小説を「読む」「書く」「学ぶ」なら

創作は力なり(ロンバルディア大公国)


小説投稿室

小説鍛錬室へ

小説情報へ
作品ID:1988
「REincarnation」へ

あなたの読了ステータス

(読了ボタン正常)一般ユーザと認識
「REincarnation」を読み始めました。

読了ステータス(人数)

読了(79)・読中(1)・読止(0)・一般PV数(238)

読了した住民(一般ユーザは含まれません)


REincarnation

小説の属性:一般小説 / 異世界ファンタジー / お気軽感想希望 / 初投稿・初心者 / 年齢制限なし / 休載中

前書き・紹介

目を覚ました彼女に待ち受ける、残酷な現実。


2. 夢の終わり

前の話 目次 次の話


 翌朝。目を開けるとそこには、昨日とは違う、木造の天井が広がっていた。
 体を起こして辺りを見回したが、昨日あったピカピカの机や社長室にありそうなイス、ウサギのぬいぐるみもなかった。その代わりに、本がつまった本棚と庶民的な机とイス、それに金髪のショートボブの女性が、私の足のすぐ近くに座っていた。女性は私に笑顔で手を振り言った。
「おはよう、スカトラ。目は覚めた?」
「トハル……?」
 その女性には見覚えがあった。アキハさんやコクゲンさんがいる世界にはいなかった親友、トハルだ。彼女は、私の家の隣に住んでおり、本を買うお金のない私は、彼女から本を借りることが多かった。ファンタジー小説にはまったのも、彼女の嗜好が原因であると言っても、過言ではない。
 本来の記憶がぼんやりと戻ってきた。ここは私、スカトラの家ではなく、トハルの家だ。昨日とは全く違う。
 トハルは私の顔を見て、くすっと笑った。ベッドから立ち上がり、こちらを向いて首を傾げた。胸元の鍵の形をしたネックレスが光り輝いている。
「そう、トハルだよ。何かあったのかな?意識がはっきりしていないみたいだけど」
「い、いや。なんでもない。気にしないで」
 私は、アキハさんやコクゲンさんのことを話そうと思ったが、やめた。トハルの反応を見るに、あの世界の話は私の夢だったのだ。ファンタジー小説の読みすぎだろうと、自分で納得した。
「そうか。じゃあ、私はお茶でも持ってくるから、本でも読んで待っててよ」
 トハルは私の反応に納得すると、部屋を出ていった。私は、ベッドから出て、部屋にあるファンタジー小説を物色した。
 最近のお気に入りは、主人公が異世界転生をする小説だ。昨日の「リアルな夢」での状況にも似ている。
ある日突然、日常が非日常に変わってしまい、主人公はそれに翻弄されつつも成長していく。それを見て、自分に置き換え妄想に浸るのにはまっている。中二病と言われればそこまでだが、娯楽がないので仕方がないことなのだ。
 数年前に一度読んだ小説を見つけ、それを開こうとした。その次の瞬間、部屋のドアがいきなり開いた。そして、中肉中背で茶髪の男性が1人、部屋に入ってきた。その男性は切羽詰まった様子で、私を見つめた。
「トハル!……ってあれ!? スカトラちゃん! どうしてここに!?」
「そういうフユイチさんこそ、そんなに焦ってどうしたんですか?」
 私は、この男性と知り合いだ。この男性――フユイチさんは、トハルのお兄さんで、私が小さい頃はよく読み聞かせをしてくれた。かなり速読で、本を読むのが速いと自負している私でも、彼のスピードには敵わないほどだ。
 フユイチさんは、のんびりしている私に事情を説明してくれた。
「君のお父さんが、神隠し認定を受けた! ここ三日くらいかけて、警察が捜索したんだけど……その様子だと、昨日は見つからなかったみたいだね」
「父さんが……神隠し!?」
 フユイチさんの言葉に、私の思考は一瞬停止した。
 私たちが今住んでいる区域では、神隠しは珍しいことではない。神隠し認定制度が浸透しているのも、そのためだ。
 しかし、一般的な神隠しとは違い、その被害の大多数は大人が占める。共通点として挙げられるのは、優秀な人間ほど神隠しに遭いやすい。
 私の父は大工をしているが、そこまで優秀な人材ではなかった。正直に言えば、かなり下の方であり、その巨体を活かして力仕事を行う木偶の坊だった。神隠しに遭うほど、優秀ではなかったはずだ。
 私の反応を見たフユイチさんは、何か訊こうと口を開きかけた。それを遮るようにして、トハルが3人分のお茶を持ってきた。
「フユ兄どうしたの?」
「あっ、ああ。トハル、スカトラちゃんのお父さんが神隠し認定を受けた! それで今、話していたんだけど――」
「あまりその話はしない方が良い。スカトラは、ショックで寝込んでたんだから、ね?」
 トハルはフユイチさんの話を遮ってそう言うと、こちらに視線を向けた。話を合わせろ、という合図だった。
 昨日の記憶が、いまいちはっきりしない今の私には好都合だ。私は、トハルに賛同の意を示し、うんうんと頷いた。
「フユ兄。その話は、スカトラのお母さんが迎えに来てからでも、遅くないんじゃない?」
「そ、そうだな……分かった」
 フユイチさんは、少し不服そうな顔をしながらも、それ以上は詮索してこなかった。私は、いつも通り、私の母の仕事が終わるまで、フユイチさんトハル兄妹にお世話になることにした。



