作品ID:615
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White×Black=Glay?
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中
前書き・紹介
White×Black=Glay? ?7色目?
前の話 | 目次 | 次の話 |
「……アンタ、誰?」
永遠に続くかと思えるほどの、森の中。
鋼夜 春袈は、手にした書類を力の限り、握り締めた。
チームを脱退してから、早3日。
代理として、桃風 羽夜華、草花 舞葉を置く事で決定した。
自分は、一時的に自由の身になり、ウォークマンの手がかりを調べるために動くはずだった。
なのに。
「ここ、何処」
地図を握り締め、書類を握り締め、春袈は歯を噛んだ。
「あっれー? こんな山奥に、誰かなぁー?」
甲高い声に振り向くと、ロッドと思える杖を持った少女がカゴを背負って仁王立ちしている。
「いや、あんた、誰?」
春袈の言葉にも、少女は無視して、
「むー。他人が入ってきたら、お仕置きするようにお師匠様に言われてるんですが……まあ、事情を聞きましょうか。あなた、誰ですか? どこから来ましたか?」
「……私は、鋼夜春袈。情報都市から来た」
「おぉ。NEVの鋼夜春袈さんでしたか! 情報都市……ずいぶんと生ぬるい場所から来たんですねー」
いきなり失礼な言葉を浴びせられたが、そこはあえてスルーする。
「NEVの関係者?」
「うーん。あたってるような、あたってないような。中間地点ですねー、ニャハハ」
口を開けて笑う少女に、溜息をつくと、怒られた。
「何も、溜息吐くこと、ないんじゃないですかー?」
「ごめんね、でも中間地点、なんて中途半端な答えを出されたこと、なかったから」
「……まあ、確かにそうでしょうね。NEVは必ず『はい』『いいえ』で答えを出しますから」
中間地点なんて、答えは聞かないでしょう。そう、少女は苦笑いした。
「じゃあ、貴女が好きそうな答えで答えましょうね。私は、NEVであったお師匠様のお弟子さんでしたので、NEVではありません。ニャハハ」
「お師匠様?」
「……今まで、お世話になりました。……もう、居ませんけど」
俯く少女に、見覚えがある。
確か、あれは、とある事件の真っ最中で……。
燃え盛る炎のなか、頭を抱えて座り込んでいた、まだ3歳ぐらいと思える少女。
その少女と、今目の前に居る少女が、怖いぐらい重なる。
「まさか、セヴィア・フォレッドさん?」
「……お母さんを知ってるんですか?」
「お母さん?」
「はい。そういえば、名乗ってませんでしたね。私は、お師匠様の弟子であり、あの原因不明のガス爆発事故で、たった1人で生き残ったセヴィア・フォレッドの1人娘、ハナキ・オークスです」
「セヴィア・フォレッドには、子供が居たのか……」
「はい。といっても、もう母も居ませんが」
「……」
「母は、お師匠様を護り続け、亡くなりました。だから、母の遺品も何もかも、お師匠様と一緒においてあげてます」
「……母親は、何を?」
「いわゆる、魔法師です。魔法使い、ともいいますか。魔法という幻想的な力を使い、魔法という力に魅せられ、魔法で亡くなる。
……母は、最期まで生粋の魔法師でした」
「じゃあ、セヴィア・フォレッドって、魔法師、セヴィア・オークス?」
「そうですが、何か?」
「キミも、何かやってるのか?」
「……母の影響、というのもありますが、私も魔法師を目指しています」
「魔法師、か」
「それが?」
「いや。ただ、ちょっとね。1人思い出しただけだ」
「貴女は、NEVの関係者か、と私に問いましたね」
「その問い、今は何の意味も……」
「母からの伝言です」
「え?」
いきなりの伝言に驚くが、そんな暇はない。すでに少女は伝言を開始している。
「NEVの獅子召喚術を止めて、獅子を奪還してください。そうしないと」
「しないと?」
「いつか、NEVも何もかもなくなってしまう」
ずいぶんと……規模のでかい話だ。なぜそんなことを私に伝えようとした? しかも、私は少女、ハナキの母親、セヴィアとはガス爆発事故での出会いだけだ。特に接触したことはない。なのに……。
