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作品ID:1330
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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


第三章「街道」:第2話「宝石商との交渉」

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第3章.第2話「宝石商との交渉」



 オステンシュタットは人口二万人の王国東部最大の都市で、高さ十五ヤード(十三・五m)、周囲を十マイル近い長さの城壁で囲み、更に城壁の周りに掘を巡らせた城塞都市だ。

 東西南北に大きな城門があり、それぞれから街道が伸びている。



 ゴスラー街道は南門に接続されているため、俺は入市手続きのため、南門の検問に並んでいた。

 行列に並びながら、街の周囲を見てみるとゴスラーのような草原ではなく、整備された農地が広がっている。所々、家が固まって建ち、オステンシュタットに食料を供給する農家なのだろうとぼんやり考えていた。



 一時間ほど待たされ、午後四時頃、入市税を払い、ようやく街に入ることができた。

 入市税は五十Cと思ったより高かった。

 しかし、城門で検問に当る兵士は高圧的ではなく、検問の雰囲気も悪くない。



 街に入る時に城門の兵士にギルドの場所を聞いておいたので、早速ギルドに向かう。



 メインストリートの道幅は十mくらいあり、かなり広い感じだが、屋台や露天はなく、店舗だけが並んでいる。禁止されているのだろうか。

 家は石造りが多く、白い外壁とオレンジっぽい屋根が多い。ヨーロッパにこんな町並みがあったような気がするが、どこか思い出せない。

 メインストリートには多くの人が歩いており、その中にはエルフ、ドワーフ、獣人などの亜人も多く見られた。



 ゴスラーにはほとんどいなかった亜人たちが見られたことから、俺はかなりハイテンションになり、テーマパークに来た子供のようにキョロキョロしていた。



(あ、エルフだ。イケメンだよな。こっちは犬っぽい耳だ、狼系の獣人か? 猫耳がいた! さすがは大都会。すげぇや)



 その時の俺は、盗賊から逃げているという緊張感はなく、完全に舞い上がっていた。少し落ち着き、周りを見てみると同じような“おのぼりさん”が多くいた。だが、町の人たちはいつものこと、ほとんど気にしていない。



 メインストリートを歩くこと約二十分でギルドに到着する。

 ゴスラーの町のものよりかなり大きな建物で、カウンターの受付も十ヶ所くらいあるが、ちょうど冒険者たちが帰ってくる時間帯であるため、受付には行列ができていた。

 俺は行列に並び、順番が来るのをおとなしく待つ。そして十分ほどで俺の順番が回ってきた。

 受付に郵便物を渡してクエスト達成報告を済まし、所属変更の手続きも合わせて済ましておく。

 持っている現金を預けようと思ったが、思いのほか冒険者たちが多いので、明日以降に延期することにした。

 受付嬢に「初めてオステンシュタットに来たんだ。安全で料理のおいしいお勧めの宿はないか」と聞くと、

「“旅人の止まり木亭”という宿がお勧めですよ。」と受付嬢に紹介される。

 そのままギルドを後にして宿に向かい、十分ほどで「旅人の止まり木亭」に到着した。

 止まり木亭は三階建のしっかりとした建物で、手入れが行き届いている感じがする。

 フロントで宿泊の手続きに入るが、ここもギルドの割引が効き一泊二食八Sで、馬が四Sで宿泊できる。



 今更だが、馬については、東京のホテルの駐車場代より高い気がする。

 燃料(飼葉)代込みと考えれば妥当なのかもしれないが、安い宿だと人が一人三Sで泊まれることを考えると意外と馬の維持費は高い。



 部屋に荷物を置いてから、街を散策するため、宿の女将のフランカという三〇歳前後の女性に街について聞くことにした。

 特に知りたいのは宝石店の情報だが、ただの冒険者が宝石店に行く用事はほとんどないので聞き辛い。

 何とか高級な店のある区域を教えてもらい、宝石店を探しがてら散策していると、一時間ほどして「ヴェルス宝飾店」という宝石を扱う店を見つけた。

 今日はもう遅いので店には入らず、宿に戻ることにした。



 夕食を取るため、食堂に向かうが、ここの食堂はゴスラーのドラゴン亭よりかなり大きく、テーブルが十五、カウンターも十五席ほどあるが、午後六時くらいですでに7割くらい席が埋まっている。

