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作品ID:1339
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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


第三章「街道」:第8話「鍛冶師デュオニュース」

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第3章.第8話「鍛冶師デュオニュース」



 ドライセンブルクの鍛冶師街でも一番有名なデュオニュースの工房に着いた。

 工房も周りの建物と同様に四階建てで一階が工房、二階が店舗のようだ。三階、四階は住居なのだろうか?

 有名な店なので、店の前を旅人風の人たちが多く通っていく。

 一応店舗があるので、覗いてみようかと思い、二階に上がっていった。



 一見(いちげん)さんお断りではないが、前を通る人が多い割には工房に入っていく人はほとんどいない。

 勇気を振り絞って店の扉を開けると、予想通り客は誰もいない。



(しまった。やはり入るんじゃなかった。お店の人に捕まらなければ、このまま退散しよう)



と後悔したが、後の祭り、ディルクと同じ髭面のドワーフが声を掛けてきた。



 怒鳴るような大声で「おい、小僧。何のようだ!」と聞いてきたので、ちょっとビビりながら、



「い、いえ。オステンシュタットのディルクさんに聞いたので、一度覗いてみようかと……」



(「何のようだ」はないよな。ここは武器屋だろ。武器を見に来るのに決まっているだろう……)



 俺は心の中で愚痴をこぼす。



「ディルクの紹介か。小僧、こっちに来て背中の両手剣を見せろ!」



 ドワーフの鍛冶師は、こちらの都合は無視して、話を進めていく。

 今日は冷やかしのつもりだったので、「いえ、今日は店の場所を見に来ただけで武器を買いに来たわけでは……」と言うが、



「つべこべ言わずにさっさとしろ!」と怒鳴られてしまった。



(ドワーフはみんな気が短いのかね)



と思いながら、デュオニュースと思われるドワーフの方に近づいていく。



「十日前にディルクさんに売ってもらった剣です。ディルクさんにはこの剣を使いこなせるようになったら、デュオニュースさんのところに行けと言われたんですが、まだ使いこなせていません」と言いながら、愛剣を渡す。



 彼は剣を見ながら、「ほう、ディルクがこの型の剣を……。小僧、お前の戦い方を説明しろ」



 俺はこの展開について行けないが、説明しないと怒鳴られることは想像できたので、



「俺のスタイルは、魔法で弱らせてから、接近して急所を狙って止めを刺すスタイルです。対人戦の経験は少ないので、対魔物の戦い方ですが」と早口で説明する。



 彼は何か思いついたのか、「下に行くぞ」と言って、階段の方に向かっていく。

 俺は既に付いて行けなくなっているので、「えっ?」と戸惑っている。



「下の試し切り場でお前の闘い方を確認させてもらう。とっととついて来い」とさっさと一人で歩き出し、近くにいる弟子たちに「お前ら今日引き渡す物を仕上げておけ! 俺は下でこいつを見てくる」

 弟子たちは声を揃え、「「わかりました。親方!」」と答えるが、いつものことなのか、特に疑問を差し挟むことなく仕事にとり掛かっていく。

 俺はデュオニュースに連れられ、一階の工房横にある訓練場のような土間の部屋に行く。



「この部屋は少々の魔法じゃ何ともならん。あの的に好きに攻撃しろ」と言って、五mくらい先にある金属製の防具を着けた木の人形を指差す。



 ここまで来たらやらないわけには行かないようだ。

 剣を地面に突き刺し、最高出力の高密度型ファイアボールを唱え、的の腹辺りに叩きつける。

 鋼のプレートアーマーだが、さすがに最高出力のファイアボールを至近距離から撃ったので前面側は貫通し、木の人形が焦げている。

 デュオニュースは少し驚いたのか、目を見開いている。

 俺はそれにかまわず、そのまま剣を引抜き、ダッシュで接近して、首を狙って突きを入れ、更に横薙ぎの一撃を加えて、首を跳ね飛ばす。



「すいません。ファイアボールの出力を上げすぎて的の防具を壊してしまいました。部屋が狭かったんで調整すればよかったんですが……」



「そんなことはどうでもいい。それより聞きたいことがある」



 デュオニュースはさっきまでと少し様子が違い、何か考えるように話しかけてきた。



「それだけの魔法が使えて何で剣も使う?」と言った後、プレートアーマーの穴を見ながら、



「俺が見たところ、今のファイアボールは王国騎士団の魔術師部隊以上だぞ。ただの鋼とは言え、その防具はダンクマールが作ったものだ。ファイアボール如きで貫通できるもんじゃねぇ」



