作品ID:1928
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オーパーツ
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
アリババ
目次 | 次の話 |
「獅子狩りに出る!」
一人の王は数十名の精鋭の戦士を引き連れると戦車に乗って草原に繰り出した。
戦車と表された乗り物は、二頭の肉付きの良い健康な若馬に牽かせたトロッコであった。
トロッコは鉄で出来ており金属製の車輪がけたたましく回転する。
鉄のボディは卵型に鋳造され、幾つもの棘が突き出しており外敵の強襲を躊躇わせる。
精鋭の戦士とは、百戦錬磨の技術と知恵を持つ、迷彩のための麻布をまとった男達であった。
染料で顔を保護色に染め、むさくるしいほどに伸ばした口髭と鋭い眼光に鍛え上げられた肉体の主である男達は、俊敏な命令をわずかな遅延も無く行動に移せる猛者であった。
戦士達は王の沈黙の命により散会すると、木製の槍を武器に静かに草原に同化していった。
王は金色の鎧を身に纏い、獅子を探しトロッコを草原に走らせる。
太陽の光を浴びてなお強く輝くその人間に恐怖の様子は無く、不敵な笑みを浮かべていた。
獅子の縄張りを傍若無人に蹂躙すると、すぐさま怒りをあらわにした獅子の群れが王に近寄ってきた。
王はトロッコを止めて、両手に剣を抜く。狂った様子で、剣で牽引した二頭の馬を刺し殺してしまった。獅子は血の臭いに興奮すると王は獅子の群れに囲まれてしまうのであった。
「食らうがいい。お前達への馳走だ」
その狂人は高らかにもてなしたつもりであったろうが、獅子はハイエナを前にしたような嫌悪感と恐怖心を抱いた。狂人を前に獅子の群れは前進を止めて周りを徘徊するようになっていた。さすがの狂人の顔にも汗が滲む。上目遣いで敵を観察すると牽制をしながら刻を待つ。
額から大粒の汗が草原に流れ落ちた事を合図にするように、獅子の群れが襲い掛かった。
----------
時は、マイロフ暦元年に近い年。
そこでは、バビロニアと言う国が栄えていた。
広い森林が広がる肥沃な土壌に豊かな王国があった。
バビロニア文明を簡素に表すならば、バビロニア王国は、2つの大河に挟まれた沖積平野にあり、2つの大河は下流でひとつになって海に注いでいた。
そして、バビロニアは豊かな農業国家であり、当時でも高い文化レベルにあった。国の中心にはジッグラトと呼ばれる上空に向かって階段状に聳え立つ王宮を中心に、街中を走る水路は造形的にも実利的にも優れ、美しい庭園が家々を囲っている。
象形文字を発達させた楔形文字は、翻訳に於いて世界の言語の中継基地となっていた。当時の世界言語は、この楔形文字から翻訳されると言うわけだ。
当時から書物が存在し、国民は庶民を含めて読み書きの素養があり、様々な物語や評論、マスメディアが流行していた。
経済に於いては、対外貿易は閉鎖的で消極的であったが、国内に於いては豊富な交易品が並んだバザーなどが催され町並みには活気があった。
宗教は重要で、どんなものにも神が宿っていた。神の名は敬われ畏れられた。
それは、この沖積大地の環境はバビロニアの歴史を通じて激変し、大地を挟み込む大河がたびたび氾濫し甚大な被害が出た事の畏怖でもあると言う説がある。
このバビロニアは歴史に於いて民族の流入、内紛、遷都、分裂そして滅亡の末生き残った「中期」の成熟した国家であり、この国の山場にあった。時の隆盛は後期にかけ没落の一途をたどる栄枯盛衰の無常からは逸していない。
「栄枯盛衰」と言う言葉は一本の曲線を描く。山なみだ。
その中で、最も突起した部分を隆盛。後半に行くに従って後期などという簡単な区分けをする。
ところが、ある歴史学者はこう言った。
