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作品ID:591
こちらの作品は、「感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。
文字数約1394文字 読了時間約1分 原稿用紙約2枚
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■水沢妃
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし /
浦島太郎 前日譚
作品紹介
俺は、浜辺に座り込んでいた。
腰に下げた竹の籠に、魚の姿はない。
目の前には、産卵で体の弱ったウミガメの姿。
先程から、腹の虫が酷く耳障りなのだ。
俺は、困っていた。
腰に下げた竹の籠に、魚の姿はない。
目の前には、産卵で体の弱ったウミガメの姿。
先程から、腹の虫が酷く耳障りなのだ。
俺は、困っていた。
男は浜辺に座り込んでいた。腰に下げた竹の籠に、魚の姿はない。
「はぁ……どうしたものか。このまま魚が取れない日が続くと、家で俺の帰りを待つ母さんが、腹を空かせることになってしまう」
男は困っていた。ふと、顔を上げると、そこに浜に打ち上げられてもがいているウミガメの姿があった。
「そうだ、あのウミガメを捕まえて持って帰ろう……。俺に見つかったとは運が悪い奴め」
腹がすいていた男は、ウミガメの元へ歩み寄った。
「なんと!」
男は驚いて飛び退いた。なんと、ウミガメはもがいていたのではなく、産んだばかりの卵に砂をかけていたのだ。
「くっ、子を産んだばかりで弱った親……産みたての卵……」
じゅるり。
男は舌なめずりをして、空腹で錯乱しかけている精神を宥めながら、なおも動かないウミガメに手を伸ばした。
「……すまんな、俺にも腹を空かせた母さんが、帰りを待っている。手ぶらじゃ帰れないのだ」
そのとき、ウミガメはぽろり、と両目から雫を零した。
「……お前、泣いているのか……」
ウミガメはもの言いたげなうるんだ瞳で、男を見ていた。
「……はっ! 畜生風情が『泣き』を狙うとはな! 人間様をバカにするな!」
男は、無慈悲にもウミガメを蹴り殺し、砂の中からウミガメの産んだ卵を掘り返した。乱暴に掘られたせいで卵のいくつかは割れてしまい、空っぽだった竹の籠には白玉のようなウミガメの卵でいっぱいになった。
「これで当分は飢えを凌げるぞ!」
死んだウミガメの亡骸を担ぎ、男は去っていった。
* * *
翌日、またウミガメが浜に上がらないかと浜辺で待っていると、海が突然荒れだした。空は曇り、稲妻が瞬きだす。天候のあまりの豹変に、男は呆れたようにして笑った。
「なんだ? はは、昨日のウミガメを食ったせいで海が怒ったか」
その言葉を言い終わるや否や、ひときわ大きな波が男に降りかかる。
「うわっ」
波が男を海中に引きずりこんだ後、天空は嘘のように太陽が顔をのぞかせ始めた。
* * *
(うーん……ん?)
ここはどこだろう、とあたりを見渡すと、男は澄んだ水中の中で浮かんでいた。
男は自分が水中で呼吸をしていることに気がついた。驚いたように手のひらは茶色くゴツゴツしていて、ヒレのようになっていた。もちろん指なんてありはしない。首が動かないと思ったら、背には大きな甲羅が。
(わぷっ)
大きな波が、男を揺さぶる。成す術もなく、男は浜に打ち上げられた。
浜の上でひっくり返ってしまい、じたばたもがいても起き上がることが出来ない。
「あーっ、ウミガメだー!」
どこからか子供が走り寄ってきて、手身近な流木を手に殴りかかってきた。
(やめろっ! 俺だ、漁師の島太郎だぞ!)
「おらぁ、流木切りっ!」
容赦のない子供たちは、手当たり次第に手近な漂流物を投げつけてくる。軽く、頑丈な流木は、力加減のできない子供にとって最適な凶器だった。今や、みすぼらしいウミガメとなった男には、数の暴力に対抗する術などなかった。
連続の殴打で意識を失いかけた頃、
「そこの子供たち! やめなさい!」
どこからか、よく通る青年の声が聞こえた。
「はぁ……どうしたものか。このまま魚が取れない日が続くと、家で俺の帰りを待つ母さんが、腹を空かせることになってしまう」
男は困っていた。ふと、顔を上げると、そこに浜に打ち上げられてもがいているウミガメの姿があった。
「そうだ、あのウミガメを捕まえて持って帰ろう……。俺に見つかったとは運が悪い奴め」
腹がすいていた男は、ウミガメの元へ歩み寄った。
「なんと!」
男は驚いて飛び退いた。なんと、ウミガメはもがいていたのではなく、産んだばかりの卵に砂をかけていたのだ。
「くっ、子を産んだばかりで弱った親……産みたての卵……」
じゅるり。
男は舌なめずりをして、空腹で錯乱しかけている精神を宥めながら、なおも動かないウミガメに手を伸ばした。
「……すまんな、俺にも腹を空かせた母さんが、帰りを待っている。手ぶらじゃ帰れないのだ」
そのとき、ウミガメはぽろり、と両目から雫を零した。
「……お前、泣いているのか……」
ウミガメはもの言いたげなうるんだ瞳で、男を見ていた。
「……はっ! 畜生風情が『泣き』を狙うとはな! 人間様をバカにするな!」
男は、無慈悲にもウミガメを蹴り殺し、砂の中からウミガメの産んだ卵を掘り返した。乱暴に掘られたせいで卵のいくつかは割れてしまい、空っぽだった竹の籠には白玉のようなウミガメの卵でいっぱいになった。
「これで当分は飢えを凌げるぞ!」
死んだウミガメの亡骸を担ぎ、男は去っていった。
* * *
翌日、またウミガメが浜に上がらないかと浜辺で待っていると、海が突然荒れだした。空は曇り、稲妻が瞬きだす。天候のあまりの豹変に、男は呆れたようにして笑った。
「なんだ? はは、昨日のウミガメを食ったせいで海が怒ったか」
その言葉を言い終わるや否や、ひときわ大きな波が男に降りかかる。
「うわっ」
波が男を海中に引きずりこんだ後、天空は嘘のように太陽が顔をのぞかせ始めた。
* * *
(うーん……ん?)
ここはどこだろう、とあたりを見渡すと、男は澄んだ水中の中で浮かんでいた。
男は自分が水中で呼吸をしていることに気がついた。驚いたように手のひらは茶色くゴツゴツしていて、ヒレのようになっていた。もちろん指なんてありはしない。首が動かないと思ったら、背には大きな甲羅が。
(わぷっ)
大きな波が、男を揺さぶる。成す術もなく、男は浜に打ち上げられた。
浜の上でひっくり返ってしまい、じたばたもがいても起き上がることが出来ない。
「あーっ、ウミガメだー!」
どこからか子供が走り寄ってきて、手身近な流木を手に殴りかかってきた。
(やめろっ! 俺だ、漁師の島太郎だぞ!)
「おらぁ、流木切りっ!」
容赦のない子供たちは、手当たり次第に手近な漂流物を投げつけてくる。軽く、頑丈な流木は、力加減のできない子供にとって最適な凶器だった。今や、みすぼらしいウミガメとなった男には、数の暴力に対抗する術などなかった。
連続の殴打で意識を失いかけた頃、
「そこの子供たち! やめなさい!」
どこからか、よく通る青年の声が聞こえた。
後書き
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