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作品ID:604
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悲しい現実

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中

前書き・紹介


一話 始まりは些細なこと

目次 次の話





「いいですか?冷静に聞いて下さいね。煉さん、貴方は、特定不能、発達機能障害、です」



 最初、医者の言った言葉を少女は理解できなかった。



 ……え?



 何?



 何なの?



 彼女は頭が真っ白になった。



 特定不能……?何?長すぎて分かんないよ。



 それが正直な少女の感想だった。



 実際周りからすれば少女は医者の顔を見たまま呆けていた。



「煉?煉!どうしたの!ねえ!」



 母の呼びかける声すら少女の耳には届かない。



「お母さん。特定不能…何とかって、何?」



「煉…。貴方、今のお話聞いてなかったの!?」



「難しすぎて分かんないよ」



「煉…」



 母の顔に絶望が広がった。



「煉さん、少し、お母さんとお話があるから。少し、外で待っててもらえるかな?」



「はい…」



 少女は気付かなかった。



 医者の話し方が、幼い子供に話しかける様に変化していたことを。



 これが、事の始まり。



 彼女の、人生を、大きく変えた。







 



 その前に、彼女がどういった少女なのか、説明しておこう。



 彼女の名前は岡本煉。



 その辺にいる、普通の中学生だ。



 性格は至って大人しく、優しい。



 若干物覚えが悪く、ぼ?っとしたこと以外、ごくごく普通の中学生。



 しかし、周りはそうは見てなかった。



 何をさせても満足な結果を出せず。



 何をしても皆の足手まとい。



 煉自身は何事も必死でやった。



 人一倍努力した。



 でも、実らない。



 何をしてもいつも駄目。



 何時からか、クラスの皆が彼女と付き合いをやめ、彼女は孤立していた。



 何が悪いのか?何をどう改善すればいいのか?



 煉は教えて欲しかった。自分じゃいくら考えても分からない。



 しかし誰も教えてはくれない。



 何で?



 どうして?



 私が悪いの?私が何を皆にしたの?



 私がのろまだから?へたくそだから?



 分かんない、分かんないよ!!



 そもそも彼女、は周りに頼る方法を知らなかった。



 逃げる方法も知らなかった。



 だから、いとも簡単に壊れた。



 まるで、水に入った機械のように。



 本当に簡単に壊れた。



 何をしても無気力、無関心。



 何を言っても無視。



 何を見せても無感動。



 ただ、虚ろな目で『何か』を見つめるだけ。



 何時からか、笑うことも、怒ることも、悲しむことも忘れてしまった。



 喋らない、笑わない。



 それは生きる屍と言っても過言ではない。



 母は抵抗もしない彼女を連れ、メンタルクリニックに行った。



 そして、診断された結果が。



『特定不能発達機能障害』



 である。



 一般にはあまり知られていないこの病気。



 簡単に、差別的に言うなら障害者だ。



 本当は沢山いると言われているらしいが、健常者とあまり差がないため、知られ難い。



 自閉症などとは違い、あらゆる障害を少しずつ含むため、人によって障害の度合いが違う。



 彼女の場合、精神の発達が実年齢の3分の2程度になっていること。



 主な症状はそれだけだ。



 だからといって会話が出来ない訳でもないし、突然暴れだす訳でもない。



 普通に生活もできる、倫理観もしっかりしている。



 ただ、精神的にかなり危ない状況だった。



 医者は、彼女に軽い抗不安剤、精神安定剤を処方した。



 彼女は、それを興味のない物を受け取るかのように貰った。



 だが、問題はそれだけではなかった。



 障害が見つかった以上、今のクラスに居る訳にもいかない。



 母の行動は実に迅速だった。



 学校に連絡し、彼女のクラスを一般から特別に移動させた。



 更に役場や色々な場所に行き、療育手帳なる物を発行してもらった。



 これは障害者が持つ、言ってみれば身分証明書のような物だ。



 それを母は彼女に渡し、絶対に無くすなと強く言った後、学校に一緒に行った。



 その特別クラスの少年少女たちを、観察するために。



 そしてその時、岡本煉の人生が大きく変わった。

 



後書き


作者:如月天
投稿日:2011/02/11 13:51
更新日:2011/02/11 13:51
『悲しい現実』の著作権は、すべて作者 如月天様に属します。

目次 次の話

作品ID:604
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