「私は船乗りだった」
「今もそうだ。学者などではない。文明は単純な曲線では表せない。二千年生きてきた私は見たのだ。あの者を」
同席した歴史学者たちは一斉に笑った。
時はマイロフ暦1950年。
ブランデンブルグ法王国、鵬球の講堂にて世界から集まった文化人が一堂に会する機会があった。そこで研鑽された最先端の報告をまとめて文献に残すためだ。
「二千年生きてきた?」
誰かの揶揄に再び集合した文化人達は笑い出した。
「ああ、そうじゃ。これを見ろ」
講堂の壇上に上がっている老人が風呂敷から不思議なものを取り出した。
それは、書物でも文献でもなく、一点の出土品だった。
土くれの崩れかかったそれは、きわめて薄い二枚の粘土板。
二枚のそれは、片方に何も文字が刻まれていない粘土版ともう片方には、細かく区分けされた正体不明の小さな突起に文字が一文字一文字刻まれている。
「アリババ博士、それは何です?」
老人の名が明らかになった。彼はMJ・アリババと言った。
「わからん。分からんが、この小さな突起を押しこむと、もう一枚の粘土板に文字が浮き出るのだ。そして映し出された文字は、このボタンによって世界の文字に変換されたり、情報がこの粘土板に残るようになっておる。おそらくは、紙のいらない本だ」
「他にもボタンひとつで計算や絵なども書け、音楽も聞けるだろう」
「音楽が粘土板から聞こえてくるのですか?」
「ああ、その通りだ」
講堂はなおいっそうの笑い声に包まれた。
「博士。貴方の言ってる事が本当だとしても、貴方は再現し、その仕組みを説明できますか?」
「できんよ。だが、学者と言う見地から見れば、お主は鉄の硬さの秘密を説明できるか?どうして出来たものか説明できるのか?ランプの光がどういう仕組みで炎が付くものなのか説明できるのか?光とは何だ?お主のすぐそばにあるものだろう」
講堂に響く威圧的な言葉に、寄り集まった学者達は押し黙り、不愉快になった。
「博士のおっしゃっている事はでたらめで、話を摩り替えていらっしゃる。博士の説明された粘土板は、この時代の文明レベルとはかけ離れている。原状の理論からは不適切で不適合だ」
講堂には何時しか怒りの渦が蓄えられていった。
「私にも本当のことはわからない。しかし、文明を滑らかな曲線で表すことには抵抗があるのだよ。バビロニアの歴史に於いて、初期のこのあたりに大きな文明の鼓動が在ったはずなんだ。ウル王朝時代だ」
アリババ博士は、真剣だ。
老人の真摯な姿勢に講堂の怒気の温度が下がっていった。
そのとき、一人の学者が意見を述べた。
「博士。その粘土板を調査してもかまいませんか?解体する事になりますが?」
「うむ。実はこれは私が、ウル王朝時代の王の宝物庫から盗んできたものなのだ」
講堂には笑いのくすぶりは無く、次第に哀れな老人の物言いに興味が沸いてきた。
何を言うにも生真面目に熱意があったからだ。
「これから話すのはウル王朝時代の一人の王ギルガメシュに焦点を当てたものだ。現存する書物には彼にまつわる物語は数多く存在しまた、真偽のほどが分からないものばかりだ」
「半神の人間との紹介から始まる彼に始めて会ったのは、11月であった。ギルガメシュ王はその日も獅子狩りに赴いた」
----------
「余は決めたぞ。太陽が三度昇ったら、獅子狩りに出かける」
そう言った男は、若干二十歳にして王の座に着いた。絹の衣を纏った半裸に、宝石や金細工の腕輪、足輪、首飾りを下げたとても雅な姿であった。
「王よ。大変危険です。おやめください。どうしてそこまで獅子に拘るのですか?」
臣下が苦言を呈した。
「それはな、獅子がこの世で最も強きものだからだ。だから、余は戦う」
「戦では千戦千勝とは行きません。王に何かあってはと民は心休まりません」
