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作品ID:628
こちらの作品は、「お気軽感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。
文字数約1035文字 読了時間約1分 原稿用紙約2枚
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宿業
作品紹介
バイト帰りの夜道、男は顔なじみのいる酒屋へ行く。
暗い帰り道を、バイトで疲れた体を引きずって歩いていた。自販機の明かりが煌々と照り、それらが道しるべのように続いている。喉が渇いても、飲み物を買うだけの金はない。給料が入るのはいつも不定期のため、今ここで有り金を潰してしまうのはためらわれた。
通路の奥の方へと向かうと見慣れた酒屋が目に入る。店はこれだけ遅い時間になると閉まっているが、店主は酒瓶を抱えて普段は一人で酒を飲んでいることが多かった。半分閉められたシャッターから漏れる光と、何かを啜る音。どうやらまだいるらしい。せっかくだから、晩酌に付き合ってやるのも悪くはない。
「おう。おっさん、まだ飲んでるか」
シャッターの下をかかんで潜り抜け、店内に入る。
「……あんたか。どうだ。調子は? ……仕事は順調か」
「俺の親みたいなこと、聞くなよ。……あぁ。仕事は大丈夫だ。今も、バイトから帰ってきたところだ」
「そうかよ。ま、どうせ酒目当てだろ。こっちきて座れや」
ほらよ、と差し出された水垢の浮いたコップを受け取ると、並々と日本酒が注がれる。
「……余さず片づけてきたんだろうな。こちとら、腕のいい奴が取られて商売あがったりだ」
「ま。俺は自由主義だ。金さえ払えばどちらでもつくからな。でも、おっさんには色々と恩も借りもある。……無下にする気はない」
バイトは酷だが、俺には全てを金のためだと割り切る心があった。だから、ガキの頃からずっとこの仕事を続けて生きることができた。
……たまに、帰り道に見る風景の全部が、驚くほど穢れて見える時がある。
――ガジャ、
俺は、おっさんに銃口を向けた。
「……お前。……それも仕事のつもりか」
「悪く思わないでくれ。……頼まれたバイトは、あんたで最後なんだ」
よくしてくれた人を自分の手で殺さなければならないという義務は、俺の職業柄、それは驚くほど合致することがある。どんな時でも、殺し屋でいなければならないのは宿命としか言いようがない。
「最後の言葉を、聞かせてくれないか」
「……――、」
「……そうかよ」
引き金に指をかけた。構えた腕が震えるのは、仕事を始めて以来初めての経験だった。
冷や汗が垂れる。
「ちゃんと狙え。……酒瓶は割るなよ。頼むぞ」
「……分かってる」
深夜の酒屋に、サプレッサーで押し殺された悲鳴が静かに響いた。
オヤジは、最後に笑ったような気がした。
通路の奥の方へと向かうと見慣れた酒屋が目に入る。店はこれだけ遅い時間になると閉まっているが、店主は酒瓶を抱えて普段は一人で酒を飲んでいることが多かった。半分閉められたシャッターから漏れる光と、何かを啜る音。どうやらまだいるらしい。せっかくだから、晩酌に付き合ってやるのも悪くはない。
「おう。おっさん、まだ飲んでるか」
シャッターの下をかかんで潜り抜け、店内に入る。
「……あんたか。どうだ。調子は? ……仕事は順調か」
「俺の親みたいなこと、聞くなよ。……あぁ。仕事は大丈夫だ。今も、バイトから帰ってきたところだ」
「そうかよ。ま、どうせ酒目当てだろ。こっちきて座れや」
ほらよ、と差し出された水垢の浮いたコップを受け取ると、並々と日本酒が注がれる。
「……余さず片づけてきたんだろうな。こちとら、腕のいい奴が取られて商売あがったりだ」
「ま。俺は自由主義だ。金さえ払えばどちらでもつくからな。でも、おっさんには色々と恩も借りもある。……無下にする気はない」
バイトは酷だが、俺には全てを金のためだと割り切る心があった。だから、ガキの頃からずっとこの仕事を続けて生きることができた。
……たまに、帰り道に見る風景の全部が、驚くほど穢れて見える時がある。
――ガジャ、
俺は、おっさんに銃口を向けた。
「……お前。……それも仕事のつもりか」
「悪く思わないでくれ。……頼まれたバイトは、あんたで最後なんだ」
よくしてくれた人を自分の手で殺さなければならないという義務は、俺の職業柄、それは驚くほど合致することがある。どんな時でも、殺し屋でいなければならないのは宿命としか言いようがない。
「最後の言葉を、聞かせてくれないか」
「……――、」
「……そうかよ」
引き金に指をかけた。構えた腕が震えるのは、仕事を始めて以来初めての経験だった。
冷や汗が垂れる。
「ちゃんと狙え。……酒瓶は割るなよ。頼むぞ」
「……分かってる」
深夜の酒屋に、サプレッサーで押し殺された悲鳴が静かに響いた。
オヤジは、最後に笑ったような気がした。
後書き
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