作品ID:2008
あなたの読了ステータス
(読了ボタン正常)一般ユーザと認識
「REincarnation」を読み始めました。
読了ステータス(人数)
読了(87)・読中(1)・読止(0)・一般PV数(290)
読了した住民(一般ユーザは含まれません)
REincarnation
小説の属性:一般小説 / 異世界ファンタジー / お気軽感想希望 / 初投稿・初心者 / 年齢制限なし / 休載中
前書き・紹介
屋敷探索の出会いと謎。
4. 探索
前の話 | 目次 |
コクゲンさんの言う通り、屋敷の中をふらふらすることにした。広すぎる屋敷は、一日時間を潰すにはちょうど良い。
途中、中庭で作業をしている男の人を見かけた。アラウド家専属の庭師、フエートさんだ。自分のあごひげを左手で触りながら、自分が手入れしたであろう盆栽を眺めていた。
私は、興味本位で彼に話しかけてみることにした。
「フエートさん、こんにちは!」
「げっ」
フエートさんは、私を見て眉間に皺を寄せ、不快感を露わにした。こちらもつられるわけにはいかない。私は、笑顔を作った。そして、作業に戻ろうとする彼を引き留めるため、距離を詰めながら会話を続けた。彼の顔は、少し赤みを帯びていた。
「今日もいい天気ですね。何してるんですか?」
「見りゃ分かるだろ、あっち行け」
彼は私から顔をそらすようにして、盆栽の手入れを再開した。盆栽に関するセンスはないので分からないが、こだわりがあるのだろう。
私は、気にせず話しかけ続けることにした。
「フエートさんって、働き始めてどれくらい経つんですか?」
「あんたには関係ない話だ」
「それじゃあ、フエートさんの家族ってどんな方なんですか?」
「わりいな、お嬢様。お前みたいな『教養人』と話してると、虫唾が走るんだ。早くどっか行ってくれないか?」
フエートさんは手を止め、こちらを向いた。振り向きざまに、草の臭いを振りまいた。腕を組んで、イライラしているのを全身で表現をしていた。さらに威圧をかけるかのように、数度せき込んだ。
彼の言い方に引っかかりがあった。もし、この引っかかりが解消出来たら、フエートさんとの距離も縮まるはずだ。私は、今まで作っていた笑顔を崩し、シリアスな雰囲気を作って、切り込んだ。
「フエートさん、なんでそんなに『教養人』を嫌うんですか? 何か恨みでもあるんですか?」
「あ? そんなこと訊いてどうするんだ? そもそもお嬢様、今日おかしくないか?」
「え、ああ。それは……」
かなり素を出してしまっていたようだ。ごまかし方も分からないし、ごまかしたらフエートさんとの距離を縮める機会を失ってしまうような気がする。
仕方ない。コクゲンさんには申し訳ないが、素直に打ち明けてみることにした。
「実は、私カザハさんじゃないんです。こう言っても信用されないと思いますけど、私異世界から来たんです」
「はあ……まあ、お嬢様が俺なんかに嘘をつく理由はないからな。分かった、信用しよう」
フエートさんは、庭師の仕事道具である特殊な形状のハサミをポケットにしまった。彼は私を気遣ってか、日陰の方へと移った。私も彼の後ろをついていった。
そして、日陰に着くと、フエートさんはこちらを向いて話し始めた。腕を組んだままで、警戒態勢を崩す様子はなかった。
「なあ、あんた。カザハお嬢様じゃないって言ったな? 何者なんだ?」
「名前は、スカトラと言います。ファンタジー小説が好きな、貧乏家庭の女です」
「ふーん……まあ、分かった。それで、質問は何だったけか」
「フエートさんが、『教養人』を嫌う理由です」
私が改めて質問を提示すると、フエートさんは再びあごひげを触り、考え込んだ。私に話すべきか否か悩んでいるようだ。数度咳をした後、彼は質問に答えた。
「俺は、字を読むのが苦手でな。本に関しては、読む気すらしねえ。だから、窓際に座って本を読むのがステータスだと考えてる上流階級、俗に言う『教養人』を受け入れられねえ」
「なるほど……」
つまり、フエートさんが嫌いなのは人ではなく、本の文字だということだ。本好きの端くれとしては、聞き捨てならない話だ。私は、今日の目標を、フエートさんに本の良さを教えることに決めた。
さて、早速ミッション開始だ。
「フエートさん、本は面白いですよ!」
「なんだ、急に。俺を説得しようたってそうはいかねえぞ?」
