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作品ID:1898
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Dear

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


Dear my lovers

前の話 目次

あなたたちへ

突然の手紙でごめんなさい。
あなたたちを驚かせるようなつもりではなかったこと、知っておいてください。
ただ、あなたたちにはどうしても伝えたいことがあって、それでこの手紙を送りました。
季節も、これを読むころには私のいるところとは違うのでしょう。
きっと、そちらは桜が散り始める頃でしょうか。葉が青々とさんざめく頃でしょうか。
私が行って、あなたと一緒に眺めるのも悪くないけれど、やはり今はこのままで構いません。
もちろんあなたが出向いてくれるのなら別の話ですけれど、こうたろう君もいるから
きっとまだ先のことになるでしょう。私のことで、色々とご迷惑をおかけしました。

あなたと初めて会った時私は、ぼんやりと
ああ私はこの人を好きになるのだろうと思っていました。
それが本当になって、まさかあなたの方から言ってくれるなんてまるで夢のようでした。
そうです。こうした、ラブレターで。覚えていますか? 
あなたがくれたものはもっと堅苦しくて、持ち前の生真面目なところがよく出ていました。
もちろん最後は便箋ごと一緒に持っていくつもりですよ。ちゃんと入れてくれましたか?
何かあるたびにあなたの顔を思い出して、何かあるたびにあなたのことを考える。
そんな生活が私の当たり前になりました。思えば贅沢の極みですね。ありがとう。
当然、あなたのことを考えるまでもなく、あなたはいつでも私の傍にいてくれましたね。

口にすることが恥ずかしいようなことでも、
文字にすると思っている以上に容易に形に出来るようです。私も相変わらずなのでしょう。
私は今でも、あなたのことを思う時があります。あの頃の私には、あなたしかいなかった。
私から愛しているとあなたに伝えても、ただあなたに羞恥心を煽られるだけでした。酷い人。
だから、私はあなたに愛を囁かれるたびにいつも満たされたような気持になったのです。
離れて暮らすことに慣れなければならないことが、こんなにも虚しくつらいことだなんて。

こんなことを知るくらいなら、私はあなたに出会わなければよかった、なんて思いもします。
それでも、自分の人生の中にあなたが、あなた達という存在がいたことが、
私に、私が負ったことの全てを含め、幸福な人生だったと思わせてくれるのです。
あなたと巡り合えたこの世界に、私の持てる全てを捧げて感謝の思いを送ります。
こうたろう君なら、きっといいお婿さんになります。それこそ、きっとあなたのように。
あなたが面倒をみてくれるなら、私も安心してもいいですよね?
安心できないのでたまには顔を出します。
だから、しばらくはあの子のこと、あなたに一任します。大変ですが、お願いしますね。
さて、私がいなくなったあとの身辺整理なんて忘れて、ひとまず新しい女性のことでも考えてください。こうたろう君にはまだまだお母さんが必要な年ですから。
嘘です。誰が何と言おうと、あなたは私だけのあなたです。
私がいなくなった後、すぐに他の女に手を出したのなら、その時は分かっていますね?
これは、離れてしまうあなたへの、最後の意地悪です。
あなたが、こんなに病で弱った女性に漬け込むような男だとは知りませんでした。
お見舞い、嬉しかった。あなたと、こうたろう君が何よりの延命措置でした。

忘れないでください。あなたたちの人生のなかに、私といた時間があったことを。
一応、これは遺書のつもりでしたが、読んでの通り、ラブレターです。
先立つ不幸を、だなんて私の最期に相応しくないでしょう?
憎らしいこの病とお別れになるのなら、
あなたと、こうたろう君とのつかの間の別れというのもいいかもしれません。
でも、あなた達の体温を忘れてしまったことが、こんなに寂しい事だとは思いませんでした。
指先の痙攣で文字が大変読みづらかったでしょう? ごめんなさい。
それでも、あなたたちは平気です。私がいなくてもきっと、

ごめんなさい。涙の染み汚れは愛嬌の一部です。お気になさらぬよう。
光介さん、約束してください。あなたは、いつまでも私の大好きなあなたでいて。
下らない私の嫉妬なんていいから、きっとまた誰か大切な人と一緒に幸せになりなさい。

光介さん、光太郎君。
二人とも、大好きですよ。いつまでもずっと。


追伸

私のお墓参りは週に一回で我慢してあげましょう。よかったですね。
書き終えるまでに、入院期間の大半を要した大作です。
芥川賞取ったら生活の足しにでもしてください。

それでは、また会える日まで。




あなたと、こうたろう君のヒロカママより

後書き


作者:灰縞 凪
投稿日:2017/01/08 00:58
更新日:2017/06/14 11:49
『Dear』の著作権は、すべて作者 灰縞 凪様に属します。

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