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作品ID:1893
「嵐王焔姫物語」へ

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嵐王焔姫物語

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / R-15 / 連載中

こちらの作品には、暴力的・グロテスクな表現・内容が含まれています。15歳以下の方、また苦手な方はお戻り下さい。

前書き・紹介


閑話「守るべきもの」

前の話 目次 次の話

ザレンさんのサイドストーリーです
本編とはまったく関係ないっす、よろしくね!


嫌いだった
冒険者というものが私は大嫌いだ、今も変わらないのかもしれない
きっかけはあの日のことだ
・・・神なんて信じちゃい無い、・・・だがその時は初めて神を恨んで呪った思い出がある、・・・もはや懐かしい


少しだけ、昔話をしよう
これは、私が冒険者になるまでの話だ
「ルンディルデ村侵攻戦」
私が冒険者になる前、というより、私が六歳のころ、故郷が魔物侵攻戦の戦場となった
冒険者が出来てから約20年たった頃におきた魔物侵攻戦だ
冒険者がたどりついた時はすでに手遅れ、村の住民は全て魔物に食われ、住宅は燃やされた
本当に、・・・何もかもが手遅れだったのだ
当然の事だが、私の親は魔物に食われた
しかもその当の私は、それを間近で見ることとなった、・・・今でも夢に現れることがある、人間最強と謳われても、結局夢にも勝てない弱者なのだ
魔物は子供の肉に用はない、俺は投げ飛ばされた
そしてーーー
「うっ・・・、これもひどいな、くそっ・・・」
その声で少年は息を吹きかえす
・・・最悪の状況だったらしい
腹に木柱が刺さり、血は少しずつ零れる
だが、少年はまだ生きていた、少しだけ見える内臓、うつろな目は何も思わない、というよりも何も思えない狂気の瞳、・・・見ているだけで、吐きそうになるほどだったそうだ
だがそれでも少年は生きていた、・・・息をしているのだ
それが、私である、人間最強の誕生というのはこうも小物めいた生まれかただった
「生きてる!・・・生き残り一名!状況は瀕死!手当てが必要だ!ヒーラー部隊を要請する!・・・ああ!早くしろ!時間はない!・・・よし!少しだけ待っててくれ!今手当てするからなっ!」
最早手遅れ、そういえる状況だった
その兵士は知っている医療の知識を全て生かし
血を零れないようにして、布でそれをせき止めた、お陰で血は止まり、・・・それが功をせいしたのか、私は一命をとりとめた、その後ヒーラー部隊による救護で、後遺症は何とかまぬがれたそうだ
そこにいたのは、先代冒険者総ギルドマスター、「神導 草薙」・・・私の義父であり、命の恩人だ
その時のことは覚えていない、ただ

「・・・あ、あああ、ああーーー」
そんな少年のうめき声が空を響く
目覚めた場所は冒険者本部、・・・救護エリアだ
「起きてくれたか・・・、良かった・・・」
青年は、そう喜ぶ
「お前っーーー!」




