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作品ID:585
こちらの作品は、「お気軽感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。
文字数約954文字 読了時間約1分 原稿用紙約2枚
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赤髪を啜る
作品紹介
紅茶に含まれる、なんとかって成分は、すっごく髪にいいのよ?
知ってたかしら?
知ってたかしら?
カップの中で踊る深い茶色は、時折、自分の髪の色とそっくりに見えることがある。
注がれた紅茶の色と私の髪の色がよく似ているから、私は紅茶に混ぜ物を入れて飲むことはしない。紅茶が淀むと同時に、私の髪まで濁ったりしたら大変だから。
透き通って、カップの底まで見渡せる液体が、私には時折渦巻のようにとぐろを巻いて収まっている私の毛髪の塊に見える時がある。垂れ下がっている髪の毛が、全てカップに収まるくらいに縮んでいって、私はそれをこくんと飲み下す。
歯に絡まり、舌に纏わりつき、喉に張り付く髪を、ザラつく独特の触感を口内でいっぱいに享受しながらの嚥下。
紅茶の琥珀は私の琥珀だから、私は私を飲んでいることになるのかしら。
紅茶を飲み続けるたびに、私は自身の髪がどんどんと短くなっていく錯覚にとらわれる。とぐろを巻くようにカップを満たしていた紅茶が、切り落とされたようにちぎれた髪に見え始め、深い茶色の全てが自分の髪と混じり合う。
カップの液体が私の髪なのか。それとも、私の髪がカップの液体になっていたのか。深い茶色の水面に映る私の顔。美しい茶色で満たされている私。
なんて美しい色の髪なのかしら。我ながら、最高の色つやだわ。
「あら。紅茶が無くなってしまったわ」
紅茶の琥珀がないと、私は美しくなれない。紅茶の湛えた深い、深い茶色こそ、私を一番に美しくさせる。
色無しの髪なんて、無彩色の水みたいに薄っぺらい。カップに注がれた色こそ、私の髪色にふさわしい。
お気に入りのCDなんか聞きながら、私は私の髪を飲む。
混ぜ物なんて必要ない。ミルクもシュガーも、この神秘とすら思える髪の前では美しさを汚す泥でしかない。
飲み乾す前に注ぎ足して、髪を嚥下する度に私の中に『美しい色』が広がっていくのが分かる。
これは、愛だ。
私が美しくあるための、琥珀の髪への愛なのだ。
魂が色を欲している。紅茶が無いと生きていけない。紅茶を飲まないと美しくなれない。
そう錯覚した女は、四六時中、生活のいたる所で、食事や睡眠の代わりに紅茶を飲み続けた。
しばらくその生活を続けたのち、女は自ら自身の毛髪を引きちぎりながらカフェイン中毒で狂死した。
注がれた紅茶の色と私の髪の色がよく似ているから、私は紅茶に混ぜ物を入れて飲むことはしない。紅茶が淀むと同時に、私の髪まで濁ったりしたら大変だから。
透き通って、カップの底まで見渡せる液体が、私には時折渦巻のようにとぐろを巻いて収まっている私の毛髪の塊に見える時がある。垂れ下がっている髪の毛が、全てカップに収まるくらいに縮んでいって、私はそれをこくんと飲み下す。
歯に絡まり、舌に纏わりつき、喉に張り付く髪を、ザラつく独特の触感を口内でいっぱいに享受しながらの嚥下。
紅茶の琥珀は私の琥珀だから、私は私を飲んでいることになるのかしら。
紅茶を飲み続けるたびに、私は自身の髪がどんどんと短くなっていく錯覚にとらわれる。とぐろを巻くようにカップを満たしていた紅茶が、切り落とされたようにちぎれた髪に見え始め、深い茶色の全てが自分の髪と混じり合う。
カップの液体が私の髪なのか。それとも、私の髪がカップの液体になっていたのか。深い茶色の水面に映る私の顔。美しい茶色で満たされている私。
なんて美しい色の髪なのかしら。我ながら、最高の色つやだわ。
「あら。紅茶が無くなってしまったわ」
紅茶の琥珀がないと、私は美しくなれない。紅茶の湛えた深い、深い茶色こそ、私を一番に美しくさせる。
色無しの髪なんて、無彩色の水みたいに薄っぺらい。カップに注がれた色こそ、私の髪色にふさわしい。
お気に入りのCDなんか聞きながら、私は私の髪を飲む。
混ぜ物なんて必要ない。ミルクもシュガーも、この神秘とすら思える髪の前では美しさを汚す泥でしかない。
飲み乾す前に注ぎ足して、髪を嚥下する度に私の中に『美しい色』が広がっていくのが分かる。
これは、愛だ。
私が美しくあるための、琥珀の髪への愛なのだ。
魂が色を欲している。紅茶が無いと生きていけない。紅茶を飲まないと美しくなれない。
そう錯覚した女は、四六時中、生活のいたる所で、食事や睡眠の代わりに紅茶を飲み続けた。
しばらくその生活を続けたのち、女は自ら自身の毛髪を引きちぎりながらカフェイン中毒で狂死した。
後書き
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