「うっ……」
彼は、私の意図を見抜き、釘を刺してきた。しかし、ここで挫けるわけにはいかない。私は、彼の警告を無視して、話を続けることにした。
「でも、フエートさん! 字を読むのがゆっくりでも、本は読めるんです! 一冊だけでもいいので、読んでみませんか?」
「……いや、ダメだ。面白いって思えるような本がない」
「それは……分かりました! 私がおすすめの本のジャンルを教えてあげましょう!」
本嫌いには「あるある」の理由だ。ここに来る前も、本嫌いのお母さんが言っていたのを、鮮明に覚えている。
本は元々、誰かに言われて読むものではない。本は出会い方が大事なのだ。仮に、人から勧められて読んでも、それが自分の意志、つまり興味を持っているのなら問題はない。
だが、もし嫌々読んでいるのなら、どんな名作も愚作になってしまう。意味がないものになってしまう。それだけは、なんとしても避けたい。本のおすすめが行われている時、勧められる側も一歩踏み出す勇気がいるが、勧める側にも相手の興味をそそるような内容、プレゼンテーション力を試されているのだ。
フエートさんの興味の範囲を、手探りで探っていくことにした。
「フエートさん、ファンタジーは好きですか?」
「ファンタジーか? うーん……どちらかというと、お嬢様の元いた世界の方が気になるな」
「なるほど……」
フエートさんが興味を持ってくれたのは嬉しいが、私の世界に関する話をするのは避けたい。今持っている精一杯の演技力で、話を始めた。
「実は、あまりあちらの世界に関して話すのはタブーなんです……でも、こちらの世界がファンタジーとして描かれていました。だから、日常物として楽しめるのではないでしょうか?」
「ああ、なるほどな。じゃあ、そのファンタジー小説ってのことについて、教えてくれるか? どういうのがあるんだ?」
「私が読んだものだと――」
私は、昨日トハルの家で読んだファンタジーのライトノベルについて語った。異世界転生がテーマであるためか、フエートさんの食いつきは上々だった。
話を終えるころには、最初の態度は何処へやら、フエートさんは活字を欲する目に変わっていた。
「――っていう話です。どうですか?」
「面白そうだな! 読めないのはちょっと残念だが、本も案外捨てたもんじゃないな! ゲホッ」
「大丈夫ですか?」
先ほどから何回かしている咳が気がかりだ。顔が赤いのも、最初は怒っているものだと思っていたが、心を開いてくれた今でも、頬は赤く染まっている。心なしか、目の焦点もはっきりしていない。
「ああ。実はな、昨日から少し熱っぽいんだ。今日は早退して、本でも読みながら、体力回復につとめるかな」
「そうしてください! 感想くださいね!」
私は、フエートさんと別れ、再び家の中を散歩することにした。すると、グリーの部屋の扉が半開きになっているのが見えた。アキハさんの部屋を覗くのは怒られたが、本人の部屋を覗くのは、大丈夫だろう。そんな詭弁を振り回しつつ、部屋を覗いた。
中では、グリーが首にかけたカギのネックレスに話しかけていた。その光景にデジャヴを覚え、その正体を考えてみた。
答えは、数秒で出た。アキハさんだ。身につけているカギのネックレスも、話しかけているのも全く同じ構図だった。
私が答えを導き出してすっきりしていると、後ろから肩を叩かれた。恐る恐る振り返ると、そこには真顔のアキハさんが立っていた。胸には件のカギのネックレスが輝いていた。
「こら、カザハ。お姉ちゃんの部屋、勝手に覗いちゃダメでしょ?」
「ごめんなさい、お母様。でも、1つ訊きたいことがあるのですけど、よろしいでしょうか?」
「ええ、構わないわよ。何かしら?」
本人がせっかく目の前にいるのだ。カギの件に関して訊くチャンスだと考えるのが妥当だろう。
「カギのネックレスって、私の分はないのですか?」
「……カザハ、晩御飯の用意を手伝ってくれる?」
アキハさんは、質問に答えずに笑顔で言った。私がもう一度訊こうとすると、同じ質問をしてきた。仕方ないので、素直に従うことにした。
おそらく、カギのネックレスに秘密がある。アキハさんの反応を見るに、グリーが持っているものと、アキハさんの持っているものは同じものだ。そして、それにこそ『私』に知られてはいけない何かが隠れている。