 午後8時を過ぎても、母から連絡があることはなかった。いつもなら、残業の有無くらいは連絡されるはずなのに。何かがおかしい。
 疑問に思いつつも、夕食の時間はいつも通り、トハル達と共に過ごした。いつも私を預かっている罪悪感からか、母はシェフである能力を活かし、私たちの夕食の下ごしらえをしてくれていた。最後の仕上げは、トハルの役割だ。
 夕食後、私を含む3人はトハルの部屋でファンタジー小説の続きを読んでいた。すると、家の子機が鳴り始めた。私がでようとすると、速読をしていたフユイチさんが制止した。彼は読んでいた本を机に置き、子機を手に取った。
「もしもし。はい、はい……えっ!?」
 フユイチさんの、わざとらしくも見える大袈裟なリアクションには、私もトハルも慣れていた。先ほどのように、本当に大事の場合もあるが、その他の場合もオーバーリアクション気味だ。わざとやっているわけではなく、何事も全力で取り組もうとする、彼の人柄が生みだす副作用なのだ。
 だが、今回の場合も違うようだった。
「少々お待ちください。スカトラちゃん!」
 彼は電話口を抑えたまま、私を呼んだ。その表情は、先ほどの父の神隠しに関する知らせをする時と、同じ顔をしていた。その表情から嫌な予感を察しつつも、フユイチさんから子機を受け取った。
「お電話変わりました、スカトラです」
『タルティさんの娘さんですね。実は、あなたのお母さんの姿が見えないのです。出勤延長前に、あなたに連絡すると言ったきり帰ってこなくて……』
 電話越しの男は、少し吃りながら言った。
 延長前には、母は必ずトハルの家に電話をする。母は、仕事が好きで、私を産んだ後すぐに職場復帰したくらいには、仕事を愛している。それに、残業は日常茶飯事だから、今さら逃げ出すはずもない。
 ということは、もしかしたら。
「残業の場合、母はいつも、この電話番号に電話をかけて、その旨を教えてくれます。私の記憶の限りでは、今日はまだ連絡を受けていません。何か逃げ出す予兆はありましたか?」
『いえ、ご存知でしょうが、むしろ仕事に対してやる気を見せるほどでしたので、逃げ出すという可能性はありません』
「分かりました。心当たりを捜してみます」
 私は、相手が切ったのを確認すると、子機を戻した。
 心当たりを捜す、とは言ったものの実際は捜す場所なんてない。私は、放心状態のまま立ち尽くしていた。昨日に帰りたい。
 その様子を見て察したトハルは、私の肩に手を置いた。
「……スカトラ。捜索願はフユ兄に任せて、少し休もう」
 トハルは、フユイチさんに捜索願の提出を頼んだ。フユイチさんは、部屋を出ていった。そして、私の肩に腕をかけ、自室のベッドへと誘った。私はその誘いのまま、彼女のベッドに倒れこんだ。布団は私を拒絶することなく、優しく包み込んだ。
 今日は色々ありすぎた。昨日からの急激な変化や事件など、精神的に参る出来事が多すぎた。疲労困憊とは、まさしく今の私をさすのだろう。私は、数時間前の私の温もりにすがるように眠りについた。

後書き


作者:惨文文士
投稿日:2018/05/12 23:30
更新日:2018/05/12 23:30
『REincarnation』の著作権は、すべて作者 惨文文士様に属します。

前の話 目次 次の話

作品ID:1988
「REincarnation」へ

読了ボタン


↑読み終えた場合はクリック!
button design:白銀さん Thanks!
※β版(試用版)の機能のため、表示や動作が変更になる場合があります。
ADMIN
MENU
ホームへ
公国案内
掲示板へ
リンクへ

【小説関連メニュー】
小説講座
小説コラム
小説鍛錬室
小説投稿室
(連載可)
住民票一覧

【その他メニュー】
運営方針・規約等
旅立ちの間
お問い合わせ
(※上の掲示板にてご連絡願います。)


リンク共有お願いします!

かんたん相互リンク
ID
PASS
入力情報保存

新規登録


IE7.0 firefox3.5 safari4.0 google chorme3.0 上記ブラウザで動作確認済み 無料レンタル掲示板ブログ無料作成携帯アクセス解析無料CMS