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作品ID:1397
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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


第四章「シュバルツェンベルク」:第22話「風呂」

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第4章.第22話「風呂」



 一時間ほどミルコと酒を飲んでから、夕食を買って、屋敷に戻る。

 今日は、屋台で買った料理と酒を出すことにし、凝ったものは作るつもりはない。

 今日のメインイベントは風呂だ。

 今から準備をすれば、夕方には風呂に入ることが出来るだろう。

 ノーラたちには小遣いを渡し、今日と明日は好きにするように言ってあり、予想通り、五人はまだ帰ってきていない。もしかすると夜まで帰ってこないかもしれない。

 俺は風呂に水を張り、外のボイラー部分に薪を置いて、着火(ファイア)の魔法で火を着ける。

 すぐに焚き付け用の細い枝に火が回り、薪にも火が着く。

 どのくらいで風呂が沸くのか判らないが、時々かき混ぜに来るから大丈夫だろう。



(最悪、フレイムランスくらいの高火力の魔法を撃ち込めばすぐに湧くだろう)



 風呂を沸かし始めてから約二時間。



 午後四時頃になり、ノーラたちが帰ってきた。

 五人とも前夜祭を楽しんできた割には、あまり笑顔ではなく、



「どうした? 何かあったのか?」と聞くと、ノーラが



「えっと、娼婦の方を身請けするって仰ってましたけど、どうなりましたか……」



「ああ、そのことか。向こうに断られたよ」



「そうですか。」と五人は急に笑顔になる。



(そうだよな。知らない人が来るっていうのはストレスになるからな)



 五人の前夜祭での話を聞きながら、時々時間を気にしていると、



「ご主人様、時間を気にしているようですけど、何か用事があるのですか?」



とクリスティーネが聞いてくる。



「今、風呂を沸かしているんだ。時々かき混ぜに行くから、時間を気にしていただけだ。ちょっと見てくるわ」



と言って、風呂場に向かう。

 なぜか五人も付いてきており、風呂場を覗いている。



 風呂をかき混ぜ、温度を確認すると、ほぼ適温。

 少し熱めにしておき、水で冷ませばいいので、このまま追い炊きしておく。



「今日の夕食は、屋台で買ってきた料理がある。俺は風呂に入ってから、ゆっくり食べるから、気にせず先に食べてくれ。前夜祭に繰り出すんなら、そのままにしておいてくれてもいい。あとで風呂に入りたいんだったら、湯は抜かずにおいて置くから、好きに入っていいぞ」



と言って、風呂に入る準備をする。



 五人は興味深げにこちらを眺めているが、若い女性に脱衣シーンを見られているのは落ち着かない。



「いつまで見ているつもりだ。俺は風呂に入るんだが。一緒に入るか?」



と冗談で聞いてみると



「「はい!」」と五人が声を揃えて、入ってくる。



(え?! 普通は入ってこないだろ! 五人とも処女っぽいんだが、意外と経験豊かとかなのかな?……こっちの方が恥ずかしいんだけど……)



 俺が服を脱ぎ終わり、浴室に入っていくと、五人も脱衣所で服を脱ぎ始めている。

 さっさと湯船に入りたいため、体を急いで洗う。

 五人は手拭いで体を隠しながら、燭台が五箇所あるだけの薄暗い浴室に入ってきた。

 俺は間違って女風呂に入ってしまったような居た堪れない気持ちになっている。



(しまった。冗談でも言うんじゃなかったよ。折角ゆっくり風呂につかろうと思ったのに、これじゃ気になって落ち着けないよ)



 そうは思いながらも、男の性(さが)でつい五人をチラチラ見てしまう。



 元々、明り取り用に木窓がだけだが、外は既に薄暗くなってきており、外の明るさは入ってこず、浴室内は蝋燭だけがオレンジ色の光を放っている。

 暖色系の薄暗い明かりと湯煙に包まれた中を五人が浴槽に向かってゆっくりと進んでくる。



 ノーラはいつも通り見事な金髪をポニーテールにし、すらりとした長身に引き締まってはいるが十分女らしい体つきで恥ずかしそうに俯きながら、手拭いで胸と下半身を隠している。

