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作品ID:1416
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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


第五章「ドライセンブルク」:第9話「ドライセンブルク再び」

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第5章.第9話「ドライセンブルク再び」



 翌日は天候も回復し、再び冬晴れになった。

 クロイツタール公の護衛はノルトハウゼン騎士団が務め、四十騎が付き従う。アマリーのために馬車も用意され、俺も一緒に乗り込むことになった。

 フーゴの荷馬車の思い出があったので、揺れを心配したが、かなり上等な馬車を用意してくれたのか、揺れは小さく、乗り心地は非常にいい。

 開放型の馬車だが、騎乗とは違い、毛布などで防寒をすればかなり暖かい。

 アマリーは相変わらず無表情なままだが、少しずつ俺の言葉に反応してくれるようになってきた。



 二十五マイル=四十km先のパルヒムには、午後3時頃到着。町一番の宿に宿泊する。

 パルヒムには第一騎士団の五十騎がすでに到着しており、ドライセンブルクまでの護衛をすると聞いた。



 パルヒムでは何事も起こらず、翌日、再びドライセンブルクに向けて出発した。

 ノイレンシュタットまでの二〇マイルを六時間掛けて移動し、午後二時にエーベ河の北岸に到着。行列を無視し、浮き橋が掛かった直後に渡河を開始する。



 慣れたもので五〇騎と二両の馬車は三十分で渡河を完了させる。



 水路は利用せず、陸路十マイルを二時間半で走破し、薄暗くなった午後五時頃にドライセンブルクの東門に到着する。

 さすがに王国の重鎮、門での検問などなく、すぐに門を潜れ、王宮に近いクロイツタール公爵家の屋敷に到着した。



 屋敷に入るとずらりと並んだ公爵家の家臣、使用人たちの出迎えを受ける。



 俺はやっぱり公爵は偉いんだと妙な感想を持ってしまった。俺が接する姿は大貴族というより、気さくな武人というイメージが強い。

 人口三百万人、この世界の大国の一つを動かす人が王宮内でどんな感じなのかは判らないが、あとで会ったら気圧されそうだ。



 屋敷に入り、俺とアマリーは客用の部屋に案内される。

 部屋はかなり広く、二間続きのいわゆるスイートルームで調度品の価値などわからないが、置いてあるテーブルや燭台、ガラスの入った窓など、この世界でも超一級の品なのだろう。

 高級ホテルなら一泊数十万円以上はするんじゃないだろうか。



 小市民の俺はどうも落ち着かないが、専属のメイドが付いている。食事もここでとるそうでその点だけは安心した。公爵と一緒に大食堂などと言われたら、何を食べているのか判らなくなることだけは間違いない。



 部屋に通された後、特に何も連絡がなかったので、食事を頼み、ゆっくりと休ませて貰う。考える時間があると、明日以降のことを考えてしまい、国王に謁見させられるかもと思うと気が重くなる。