 俺は今の言葉を理解できず、「へぇ?」と素っ頓狂な声を上げ、固まっている。



(王国騎士団って言えば、ドライセン王国最強騎士団だろ。その魔術師部隊ってことは、最強の魔術師実戦部隊なんだよな。そんな魔術師と比較される?)



「おい、何で剣も使うのかを聞いてるんだよ!」と焦れたデュオニュースが怒鳴ってくる。

 俺は慌てて、



「あっ、すいません。えっと、ほとんどソロで戦ってきたんで魔法だけじゃ倒しきれなかったからですが……」



「はぁ? それだけの魔法が使える魔術師がソロだと? ありえんだろ」と呆れたような顔をしている。



「まだ、冒険者になって三ヶ月くらいですし、魔法もファイアボールの他にはあと二つくらいしか知らないんで接近戦もできるようになりたいなと思って……」



「三ヶ月だぁ? とことん、訳がわからん奴だな。まあいい。それでどんな武器が欲しい」と更に呆れながら、俺の要望を聞いてきた。



 俺は正直に言ってもいいのかちょっと悩みながら、



「魔法を使うたびに地面に突き刺しているんで、できれば、ミスリルかアダマンタイト製のが欲しいです……形はディルクさんの作ってくれた、このタイプが使いやすいのでこれがいいんですが」



 彼は考えながら、



「ふーむ。ミスリルかアダマンタイトか……小僧、前金で千G払えるか。無理なら玉鋼かダマスカス鋼辺りになるが……」



 俺はこの急展開にまた思考が付いていけなくなっていた。



(いきなり、作ってくれるってこと? 千Gくらいなら楽勝だけど、前金が一割とか言われると困るな)



「払えますが、総額どのくらいになりそうなんですか?」



「千五百から二千Gくらいだろう。ミスリルやアダマンタイトを素材に使うとなると素材を集めるだけでも金が掛かる。そのための前金だ」



 俺は納得し、「わかりました。とりあえず二千G支払います。今の俺では使いこなせないでしょうから、完成は急ぎません。足りなければあと千Gくらいなら払えます」と支払える総額も言っておくことにした。

 デュオニュースは駆け出しの冒険者である俺が三千Gまで出すと言ってかなり驚いている。

 俺は金持ちの貴族の子息と思われるのも癪なので、



「この金は俺が一人で稼いだものです。もうすぐ、ここにも噂が届くとは思いますが、南部のゴスラーでグンドルフの盗賊団の根城を襲い奪ったものです。怪しい金でもありません。あっ! まだグンドルフが生きているので、俺がこの金を持ってここに来たことは内密にしておいて欲しいんですが……」



「グンドルフか。何ヶ月か前まで西部辺りで荒稼ぎしていた盗賊じゃねえか……なるほどな。その話は俺の胸に収めておいてやる。剣については半年以内には作り上げてやる。まあ、楽しみにしておけ、グレゴールやコンラートの剣以上のものを作ってやるからな。だから、腕を上げておけよ」と面白いことになったとニヤ付いている。



 俺は「グレゴールやコンラートって誰だろう? きっと名のある騎士なんだろう」と思いながら、「よろしくお願いします。がんばって腕を上げてきますよ」と言って、頭を下げる。



「もうひとつ気になっていたんだが、おめぇ、そのスローイングナイフ使えねぇだろ。そんなもん、なんで身に着けているんだ。それだけでも魔法の邪魔になるはずだが」



 彼は不思議そうに俺のスローイングナイフを手に取る。



「それですか……飾りみたいなもんですよ」と頭を掻き、「これを着けておけばスローイングナイフの射程に入るのを躊躇うから、その分、呪文を唱える時間が稼げるってのも理由の一つなんですが、実際、ナイフは食事に使うだけなんですよね」と正直に説明した。