「余は必ず勝つよ。獅子に挑まずして何が王だ。世界に君臨するのは強きものだ」
「王たるもの最強ではなくては、諸外国にも民にも示しがつかんよ。案ずるな、余には必勝の鎧と剣がある。後他にもな」
ある日の夜。
ひとりの大臣は王の謁見を済ませると、松明が照らし出す螺旋の階段を下りて、暗がりを移動し建物から建物へと移動し不穏な行動を見せた。
大臣はたどり着いた秘密の隠れ家で密偵と話をしていた。
「アリババ、王の宝物庫は見つかったのか?」
大臣が会っていたのはアリババという男であった。
「面目しだいもございません。大河の上流の山岳地帯の何処かまでしかまだ分からないのです」
「大枚をはたいているのだ。その程度の釣果では契約は更新できんぞ」
「必ず。ギルガメシュ王の宝物庫を探り当ててご覧に入れます」
「声が大きい。いいか、今月までに成果を出せよ」
「はい。必ず」
アリババの本業は盗賊ではなかった。船乗りであった。
一攫千金を夢見ていたが、それ以上に彼には魅力的なものがあった。
ギルガメシュ王の不死の謎だ。
「戦は勝ち名乗りが誇りだが、必ず負けるものでもある。この国には太陽暦、太陰暦があるが、全ては吉凶を占うもの。特にこの土地ではいつ川が氾濫し死の恐怖に飲まれるか分からない」
「皆は怖いのだ。怖いものがあるのだ」
「特に死はもっとも怖いものであるはずだ。戦場に出ているものならばなおさら鈍感にはならない」
「なのに、ギルガメシュ王は幾度と無く獅子に戦を仕掛ける。狂人としか思えない」
「この俺も戦士として同行した事があるが、自らを囮にするなど馬鹿げている」
「きっと何か、裏があるはずだ。それが、人間だからだ。俺は只の船乗りだったがこれを河から拾いあげてからは、なおさら知りたいのだ、ギルガメシュと言う男を」
アリババは、黄金で出来た翼を持つ人ならざるものを懐からそっと取り出すと、見慣れたはずの掌代の彫像を丹念にみつめていた。
一人の王は数十名の精鋭の戦士を引き連れると戦車に乗って草原に繰り出した。
戦車と表された乗り物は、二頭の肉付きの良い健康な若馬に牽かせたトロッコであった。
トロッコは鉄で出来ており金属製の車輪がけたたましく回転する。
鉄のボディは卵型に鋳造され、幾つもの棘が突き出しており外敵の強襲を躊躇わせる。
精鋭の戦士とは、百戦錬磨の技術と知恵を持つ、迷彩のための麻布をまとった男達であった。
染料で顔を保護色に染め、むさくるしいほどに伸ばした口髭と鋭い眼光に鍛え上げられた肉体の主である男達は、俊敏な命令をわずかな遅延も無く行動に移せる猛者であった。
戦士達は王の沈黙の命により散会すると、木製の槍を武器に静かに草原に同化していった。
王は金色の鎧を身に纏い、獅子を探しトロッコを草原に走らせる。
太陽の光を浴びてなお強く輝くその人間に恐怖の様子は無く、不敵な笑みを浮かべていた。
獅子の縄張りを傍若無人に蹂躙すると、すぐさま怒りをあらわにした獅子の群れが王に近寄ってきた。
王はトロッコを止めて、両手に剣を抜く。狂った様子で、剣で牽引した二頭の馬を刺し殺してしまった。獅子は血の臭いに興奮すると王は獅子の群れに囲まれてしまうのであった。
「食らうがいい。お前達への馳走だ」
その狂人は高らかにもてなしたつもりであったろうが、獅子はハイエナを前にしたような嫌悪感と恐怖心を抱いた。狂人を前に獅子の群れは前進を止めて周りを徘徊するようになっていた。さすがの狂人の顔にも汗が滲む。上目遣いで敵を観察すると牽制をしながら刻を待つ。
額から大粒の汗が草原に流れ落ちた事を合図にするように、獅子の群れが襲い掛かった。
----------
時は、マイロフ暦元年に近い年。
そこでは、バビロニアと言う国が栄えていた。
広い森林が広がる肥沃な土壌に豊かな王国があった。
