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作品ID:553
こちらの作品は、「お気軽感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。
文字数約1720文字 読了時間約1分 原稿用紙約3枚
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三本の道
作品紹介
目の前に道があります。
このまま進み続けますか。
道を外れて進みますか。
いっそのこと、来た道を引き返してみますか。
あなたはどの道を選びますか。
選ばなくとも構いません。
それは、あなた自身の選択なのですから。
このまま進み続けますか。
道を外れて進みますか。
いっそのこと、来た道を引き返してみますか。
あなたはどの道を選びますか。
選ばなくとも構いません。
それは、あなた自身の選択なのですから。
一人の男が三本の道の上に佇んでいた。道は虚空に浮いていて、両端は真っ暗闇に満ちていた。下では何かが渦を巻く、轟音が途切れ途切れに聞こえていた。唯一の光源は、男の足元の道がぼんやりと光をはなっているだけだった。
さて、ここに三本の『道』がある。
一つ目の道は、前に伸びている道。
二つ目の道は、両端から飛び降りる道。
三つ目の道は、もと来た道を戻る道。
男は、ひどく歩き疲れていた。ここまで、一体どれほどの距離を歩いてきたかもわからない。
男は、ひどく歩き疲れていた。
「はぁ、……お先真っ暗とはこのことだ。俺は一体どうしたらいいのだ。いつからこの道を歩いてきたのかも忘れてしまった。ここにいると眠気もささず、腹も減らない。それなのにどうしてこんなにも疲れるのだろう」
男は立ち止まってしまった。一度止まった足は、容易には動いてはくれない。膝をついたまま、男は溜息ばかりついていた。
ぼんやりとしているうちに、道の両側の淵から聞こえる轟音が耳に入ってきた。
男は、その暗闇の向こうにこの現状を打破する策を見出した。
男は少し躊躇ったのちに、実行した。
* * *
一人の女が三本の道の上に佇んでいた。道は虚空に浮いていて、両端は真っ暗闇に満ちていた。下では何かが渦を巻く、轟音が途切れ途切れに聞こえていた。唯一の光源は、女の足元の道がぼんやりと光をはなっているだけだった。
さて、ここに三本の『道』がある。
一つ目の道は、前に伸びている道。
二つ目の道は、両端から飛び降りる道。
三つ目の道は、もと来た道を戻る道。
女は、ヒールの踵がすり減るのを気にしていた。服は煌びやかに着飾ってあり、白く美しい指にはゴテゴテした装飾の指輪がはまっていた。
「どうしてあたしがこんな目に合わなきゃいけないのかしら。あたしはたくさんの人に愛されるべき人間なのよ、こんな暗くて辛気臭い場所にいることが許せないわ!」
ぶつくさ言いながらも歩き続けているうちに、あまり歩きなれていなかった女は、何もない道に躓いた。その拍子にヒールの踵は折れてしまった。
「いったいわね! こんな道がいけないのよ! 大事なヒールも役立たずになったじゃないの!」
女は誰もいない周囲にひとしきり怒鳴り散らすと、壊れたヒールを両端の淵に投げ捨てた。ヒールは暗闇の渦に吸い込まれて消えた。
「もう!」
それから女は、また歩き出した。
* * *
一人の少年が三本の道の上に佇んでいた。道は虚空に浮いていて、両端は真っ暗闇に満ちていた。下では何かが渦を巻く、轟音が途切れ途切れに聞こえていた。唯一の光源は、少年の足元の道がぼんやりと光をはなっているだけだった。
さて、ここに三本の『道』がある。
一つ目の道は、前に伸びている道。
二つ目の道は、両端から飛び降りる道。
三つ目の道は、そこで立ち止まる道。
少年の後ろには道がなかった。少年には「戻る道」がなかった。後方の道が途切れていて、彼に戻るすべはなかったのだ。仕方がないので、少年は嫌々歩き始めた。
薄暗くて、どこまでも続く道は、彼を不安にさせ、そして恐怖を増幅させた。仕舞には泣きじゃくり始めた。
「ううう、……うう」
少年はそれでも、足だけは止めてはいけないと歩みは止めなかった。しかし、少年は幼く、心細さだけはどうにもならなかった。やがて彼の足がとまった。