 俺はどこかビアホールのような感じがする、磨きこまれたカウンターに座り、食事と共にエールを頼む。

 見た感じだが、ゴスラーに比べ、如何にも実力者といった感じの冒険者が多い。

 さすがは冒険者の町と言われるだけのことはある。

 食事もおいしく、南部ではあまり見なかったチーズなど乳製品も多く使われている。酒もエール、ワイン、蜂蜜酒に加え、ローゼンハイム酒と呼ばれている蒸留酒もあった。ワインを蒸留したブランデーみたいな酒のようだ。

 うまい食事で幸せな気分になった俺は部屋に戻り、体を拭いてすっきりしてから、明日の予定を考えた。

 明日は、宝石商との交渉だ。相手の情報がないのが不安だが、向こうもこちらの情報を持っていない。

 ゴスラーで仕入れた噂では、来年は建国四百周年と国王即位三十五周年に加え、西方暦一三〇〇年の記念の年だ。

 金持ちは宝飾品を買い求めるだろうから、需要が増加し、今から宝石の価格は高騰して行くだろう。宝石商なら、いくらあってもほしいと思うはずだ。ここを突破口にするしかない。

 だが、それだけでは弱い気がする。もう少し相手にインパクトを与える何かがほしい。

俺はステータス画面を眺めながら、何かいい手はないかと考えていた。



 アイテム欄を見たときに「ビジネススーツ」の文字に目が止まる。

 この世界の服とはかなり異なるビジネススーツを着ていき、東方からの商人の芝居を打てば、向こうはかなり混乱するのではないか。

 大学の就職関連のセミナーで「面接は第一印象が大事だ。相手の服装を見て判断することが多いのできちんとした服装は面接の基本だ」と教えられた。

 逆にいえば、判断に困る服装をしていけば、相手は対応に困るはずだ。

 俺のビジネススーツは量販店の中国製の安物だが、この世界の縫製技術より抜群にいい縫製になっている。

 素材も安物なだけに、化繊が多く使われているため、変わった絹を使っているように見えなくもない。この世界の標準から言えば、見た目はかなりいい方だろう。



 珍奇な服装だが、物はいい。これはかなり判断に困るはずだ。

 もう一つ有利な点は、俺は鑑定が使えるので、宝石のおおよその価値がわかる。

 一芝居打ち、向こうの持つ宝石の価値を言い当てれば、異国の商人と勝手に向こうが思ってくれるはずだ。

 後はうまくこちらのペースに乗せれば、鑑定価格に多少は上乗せできるだろう。

 元々、この宝石で大儲けする気はないので、多少色がつけばいいと思っている。



 しわを延ばすため、荷物からスーツを取り出し、クローゼットに吊っておく。

 合わせて、ネクタイと靴も準備しておく。



 翌朝、朝食を取ってから、ゆっくり準備をする。二ヶ月半ぶりにスーツに袖を通すと元の世界が何年も昔のことに思えてくる。



 目立たないようにマントを羽織って、ゆっくりとした足取りでヴェルス宝飾店に向かう。

 店に入り、何気ない仕草でマントを脱ぐと、俺に恰好を物珍しそうに見ている若い店員がいた。俺はその若い店員を捕まえ、宝石を買い取って欲しいので店主に会いたいと伝える。



 すぐに応接室のような部屋に通され、十分ほどして店主が部屋に入ってきた。

 店主は五十歳代前半の白髪の紳士だ。



「私が当ヴェルス宝飾店店主のヘニングと言うものです。宝石をお売りいただけるとのことですが、お間違いありませんか」と上品な口調で用件を聞いてきた。さすがに上流階級との付き合いがあるだけに物腰がかなり柔らかな感じがする。



「事前の連絡もなく、突然お伺いして申し訳ない。私はタカヤマ=タイガ、おお、こちらの言い方では、タイガ・タカヤマでした。東の方から来た旅の商人のようなものです」と微妙にどうとでも取れる表現で自己紹介をした。



「ほう、東方の方ですか、なるほど、それで珍しい服を着ていらっしゃるのですな」とヘニングは、こちらの服をちらちら見ている。



「こちらの方にとっては、おかしな服装で来てしまい申し訳ない。西方(こちら)の服も持っているのですが、どうも正装というとこういった服でないと落ち着きませんから」と照れ笑いを作る。