 その夜は公爵からの呼び出しも無く、アマリーに話しかけるだけで時間が過ぎていった。

 彼女はメイドの手により湯浴みを済ませており、公爵家より提供された上等な服を着ているため、当初の薄汚れた貧村の村娘といった感じは無くなっている。



 この三日間はほとんど食事を取っておらず、元々白い肌が更に青白くなっているような気がする。

 村を救えなかった代償行為ではないが、彼女の無表情な顔を見るとどうしても笑顔を取り戻して欲しいと思ってしまう。



 もう一つ心配事は、この先のことだ。

 公爵に頼めば、公爵家の小間使いとして雇ってもらえるだろうが、知り合いが誰もいないところで大丈夫なのだろうか。

 とは言っても俺が引き取るのもちょっと躊躇われる。元々、屋敷の管理の人員を手配しに来たとはいえ、見ず知らずの男の世話になるのは彼女も嫌なのではないか。



 そんなことを考えながら、ここ2日間続けているアマリーとの会話に挑戦する。

 年齢や好きな食べ物、出来る仕事など、俺が思いつく話題は少ない。結局、自分の話をするはめになり、会話というより独り言になっていく。

 ベッカルト村のこと、ゴスラーのこと、大街道を旅したこと、シュバルツェンベルクで迷宮には行ったこと、できるだけ関心を引くように話していく。

 この二日で彼女も少しだけ表情の変化を見せるようになってきている。俺がドライセンブルクにいるうちに他の人とのコミュニケーションがとれるようになって欲しい。



 その日の深夜、アマリーが俺のベッドにそっと入ってきた。

 俺の横に来ると小さな声で「手を握ってほしい」と言ってくる。

 暗くてよく判らないが、家族のことを思い出し、泣いていたようだ。

 俺は黙ってアマリーの手を握り、安心させるように頭を撫でる。アマリーは少しだけ安心できたのか、数分で寝付き、小さな寝息が聞こてきた。

 俺も旅で疲れていたのか、すぐに眠りに就いた。



 翌日、朝食後に公爵より呼び出しがあった。



 公爵は国王に謁見し、今回の事件の裁定を頼むようだ。

 今日一日は王宮に行くこともないから、ドライセンブルクでの用事を済ませてもいいと言われている。

 但し、屋敷の外での単独行動は厳禁。屋敷を出る場合は、護衛の騎士二名を連れて行くことを約束させられた。



 時間ができたのでドライセンブルクに来た一番の用事であるデュオニュースの工房へ行くことにした。

 アマリーは着いてきたがったが、午前中に用事を済ませて戻ってくると約束し、何とか思い留まらせることができた。



 外出の話を公爵家の家令にすると、二名の騎士が俺の部屋にやってきた。



「自分は、クロイツタール騎士団ドライセンブルク駐屯部隊の騎士アクセル・フックスベルガーと申します。タカヤマ様の護衛を命じられました」



「同じくテオフィルス・フェーレンシルト」



 二人とも二十代前半の若い騎士でクロイツタール騎士団の紋章入りのハーフプレートを身に着け、腰にはバスタードソードを佩いている。

 アクセルが一八五cmくらいの細身のイケメン騎士。金色の髪に蒼い瞳で第一印象は、「さぞ、もてるんだろうな」。

 爽やかな笑顔でフレンドリーな感じで話しやすそうだ。



 テオフィルスは二m近い大男で赤銅色の髪に濃い髭、第一印象は「赤熊!」だった。仏頂面で無口なため、話しかけにくい。



「タイガ・タカヤマです。貴族でも騎士でもありませんので、様付けは不要です。アクセル卿、テオフィルス卿とお呼びすればよいでしょうか」



 アクセルが一瞬キョトンとした顔をし、テオフィルスと顔を見合わせる。

 アクセルが間違えたのかなという表情を見せ、「”団長付”と伺っておりましたが……」と、もごもご聞いてくる。



「一応、”団長付”のエンブレムを頂いておりますが、正式に騎士団に採用されたわけではありませんので、お気遣い無く」



 二人の頭にクエスチョンマークが飛び出している。アクセルが何とか復活し、



「団長付と言えば、バルツァー副長以外はタカヤマ様だけです。私は副長代理に就任される方かと思っておりました」



(やっぱり公爵に嵌められている気がするよ)



 二人に事情を説明し、結局双方”殿”付きで呼び合うことで折り合いをつけた。



 二人を引き連れ、デュオニュースの工房に向かう。

 二人と雑談(ほぼアクセルだけが話していたが)しながら、町を歩いていく。

 二人とも二十一歳で、騎士団入団も同じ年の同期。昨年、念願の正騎士に昇進したそうだ。

 工房に近づいていくと、二人が徐々に緊張していく。

 不思議に思い、理由を聞いてみると、デュオニュースに剣を打ってもらいたいが、拒絶されるのが怖くて、未だに工房に行っていないからだそうだ。

 更に突っ込んで聞いてみると、



「自分たちの直属の隊長がデュオニュース師を訪ねたのですが、手を見ただけで門前払いにされたそうです。自分たちは隊長の足元にも及びませんから」



 デュオニュースに認められた俺が下手なことを言うと反感を買いそうなので黙っておく。



(しかし、デュオニュースさんって何を見ているんだろう?)



