小説を「読む」「書く」「学ぶ」なら

創作は力なり(ロンバルディア大公国)


小説投稿室

小説鍛錬室へ

小説情報へ
作品ID:1897
「Dear」へ

あなたの読了ステータス

(読了ボタン正常)一般ユーザと認識
「Dear」を読み始めました。

読了ステータス(人数)

読了(83)・読中(1)・読止(0)・一般PV数(276)

読了した住民(一般ユーザは含まれません)


Dear

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介

未設定


お返事

前の話 目次 次の話

間宮 光介様へ

恥ずかしくて教室に伺えず、申し訳ございません。
時折、貴方とは廊下ですれ違っているので、
改めて手紙をやり取りするとなると少しばかり、いえ大いに緊張します。
私の字が震えていないといいのですが。貴方のことは覚えています。忘れようがありません。
これでも私は、記憶力は良い方なのです。あの日は本当に風が心地よい、清涼な一日でした。
だから、奥手な私も、今日ばかりは攻めの姿勢でいこうと頑張ってみたのです。

たまたま貴方は私を見て、私はたまたまを装って貴方の方を見た。
貴方はどうやら、まんまと私の策略に落ちてしまったようですね。やりました。

貴方と出会った時、桜が散り始めるような季節でした。覚えていらっしゃるでしょうか。
私は、大柄で、強面と噂されたあなたを入学式の時に見て、
きっと貴方を好きになる女は、私だけではないだろうと、そう思ったのです。
貴方の容姿は貴方の思っているほど攻撃的ではありません。
貴方はただ、他者を寄せ付けないほどにまで、格好良いだけなのですから。
むしろ、良い意味で印象的です。
私としては、貴方に近づく虫が少ないようで助かりました。
貴方はきっと、人よりも表情がおもてに出にくいだけでしょう。
それでも、意志の強い鋭い眼差しや、シュッとして尖った顎、健康的に薄く焼けた肌、
通った鼻筋、切れ長の眉、白く輝いた歯。
そして、筋肉質で細く引き締まった貴方の体躯。
これだけ並べて気づきませんか? 
貴方は自分の格好良さに無頓着過ぎていけません。
私をみつめ、頬を赤らめ呆けていた貴方は凄く愛らしかった。大切に記憶に保存します。
私は、その時になってようやく、貴方に見つめられた私なら、と。
貴方に拒絶されることはないという、確固たる自信を持つことが出来たのです。

私の場合、一目惚れではありませんでした。
桜のあの日から、ずっと、貴方のことを想っていましたから。
部活動に真摯な姿勢で挑んでいた貴方、口下手で不器用で、誰かに誤解されやすくて。
それでいてどこまでも優しい貴方。
いっそのこと、野球部のマネージャーにでもなればよかった。
でも、私の事情でなることが出来なかった。
彼女たちが酷く羨ましかったのを記憶しています。
そのどれもが思い返されるたび、貴方にはとても吊り合わないと幾度も思いました。
だから、貴方に好かれていると分かるまで、私は想いを伝える勇気を持てぬままでした。

そんな貴方が、私に思いを寄せているのだと、私に恋をしたのだと。
そうラブレターに書いてくださったときの私の心を、……ほんの一時で構いません。
想像してみてくださいませんか。

私は、生まれて初めて、嬉しさのあまり涙を零しました。
部屋の中で、一人、込み上げる感動と温かい涙で体を震わせて嗚咽しました。
自室に両親がとんでくるほどの、大泣きでした。
お恥ずかしいことですが、
私は、この絶頂の心を抱いて、そのとき限り死んでしまっても良いとすら思えたのです。
貴方と歩むこれからの方が、よっぽど素晴らしいはずなのに。

私の頭は、決して治らない病を抱えています。
私の頭の中には、生まれつき、ゴルフボール程の腫瘍があるのです。
爆弾よりも強力です。
いつか、貴方と共に生きる未来があったのだとしても、きっと私は貴方よりも早く逝く。
貴方との子供は、私のこの体が滅ぶとしても必ず産むでしょう。
貴方なら止めてくれるかもしれません。
でも、そうなったとしたら、私だって一生に一度くらい、貴方にわがままをしてみたい。

そんな、私でも好いてくれるというのなら。
それを覚悟で、この私の傍にいてくれるというのなら、私はずっとあなたと生きていたい。
そう、強く望みます。今、貴方を光介さんとお呼びします。

光介さん、私と共に貴方は生きる覚悟がありますか。
黄昏のようにすぐに消える、
私という重りを背負って生きる覚悟が、貴方にはありますか。

これは文才のない私が、涙を拭いながらしたためたものです。
ところどころの染み汚れは、愛嬌の一部です。お気になさらぬよう。
そして、もし、最後まで読み終えたのなら、
その足で私の教室までいらしてください。
ご自宅か学校ではないどこか別の場所で読まれたのなら、
その翌日にでも、いらしてください。

形式上ですが、返答はいつでも構いません、と一応書いておきます。
ですが、欲を言えば、明後日のお昼休みには間に合って欲しいです。
貴方と、貴方の恋人として一緒に昼食をとりたいので。
放課後、貴方をお待ちしております。


三年四組 光木 宏香

後書き

未設定


作者:灰縞 凪
投稿日:2017/01/08 00:56
更新日:2017/07/14 09:23
『Dear』の著作権は、すべて作者 灰縞 凪様に属します。

前の話 目次 次の話

作品ID:1897
「Dear」へ

読了ボタン


↑読み終えた場合はクリック!
button design:白銀さん Thanks!
※β版(試用版)の機能のため、表示や動作が変更になる場合があります。
ADMIN
MENU
ホームへ
公国案内
掲示板へ
リンクへ

【小説関連メニュー】
小説講座
小説コラム
小説鍛錬室
小説投稿室
(連載可)
住民票一覧

【その他メニュー】
運営方針・規約等
旅立ちの間
お問い合わせ
(※上の掲示板にてご連絡願います。)


リンク共有お願いします!

かんたん相互リンク
ID
PASS
入力情報保存

新規登録


IE7.0 firefox3.5 safari4.0 google chorme3.0 上記ブラウザで動作確認済み 無料レンタル掲示板ブログ無料作成携帯アクセス解析無料CMS