「いえいえ、どのような服でも良いものとそうでない物の違いくらいは判るつもりでつもりです。タイガ殿の着ておられるものの価値は判るつもりです」とこちらが気を悪くしないようフォローを入れてきた。



(どうやら、こっちのペースに乗ってきているな。あと一押しってところか)



「あっ。忘れておりました。こちらでは商談の前に身分を証明する必要があるのでしたね。身分を証明するものなのですが、こちらに来たとき冒険者ギルドに登録しましたので、確認して頂けますか? 合わせてあちらの証明書もお見せしましょう」と言って、ギルドカードと運転免許証を見せる。

 写真入の免許証を見てヘニングは驚いている。

 これで完全に東方の商人だと思い込んでくれれば助かる。



 ギルドカードと免許証を返してもらい、早速商談に入ることになった。



「早速で申し訳ないのですが、この宝石を見ていただけないでしょうか」と言って、持っている五十三個の宝石をテーブルの上に取り出す。



「ほう、かなりの数ですな。見せていただいてもよろしいですかな」とヘニングは少しだけ前のめりになる。

 俺はにこりと笑った後、鷹揚に「どうぞ、存分にご確認下さい」と言って彼が確認するのを待つ。

 ヘニングは十分ほど掛けて慎重に宝石を見ていく。

 見終わった頃を見計らって、「どうでしょう。全部でいくらの値を付けて頂けますか」



「そうですな。全部で三千Gと言ったところでしょうか。如何ですかな」と笑顔で言ってくる。



(こちらを試しているのかな。それにしても三千Gはないだろう。もう少し有利に進めるためにも、もう一芝居打ってみるか)



 俺は大げさに「ご冗談を」と嘆いて見せた後、「どんなに安く見積もっても五千Gは堅いはずです」と言ってから、

「若輩者の私の目をお疑いですか。いいでしょう、そちらの宝石を一つ鑑定させていただけませんか」と言って、少し挑発する。

 ヘニングは「判りました」と言って、二つの宝石を持ってきた。

 大きめのサファイアと小さめのルビーだ。

 俺はじっくりと眺める振りをしながら、二つの宝石を鑑定すると、サファイアが百G、ルビーが五百Gであることが判明した。



「こちらのルビーは五百Gといったところですね。こちらのサファイアは中に小さなひびがありますから、百Gといったところでしょう」と特に気負いもない振りをして、平然と金額を口にした。

 その言葉に、彼はポーカーフェイスを忘れ、驚きの表情を隠せていない。

 そして、慌てて、「いや、申し訳ない」と謝罪した後、「ご同業者でしたか。では、再度価格を提示させていただきます。五千五百Gで如何でしょう」

 俺は両手を上にあげるオーバーアクションを交え、「それはないでしょう」と言った後、「あと三ヶ月もすれば大量の宝石の需要があるはずです。八千Gの値がついても儲けが出るはずでしょう」

 彼は「う?ん」と唸る。

 そして、「タイガ殿はなかなかやり手ですな。しかし、八千Gは少し高すぎます、六千五百Gでどうですかな」と値を上げてきた。

 俺はもう少し行けそうだと思い、「ヘニング殿はオステンシュタット侯爵様御用達と聞きました。侯爵様にお納めすれば九千Gは堅いのでは?……では七千五百Gでいかがですか」