 いつものボーイッシュな雰囲気とは異なり、アンジェリークはアスリートのような引き締まった体に意外と大きな胸を手拭いで隠しながらノーラの後ろに隠れている。

 カティアは着やせするタイプなのか、それともここ一ヶ月くらいの食糧事情の改善の結果かはわからないが、第一印象より豊満な感じがする。あまり恥ずかしくないのか、意外と堂々としている。

 クリスティーネは黒い髪をアップでまとめ、きれいなうなじを見せながら、いつも通り天然系の雰囲気でニコニコとこちらに笑顔を見せてくる。俺のほうは笑顔よりグラビアアイドル並のボディの方に気を取られてしまう。

 レーネは姉のノーラと同じきれいな金髪を頭の上で団子状にまとめ、姉よりもふっくらとした感じの体を手拭いで隠している。



(五人ともこうやって見るとなかなかの美少女なんだよな)



 五人には、入浴の仕方を教えてあるので、ゆっくりと浴槽に近づき、それぞれキチンと掛け湯をしてから、手拭いを取って、浴槽に入っていく。

 浴槽自体は七、八人は入れるサイズのものにしたので、窮屈な感じはないが、肌を触れ合う距離にならないよう少しずつ端のほうによって行くため、一人だけ窮屈な格好になっているような気がする。

 気が付くと五人は既に寛いでおり、



「ふ?は?。気持ちいい」



と親父臭く、アンジェリークが大きく息を吐き、他の五人も俺の事を無視して、楽しそうに話し始めている。



「クリスまた大きくなったんじゃないの」



とカティアがクリスティーネにちょっかいを出している。



「カティアだって、最近随分大きくなったんじゃないの。ほら、こんなに」



「きゃ!」



とカティアの悲鳴が聞こえ、アンジェリークが何かをしているようだ。



(俺の事を無視するなよ。折角のノンビリゆったりタイムが……)



 俺は反対を向いているので、何をしているのか見えていないが、想像はつく。いい加減、のぼせそうなので、体を洗いたいが、



(さすがにシャワーは作れなかったから、湯は浴槽にしかないんだよな。きっちり体を洗いたいんだが、この浴槽に向かって体を洗う勇気はないよな)



 浴室の備品は、風呂用の椅子と洗面器代わりの木桶があるが、浴槽の湯を汲むため、浴槽に向かって座らなければならない。

 どうしようかと考えていると、背中にやわらかいものが当たってきた。



「ご主人様、お風呂は気持ちいいですね。最初にこのお風呂を見たときは何でこんな大きなものがいるのかなと思いましたけど、今なら良く判ります」



とノーラが俺の背中にもたれかかりながら、少し上ずった声で話して掛けてくる。



(胸が背中に当たっているんだが、気付いてないのか?)



 その横でレーネもとタイガに近づいていき、



「ご主人様って、昔からお風呂好きなんですか?お風呂なんて王族か大貴族の方しか入らないって思ってました」



 正面に回りながら、話しかけてくる。

 蝋燭五本の薄暗い明かりの中とは言え、できるだけ明るくなるよう大き目の蝋燭にしていることから、湯から出ている部分ははっきりと見え、湯船の中もチラチラと揺らめく光の中で時々はっきり見えるときがある。



(レーネ、無防備すぎ。見えてるから!)