激しい怒りで満ちていたことだけは覚えている






少年は叫ぶ
狂気の沙汰ではないだろう、一人だけ生き残るなど・・・
「お前らがっ!!お前らがもっと早くきていれば!俺も母さんも父さんも生きていたんだ!冒険者は俺達を魔物から守る為に戦っているんだろうが!なんで・・・、なんでなんだよっ!」
総ギルドマスターは、土下座をしてこう謝る
「・・・全ては総活である私の責任だ、・・・君の家族も、友も全て殺したのは私だ!・・・謝っても謝りきれない、言い訳も名誉で逃れることも私はしたくない・・・、そこにナイフがある、・・・殺せ、それがせめてもの償いだ、さぁ、やるんだーー」
青年は死を覚悟していた
この頃の総ギルドマスターといえば、失態はほぼ責任転嫁し、それを逃れていた
だが、このギルドマスターは違った、・・・それを嫌い、誇りをもって戦いかったのだ
だが、これも一つの定めだろう
全ては俺の責任だ、もっと早く行動できれば、もっと早く情報網を強めていれば!そう、今更たらればなど並べるのも惜しい、だからこそ、誇りとして俺の命を葬る権利は君にある、さぁ、・・・やるんだ
その思いは、ひしひしと伝わった
少年はナイフを手に取る
震える手はゆっくりと彼の心臓に向ける
青年は目を閉じ、心を安らかにするーー
だが、少年はその手を離し、ナイフは床に落ちる
「・・・お前を殺したってなんの意味もねぇじゃねえか、ーーー殺さなきゃいけないのは魔物なんだろ!?なんで人間を殺さなきゃいけぇねぇんだよ!お前を殺しても家族は戻らない!恨む依然の話だよ!」
青年はハッとした顔になり、苦しい表情をする
「そうだな・・・、・・・・その通りだ、私はーーー」
「いや。私が、君を守らなければならないな、・・・君が望むのならば、私の養子となってほしい、・・・絶対に守ってみせる」
守られたくなんかなかった
でも、私は義父・・・、いや、師匠のその覚悟の目に動かされたのだ






「ふむ、あちらにおられるのが・・・」
「義理の息子です、黙々と剣に、というより、様々なものに励んでいるんです」
「ほぉう・・・、さすが先代の養子ですなぁ、教えが違います」
そう、老人は笑う
「いいえ、私は彼が望んだことしか教えてません、・・・本当は戦いになんかだしたくありませんから」
ここはヤマトの六道殿、師匠、草薙の家だ
「はっはっは!ご冗談はやめて下され!・・・冒険者として将来有望でしょう、さて、私は失礼しましょう、貴方様と養子様の訓練の邪魔はさせられませんしな」
「あの、ですから・・・」
老人はそんな声は聞こえず、行ってしまった
「・・・すまないな、期待を持たせたくはなかったんだが」
寂しそうに、そう言う
緑の髪と、それによくあった双角
彼は竜族だ、・・・いわゆる、翼を持つものは少ない竜族、東洋竜だ
「別にいい」
そっぽむく彼に、草薙は笑う
「・・・そうか、ありがとう、ザレン」
ザレン、今や捨てた名だ
・・・私は草薙の養子として、将来に期待を持たれていた
少なくとも、私が黙々と修練していたから、期待も増えたのだろう
だが、そのときの私はそんな思いなどなかった
殺したい、人ではなく魔物を全て
強い復讐、どす黒い執念
それが、私をどれだけ辛い修練からも逃がしはしない強固足る鎖だった、何千キロ走っても、数千万回剣を振るっても、その思いはきえはしなかった
「・・・魔物を殺す」
そう、その言葉が口癖だ
師匠は何を思っていたのだろう?
悲しそうな感じはうすうす感じていた
だが、それでも私は止まらなかった、・・・止めるつもりはなかった



やがて俺は冒険者になる
その頃は確か・・・、草薙の教えを受け、サムライだった気がする
魔物を切ると溢れる血、鉄のような匂い、真っ赤な肉・・・
魔物を殺せば殺すほど、俺は喜びに満ちた
ああ、これが魔物殺しの快感、・・・今思うとおぞましい物だ

仲間が隣で死んでも、私は知らない、魔物を殺せりゃ、それでいい、・・・その姿はいつしか、狂戦士とまで呼ばれるほどとなった

「ザレン、・・・魔物を殺して楽しいのか?」
そう、師匠は優しくとう
「ああ、楽しい、楽しすぎるくらいだ」
「・・・そうか、・・・なら、俺はーー」
その時伝令が走る、・・・そう、『あの日』だ



