作品ID:1924
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■秋麦
ドライフラワー
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中
前書き・紹介
第1話 血色の世界
目次 | 次の話 |
とある時代、とある王女のお話。
大きなお城の最上階の奥の部屋、謂わば王室に、数人の兵士と家臣、それと玉座に座る国王がいました。しかし、王室の雰囲気はとても和やかと言えるものではありません。そんな中、一人の兵士がこう叫びました。
「国王!!城下町まで敵国が迫ってきているのです!このまま何もしなければこの国は崩壊します!国王!!兵士の出動命令を出してください!」
兵士の言葉を聞いても、国王は微動だにしません。何故なら、この国王は今の今まで戦うことを善しとしなかったのです。
時代は国々が領地の拡大のために他国に攻め入り、戦争が絶えないそんな時代。勿論このような状況の中で、「戦わない」という選択肢を選ぶことは自殺行為に等しく、そのような覚悟を、この国の主は選んでいるのです。国民も兵士も不思議で仕方ないがありません。
「国王!!このまま国が滅びれば領地だけでなく、王女までもが敵国に奪われてしまうのですよ?!それでもよろしいのですか?」
先程の兵士がさらに問いかけます。兵士の言葉に何かを思ったのか、国王は顔色を変えました。
敵国が、この国に攻める理由は単純で、王女が欲しいからです。
この国の王女はこの世界で知らぬ者はいない、とされるほどの美人なのです。そのような女性を世の兵士達が気に止めないはずがありません。その為、この国が堕ちるとなると、王女は白のままではいられないのです。
「国王!!本当によろしいのですか?!」
兵士は必死に訴えます。その声が届いたのか、ついに国王が口を開いきました。
「王女を…、王女をここに連れて参れ」
数人の兵士が王室を出て行き、暫くすると、その兵士達が王室の扉を開き戻ってきました。その後に続いて、それはそれは綺麗お嬢さんが王室に入ってきたのです。
一目見るだけでこの人が噂に聞く王女であると分かるほどです。栗毛色の長い髪に、大きな瞳。透き通るような肌に、真っ赤な唇。この女性に命をかけて戦争をしている兵士達の気持ちが少し分かるような、そんな女性なのです。
そんな王女様ですが、何故自分がここに連れてこられたのか、まるで分かっていないようで辺りをキョロキョロしています。困惑する王女様に国王はこう言いました。
「姫よ。この国から逃げよ」
その言葉に王女様はよりいっそう困惑しました。
「何故です!お父様!」
声を荒らげる王女様に、王室中がどよめきました。しかし、それ以上にその後の言葉にその場にいた全員が驚いたのです。
「私、この国が戦争に負けそうなことはよく分かっています。もし、自分だけが逃げてこの国が戦うと言うのであれば、私はお父様の言うことは聞けません!私も戦います!」
剣も握ったことのない王女様が戦う意思表明をしたのです。予想外の発言に、王室はよりいっそうどよめきました。
「それはならん!!!」
そのどよめきを一瞬で消し去る勢いで、国王が叫びました。国王の迫力にその場は音を無くすと、
「兵士達よ、姫を逃がしてくれ。城の前に馬車がある。行き先は、行けば分かる」
突然の命に動揺を隠せない兵士達。それでも王の命令に従うと、王女を連れていこうとしました。しかし、王女様は必死に反抗します。
「離して下さい!何故です?!お父様!何故戦わないのですか!!」
暴れる王女様を数人の兵士が取り押さえると、やっとのことで王室の外に運び出しました。
「すまない…」
国王は小さくそう呟きました。
戦う決断は下せずとも、逃がす決断だけはできたのです。
王女は二人の兵士が操作する馬車に乗せられると、抵抗する間もなく馬車が発車しました。城を出て向かった先は見渡す限りの草原。見れば、空は今にも落雷が来そうな色をしています。
「私を何処に連れていくのですか?」
ドレス姿のまま連れてこられた王女が言いました。しかし兵士が答えるのは、
「分かりません」
それだけです。
*****
もう随分と走った。乗り心地が良くない為か気分が優れない。それに不思議なことに、城下町まで攻めてきている筈の敵国を見ていない。自分の知らない道で城を出たのだろうか。何も分からない。
ついには雨が振りだす。屋根がある為、雨に濡れることはないが、しかし、雨だけではおさまらなかった。突如目の前を稲光が走ったかと思うと辺りが真っ白になった。そして、激しい音と共に体が空を舞う感覚に包まれる。
意識はそこで途絶えてしまった。