「なぜ、私に?」
「貴女が、唯一の探索者だから」
「探索、者?」
聞きなれない単語。
「いつか、NEVで生まれたウォークマンの秘密を探し始める人が現れる、と母はいっていました。そしてその人は、いずれNEVを離れるだろうと」
「だから、私だと?」
「はい。じゃないと、こんなの伝えませんよ」
それは、嘘じゃないだろう。大体、かつてNEVに所属し、規模の大きな戦闘にも身を躍らせたこともある自分でさえ、その伝言は嘘かと思ったほどだ。
一般人なら、まず鼻で笑う。嘲笑するだろう。
「しかし、NEVで生まれた、というのはどういうことだ? ウォークマンは、私の知人が母親から受け取ったと言っていたが」
「桐生刹那と桐生ナツメですね。確かに、桐生刹那は桐生ナツメからウォークマンを受け取りました。しかし、桐生ナツメはNEVから受け取ったという噂が流れました。そしてそれが」
「本当の事だと、知ったわけか」
「はい。ですが、情報源は聞かないでください。NEVでもトップシークレットに分類されることですから」
「分かっている。ただでさえ、あのウォークマンに関しては、NEVの情報網を潜りぬけて探索するしかないほど、厳しい管理下にあるというのに」
「ウォークマン、本来は音楽機器でしかないその機械に、記憶能力が加わったと知ったとき、NEVが関わっていると知りました」
「ウォークマンには、天使の力が入っているというが」
「そうです。ただ、今はまだその先は、私の口からは言えません。そこから先は、会うべき人物に会ってからですよ」
少女は、着ているレザージャケットのポケットから、小さな紙をとりだし、春袈に渡す。
「私の連絡先です。ただ、それはお仕事用なので、なかなか出れないときもありますが……プライベートは教えれないので。こちら側の理由で」
「初対面の人物に、連絡先を教えるのか、キミは」
「貴女だからこそ、ですよ。誰でも教えてるわけじゃないですよ。当然じゃないですか」
「……分かった。気づいた事や、疑問に思ったことがあったら、連絡するよ」
「それで構いません」
少し、シワになった書類を見直し、地図を見直し、春袈は森の出口を聞く。
「この森の出口ってどこ?」
「それならば、案内します」
即答。
それにぎこちない動きながらも、頷き、さくさく歩くハナキの後を追う。
眩しいぐらいの日の光。
岩肌が見え、整備されていない砂利道、というよりも山道に出た春袈は、ハナキと別れた。
バランスをとりづらく、時々転びそうになるが、それを運動神経をフル活用して、なんとか地面と激突だけは避けた。
そして、そんな山道を抜けた先には、今までの山道など嘘のように、文明が広がる都市に出た。
街と山道を繋ぐ、県境に看板が立っており、それを覗き込む。
(ここが、幻想都市……)
魔法使いを中心とした世界が広がる、此処、幻想都市にはチームのメンバーこそ居ないものの、ここでは魔法使いという人間とは違う、人種からも情報を得られる。
それを考え、春袈は此処にやってきたのだ。
(にしても、本当、奇抜というかなんというか……魔法使いって、やっぱり人間とは違うんだな)
魔法使い、別称、魔法師。しかし、一般的に言うのは、前者である。
人間とは違う人種である、この魔法使い達は、基本的に危険な生命体として、隔離される。
だが、何事にも例外はあるもので。
自国での基準により、危険ではないと判断された魔法使い達は、こうして国の管理下にある都市でしか生活できないという鎖さえはあるが、都市内であれば自由な生活を約束されている。
そんな、魔法使い達がひしめく幻想都市で、絶対にウォークマンの手がかりを見つけると、改めて気をひきしめた、とき。
「あの?。ウチの弟、知りません?」
ゆったりとした、拘束具らしきものも見当たらない、民族衣装のようなものを着た1人の女性が、春袈の後ろから声をかけてきた。
女性の名を、春袈はすぐに思い出した。
「夏原、美佳?」
その女性は、自分の同僚の姉であり、自分がお世話になった教官でもあった人であり。
自分が、一度は憎い、と心から思った女性でもある――。