 彼は首を横に振って敵わないと言った後、「七千Gで手を打ちませんかな。当方もこれ以上は無理ですよ」

 俺はこれ以上無理するのもどうかと思い、それで手を打つ。

 そして、支払方法をどうするか確認してみた。



「当店の為替でよければすぐにでも。ギルドカードをお持ちですので、ギルドに行きカードに入金もできますが」



 俺はこの世界の為替がどういう仕組みなのかも判らなかったし、そもそも商業ギルドと冒険者ギルドのカードが提携しているとは思ってもみなかった。

 心の中で大きく息を吐いた後、ぼろが出る前になんとかなってよかったと心底思っていた。



 俺はカードへの入金してもらうことにし、護衛を伴ったヘニングと共に商業ギルドに向かった。

 ギルドでカードを渡すと、七千Gが入金される。それを確認し、宝石を手渡した。

「良い取引ができありがとうございました」と礼を言ってから、彼と握手をして、この場で別れる。

 ヘニングが商業ギルドを立ち去ったのを確認してから、現金を五十Gだけ残し、残りの現金千八百Gを入金した。

 商業ギルドであれば、冒険者ギルドより目立たない。少しでも金を持っていると思われたくないから、この機会を利用させてもらった。



 これでようやく現金を持ち歩く生活から解放された。

 しかし、予定の五千五百Gより千五百Gも高く売れた。カマをかけた九千Gで売れると言うのもあながち間違っていないのかもしれない。





 ヴェルス宝飾店の店主ヘニングは、変わった服装をした若い男と宝石の取引をすることになった。

 相手はこの辺りではあまり見かけない感じの顔付きで、見た目はかなり若い感じがする。何より、その服装が見たこともないデザインではあるが、光沢のある変わった絹を使い、ボタンに宝石を使った非常に高価な服であることは間違いない。特に首に巻いている布の装飾品は王家が身に着けてもおかしくないほどの逸品だと思えた。彼は男の年齢と高価な服とのギャップにどう捉えていいのか判断に困っていた。

 そして、その若い男は東方から来た商人だと名乗る。

 彼は大店(おおだな)の後継者が事情があって売りに来たものではないかと考えた。



 更に東方のギルドカードを見せられ、驚きを隠せなかった。



(東方のカードは写し絵というより、魔法で本人の姿を固定しているくらいそっくりだ。東方の技術はこれほど進んでいるのか。文字も上位古代語に見えるし、どのような魔道具を使っているのかわからないが、少なくとも偽造はできまい)



 カードを見て先ほど思った大店の後継者と言う考えに間違いないと確信を持った。



 その後、タイガと名乗る男は五十三個の宝石を何の警戒もせず、テーブルに出す。

 これだけの数の宝石を護衛もなく、ギルドの立会もなく、見せる無警戒さに違和感を覚えるものの、何か特殊な魔道具で保護されているのかもと思ってしまう。



 彼は十分ほど掛けて慎重に宝石を確認していった。

 物自体はかなりの品質で、更に種類も多く、この時期にこれだけの宝石が手に入れば大儲けできることは間違いない。

 彼が宝石を見てそんなことを考えていると、突然「全部でいくらの値を付けて頂けますか」と聞いてきた。

 彼は経験が少なそうな相手なので、思い切って相場の半値近い値段を口にした。



 相手は呆れ顔で相場に当たる金額を口にする。

 そして、自分が試されたと思ったのか、「そちらの宝石を一つ鑑定させていただけませんか」と言ってきた。



 ここまで言われるとこちらも引けないと思い、敢えて難易度の高い宝石を持っていく。



(相当な目利きの鑑定士でもこのサファイアのひびには気付かない。ひびが無ければ五百Gはするが、ひびのせいで精々百G。逆にルビーは色がかなり深く均一だ。五百Gが最低ラインだ)



 そう考えていると、すぐに、「こちらのルビーは五百Gといったところですね。こちらのサファイアは中に小さなひびがありますから、百Gといったところでしょう」と特に気負いもなく、こちらの考えている金額を口にした。

 彼は驚きのあまり、顔が硬直してしまった。そして、我に返ると、相手は相当な目利きだから、欲をかくと別のところに売りに行ってしまうと思い、少々高くても買い取ってしまうことにした。

 その後もこちらの情報を的確に把握しており、彼にしては珍しく相手に主導権を握られながらの交渉となってしまった。

 そして最終的に七千Gで合意した。



(こんなにやりにくい相手は初めてだ。九千Gで粘られたら……)



 彼の見立てでは、貴族相手に一万G以上の売り上げがあるだろうと思っている。

 九千Gで粘られても最終的には折れるつもりだったが、相手は急いでいるのか、相場の二割増し程度で手放してくれた。



(今日はついている。一日で少なくとも三千Gの儲けがあった。しかし、あのタイガという男は本当に東方から来たのだろうか?)



 彼は少しだけタイガのことを考えたが、これからの商売のことがすぐに頭に浮かび、タイガと言う男のことはすぐに忘れてしまった。



後書き


作者:狩坂 東風
投稿日:2012/12/15 16:36
更新日:2012/12/15 16:36
『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。

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作品ID:1330
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