 一瞬の間ののち、「ガハッハッハッ! 面白い奴だな。上でミスリル製のスローイングナイフを売ってやる。もちろん食事にも使えるから、買っていけ」と爆笑される。



 俺はデュオニュースと話ができるようになったので、思い切って魔導書の入手方法についてヒントでも貰えないかと、彼に聞くことにした。



「ところで鍛冶師のデュオニュースさんにこんなこと聞くのも何なんですが、さっきも言いましたが、俺が使える魔法は三つくらいなんです。どこかで魔導書が手に入るところって知りませんか?」



「鍛冶師に聞くなといいたいところだが、お前の持ち味は魔法と剣術のコンビネーションだからな。魔法を覚えることも大事だろう。ノイレンシュタットのラングニック地区にあるオルトヴィーンの魔道具屋に行って、主人のオルトヴィーンに相談してみろ」



 彼はまだ少し笑いながら魔道具屋を紹介してくれた。



「助かります。この後、ノイレンシュタットに行くつもりだったんで、ちょうど良かったです」と礼を言って、彼と共に二階に戻りギルドカードで二千Gとミスリル製スローイングナイフ三本分の五十Gを支払う。

 そして、「剣のこと、よろしくお願いします」と言ってから、店を出た。



 カードの残金は六千六百Gあるので、魔導書を買っても大丈夫だろう。





 大河がデュオニュースの店を出た後、隣の防具店のドワーフの店主ダンクマールがデュオニュースに呼び出され、工房の横の試し切り場に連れていかれた。



 不思議そうな顔で「デュオ、いきなり呼び出して何のようだ?」と聞くと、真剣な表情のデュオニュースが、「ダン、これを見てみろ。お前の鋼のプレートアーマーだ」と先ほど大河に壊されたプレートアーマーを見せる。



「お前のところで、なんでこんな穴が開くんだ? フレイムランスくらいの高位魔法の攻撃跡だろう」と更に不思議そうな顔でダンクマールは首を傾げている。



「いや、ファイアボールを撃ち込まれた結果だ。それも専門の魔術師じゃなく、俺のところに剣を買いに来た冒険者がやった」



「何だと! お前さんが冗談でこんな手の込んだことをするとは思えんが、そんな話にわかには信じられんぞ」と疑わしそうな表情を崩さない。

 デュオニュースも「俺も目の前で見なけりゃ信じられなかったよ」と笑っている。

 興味を持ったのか、ダンクマールは「どんな奴だ」と尋ねる。



「さっき、ディルクの剣を持って、ふらりとやってきた。冒険者になって三ヶ月だが、剣の素質はある。もしかしたら、コンラート以上、いや、グレッグ並かもしれん」



「嘘だろう!……いやすまん。お前が嘘を言うはずはないな。“龍殺し”並の剣の素質に、この魔法の素質か……」



「見た感じは、駆け出しを卒業した程度のどこにでも居そうな若造だ。装備もディルクの剣以外は大した物は持っていなかった。ディルクの剣もあまり使い込んでないようだが、試しにここに連れてきた。いつも通りやってみろと言ったら、そのファイアボールを撃ちやがったんだ」



「で、剣を打ってやるのか」とダンクマールが聞くと、目を輝かせたデュオニュースが、



「ミスリルかアダマンタイトの剣を作ってやると約束した」



「ほう、いつ取りに来るんだ。そん時は俺のところにも越させろよ」とデュオニュースの肩を叩きながら、笑っている。



「半年後くらいだろう。もしかしたら一年くらい掛かるかも知れん」



「まあいいだろう。どんな奴か楽しみ待っていてやろう」



 ドワーフの鍛冶師二人は、久しぶりにいい仕事のきっかけができたと、仕事場に戻っていった。

後書き


作者:狩坂 東風
投稿日:2012/12/17 21:59
更新日:2012/12/17 21:59
『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。

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