バビロニア文明を簡素に表すならば、バビロニア王国は、2つの大河に挟まれた沖積平野にあり、2つの大河は下流でひとつになって海に注いでいた。
そして、バビロニアは豊かな農業国家であり、当時でも高い文化レベルにあった。国の中心にはジッグラトと呼ばれる上空に向かって階段状に聳え立つ王宮を中心に、街中を走る水路は造形的にも実利的にも優れ、美しい庭園が家々を囲っている。
象形文字を発達させた楔形文字は、翻訳に於いて世界の言語の中継基地となっていた。当時の世界言語は、この楔形文字から翻訳されると言うわけだ。
当時から書物が存在し、国民は庶民を含めて読み書きの素養があり、様々な物語や評論、マスメディアが流行していた。
経済に於いては、対外貿易は閉鎖的で消極的であったが、国内に於いては豊富な交易品が並んだバザーなどが催され町並みには活気があった。
宗教は重要で、どんなものにも神が宿っていた。神の名は敬われ畏れられた。
それは、この沖積大地の環境はバビロニアの歴史を通じて激変し、大地を挟み込む大河がたびたび氾濫し甚大な被害が出た事の畏怖でもあると言う説がある。
このバビロニアは歴史に於いて民族の流入、内紛、遷都、分裂そして滅亡の末生き残った「中期」の成熟した国家であり、この国の山場にあった。時の隆盛は後期にかけ没落の一途をたどる栄枯盛衰の無常からは逸していない。
「栄枯盛衰」と言う言葉は一本の曲線を描く。山なみだ。
その中で、最も突起した部分を隆盛。後半に行くに従って後期などという簡単な区分けをする。
ところが、ある歴史学者はこう言った。
「私は船乗りだった」
「今もそうだ。学者などではない。文明は単純な曲線では表せない。二千年生きてきた私は見たのだ。あの者を」
同席した歴史学者たちは一斉に笑った。
時はマイロフ暦1950年。
ブランデンブルグ法王国、鵬球の講堂にて世界から集まった文化人が一堂に会する機会があった。そこで研鑽された最先端の報告をまとめて文献に残すためだ。
「二千年生きてきた?」
誰かの揶揄に再び集合した文化人達は笑い出した。
「ああ、そうじゃ。これを見ろ」
講堂の壇上に上がっている老人が風呂敷から不思議なものを取り出した。
それは、書物でも文献でもなく、一点の出土品だった。
土くれの崩れかかったそれは、きわめて薄い二枚の粘土板。
二枚のそれは、片方に何も文字が刻まれていない粘土版ともう片方には、細かく区分けされた正体不明の小さな突起に文字が一文字一文字刻まれている。
「アリババ博士、それは何です?」
老人の名が明らかになった。彼はMJ・アリババと言った。
「わからん。分からんが、この小さな突起を押しこむと、もう一枚の粘土板に文字が浮き出るのだ。そして映し出された文字は、このボタンによって世界の文字に変換されたり、情報がこの粘土板に残るようになっておる。おそらくは、紙のいらない本だ」
「他にもボタンひとつで計算や絵なども書け、音楽も聞けるだろう」
「音楽が粘土板から聞こえてくるのですか?」
「ああ、その通りだ」
講堂はなおいっそうの笑い声に包まれた。
「博士。貴方の言ってる事が本当だとしても、貴方は再現し、その仕組みを説明できますか?」
「できんよ。だが、学者と言う見地から見れば、お主は鉄の硬さの秘密を説明できるか?どうして出来たものか説明できるのか?ランプの光がどういう仕組みで炎が付くものなのか説明できるのか?光とは何だ?お主のすぐそばにあるものだろう」
講堂に響く威圧的な言葉に、寄り集まった学者達は押し黙り、不愉快になった。
「博士のおっしゃっている事はでたらめで、話を摩り替えていらっしゃる。博士の説明された粘土板は、この時代の文明レベルとはかけ離れている。原状の理論からは不適切で不適合だ」
講堂には何時しか怒りの渦が蓄えられていった。