 工房に着き、二階の店舗に行くが、デュオニュースはいなかった。

 徒弟らしい店番に伝言を頼むと、突然一階の工房の方に転がるように駆け込んでいく。



「親方! タイガさんが! タイガさんがきました!」



 すぐに階段を駆け上がる音がし、デュオニュースが現れる。



「小僧よく来た! 剣はできてるぞ!」



 デュオニュースは俺に一声かけると、すぐに徒弟の一人に指示を飛ばす。



「ヤス(ヤスバールの愛称)! ダン(ダンクマールの愛称)に伝えろ! 例の小僧が来た。誰の相手をしてようがすぐに飛んで来い」



 ヤスと呼ばれた徒弟は「へい、親方!」と一声返事をすると、店舗の外へ駆け出していく。

 何が起こっているのかわからないが、今までの経験上、ここで何か聞いても碌なことはないと思い、黙っている。俺の後ろでは、アクセルとテオフィルスの二人も固まっている。



 デュオニュースは一言「小僧、下に行くぞ!」と言い、勝手に下に下りていこうとする。

 相変わらず、マイペースなことだと思ったが、後ろの二人を置いて行くわけにはいかないので、一緒に行っていいか聞くと、振り向きもせず「好きにしろ!」との答えが返ってきた。



 工房横の試し斬り用の土間の部屋に行くと



「小僧。ここに来たということは、それなりの腕になったと言うことだな。見させてもらおう」



 デュオニュースがそう言ったので、愛剣を抜こうとしたとき、



「ちょっと待ってろ。こっちの準備が済んでからだ」



 俺は何を待っているのか判らないが、とりあえず大人しく待つことにする。



 十分もすると工房の方の扉から、デュオニュースと同じくらいの年のドワーフが駆け込んできた。後ろには弟子らしい男たちが鎧を着せた訓練用の木偶人形を抱えて入ってくる。

 ドワーフが、息を切らせながら、



「デュオ(デュオニュースの愛称)、飛んできたぞ。その小僧はどいつだ!」



 デュオニュースが俺を指差し、



「こいつがその小僧だ。小僧、こいつはダンクマール。お前がファイアボールで壊した鎧を作った鍛冶師だ」



 ダンクマールというドワーフの鍛冶師を紹介(?)される。



 デュオニュースとダンクマールの後ろで頑丈そうなプレートメイルを着けた木偶人形が設置されていく。



「デュオ、ターボル伯も来ているが構わんだろう」



 どうやら、第二騎士団長のターボル伯をほったらかして、本当に飛んできたようだ。



(本当にお偉いさんを捨ててくるかね。カスパーのパーティのユルゲンが”変人”っていうのが良く判る)



 後ろの若い騎士は目を丸くしたあと、ターボル伯に騎士の礼をする。ターボル伯も答礼を返すが、気さくな人なのか、苦笑しながら構うなと言っている。



 準備ができたようで、デュオニュースが



「小僧、そこの木偶をディルクの剣で斬ってみろ。切り裂けたら合格だ」



 木偶人形を良く見ると、麦藁で出来ていない。鋳造品のように見える。



「デュオニュースさん。これって”鉄”ですよね?」



「ああそうだ。魔術師の練習用の標的だ。ちなみにそのプレートメイルはダンの自信作だそうだ」



 デュオニュースはニヤリと笑いながら、そう答えてくる。



(ディルクさんの剣の切れ味がいいって言っても、某盗賊の子孫の刀じゃないんだから、鉄は切れないでしょうが)



「剣が折れたり、痛んだりすると困るんですが……」



と泣きついてみるが、



「折れたら新しい剣をやる! さっさとやれ!」



と取り付く島もない。



(鋳鉄って、鍛鉄より硬度は高かったんじゃなかったっけ? 絶対折れるか、曲がるよ……)



 俺は心の中で愛剣に別れを告げながら、標的の木偶人形の胸目掛けて、ミルコ仕込みの強撃を打ち込む。



 ザクッという鎧を切り裂いた音の後に、ガッ、キィーンというつんざくような金属同士が打ち合わされる音がして、剣が止まる。



(やっぱり無理だよな。鋼のプレートが切り裂けたところでOKにしてもらえないかな?)



 剣を引き戻し、刃を見る。



(あぁぁ、やっぱり刃が潰れてるよ。この程度なら研ぎで何とかならないかなぁ……)



 ダンクマールは木偶人形に駆け寄り、信じられないという顔で切り口を見ている。

 俺は切先の一部が潰れている愛剣を見つめ、悲しい思いに囚われているとデュオニュースが怒鳴りつけてきた。



「小僧!誰が鎧ごとぶった切れって言った!」



「へぇ?」



「てめぇはいつも鎧ごとぶった切るのか? 違うだろうが、いつも通り斬れって言ってるんだよ!」



(最初の”ふり”だと普通、鎧ごとと思うでしょうが!)