その後、何か動きがあるかと思ったが、特に何も変わりはなかった。コクゲンさんと話そうかと思ったが、チャンスは巡って来ず仕舞いだった。夕食を食べ、お風呂に入りベッドに入った。
明日、また調査しよう。寝落ちする直前、そんなことを考えていた。
途中、中庭で作業をしている男の人を見かけた。アラウド家専属の庭師、フエートさんだ。自分のあごひげを左手で触りながら、自分が手入れしたであろう盆栽を眺めていた。
私は、興味本位で彼に話しかけてみることにした。
「フエートさん、こんにちは!」
「げっ」
フエートさんは、私を見て眉間に皺を寄せ、不快感を露わにした。こちらもつられるわけにはいかない。私は、笑顔を作った。そして、作業に戻ろうとする彼を引き留めるため、距離を詰めながら会話を続けた。彼の顔は、少し赤みを帯びていた。
「今日もいい天気ですね。何してるんですか?」
「見りゃ分かるだろ、あっち行け」
彼は私から顔をそらすようにして、盆栽の手入れを再開した。盆栽に関するセンスはないので分からないが、こだわりがあるのだろう。
私は、気にせず話しかけ続けることにした。
「フエートさんって、働き始めてどれくらい経つんですか?」
「あんたには関係ない話だ」
「それじゃあ、フエートさんの家族ってどんな方なんですか?」
「わりいな、お嬢様。お前みたいな『教養人』と話してると、虫唾が走るんだ。早くどっか行ってくれないか?」
フエートさんは手を止め、こちらを向いた。振り向きざまに、草の臭いを振りまいた。腕を組んで、イライラしているのを全身で表現をしていた。さらに威圧をかけるかのように、数度せき込んだ。
彼の言い方に引っかかりがあった。もし、この引っかかりが解消出来たら、フエートさんとの距離も縮まるはずだ。私は、今まで作っていた笑顔を崩し、シリアスな雰囲気を作って、切り込んだ。
「フエートさん、なんでそんなに『教養人』を嫌うんですか? 何か恨みでもあるんですか?」
「あ? そんなこと訊いてどうするんだ? そもそもお嬢様、今日おかしくないか?」
「え、ああ。それは……」
かなり素を出してしまっていたようだ。ごまかし方も分からないし、ごまかしたらフエートさんとの距離を縮める機会を失ってしまうような気がする。
仕方ない。コクゲンさんには申し訳ないが、素直に打ち明けてみることにした。
「実は、私カザハさんじゃないんです。こう言っても信用されないと思いますけど、私異世界から来たんです」
「はあ……まあ、お嬢様が俺なんかに嘘をつく理由はないからな。分かった、信用しよう」
フエートさんは、庭師の仕事道具である特殊な形状のハサミをポケットにしまった。彼は私を気遣ってか、日陰の方へと移った。私も彼の後ろをついていった。
そして、日陰に着くと、フエートさんはこちらを向いて話し始めた。腕を組んだままで、警戒態勢を崩す様子はなかった。
「なあ、あんた。カザハお嬢様じゃないって言ったな? 何者なんだ?」
「名前は、スカトラと言います。ファンタジー小説が好きな、貧乏家庭の女です」
「ふーん……まあ、分かった。それで、質問は何だったけか」
「フエートさんが、『教養人』を嫌う理由です」
私が改めて質問を提示すると、フエートさんは再びあごひげを触り、考え込んだ。私に話すべきか否か悩んでいるようだ。数度咳をした後、彼は質問に答えた。
「俺は、字を読むのが苦手でな。本に関しては、読む気すらしねえ。だから、窓際に座って本を読むのがステータスだと考えてる上流階級、俗に言う『教養人』を受け入れられねえ」
「なるほど……」
つまり、フエートさんが嫌いなのは人ではなく、本の文字だということだ。本好きの端くれとしては、聞き捨てならない話だ。私は、今日の目標を、フエートさんに本の良さを教えることに決めた。
さて、早速ミッション開始だ。
「フエートさん、本は面白いですよ!」
「なんだ、急に。俺を説得しようたってそうはいかねえぞ?」
「うっ……」
彼は、私の意図を見抜き、釘を刺してきた。しかし、ここで挫けるわけにはいかない。私は、彼の警告を無視して、話を続けることにした。
「でも、フエートさん! 字を読むのがゆっくりでも、本は読めるんです! 一冊だけでもいいので、読んでみませんか?」
「……いや、ダメだ。面白いって思えるような本がない」
「それは……分かりました! 私がおすすめの本のジャンルを教えてあげましょう!」