 背中からノーラの抱きつき攻撃、前からレーネのチラリ攻撃を受け、午前中エルナを抱いたにもかかわらず、俺は既に臨戦状態になっている。



(ここでやりたい放題できたら、まさに酒池肉林の世界なんだろうけど、俺みたいにもてなかった奴が急にこういう状況になってもどうしたらいいか、わかんないんだよな……五人じゃなくて一人ならもう少し状況が変わったかもしれないけど……)



 ノーラとレーネのこともあり、完全にのぼせそうだったので、湯船からそっと立ち上る。

 俺の下半身が見えたのか、レーネとノーラは赤くなり、目で何やらと会話している。



 俺は頭を冷やすため、温度調整用の水を頭から被る。冬の山水なので身が切れそうになるほどの冷たさだが、その冷たさが俺に冷静さを取り戻してくれた。

 顔を真っ赤にしたノーラとレーネの姉妹に



「顔が赤いぞ。あんまり入っているとのぼせるから、適当なところで体を洗って出た方がいいぞ」



と言って、湯船に背を向け、自分の体を洗い始める。カティアが、



「背中洗いにくそうだから、手伝うわ」



と言って、背中を流してくれる。



(人に背中を流してもらうなんて、初めてだ。背中を流すのって気持ちいいんだな)



 十分に背中を流してもらったので、



「カティア、ありがと、もういいよ」



「じゃあ、次は私が頭を洗ってあげますね」



とクリスティーネが俺の前に立つ。



「えっ!」



と驚いていると、クリスティーネの大胆さに触発されたのか、アンジェリーク、ノーラ、レーネの三人も



「「私もお手伝いします!」



と裸のまま俺の周りに寄ってきて、俺の体を洗いだす。



 女子五人によってたかって洗われ、頭がトリップした状態で風呂を出ていた。

 五人は、まだきゃあきゃあ言いながら、風呂に入っているので、風呂のボイラーの火の始末をしてから、俺は一人で食堂にビールを飲みに行く。





 その頃、風呂場では、ノーラがクリスティーネに



「もう、クリスったら大胆なんだから。裸でご主人様の前に立つなんて、びっくりしたわよ。」



「だって、ご主人様に見られても別にいいし、カティアがお背中流してるのみたら、私も何かやりたくなっちゃって……」



「そうそう、ノーラだって、ご主人様の背中にわざと胸を当てていたんじゃないの」



とアンジェリーク。



「いつも恥ずかしがって、話もあんまりできないから、今日はがんばろって思って……それに例の娼婦の話もあったし……」



とノーラ達は娼婦の話をかなり引きずっているようだ。



 タイガがエルナのところにいっていた話は、ギルドで聞けば、だれでも教えてくれそうなくらい有名な話になっていたが、ノーラ達はタイガのことを聞くのが恥ずかしくて、真相を聞いていない。



「そうね、ご主人様に私達をもっと見てもらいたいし、もっと積極的に行ってもいいかも……」



 風呂場には賑やかに彼女たちの声が響いていた。





 俺が風呂から出て三十分後、ノーラ達が風呂から上がってきた。

 皆、いつもの冒険者スタイルではなく、普通の町娘のような毛織のロングのチュニックを着ているため、とても新鮮だ。

 湯冷めしないように暖炉に火を入れているが、広いリビングでは暖炉の周りしか暖かくない。



「湯冷めするから、もっと暖炉の近くに来て」



と何気なく言ったら、五人は嬉しそうに椅子を持って俺の周りに集まってきた。



 外に出して冷やしておいたビールを飲みながら、暖炉の番をしていた俺だが、五人の少女に囲まれ、風呂上がりの女性のいい匂いにくらくらしてしまう。



(こいつら、こんなに女っぽかったけ? 全員ストライクゾーンに入っちまったよ)



 風呂での出来事といつもと違うギャップに混乱しながら、外にビールを取りに行く。



(少し頭を冷やさないと、とんでもないことをしそうだ。う?ん、してもいいのかもしれないけど、なんか主導権を取られたままっていうのもご主人様の威厳に関わるような……)



 先に飲んでいたビールの酔いもあったのか、そんなことを考えながら部屋に戻ってきた。



 そして、ビールと屋台料理を暖炉の近くのテーブルに並べ、全員で食べ始め、結局、夜中まで盛り上がっていた。



 俺は今日初めて五人と打ち解けられたような気がしていた。



後書き


作者:狩坂 東風
投稿日:2013/01/03 14:31
更新日:2013/01/03 14:31
『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。

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