「敵襲!東32!斥候部隊は全滅!至急戦闘を開始せよ!」
冒険者史上最悪の日だ
「王都侵攻戦、作戦名、『ヴィオウルフロード』」
王都が領域に包まれ、冒険者の無限復活はなくなくる
魔物の数は史上最大、凶悪さもそれに比例していた
・・・もし仮に冒険者が負けると
その瞬間、王都は終わりを告げることとなる
「・・・私が出向こう」
草薙は刀を手に取り、立ち上がる
「待て、俺が行く」
「だめだ、君は私が守る、・・・ここにいるんだ」
「嫌だ!・・・物足りないんだ、殺しても殺しても物足りない!冒険者として魔物は葬るべきだろう?・・・どけろよ!早くどけ!」
そういって、草薙をはねのけた
その時、彼は・・・、師匠は初めて怒った、私が育てられたときでも一度も師匠は怒らなかった、それだけでなく、私がどんなにわがままをいっても、それを許してくれた、・・・だが今回は違う
「・・・ザレン!殺すだけが冒険者だとでも思っているのか!」
その怒りに俺は反論する
「・・・俺だけだ!」
すると、師匠は悲しい顔をする
「そうか・・・」
・・・今まで一番、深く悲しい顔だった
「・・・君はこの戦いで真に戦うべにものをわかってはいない、・・・死にたければ勝手に魔物を殺してるんだ」
きっと、止めても無駄だと感じたのだろう
それとも彼は話している時間も惜しいと判断したのか
私の返事を聞く前に行ってしまった
私は彼とは逆の方向に向かった、もう二度と顔など合わせられない・・・、そう、これは決別として
俺は王都の門を出る
ここが、戦場・・・
そこには沢山の冒険者が戦っていた
あるものは肉を裂かれ、またあるものは火に包まれ燃え上がる
最早、領域に包まれた場所で、並大抵の冒険者はアーマーもほぼ意味をもたなくなる、一度くらいなら防ぐだろう・・・、だが二回はもたない、二発くらったら容赦なく死が待つだろう
この世の地獄があるならば、まさにここなのだろう
作戦などというものは、こうも簡単に砕けるものなのか
魔物との物量勝負に冒険者が打ち勝つには個々の強さと等しい物量だ

魔物は容赦なく私に襲いかかる
刀を引き抜き、袈裟斬りの如く、三日月を描くように、魔物の首と脳天を二つに裂いた
飛びかかる魔物を切る、魔物の弱点など、考えている暇はない
一度に何十とやってきても、それをなんども切り伏せる、なんどもなんどもなんども切って切って切り刻んでぐちゃぐちゃにする
・・・・刀は血に染まるが、それを払う暇すら惜しい
叫び、怒号、悲鳴、狂哭、その声をも切り開く、一人の狂戦士
・・・最強の人間、私の始まりだった
背中から魔物が奇襲かけて、私は頭を大きな鎚でぶちかまされる
その瞬間、アーマーは全て砕けた、・・・だが生きている、『次に食らわなければ問題はない』食らえば死ぬだけだ、何も怖くはない
そう、ここが死に場所、復讐を晴らし魔物を切って切って首を剥いで潰してまたきってどろどろになるまでなんども刺す、人生史上最高最凶のデスゲーム

呪文の火炎弾すら、彼は刀で打ち払い、弾き返す
何百、何千の魔物を切ったか、とうに思い出す手などない
ただ、私はただ、魔物殺しをしていた





数時間がたった
辺りを見回すとバラバラになった死体と魔物で溢れ帰る
血の海だ、冒険者と魔物とそれらが入り雑じった、生暖かい紅の海
持っているものは何もかも赤く染まり、ポケットは血が溜まっている
三千人の冒険者の中で、・・・俺だけが生き残った