永遠に続くかと思えるほどの、森の中。
鋼夜 春袈は、手にした書類を力の限り、握り締めた。
チームを脱退してから、早3日。
代理として、桃風 羽夜華、草花 舞葉を置く事で決定した。
自分は、一時的に自由の身になり、ウォークマンの手がかりを調べるために動くはずだった。
なのに。
「ここ、何処」
地図を握り締め、書類を握り締め、春袈は歯を噛んだ。
「あっれー? こんな山奥に、誰かなぁー?」
甲高い声に振り向くと、ロッドと思える杖を持った少女がカゴを背負って仁王立ちしている。
「いや、あんた、誰?」
春袈の言葉にも、少女は無視して、
「むー。他人が入ってきたら、お仕置きするようにお師匠様に言われてるんですが……まあ、事情を聞きましょうか。あなた、誰ですか? どこから来ましたか?」
「……私は、鋼夜春袈。情報都市から来た」
「おぉ。NEVの鋼夜春袈さんでしたか! 情報都市……ずいぶんと生ぬるい場所から来たんですねー」
いきなり失礼な言葉を浴びせられたが、そこはあえてスルーする。
「NEVの関係者?」
「うーん。あたってるような、あたってないような。中間地点ですねー、ニャハハ」
口を開けて笑う少女に、溜息をつくと、怒られた。
「何も、溜息吐くこと、ないんじゃないですかー?」
「ごめんね、でも中間地点、なんて中途半端な答えを出されたこと、なかったから」
「……まあ、確かにそうでしょうね。NEVは必ず『はい』『いいえ』で答えを出しますから」
中間地点なんて、答えは聞かないでしょう。そう、少女は苦笑いした。
「じゃあ、貴女が好きそうな答えで答えましょうね。私は、NEVであったお師匠様のお弟子さんでしたので、NEVではありません。ニャハハ」
「お師匠様?」
「……今まで、お世話になりました。……もう、居ませんけど」
俯く少女に、見覚えがある。
確か、あれは、とある事件の真っ最中で……。
燃え盛る炎のなか、頭を抱えて座り込んでいた、まだ3歳ぐらいと思える少女。
その少女と、今目の前に居る少女が、怖いぐらい重なる。
「まさか、セヴィア・フォレッドさん?」
「……お母さんを知ってるんですか?」
「お母さん?」
「はい。そういえば、名乗ってませんでしたね。私は、お師匠様の弟子であり、あの原因不明のガス爆発事故で、たった1人で生き残ったセヴィア・フォレッドの1人娘、ハナキ・オークスです」
「セヴィア・フォレッドには、子供が居たのか……」
「はい。といっても、もう母も居ませんが」
「……」
「母は、お師匠様を護り続け、亡くなりました。だから、母の遺品も何もかも、お師匠様と一緒においてあげてます」
「……母親は、何を?」
「いわゆる、魔法師です。魔法使い、ともいいますか。魔法という幻想的な力を使い、魔法という力に魅せられ、魔法で亡くなる。
……母は、最期まで生粋の魔法師でした」
「じゃあ、セヴィア・フォレッドって、魔法師、セヴィア・オークス?」
「そうですが、何か?」
「キミも、何かやってるのか?」
「……母の影響、というのもありますが、私も魔法師を目指しています」
「魔法師、か」
「それが?」
「いや。ただ、ちょっとね。1人思い出しただけだ」
「貴女は、NEVの関係者か、と私に問いましたね」
「その問い、今は何の意味も……」
「母からの伝言です」
「え?」
いきなりの伝言に驚くが、そんな暇はない。すでに少女は伝言を開始している。
「NEVの獅子召喚術を止めて、獅子を奪還してください。そうしないと」
「しないと?」
「いつか、NEVも何もかもなくなってしまう」
ずいぶんと……規模のでかい話だ。なぜそんなことを私に伝えようとした? しかも、私は少女、ハナキの母親、セヴィアとはガス爆発事故での出会いだけだ。特に接触したことはない。なのに……。
「なぜ、私に?」
「貴女が、唯一の探索者だから」
「探索、者?」
聞きなれない単語。
「いつか、NEVで生まれたウォークマンの秘密を探し始める人が現れる、と母はいっていました。そしてその人は、いずれNEVを離れるだろうと」
「だから、私だと?」
「はい。じゃないと、こんなの伝えませんよ」
