部に位置する都市・ヒルン。

その都市は、人型をしたこの国土のちょうど頭部にあたる場所にある、まさしくその名の意味するように国の『頭脳』を担っている。

都市は、この都市でも特に教育施設や研究施設の集中しているリンケ・ヒルンフィヒテと、芸術関連の機関や歴史的な旧跡が多いレイヒ・ヒルムフィヒテに分かれている。この満上本家の屋敷もリンケ・ヒルンフィヒテに建存している。



「もう何人も行方不明になってるみたいだね」

「立ち入ったものは誰も戻ってきてないって噂ですよ・・・?」



 入ったが最後、二度と出てられないともっぱらの噂の恐怖の屋敷を思い浮かべ、身を震わせる使用人の少女、蓬。



「それはそうと、今日も識海お嬢様のもとに?」

「うん」



 とある縁が元でこの屋敷の令嬢たちに出会って以来、理佳は頻繁に彼女たちに会いに来るようになったのだが、それはまた別の機会に。

それを聞いた蓬は、「それなら」と顔を綻ばせた。



「今日のこの新聞を識海お嬢様に届けていただけますか?」

「・・・蓬さん、相変わらずまだ識海さんに部屋のことを教えてもらえてないんだね」



 蓬はこの屋敷に仕えてずいぶんになり、屋敷の者からの信頼も厚いのだが、いまだにこの屋敷の長女である識海の部屋がどこにあるのかすら知らないらしい。というのも、識海はこの屋敷の使用人たちに自分の部屋に関する情報を何一つ明かしていないからだ。理佳はいい加減蓬に部屋の位置ぐらいは教えるべきかと思ったが、本人が語らないことを勝手に話すのは憚られるので結局何も言わないことにした。





2



「はいこれ、蓬さんから預かってきたよ」

「恐れ入ります」



 理佳はいつものようにしかる手順を踏み、屋敷のとある場所に隠された一室へと立ち入った。その部屋は本が隙間なく詰め込まれた天井まで届く本棚がずらりとならんだ、さながら書庫のようだった。そんな書庫のような部屋のさらに奥、唯一本棚の置かれていないことでできているスペースで、一人の少女が安楽椅子に座り本を読んでいた。少女は首元辺りまで伸びた深い藍色の髪をしており、目元は少し長めの前髪で隠れてしまっているが、それでも普通に本は読めているようだ。少女・・・識海は部屋に入ってきた理佳に気がつくと、ゆっくりと顔を上げた。その際、静かな青色をした瞳が髪の間から姿を現した。識海は理佳に丁寧に挨拶をし、新聞紙を預かった。



「また『レイヒ・ヒルムフィヒテの亡霊屋敷』で行方不明者ですか」

「もう何人ぐらいなんだろう・・・」



 識海は受け取った新聞の一面を見てしみじみと呟いた。件の亡霊屋敷では以前から行方不明者が多発しており、実際のところ理佳の言うようにもはや何人いなくなってるのか分かったものではなかった。



「それも十分深刻ですが、私としては他に解せないことがありまして・・・」

「・・・『どうしてあの屋敷が取り壊されないか?』ということ?」

「ええ、その通りです」



 識海の疑問の内容を、理佳は少し考えてから答えた。亡霊屋敷はもはや何人かすら分からないほどの行方不明者を出しているにもかかわらず、国や都市からは一度も取り壊し指示が出されていなかった。どう考えても取り壊した方がいいのは明白なので、識海が疑問に思うのは無理もなかった。



「そもそも、あの亡霊屋敷は不可思議な点が多く存在します」



 『レイヒ・ヒルムフィヒテの亡霊屋敷』は約1世紀も前からそこに存在していたという記憶が残っている。しかし、誰があの屋敷を立てたのか、また、誰があの屋敷に住んでいたのかというのはまるで不明なのである。そもそも、約1世紀も前から建っている屋敷が『外観的に見れば』まるで損傷してないのはどういうことなのだろうか。屋敷の内部の関することは当然誰にも分からない。なぜなら、あの屋敷に入ったが最後、誰一人として返ってこなかったのだから。



「・・・。・・・いい機会かもしれませんね」

「どうしたの?」



 識海はしばらく考え込んだ後、何かを決心したように口を開いた。それは・・・。



「件の亡霊屋敷を調査してみましょう」

「えっ!?」



 誰一人帰らないという、『レイヒ・ヒルムフィヒテの亡霊屋敷』を探索するという、とんでもなく恐ろしいものだった。





3



「・・・それで、どうして貴方たちまでついてきてるんですか?」

「識海お嬢様があの恐ろしい『レイヒ・ヒルムフィヒテの亡霊屋敷』に向かわれるというのに、使用人の私が同行しないわけには行きません! それに、理佳君のことも心配ですし」

「私の大事な弟が危険な場所に行こうとしてるんだぞ! 私が同行する理由はそれだけで十分だ!!」



 数時間後、件の亡霊屋敷の前には理佳と識海、そしてなぜか勝手についてきてその理由を意気込んで語っている使用人の蓬ともう一人・・・鮮やかな橙色の背のほうでまとめられた長髪のツインテールを凛となびかせた理佳の姉、瑛真がいた。特に瑛真は右手にもった竹刀を肩にのせ、闘志十分といった感じであった。識海は二人の意気込みに対し、やれやれと嘆息した。



「ところで、お前の妹の双子はどうしたんだ? この亡霊屋敷を探索するならあの二人に力を借りた方がいいと思うんだが」

「此音はなにやら珍しい鉱物を手に入れたようで、下手に声をかけると本題から大きくそれてしまいそうだったので」

「それに恐がりな彼音ちゃんを亡霊屋敷につれてくるなんて酷だよ・・・」

「理佳君、彼音お嬢様への配慮感謝します。理佳君はやっぱり優しい人ですねえ」

「ああ、理佳は昔から優しい子だったからな」

「うう・・・///」



 実は理佳・瑛真の二人と蓬は幼馴染の関係であり、当時人に無関心ながら、なんだかんだ言って瑛真や蓬のことを助けてくれた時のことを思いながら、瑛真と蓬はしみじみと思い馳せていた。



「私としては妹二人が来れない以上、ついていただけるのは理佳さんだけで良かったのですが・・・」

「まあまあ、二人とも強いから頼もしい味方になってくれると思うよ?」

「まあ、貴方がそう言うなら」



 識海が亡霊屋敷を調査すると言い出したときには大層驚いていたが、彼女に同行を求められると、さも同然のように了承した。理佳の中では、彼女がどこかに出向くというのなら自分も当たり前のように同行するというのがすでに当然となりつつあった。また、識海のほうも自分がどこかに出向くなら、理佳には必ずついてきてもらいたいと思っている。だから二人で臨めばどんな困難も乗り越えられると二人は信じている。



「さて、それでは中に入りましょうか」

「うん」

「識海お嬢様と理佳君はこの身に変えても・・・!」

「理佳のことは私が絶対に守ってみせる!!」



 それぞれがその身に覚悟を抱き、そして、『レイヒ・ヒルムフィヒテの亡霊屋敷』の大戸を開け、中に入っていった。

後書き


作者:風太
投稿日:2012/07/19 14:50
更新日:2012/07/19 14:50
『Verdecken Reich』の著作権は、すべて作者 風太様に属します。

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