しばらくして泣き止むと、少年は幾分、表情に明るさを取り戻した。目じりには少し涙が残っていた。
少年は上を向いた。いつの日か、父親が口ずさんでいた歌を思い出した。上を向けば、少年の涙は零れることはなかった。
少年は上から、何かが降ってくるのを見つけた。
それは落下する恐怖で気絶した男の姿だった。
男はそのまま落ちていき、少年の立つ道をかすめて、さらに下へと落ちていった。
少年はそのあと降ってきた赤い靴のようなものを見送って、また歩き出した。
前から、裸足の女が歩いて来るのが見えた。
さて、ここに三本の『道』がある。
一つ目の道は、前に伸びている道。
二つ目の道は、両端から飛び降りる道。
三つ目の道は、もと来た道を戻る道。
男は、ひどく歩き疲れていた。ここまで、一体どれほどの距離を歩いてきたかもわからない。
男は、ひどく歩き疲れていた。
「はぁ、……お先真っ暗とはこのことだ。俺は一体どうしたらいいのだ。いつからこの道を歩いてきたのかも忘れてしまった。ここにいると眠気もささず、腹も減らない。それなのにどうしてこんなにも疲れるのだろう」
男は立ち止まってしまった。一度止まった足は、容易には動いてはくれない。膝をついたまま、男は溜息ばかりついていた。
ぼんやりとしているうちに、道の両側の淵から聞こえる轟音が耳に入ってきた。
男は、その暗闇の向こうにこの現状を打破する策を見出した。
男は少し躊躇ったのちに、実行した。
* * *
一人の女が三本の道の上に佇んでいた。道は虚空に浮いていて、両端は真っ暗闇に満ちていた。下では何かが渦を巻く、轟音が途切れ途切れに聞こえていた。唯一の光源は、女の足元の道がぼんやりと光をはなっているだけだった。
さて、ここに三本の『道』がある。
一つ目の道は、前に伸びている道。
二つ目の道は、両端から飛び降りる道。
三つ目の道は、もと来た道を戻る道。
女は、ヒールの踵がすり減るのを気にしていた。服は煌びやかに着飾ってあり、白く美しい指にはゴテゴテした装飾の指輪がはまっていた。
「どうしてあたしがこんな目に合わなきゃいけないのかしら。あたしはたくさんの人に愛されるべき人間なのよ、こんな暗くて辛気臭い場所にいることが許せないわ!」
ぶつくさ言いながらも歩き続けているうちに、あまり歩きなれていなかった女は、何もない道に躓いた。その拍子にヒールの踵は折れてしまった。
「いったいわね! こんな道がいけないのよ! 大事なヒールも役立たずになったじゃないの!」
女は誰もいない周囲にひとしきり怒鳴り散らすと、壊れたヒールを両端の淵に投げ捨てた。ヒールは暗闇の渦に吸い込まれて消えた。
「もう!」
それから女は、また歩き出した。
* * *
一人の少年が三本の道の上に佇んでいた。道は虚空に浮いていて、両端は真っ暗闇に満ちていた。下では何かが渦を巻く、轟音が途切れ途切れに聞こえていた。唯一の光源は、少年の足元の道がぼんやりと光をはなっているだけだった。
さて、ここに三本の『道』がある。
一つ目の道は、前に伸びている道。
二つ目の道は、両端から飛び降りる道。
三つ目の道は、そこで立ち止まる道。
少年の後ろには道がなかった。少年には「戻る道」がなかった。後方の道が途切れていて、彼に戻るすべはなかったのだ。仕方がないので、少年は嫌々歩き始めた。
薄暗くて、どこまでも続く道は、彼を不安にさせ、そして恐怖を増幅させた。仕舞には泣きじゃくり始めた。
「ううう、……うう」
少年はそれでも、足だけは止めてはいけないと歩みは止めなかった。しかし、少年は幼く、心細さだけはどうにもならなかった。やがて彼の足がとまった。
しばらくして泣き止むと、少年は幾分、表情に明るさを取り戻した。目じりには少し涙が残っていた。
少年は上を向いた。いつの日か、父親が口ずさんでいた歌を思い出した。上を向けば、少年の涙は零れることはなかった。
少年は上から、何かが降ってくるのを見つけた。
それは落下する恐怖で気絶した男の姿だった。
男はそのまま落ちていき、少年の立つ道をかすめて、さらに下へと落ちていった。
少年はそのあと降ってきた赤い靴のようなものを見送って、また歩き出した。
前から、裸足の女が歩いて来るのが見えた。
後書き
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