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作品ID:1317
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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


第二章「ゴスラー市」:第15話「弱者の連携とランクアップ」

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第2章.第15話「弱者の連携とランクアップ」



 翌日は、午前中に東の草原で薬草採取を行い、クエストを五件クリアしておく。

 午後からは全員で武器屋に行き、ダニエラのショートスピアとキャサリンのショートボウと矢二十本を購入。



 ダニエラの方はショートソードの売却分でほぼ賄えたが、キャサリンの方は五十Sくらい足りなかった。購入後、早速訓練場で試してみる。



 まずはダニエラのショートスピア。

 構えは何となく様になっているが、突き出すスピードや取り回しが今一しっくり来ない。

 俺もやってみたが、スキルもない武器なのでどこが悪いのかはわからない。とりあえずいろいろ試すように言っておいた。



 キャサリンの方は、まずは弓の持ち方から練習する。

 ベリエスに睨まれながらもキャサリンの後ろに回り、抱きかかえるようにして弓の持ち方を教える。

 ギルが使っていたロングボウの縮小版なので、彼のことを思い出しながら一つ一つ説明していく。そのため、余計に時間がかかり、更にベリエスの視線がきつくなる。



 ベリエスの視線は無視して、キャサリンの手を再び取ると、弦を一緒に引き、矢を放つ。

 なんとかまっすぐ飛んで行ったが、的からはかなり外れた位置に矢は刺さっている。

 恥は搔かずに済んだが、これ以上教えることは難しい。

 俺はこれも練習あるのみと伝えて、自主練習をさせることにした。



 四人とも片手剣、槍、弓なので俺が教えられることは少ない。

 ついでに俺もツーハンドソードを取り出して訓練を始める。

 彼らの様子を見ると、若いからか半日間の練習のおかげで一応様にはなってきている。

 これなら、明日は一緒に森に行けそうだと思い、彼らに労いの言葉を掛けてから、訓練場を後にした。



 翌日、いつものようにギルドでクエストを受けてから、東の森に向かう。

 今日は昨日の反省を生かし、四人とも周囲の状況を気にしながら、慎重に森を進んでいく。



 途中でジャイアントスパイダーを発見。俺のファイアボールとキャサリンの弓、ダニエラの槍で倒す。

 アントンとベリエスの男子二人は出番がなく、なんとなく不満そうだが、昨日武器を替えたばかりの2人の少女は嬉しそうにしている。

 昨日、「森では、はしゃぐな!」と俺が言わなかったら、手を取り合って喜んでいたかもしれない。



 一時間後、本命のグリーンクロウラーを発見。俺がファイアボールで仕留めていく。

 森の中での戦闘には極力彼らを参加させない方針なので、独力で対応する。

 但し、四人には周囲の警戒をするよう指示しており、言われた通り、緊張した面持ちで周囲を警戒している。

 この世界の十三歳は擦れていない分、素直でいい。



 グリーンクロウラーを更に二匹とジャイアントスパイダーを一匹倒したところで草原に戻ることにした。もちろん、薬草採取は予定件数をクリアしている。



 草原に戻ったところで野犬の群れを発見した。数は五匹。

 草原では彼ら四人に戦いの判断を任せると言ってある。もちろん、俺の支援が必要なら迷わず頼めと言っておいた。

 アントンは仲間と目配せし、俺に戦う意思があることを伝えてきた。

 俺は肯き、そして、何も言わずに彼らの戦いを見守ることにした。



 彼らは、すぐに隊形を整える様に動き出す。

 アントンとベリエスの少年二人が前衛、ダニエラがやや後ろで槍を水平に構え、キャサリンが更に後ろから弓を構えて射程内に入ってくるのを待つ。

 これは俺が教えたRPGなどでよくあるパーティの標準的なフォーメーションだ。自分で実際に使ったことが無いので、本当に役に立つのかは判らないが、一応理にかなっているはずだ。