 仕方がなく、再度、心の中で愛剣に別れを言ってから剣を構える。

 いつも通りの攻撃と言われ、突きを中心にした攻撃が思い浮かぶが、切り裂けと言われたことを思い出し、狙撃+強撃のコンビネーションで首部分を狙う。



 再度、ガッキッという音の後にパッキーンという音が続く。

 さっきの胸に打ち込んだ手応えと違い、剣を振り抜ける感じだった。

 一瞬、剣が折れたと思ったが、ガランという音共に木偶人形の首が落ちていく。



(斬れたというより、繋ぎ目が折れたと言うべきなんだろうな)



 剣を鞘に収め、落ちている人形の首を見に行く。

 やはり、鋳造の繋ぎ目を叩ききった感じで”斬れた”ようには見えない。

 恐る恐るデュオニュースを見てみると、呆れたような顔で俺を見ている。



(不合格かな?この剣だけでも手入れしてもらおう)



 デュオニュースに剣の手入れを頼もうと近づいていくと、



「小僧、いや、タイガ。おめぇ、誰に習った」



 初めて名前を呼んでもらい、「へぇ?」と呆けていると、デュオニュースは静かに話し始めた。



「こいつの首を落としたのは、おめぇで3人目だ」



 俺は答えを返さないと怒鳴られると思い、ミルコに習ったことを話す。



「ミルコか。それで……」



 珍しく怒鳴りもせず、考えこむように言葉が消えていく。



「二人のうち、一人はミルコ。もう一人はグレゴール・ローゼンハイム。当時はグレゴール・シェーンハルスだったがな」



「えっ! ミルコなんですか? クロイツタール公爵閣下じゃなくて?」



「コンラートは鎧を着せていないにも拘らず、首の一部を砕いただけだった」



 俺は何かの間違いだと思い、思っていたことを口にする。



「今回の木偶人形は不良品だったんじゃないですか。切り口を見ても”斬れ”ているようには見えませんよ」



 デュオニュースは何を言っているんだという顔をしながら、



「良く聞けよ。鋳物がスッパと切れることなんてありえねぇ。仮に亀裂があっても打ち込んだ場所の亀裂が広がることはありえねぇ」



 確かに首に亀裂があり、それを拡大させるなら出来るだけ亀裂=支点から遠い頭に衝撃を与える方がいいだろう。デュオニュースは話を続けていく。



「こいつの厚みは四分の一インチ(=約六mm)ある。砕くんじゃなくて切り落とすにゃ、相当なスピードで打ちこまねぇと無理だ」



 少し間をおいて、思い出すように



「グレゴールの野郎はあの馬鹿力で胴体をぶった切りやがったがな」



 俺は後ろの視線が気になり、



「俺の場合はまぐれですよ! だって剣を潰しそうですし」



「ほう、まぐれでできると思っているのか。おい、後ろのデカぶつ。おめぇやってみろ」



 デュオニュースはテオフィルスに声をかけ、一本のバスタードソードを持ってきた。

 弟子たちが新たな木偶人形を設置し、テオフィルスはどうしたものかとキョロキョロしている。



 ターボル伯爵がテオフィルスに「一度やってみてはどうか」と話しかけ、テオフィルスもようやくやる気になったようだ。



 テオフィルスが木偶人形の前に進み、周りに一礼したあと、バスタードソードを両手で握り、木偶人形に斬りかかる。

 見事に首に命中し、バッキーンという音が辺りに鳴り響く。

 だが、木偶人形の首は少し割れているのみ。テオフィルスは剣を取り落とし、腕を押えている。



「普通はこうなるんだ」



 デュオニュースは俺にそう言ったあと、



「おい、でかぶつ! あとで剣を見繕ってやる。時間を見つけて工房に顔を出せ」



 テオフィルスは満面の笑みを浮かべ、直立不動の姿勢でデュオニュースに礼を言っている。横でアクセルの悔しそうな顔が対照的だ。

 デュオニュースは俺のほうに向き直り、



「おめぇの剣を持ってきてやる。ちょっと待ってろ」



と言って、工房の奥に消えていった。



後書き


作者:狩坂 東風
投稿日:2013/01/08 22:29
更新日:2013/01/08 22:29
『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。

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作品ID:1416
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