作品ID:1698
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人魚姫のお伽話
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
「きらきらひかる」
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「きーらきらひーかる。ゆーびわーがひーかる……」
適当なメロディに童謡のような幼い歌詞を口ずさみながら、優卵は一人訪れた墓地で、せっせと濡らした雑巾で墓石を磨いていた。
誰より、一番に報告したかった。けれど、その前に、くすみがかった墓石をピカピカにしてあげたかった。
奮闘の甲斐有って、墓石はきらめきを取り戻し、その墓石の前に買ってきた花束を広げた優卵は、色鮮やかで控えめな花で墓石を飾る。
水を花の花瓶に注ぎ入れ、何所からどう見ても綺麗な状態に仕上げ終わってから、優卵は墓石の前に腰掛けた。
「……お祖父ちゃん、見える? 優卵が薬指にはめてる指輪、ちゃんと見えてる? 私が笑ってるの、見てる?」
優卵の言葉に返答は返らない。それでも気にせず、優卵は続ける。
「お祖父ちゃん、知ってたのね。私の気持ちとあの子達のこと。だって、最期の言葉、それなら納得がいく。あのときは解らなかったの」
返らない答えに優卵は言葉を紡ぐ。
「ねぇ、お祖父ちゃん、お祖父ちゃんの口癖、私、ちゃんと覚えてるのよ。いっつも訊いてくれたでしょ?
『いいのかい、優卵。優卵はそれでいいのかい』って…………。ねぇ、お祖父ちゃん、いいわけがなかったの。だけど、あの頃の優卵には何も言えなかった」
静かな墓地の青い空に、一羽の鳥が羽ばたいた。
「でもね、お祖父ちゃん。私にこの指輪をくれた人はね、いいわけないならよくないって言っていいんだって、教えてくれたのよ。優等生の言葉じゃなくても、それで構わないんだって。
だからね、お祖父ちゃん。最期まで心配させたけど、もう大丈夫だから。私、もう、自分にとって譲れないものは二度と譲らないから……」
優卵は笑う。
「報告が遅くなってごめんなさい。お祖父ちゃん、私、プロポーズされたの。長谷川の籍から抜けて、彼の籍に。新しい家族を作るのよ、見守っててね」
――――きらきら煌めきを放つリングを、そっと、墓石の前に一度だけ置いて…………。優卵は再びリングを薬指へと戻した。
「……誰より先に、お祖父ちゃんに一番に報告してきたって、貴悠さんに言ったら、笑うかしら?」
自由な鳥が羽ばたいた青空の景色に、優卵の悪戯っぽい微笑みと声が響いた。
適当なメロディに童謡のような幼い歌詞を口ずさみながら、優卵は一人訪れた墓地で、せっせと濡らした雑巾で墓石を磨いていた。
誰より、一番に報告したかった。けれど、その前に、くすみがかった墓石をピカピカにしてあげたかった。
奮闘の甲斐有って、墓石はきらめきを取り戻し、その墓石の前に買ってきた花束を広げた優卵は、色鮮やかで控えめな花で墓石を飾る。
水を花の花瓶に注ぎ入れ、何所からどう見ても綺麗な状態に仕上げ終わってから、優卵は墓石の前に腰掛けた。
「……お祖父ちゃん、見える? 優卵が薬指にはめてる指輪、ちゃんと見えてる? 私が笑ってるの、見てる?」
優卵の言葉に返答は返らない。それでも気にせず、優卵は続ける。
「お祖父ちゃん、知ってたのね。私の気持ちとあの子達のこと。だって、最期の言葉、それなら納得がいく。あのときは解らなかったの」
返らない答えに優卵は言葉を紡ぐ。
「ねぇ、お祖父ちゃん、お祖父ちゃんの口癖、私、ちゃんと覚えてるのよ。いっつも訊いてくれたでしょ?
『いいのかい、優卵。優卵はそれでいいのかい』って…………。ねぇ、お祖父ちゃん、いいわけがなかったの。だけど、あの頃の優卵には何も言えなかった」
静かな墓地の青い空に、一羽の鳥が羽ばたいた。
「でもね、お祖父ちゃん。私にこの指輪をくれた人はね、いいわけないならよくないって言っていいんだって、教えてくれたのよ。優等生の言葉じゃなくても、それで構わないんだって。
だからね、お祖父ちゃん。最期まで心配させたけど、もう大丈夫だから。私、もう、自分にとって譲れないものは二度と譲らないから……」
優卵は笑う。
「報告が遅くなってごめんなさい。お祖父ちゃん、私、プロポーズされたの。長谷川の籍から抜けて、彼の籍に。新しい家族を作るのよ、見守っててね」
――――きらきら煌めきを放つリングを、そっと、墓石の前に一度だけ置いて…………。優卵は再びリングを薬指へと戻した。
「……誰より先に、お祖父ちゃんに一番に報告してきたって、貴悠さんに言ったら、笑うかしら?」
自由な鳥が羽ばたいた青空の景色に、優卵の悪戯っぽい微笑みと声が響いた。
後書き
作者:未彩 |
投稿日:2016/01/19 12:55 更新日:2016/01/19 12:55 『人魚姫のお伽話』の著作権は、すべて作者 未彩様に属します。 |
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