目を覚ますと、そこは空を木々が覆う暗い森の中であった。
大きなお城の最上階の奥の部屋、謂わば王室に、数人の兵士と家臣、それと玉座に座る国王がいました。しかし、王室の雰囲気はとても和やかと言えるものではありません。そんな中、一人の兵士がこう叫びました。
「国王!!城下町まで敵国が迫ってきているのです!このまま何もしなければこの国は崩壊します!国王!!兵士の出動命令を出してください!」
兵士の言葉を聞いても、国王は微動だにしません。何故なら、この国王は今の今まで戦うことを善しとしなかったのです。
時代は国々が領地の拡大のために他国に攻め入り、戦争が絶えないそんな時代。勿論このような状況の中で、「戦わない」という選択肢を選ぶことは自殺行為に等しく、そのような覚悟を、この国の主は選んでいるのです。国民も兵士も不思議で仕方ないがありません。
「国王!!このまま国が滅びれば領地だけでなく、王女までもが敵国に奪われてしまうのですよ?!それでもよろしいのですか?」
先程の兵士がさらに問いかけます。兵士の言葉に何かを思ったのか、国王は顔色を変えました。
敵国が、この国に攻める理由は単純で、王女が欲しいからです。
この国の王女はこの世界で知らぬ者はいない、とされるほどの美人なのです。そのような女性を世の兵士達が気に止めないはずがありません。その為、この国が堕ちるとなると、王女は白のままではいられないのです。
「国王!!本当によろしいのですか?!」
兵士は必死に訴えます。その声が届いたのか、ついに国王が口を開いきました。
「王女を…、王女をここに連れて参れ」
数人の兵士が王室を出て行き、暫くすると、その兵士達が王室の扉を開き戻ってきました。その後に続いて、それはそれは綺麗お嬢さんが王室に入ってきたのです。
一目見るだけでこの人が噂に聞く王女であると分かるほどです。栗毛色の長い髪に、大きな瞳。透き通るような肌に、真っ赤な唇。この女性に命をかけて戦争をしている兵士達の気持ちが少し分かるような、そんな女性なのです。
そんな王女様ですが、何故自分がここに連れてこられたのか、まるで分かっていないようで辺りをキョロキョロしています。困惑する王女様に国王はこう言いました。
「姫よ。この国から逃げよ」
その言葉に王女様はよりいっそう困惑しました。
「何故です!お父様!」
声を荒らげる王女様に、王室中がどよめきました。しかし、それ以上にその後の言葉にその場にいた全員が驚いたのです。
「私、この国が戦争に負けそうなことはよく分かっています。もし、自分だけが逃げてこの国が戦うと言うのであれば、私はお父様の言うことは聞けません!私も戦います!」
剣も握ったことのない王女様が戦う意思表明をしたのです。予想外の発言に、王室はよりいっそうどよめきました。
「それはならん!!!」
そのどよめきを一瞬で消し去る勢いで、国王が叫びました。国王の迫力にその場は音を無くすと、
「兵士達よ、姫を逃がしてくれ。城の前に馬車がある。行き先は、行けば分かる」
突然の命に動揺を隠せない兵士達。それでも王の命令に従うと、王女を連れていこうとしました。しかし、王女様は必死に反抗します。
「離して下さい!何故です?!お父様!何故戦わないのですか!!」
暴れる王女様を数人の兵士が取り押さえると、やっとのことで王室の外に運び出しました。
「すまない…」
国王は小さくそう呟きました。
戦う決断は下せずとも、逃がす決断だけはできたのです。
王女は二人の兵士が操作する馬車に乗せられると、抵抗する間もなく馬車が発車しました。城を出て向かった先は見渡す限りの草原。見れば、空は今にも落雷が来そうな色をしています。
「私を何処に連れていくのですか?」
ドレス姿のまま連れてこられた王女が言いました。しかし兵士が答えるのは、
「分かりません」
それだけです。
*****
もう随分と走った。乗り心地が良くない為か気分が優れない。それに不思議なことに、城下町まで攻めてきている筈の敵国を見ていない。自分の知らない道で城を出たのだろうか。何も分からない。
ついには雨が振りだす。屋根がある為、雨に濡れることはないが、しかし、雨だけではおさまらなかった。突如目の前を稲光が走ったかと思うと辺りが真っ白になった。そして、激しい音と共に体が空を舞う感覚に包まれる。
意識はそこで途絶えてしまった。
目を覚ますと、そこは空を木々が覆う暗い森の中であった。
後書き
作者:さち |
投稿日:2017/01/27 08:08 更新日:2017/01/27 08:14 『ドライフラワー』の著作権は、すべて作者 さち様に属します。 |
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