・・・寂しかった
死体を踏んでも何も返すことはない、弔いの気持ちは沸かなかった
「あぁ・・・、終わったのか・・・」
・・・・!
不意に殺気を感じる
振り向くとそこには魔物がまだ残っていた
鋼鉄の肉体を持った魔物・・・、そうだその魔物は「ディビシァン」
俺は刀を抜き取った、・・・だがそれはもう限界を迎えており、跡形もなくおれていた
対抗策を考えたくはない、・・・詰みだ
父母と同じように食われるのか
それともここにある惨殺死体のようになるのか
魔物の手が俺に降りかかる、目を閉じ、・・・死を覚悟する
あの時の、草薙のように
だが・・・、俺は死んでいなかった
「ザレン・・・、生きていたか」
その魔物の胴体は貫かれ、絶命する
だが、そこにいたのはその棘まみれの腕を真っ向からくらい、血だらけの姿と、なった、・・・草薙だった
「・・・よかった、ようやく、君を・・・守れ、た」
彼は倒れた、腹から大量の血を吹き出し、死んでいた
死因はこの魔物の攻撃を食らっただけではなかったらしい
毒を受けていたそうだ、既に致死量を越えていたらしく
生き延びているだけでもとてつもない状態だったそうだ
俺は泣いた、大地に響くほど叫んだ
ああ、これが冒険者なのか、大切な人がいなくなる毎日を過ごし、明日は自分が死ぬかもしれないという、・・・これが冒険者か
友も、何もかもが失われていく日々
・・・そしてまた、私は一人になるのか

「きゅぃ・・・」
一匹の魔物がこちらを見つめる
弱々しい姿からして、もう瀕死なのだろう
だが、私に殺気を向けていた
「何だ・・・、殺すなら殺せ」
「みぃ・・・?」
その姿を見て魔物は逃げ去った
殺そうと気は起きなかった、・・・草薙が持っていた刀を奪えば簡単に殺せるのだ、・・・その気にはならなかった





「あそこにいるのは・・・、生存者だ!」
棒立ちの俺に声をかける兵士
「君、冒険者だね?・・・すまない、名前を教えてくれないか?」
「俺?俺はーーー」

名前は捨てよう、彼に償いの意思をこめて

「・・・ヴィオ・デヴィシァンズ」
「デヴィシァン?そこにいるのは!・・・草薙様じゃないか!」
「・・・師匠は死んだ、俺を庇ってくれたんだ」
そういって、空を見上げる
俺は・・・、過ちを犯していたのだ、・・・本当は守りたかったのだ、師匠を、守りたかったのに・・・
「何故お前が死ななかったんだ!お前が庇えば助かっただろう!」
そう、兵士は怒号を浴びせる
私は絶望した
守ることに価値がある、だが守るものにも価値があることに
冒険者は民を守る、だが、その民にさえ、優先順位があるのかと
・・・
「俺は・・・」









冒険者が嫌いだった
この世で一番・・・、嫌いな組織とも思えた


俺はその後さらに修練に打ち込んだ
悔しかった・・・、こんな組織いつか見返してやろう


いつしか『人類最強』と呼ばれ、全冒険者中一位の名誉を受けて
・・・・私は総ギルドマスターとなった
・・・・あの日の師匠と同じようになったのだ

変われたことなどなかったのかもしれない




それでも・・・、私は皆の盾となろう


守るべきものを守る為に戦う盾ーー
「おーい、ヴィオはん、起きてますか?」
白狼族の女性がそう聞いてくる
「すまん、・・・仮眠をとっていた」
「ほんなら、無理はせえへんように、なんてったって総ギルドマスターなんですから」
「・・・ああ、そうするよ」
そういって、赤いリストボードを手に取る
・・・今日の死人報告だ
総ギルドマスターのみ見ることを許されている



・・・今日も16人守れなかった、魔物領域死んだもの達だ
せめて、弔おう、師匠もこうしていたのかもしれない








私は守る為に全てを捧げよう
大切な人を守れない、これのどこが人類最強だろう?
それでも、私は冒険者として、全ての命を守る為に



『今日も戦おう』
これで、話は終わりだ、・・・どうだ?人類最強なんて称号は実際はとってもボロボロでゴミみたいなものだ


「師匠・・・」
墓の前にお供えをおく、研ぎ直した、師匠の刀だ
そして、ザレンという名を捨てた戦士、ヴィオ・ディビシァンはゆっくりと口を開ける・・・

「師匠、私はーーー」





「貴方のように守れていますか?」

後書き


作者:テノール
投稿日:2016/12/31 13:06
更新日:2017/01/01 00:04
『嵐王焔姫物語』の著作権は、すべて作者 テノール様に属します。

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作品ID:1893
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