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作品ID:126
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桜の鬼

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


婚礼間近

前の話 目次 次の話

 着々と咲の婚礼の準備が進む中、それと同時に村人たちは桜火を討つための準備をしていた。

 もうまもなく夜。月が昇る頃、決行する予定になっている。

「この気配隠しの符と、犬を連れて行けば鬼に感づかれなくてすむ」

「犬如きで隠れられるとは……鬼など大した事がないのではないか?」

「いや、私が行った時は気づいていた」

「……大変だな」

「だがやるしかあるまい」

「ああ……」



 そして咲は女たちの手によって婚礼衣装へと着替えさせられていた。白い、白い、純白の着物。それほど重くはないが、動きづらいことに変わりはない。だから咲は好んで動きやすい服を着ていたのだ。

 昨日の夜から沈黙してされるがままになっている咲。多少訝しがったものの、おとなしくしているに越したことはないので放置された。



 そして夜、咲は十六夜の月の元、宴の中心に坐らされていた。隣には夫となるものが座る場所が空いている。



 それまでおとなしくしていた、婚礼衣装の咲がすっくと立ち上がった。

「さ、咲様?」

「お座りになってください!」

「急にどうなされたのですか!」

 周りに座っていた女たちが騒ぎ出す。

「どうされた? ふん、今までおとなしくしていただけでもありがたく思え」

「……どうしたんですか? 私の花嫁」

 いかにもなよっとした男が咲の隣に座ろうとする。

「座るな。失せろ」

 その声とともにその男は吹き飛ばされた。咲が衣装の袖を打ち払ったのだ。勿論そこには、さっき靴の紐を直すふりをして拾っておいた大きな石を忍ばせてある。当たると勿論かなり痛い。

「そこに座っていいのは一人だけだ」



 言い捨てて、着物の裾を翻す。

 山へ向かって走っていくと、後ろから黄龍が追ってきた。

「咲」

「黄龍」

「まずいぞ」

「え?」

「とっくにあいつら桜に向かってる」

「何!」

「急げ。間に合わなくなる」

「わ、わかった!」

 咲は促されて速度を上げる。

 それを見送った黄龍は「頑張れよー」と呟いて、村の方へ歩いていった。勿論、「咲様がいらっしゃられないぞー!」と叫び、撹乱するために。

後書き


作者:久遠
投稿日:2010/01/21 17:16
更新日:2010/01/21 17:16
『桜の鬼』の著作権は、すべて作者 久遠様に属します。

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