 俺の考えは、とりあえずこれでやってみてから、徐々にチューニングしていく方がいいだろうというものだ。

 もちろん、4人には自信満々でフォーメーションの説明をしており、不安にならないように気は使っている。



 彼らが隊形を整え、待ち構えていると、野犬の内、二匹がゆっくり接近していく。

 ショートボウの射程内に入ったので、キャサリンが小さく「えい!」と声に出して、矢を放つ。矢は野犬の五十cmくらい手前に刺さり、ビギナーズラックの一撃は見られなかった。



 そして、その矢が戦いの合図となり、前に出てきた二匹がアントンとベリエスに突進を掛けるように襲いかかっていく。

 後ろにいる他の三匹も時間差をつけて襲いかかる。

 アントンとベリエスはお互いに後ろに行かせないよう、声を掛け合いながら、野犬をけん制し、その隙をついて、ダニエラがダメージを与えていく。



 俺は「ほう、いきなり連携ができているじゃないか」と彼らを見直した。

 若いから理解力があるのか、ほぼ俺の説明通りの動きをしている。

 キャサリンも左右に動きながら、時折矢を放っていく。二発目以降は距離が近いこともあり、急所には当たらないが、確実にダメージを与え始めている。



 十分ほど見ていたが、連携にほころびは出ていない。

 だが、体力的に厳しいのか、徐々に動きが悪くなっていく。今のところ大きなけがはしていないが、もうそろそろ限界のようだ。



 俺は四人を支援するため、「ファイアストームを撃つから、すぐに下がってくれ」と声を掛けた。



 一分ほどでファイアストームを発動すると、四匹の野犬が炎に焼かれて「キャンキャン」と情けない鳴き声を上げながら、倒れていく。一匹だけはファイアストームの範囲ギリギリだったようで、ダメージを与えただけに留まった。

 四人はダメージを負った野犬に止めを刺すべく、挑みかかるが、野犬の方は戦意を喪失し逃げ出し始めた。彼らはその野犬を追いかけ、へとへとになりながらも何とか倒すことに成功、そして、四人で手分けして討伐証明部位の剥ぎ取りを開始した。

 毛皮は派手に焦げており、売り物になりそうにないのでそのまま捨てていくことにしたようだ。

 討伐証明部位の剥ぎ取りをしている彼らに、「今の戦い方は良かった。昨日俺が言ったやり方を実戦でよく出せたな」と褒めると、



「昨日の夜、宿の外で練習したの。少しでもうまくなれればいいかなと思って……」とダニエラが照れながらそう答える。

 俺は、「思った以上によかった。今日は疲れただろうから、少し早いが町に戻ろうか」と宣言し、町に帰還することにした。



 無事に街に戻り、ギルドでクエスト達成報告をしてから、解散する。



 一人になった俺は、RPGの戦い方って意外と使えるんだと、彼らには言えないことを考えながら、宿に戻っていった。





 アントンたち四人とパーティを組んで五日経った。

 一日平均五件のペースでクエストをクリアしたので、アントンたちは無事にEランクに昇格、俺もDランク昇格試験受験資格を得た。

 そして、今日の朝八時に受付でDランク昇格試験の受験を申請し、一時間後、昇格試験の実施が承認され、試験内容の通知があった。



 試験内容は、

 ・野犬またはホーンラビット二匹を倒すこと

 ・制限時間は五時間

 ・必ず単独で戦い、戦闘中に他者の助力を得た場合は、その討伐は無効

 ・討伐方法は自由。戦闘でも罠でも問題なし。但し、討伐証明部位の購入は無効

だそうだ。



 正直、俺には楽勝過ぎて「こんなんでいいの?」と思ったが、よく考えてみると普通の冒険者で前衛以外のポジションだと“単独”という条件がかなり厳しい条件だと気付いた。

 そして、この条件で後衛だとDランク昇格は難しいなと思ったが、本当にそうなら、ルディたちのような中途半端な実力でCランクに上がることは難しいはずだ。

 再び試験内容をよく読んでみると、「必ず単独で“戦い”、“戦闘中”に他者の助力を得た場合はその討伐は無効」とあるのに気付く。罠でもOKということは、罠を仕掛けておき、誰かに誘導してもらってもいいということなのだろう。それなら、後衛でも単独討伐は可能になる。



