小説を「読む」「書く」「学ぶ」なら

創作は力なり(ロンバルディア大公国)


小説投稿室

小説鍛錬室へ

小説情報へ
作品ID:1801
「異界の口」へ

あなたの読了ステータス

(読了ボタン正常)一般ユーザと認識
「異界の口」を読み始めました。

読了ステータス(人数)

読了(68)・読中(0)・読止(0)・一般PV数(205)

読了した住民(一般ユーザは含まれません)


異界の口

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


三章 小夜子 三

前の話 目次 次の話

 汽車はくねくねとした山を越え、田んぼの真ん中を走り、大きな街を二つ超えます。私は少し眠ってしまいましたが、セイ様とホタル様はずっとお話をされていたようです。
 長いトンネルに入ったとき、セイ様が突然言われました。
「やっぱり、一回実家に帰ってみるよ。」
 やけにはっきりした声に、私の頭が起きました。それを聞いたホタル様は「そう。」とだけ言って、セイ様に故郷はどのあたりかと聞かれています。私はついていけなくて、黙ってお二人を見ていました。
 そうしてセイ様は故郷で下りられました。
 学園の近くとはまた違った風景の山が、奥まで続いています。
 セイ様は、ホタル様に周辺の地図ののった本を渡していました。
「じゃあ、俺はここで。海まではあと三駅くらいじゃないか。」
「ありがとう、セイ。」
「お元気で、セイ様。」
 私の挨拶に、セイ様は豪快に笑いました。
「また学園で会えるだろうさ。」
 そういえばそうでした。
 脱走した身でありながら、セイ様は帰る気満々です。
 笑顔で手をふることができました。

 セイ様と駅舎が完全に見えなくなってから、私はまた気がぬけたようにうつらうつらとしていました。ホタル様も同じようです。
「寝ちゃダメだよ、小夜子嬢。」
「眠るわけがありません。昨夜はぐっすりと眠りましたから。」
 それでも、睡魔に勝つことはできませんでした。
 一瞬意識が飛んで、はっと目を覚まします。目の前のホタル様はすやすやと眠っておられました。
 まったく、何てことでしょう。私には寝るなとおっしゃったくせに。
 少し腹が立って、わざとらしく足をぶつけてみましたが、うんともすんとも反応がありません。くやしさがつのりました。
 眠気はすっとんでいます。
 ふと窓の外を見てみれば、そこはどこか見たことのある風景でした。
 言い知れぬ不安が押し寄せて、今度は強めにホタル様を小突きます。
「ホタル様、ホタル様。」
 耐えられなくなって強くゆすると、ゆっくりとホタル様が目を開きました。
「……どうしたの?」
「地図をお貸しください。」
 私の様子に何かを感じたのか、ホタル様はすばやく本を取り出しました。広げると、地図と共に路線図が出てきました。
「まあ、なんてことでしょう。」
 のぞきこんだホタル様は、首をかしげています。
「どうしたのさ。」
「ホタル様。私たち、寝過ごしたようでしてよ。」
 窓の外は、私の故郷、首都の風景が広がっていました。
 朝、私たちがのりかえた駅からは、首都行の汽車が二本出ます。
 一つは、私も利用したことのある首都直通の汽車。
 もう一つは、今私達が乗っている汽車です。こちらは、遠回りをして海まで行くのです。
 一通り説明すると、ホタル様は納得したようにうなずかれました。
「つまりぼくらは、寝過ごして首都まで来たわけだ。」
「どうされます?」
 ホタル様は、「とりあえず次の駅で降りよう。」と言われましたが、駅に着いてみれば、そこは終点の首都中央駅でした。

後書き


作者:水沢妃
投稿日:2016/08/15 08:07
更新日:2016/08/15 08:07
『異界の口』の著作権は、すべて作者 水沢妃様に属します。

前の話 目次 次の話

作品ID:1801
「異界の口」へ

読了ボタン


↑読み終えた場合はクリック!
button design:白銀さん Thanks!
※β版(試用版)の機能のため、表示や動作が変更になる場合があります。
ADMIN
MENU
ホームへ
公国案内
掲示板へ
リンクへ

【小説関連メニュー】
小説講座
小説コラム
小説鍛錬室
小説投稿室
(連載可)
住民票一覧

【その他メニュー】
運営方針・規約等
旅立ちの間
お問い合わせ
(※上の掲示板にてご連絡願います。)


リンク共有お願いします!

かんたん相互リンク
ID
PASS
入力情報保存

新規登録


IE7.0 firefox3.5 safari4.0 google chorme3.0 上記ブラウザで動作確認済み 無料レンタル掲示板ブログ無料作成携帯アクセス解析無料CMS