「私にも本当のことはわからない。しかし、文明を滑らかな曲線で表すことには抵抗があるのだよ。バビロニアの歴史に於いて、初期のこのあたりに大きな文明の鼓動が在ったはずなんだ。ウル王朝時代だ」
アリババ博士は、真剣だ。
老人の真摯な姿勢に講堂の怒気の温度が下がっていった。
そのとき、一人の学者が意見を述べた。
「博士。その粘土板を調査してもかまいませんか?解体する事になりますが?」
「うむ。実はこれは私が、ウル王朝時代の王の宝物庫から盗んできたものなのだ」
講堂には笑いのくすぶりは無く、次第に哀れな老人の物言いに興味が沸いてきた。
何を言うにも生真面目に熱意があったからだ。
「これから話すのはウル王朝時代の一人の王ギルガメシュに焦点を当てたものだ。現存する書物には彼にまつわる物語は数多く存在しまた、真偽のほどが分からないものばかりだ」
「半神の人間との紹介から始まる彼に始めて会ったのは、11月であった。ギルガメシュ王はその日も獅子狩りに赴いた」
----------
「余は決めたぞ。太陽が三度昇ったら、獅子狩りに出かける」
そう言った男は、若干二十歳にして王の座に着いた。絹の衣を纏った半裸に、宝石や金細工の腕輪、足輪、首飾りを下げたとても雅な姿であった。
「王よ。大変危険です。おやめください。どうしてそこまで獅子に拘るのですか?」
臣下が苦言を呈した。
「それはな、獅子がこの世で最も強きものだからだ。だから、余は戦う」
「戦では千戦千勝とは行きません。王に何かあってはと民は心休まりません」
「余は必ず勝つよ。獅子に挑まずして何が王だ。世界に君臨するのは強きものだ」
「王たるもの最強ではなくては、諸外国にも民にも示しがつかんよ。案ずるな、余には必勝の鎧と剣がある。後他にもな」
ある日の夜。
ひとりの大臣は王の謁見を済ませると、松明が照らし出す螺旋の階段を下りて、暗がりを移動し建物から建物へと移動し不穏な行動を見せた。
大臣はたどり着いた秘密の隠れ家で密偵と話をしていた。
「アリババ、王の宝物庫は見つかったのか?」
大臣が会っていたのはアリババという男であった。
「面目しだいもございません。大河の上流の山岳地帯の何処かまでしかまだ分からないのです」
「大枚をはたいているのだ。その程度の釣果では契約は更新できんぞ」
「必ず。ギルガメシュ王の宝物庫を探り当ててご覧に入れます」
「声が大きい。いいか、今月までに成果を出せよ」
「はい。必ず」
アリババの本業は盗賊ではなかった。船乗りであった。
一攫千金を夢見ていたが、それ以上に彼には魅力的なものがあった。
ギルガメシュ王の不死の謎だ。
「戦は勝ち名乗りが誇りだが、必ず負けるものでもある。この国には太陽暦、太陰暦があるが、全ては吉凶を占うもの。特にこの土地ではいつ川が氾濫し死の恐怖に飲まれるか分からない」
「皆は怖いのだ。怖いものがあるのだ」
「特に死はもっとも怖いものであるはずだ。戦場に出ているものならばなおさら鈍感にはならない」
「なのに、ギルガメシュ王は幾度と無く獅子に戦を仕掛ける。狂人としか思えない」
「この俺も戦士として同行した事があるが、自らを囮にするなど馬鹿げている」
「きっと何か、裏があるはずだ。それが、人間だからだ。俺は只の船乗りだったがこれを河から拾いあげてからは、なおさら知りたいのだ、ギルガメシュと言う男を」
アリババは、黄金で出来た翼を持つ人ならざるものを懐からそっと取り出すと、見慣れたはずの掌代の彫像を丹念にみつめていた。
後書き
作者:秋麦 |
投稿日:2017/02/08 22:40 更新日:2017/02/09 00:25 『オーパーツ』の著作権は、すべて作者 秋麦様に属します。 |
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