本嫌いには「あるある」の理由だ。ここに来る前も、本嫌いのお母さんが言っていたのを、鮮明に覚えている。
本は元々、誰かに言われて読むものではない。本は出会い方が大事なのだ。仮に、人から勧められて読んでも、それが自分の意志、つまり興味を持っているのなら問題はない。
だが、もし嫌々読んでいるのなら、どんな名作も愚作になってしまう。意味がないものになってしまう。それだけは、なんとしても避けたい。本のおすすめが行われている時、勧められる側も一歩踏み出す勇気がいるが、勧める側にも相手の興味をそそるような内容、プレゼンテーション力を試されているのだ。
フエートさんの興味の範囲を、手探りで探っていくことにした。
「フエートさん、ファンタジーは好きですか?」
「ファンタジーか? うーん……どちらかというと、お嬢様の元いた世界の方が気になるな」
「なるほど……」
フエートさんが興味を持ってくれたのは嬉しいが、私の世界に関する話をするのは避けたい。今持っている精一杯の演技力で、話を始めた。
「実は、あまりあちらの世界に関して話すのはタブーなんです……でも、こちらの世界がファンタジーとして描かれていました。だから、日常物として楽しめるのではないでしょうか?」
「ああ、なるほどな。じゃあ、そのファンタジー小説ってのことについて、教えてくれるか? どういうのがあるんだ?」
「私が読んだものだと――」
私は、昨日トハルの家で読んだファンタジーのライトノベルについて語った。異世界転生がテーマであるためか、フエートさんの食いつきは上々だった。
話を終えるころには、最初の態度は何処へやら、フエートさんは活字を欲する目に変わっていた。
「――っていう話です。どうですか?」
「面白そうだな! 読めないのはちょっと残念だが、本も案外捨てたもんじゃないな! ゲホッ」
「大丈夫ですか?」
先ほどから何回かしている咳が気がかりだ。顔が赤いのも、最初は怒っているものだと思っていたが、心を開いてくれた今でも、頬は赤く染まっている。心なしか、目の焦点もはっきりしていない。
「ああ。実はな、昨日から少し熱っぽいんだ。今日は早退して、本でも読みながら、体力回復につとめるかな」
「そうしてください! 感想くださいね!」
私は、フエートさんと別れ、再び家の中を散歩することにした。すると、グリーの部屋の扉が半開きになっているのが見えた。アキハさんの部屋を覗くのは怒られたが、本人の部屋を覗くのは、大丈夫だろう。そんな詭弁を振り回しつつ、部屋を覗いた。
中では、グリーが首にかけたカギのネックレスに話しかけていた。その光景にデジャヴを覚え、その正体を考えてみた。
答えは、数秒で出た。アキハさんだ。身につけているカギのネックレスも、話しかけているのも全く同じ構図だった。
私が答えを導き出してすっきりしていると、後ろから肩を叩かれた。恐る恐る振り返ると、そこには真顔のアキハさんが立っていた。胸には件のカギのネックレスが輝いていた。
「こら、カザハ。お姉ちゃんの部屋、勝手に覗いちゃダメでしょ?」
「ごめんなさい、お母様。でも、1つ訊きたいことがあるのですけど、よろしいでしょうか?」
「ええ、構わないわよ。何かしら?」
本人がせっかく目の前にいるのだ。カギの件に関して訊くチャンスだと考えるのが妥当だろう。
「カギのネックレスって、私の分はないのですか?」
「……カザハ、晩御飯の用意を手伝ってくれる?」
アキハさんは、質問に答えずに笑顔で言った。私がもう一度訊こうとすると、同じ質問をしてきた。仕方ないので、素直に従うことにした。
おそらく、カギのネックレスに秘密がある。アキハさんの反応を見るに、グリーが持っているものと、アキハさんの持っているものは同じものだ。そして、それにこそ『私』に知られてはいけない何かが隠れている。
その後、何か動きがあるかと思ったが、特に何も変わりはなかった。コクゲンさんと話そうかと思ったが、チャンスは巡って来ず仕舞いだった。夕食を食べ、お風呂に入りベッドに入った。
明日、また調査しよう。寝落ちする直前、そんなことを考えていた。
後書き
未設定
作者:惨文文士 |
投稿日:2018/07/04 00:05 更新日:2018/07/04 00:05 『REincarnation』の著作権は、すべて作者 惨文文士様に属します。 |
前の話 | 目次 |
読了ボタン