それは、嘘じゃないだろう。大体、かつてNEVに所属し、規模の大きな戦闘にも身を躍らせたこともある自分でさえ、その伝言は嘘かと思ったほどだ。
一般人なら、まず鼻で笑う。嘲笑するだろう。
「しかし、NEVで生まれた、というのはどういうことだ? ウォークマンは、私の知人が母親から受け取ったと言っていたが」
「桐生刹那と桐生ナツメですね。確かに、桐生刹那は桐生ナツメからウォークマンを受け取りました。しかし、桐生ナツメはNEVから受け取ったという噂が流れました。そしてそれが」
「本当の事だと、知ったわけか」
「はい。ですが、情報源は聞かないでください。NEVでもトップシークレットに分類されることですから」
「分かっている。ただでさえ、あのウォークマンに関しては、NEVの情報網を潜りぬけて探索するしかないほど、厳しい管理下にあるというのに」
「ウォークマン、本来は音楽機器でしかないその機械に、記憶能力が加わったと知ったとき、NEVが関わっていると知りました」
「ウォークマンには、天使の力が入っているというが」
「そうです。ただ、今はまだその先は、私の口からは言えません。そこから先は、会うべき人物に会ってからですよ」
少女は、着ているレザージャケットのポケットから、小さな紙をとりだし、春袈に渡す。
「私の連絡先です。ただ、それはお仕事用なので、なかなか出れないときもありますが……プライベートは教えれないので。こちら側の理由で」
「初対面の人物に、連絡先を教えるのか、キミは」
「貴女だからこそ、ですよ。誰でも教えてるわけじゃないですよ。当然じゃないですか」
「……分かった。気づいた事や、疑問に思ったことがあったら、連絡するよ」
「それで構いません」
少し、シワになった書類を見直し、地図を見直し、春袈は森の出口を聞く。
「この森の出口ってどこ?」
「それならば、案内します」
即答。
それにぎこちない動きながらも、頷き、さくさく歩くハナキの後を追う。
眩しいぐらいの日の光。
岩肌が見え、整備されていない砂利道、というよりも山道に出た春袈は、ハナキと別れた。
バランスをとりづらく、時々転びそうになるが、それを運動神経をフル活用して、なんとか地面と激突だけは避けた。
そして、そんな山道を抜けた先には、今までの山道など嘘のように、文明が広がる都市に出た。
街と山道を繋ぐ、県境に看板が立っており、それを覗き込む。
(ここが、幻想都市……)
魔法使いを中心とした世界が広がる、此処、幻想都市にはチームのメンバーこそ居ないものの、ここでは魔法使いという人間とは違う、人種からも情報を得られる。
それを考え、春袈は此処にやってきたのだ。
(にしても、本当、奇抜というかなんというか……魔法使いって、やっぱり人間とは違うんだな)
魔法使い、別称、魔法師。しかし、一般的に言うのは、前者である。
人間とは違う人種である、この魔法使い達は、基本的に危険な生命体として、隔離される。
だが、何事にも例外はあるもので。
自国での基準により、危険ではないと判断された魔法使い達は、こうして国の管理下にある都市でしか生活できないという鎖さえはあるが、都市内であれば自由な生活を約束されている。
そんな、魔法使い達がひしめく幻想都市で、絶対にウォークマンの手がかりを見つけると、改めて気をひきしめた、とき。
「あの?。ウチの弟、知りません?」
ゆったりとした、拘束具らしきものも見当たらない、民族衣装のようなものを着た1人の女性が、春袈の後ろから声をかけてきた。
女性の名を、春袈はすぐに思い出した。
「夏原、美佳?」
その女性は、自分の同僚の姉であり、自分がお世話になった教官でもあった人であり。
自分が、一度は憎い、と心から思った女性でもある――。
後書き
作者:斎藤七南 |
投稿日:2011/02/22 17:51 更新日:2011/02/22 17:51 『White×Black=Glay?』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。 |
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