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作品ID:958
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生死の交わる学校で

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 休載中

前書き・紹介


「悲しい思い出、新たなる一歩」

前の話 目次







「椎名、いるんだろ?」

「……今さら何の用?」

「謝罪だよ。あと詳しい事情説明」

「……何?」

 その日の夜遅く。天は霞夜が寝静まった頃を見計らい、立ち入り禁止の屋上を訪れていた。そこには長い黒髪の人影。椎名だ。天は躊躇いがちに声をかける。

「ごめんな昼間は。ちょっといろいろでさ。もう少し、詳しく説明したいから聞いてほしい」

「……いいわよ」

 椎名は満点の星空を見上げながらそう言った。

「……どこから聞きたい?」

「あんたがどうして霞夜と一緒の病棟にいるか」

「分かった。覚えてる限り説明する」

 椎名のそばに行き、天はゆっくりと、曖昧な記憶を手探りで紡ぎ、言葉にした。

 自分が末期がんであること、もう助かる見込みもなく、延命のためだけにここに戻ってきたこと、健忘症に関してはもう医者も諦めていること、そして霞夜と同じだけがんが進んでいること。その一つ一つ、漏らさずに聞いていた。そして深呼吸して彼女はこう切り出した。

「あんたも、やっぱりもう先が短いのね」

「……あんたも?」

「そう。あたしも先が短いの。病名は、先天性心臓奇形」

「?」

 聞いたことのない病名だった。長年病院に近く生活してる彼ですら分からない病名。椎名はくすり、と微笑する。

「そうでしょうね。世界初の病気だそうよ。稀に見つかる心臓奇形とはレベルが違うらしいわ。そもそも、心臓が左右逆だもの」

「は?」

「生まれつきあたしは心臓が右側にあるのよ。それがあたしの病気。手術も出来ない、どうしようもない病気。成長すればするだけ心臓の負担が増えて、運動も出来なくなる。日常生活すら出来ないことだってあったわ」

「……椎名」

 つまりは先天的奇形のどうしようもない状態。

「あたし、金属アレルギーも持ってるし、血管が脆くて手術しようもんなら傷が塞がらなくて、そっから病原菌入って死にかけたこともあったわ。だから手術も出来ない、治しようがない。あたしは生まれつき長くなかったのよ」

 椎名は悲しそうな顔で夜空を見上げる。椎名にかける声がみつからない。

「あたしね、もうそろそろ限界なんだって。あたしの心臓はあと継続できて半年くらいだって前から医者に言われてるの。だからまぁ、ここにいるんだけどね。しかもあたし精神弱いからメンタルにも行かなくちゃいけないし」

「……椎名」

「だから悲観的になってるわけじゃないわ。小さいころからあんただけを見てきて、あんたしか見えてなかったあたしは、今でもあんたしか見えてない」

「は?」

「あんたの事故の時、あたしも巻き込まれたでしょ。こなゆきも。あたし、あの時の記憶ないのよね。だから、正直何があったか覚えてない」

 椎名は何が言いたい? と天は内心首をかしげる。

「……あたし、最後くらいあんたと一緒にいたいのよ。この意味くらい、分かるでしょ?」

「はい?」

「鈍感ね……まぁ、昔からだけど。いいわ、行動に移してあげる」

 つい、と椎名が動いた。不意打ちに天の反応が遅れる。視界に入る椎名の顔。距離が縮まる。身長の大きい天に、ジャンプしたようだ。

 ガツンッ!!

「痛ぇ!?」

「いたっ」

 結果、お星様が目の前に出来た。俗に言う頭突きに近い顔面同志のぶつかり合い。

「何すんだよ……」

 顔を押さえた天がぼやく。椎名も涙目になりながらも真っ赤な顔でニヤリと笑う。

「ファーストキス、いただきっ!」

「はぁ!?」

 頭突きはフェイク。そのタイミングで唇を合わせることが椎名の目的。痛みで忘れそうになるが、卑怯で弱い自分にはこの方法が一番いい。キスの感触はばっちり覚えた。

「あたしね、あんたが好きよ。前のあんたも、今のあんたも、どっちもね。だから、霞夜にも、こなゆきにも渡すつもりはないわ。正真正銘、最初で最後の恋に命をかける!」

 びしっ、と指さしで声高々と宣言した。半分自棄が混じっている。

「……は?」

「覚えておきなさい天。あんたが何かを忘れたら、あたしが思い出させてあげる。

 あんたが辛かったら、あんたの苦しみをあたしが一緒に背負うわ。

 あんたの痛みも、苦しみも、葛藤も、全部受け止める自信があたしにはある。

 だから、あたしを好きになりなさい!」

「命令系っすか!」

 思わず突っ込んだ。なんていう告白だ。シチュエーションだけなら満点の星空、誰もいない屋上、冷たい風とある意味最高なのに、この一言で全てぶち壊された。

「そうよ命令! 拒否権はなし! いい、この言葉、絶対忘れんじゃないわよ!!」

 それだけ言って椎名は屋上から逃げ出した。天は残され、星空の下こうつぶやいた。

「……告された?」

 そうに決まってんだろこのバカたれ。

後書き


作者:orchestra army
投稿日:2012/01/22 14:08
更新日:2012/01/22 14:08
『生死の交わる学校で』の著作権は、すべて作者 orchestra army様に属します。

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