 今日は、アントンたちは俺の昇格試験に気を使い、自分たちだけで採取クエストを行っている。俺としては久しぶりに一人でフリーに使える一日なので、さっさと試験を終わらせて、他のクエストを受けて小銭を稼ごうと思っていた。



 午前九時、キルヒナーギルド長の合図で試験が開始される。

 すぐに西の草原に向け、早足で歩いて行った。

 西の草原は最近ホーンラビットが増えてきているようなので、小高い丘から鑑定を使って探すと、すぐに一匹目を発見できた。



 ホーンラビットに接近し、ファイアボールで動きを止め、剣で止めを刺す。このコンビネーションも板について来ている。すぐに討伐証明部位と毛皮を剥ぎ、肉も袋に入れて持っていく。



 再び丘に登り、鑑定を使って探すと、風下から野犬が八匹接近してくる。俺の思惑通り、ホーンラビットの肉の匂いに誘われて寄ってきたようだ。



 俺は野犬たちの動きを観察しながら待ち受ける。そしてファイアストームの範囲に入ったところで八匹を一気に殲滅する。

 討伐証明部位を獲得し、町に戻る。掛かった時間は約一時間と言ったところだ。



 ギルドに入り、討伐証明部位をギルド長に見せる。



 彼は「まだ一時間だが、もうこんなに狩ってきたのか」と呆れている。

 俺は「ホーンラビットがすぐに見つかったので、そいつを狩り、何回も探すのが面倒だったので、血の匂いを餌に野犬をおびき出しました」と説明する。



 あきれ顔のギルド長は大きく嘆息し、「相変わらず、簡単に言ってくれる」とやれやれと言った感じで首を振り、「普通は一匹目を見つけるだけでも苦労する。まして野犬八匹も出てきたら、Dランク昇格前の冒険者はほとんど逃げ出すぞ。それを全部倒してくるなんて……」と最後の方は言葉になっていない。



 俺はさっさとクエストを受けに行きたいので、「で、合格なんでしょうか?」と尋ねる。

 我に返ったギルド長は、「ああ、合格だ……カードの記載事項の変更が終わればDランク冒険者だ。おめでとう」と祝福してくれる。

 俺は「ありがとうございます」と礼を言った後、受付嬢にカードを差し出した。



 三分ほど待つと、記載事項の書き換えが終了したカードが返却され、晴れてDランクに昇格した。これでCランクのクエストがようやく受けられるようになった。



 ギルドを出る頃には午前十時半過ぎになり、今日はあと半日分くらいしか時間が使えない。Dランクの中でも簡単な討伐のグリーンクロウラーの討伐クエストを受け、東の森に向かった。



 四時間ほど東の森の中でグリーンクロウラーを探し、三匹狩って町に戻る。

 ギルドに討伐証明部位を持っていくと、ちょうどアントンたちも戻ってきたようで、明日からの予定を考えることにした。



「明日は今まで通りで行くが、明後日から東の森で夜営して更に奥を目指したい。自信がなければ、もう少し先にするが、どうだ?」とアントンたちに聞いてみた。



「正直、森で一夜を明かすというのは怖いですし、どこまでやれるか自信はないですけど……」とアントンが不安そうに小さな声でそう言う。

「いきなってのもちょっと……夜営の練習をしてみない?」とダニエラが提案してきた。

 俺は、「そうだな。明日は、午前中に森に入り、午後を使って夜営の準備をしてみるか」とダニエラの提案を採用し、場所選びや見張りのやり方などの確認と持ち物の準備をすることにした。



 俺も中学校でやったキャンプ以外で焚き火をしたことはなく、まして野宿などしたことはない。

 大学のサークルでキャンプをやったことはあったが、キャンプ場で貸し出されるバーベキューコンロやテントを使ったものだったから、あまり参考にはならないだろう。

 小型の鍋などの簡単な調理器具や毛布などはベッカルト村で揃えてもらっていたので、食材を調達するだけで準備は終わるはずだ。



後書き


作者:狩坂 東風
投稿日:2012/12/12 22:47
更新日:2012/12/12 22:48
『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。

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