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作品ID:2022
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セブンスナイト ―少年騎士の英雄記―

小説の属性:ライトノベル / 異世界ファンタジー / 批評希望 / 初投稿・初心者 / R-15 / 連載中

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第2話「穏やかな日々」

前の話 目次 次の話

 ここはよくある世界の、よくある街。
 人々は多少の禍に震えながらも、日々を強く生きていた。
 だからこそこの街は常に保たれており、だからこそこの街は平和なのだ。

「バロンさん!店の在庫のチェック、確認してきました!!」

 緑色で染まった短めのショートウルフを揺らし、鮮やかな緑の瞳をした少年も、その平和な街で働く1人の一般人だった。
 少年は羽ペンと洋紙を手に、店の奥から出てきてこの店を建てた商人の姿を探す。

「おう、サンキューなウィリアム。お前が来てくれてから、大分私も助かっているよ」

 店番をしていた、ふくよかな中年男性の商人のバロンは緑の少年……ウィリアムに気が付くと彼が手に持っている洋紙とペンを受け取る。
 そして、在庫の数量を纏めた洋紙を確認して「ふむふむ」と呟くと頭を掻いた。

「なるほど、色々足りなさそうなものが増えてきたな……」

 少々在庫の状況が心配なバロンに、ウィリアムは同意する。

「そうですね。ですけど、もう少しで次の行商人が来ますし多分大丈夫ですよ」
「あぁ……そうであることを祈るばかりだな」

 商人にとって、客が求めている物を在庫が無いから売れない……という事態は客の信用を奪うためしたくない最大の行為だ。
 こりゃ前の行商人の時に買うべきだったな、と苦笑いするバロンだが、後悔先立たずと言わんばかりにウィリアムに洋紙とペンを返す。

「すまんな。お前さんみたいな働き盛りの若いもんに、文字ばっかり見せちまって」
「いえ、大丈夫ですよ。元々俺が頼んだんですから」

 申し訳なさそうに眉を潜めるバロンに、ウィリアムは優しげに微笑んで洋紙とペンを受け取った。
 その際に、この店の商人であるバロンのサインが書いてあるのを確認し、またウィリアムは店の奥で作業に戻ろうと脚を進めようとする。
 だがその前に、バロンがウィリアムに声を上げた。

「ウィリアム、今日はもうここまでだ。お前も若いもんなら、外で体を動かして来い」
「え、ですけど……」

 本来まだウィリアムにはやるべき仕事がある。
 驚くウィリアムに、バロンは「良いから良いから」と洋紙とペンを近くの机に置かせて無理矢理外に連れ出す。

「お前は働きすぎだ、少しは息抜きして来い」
「――――」

 バロンは、働いている同い年の中でもかなりウィリアムを酷使してしまっている自覚が在った。
 だからこそ、息抜きも多くしてほしいという願いがあったのである。
 それを分かっていたウィリアムは、申し訳なく思いながらも渋々と頷く。

「分かりました、では失礼します」
「おう、禍族《マガゾク》には気を付けてな」

 手を上げて送り出してくれるバロンに、ウィリアムも手を上げることで答えると街へと走り出した。
 その後ろ姿を見て、バロンは目を細める。

「齢16歳にしては人間が出来すぎだな」

 バロンは店に戻りウィリアムが書いた洋紙をもう一度確認した。
 そこには綺麗に書かれた文字の数々。

(文字なんて、どこで覚えたのやら)

 この店でウィリアムが働いているのは、単純に“文字が書けるから”と“単純計算が出来る”からだ。
 けれど、それは近くの村で生まれた少年にしては出来過ぎな話。

(計算や文字は商人や貴族でもないと、学ばないっていうのにな)

 もちろんバロンはウィリアムが自らを偽っているとは思っていない。
 彼は非常に接しやすい好青年であるし、仕事に向き合う姿勢は真剣そのものだ。
 ただ、村で生まれ育った人にしては教養が完璧に近いほど出来ている。

(アイツがどっかの貴族でも驚かないな、私は)

 目上に対する態度も完璧で文字も単純計算も出来る。
 他人の経緯などバロンは気にするタイプではないのだが、それでも少し気になってしまうのが人の性だろう。

「さーて、アイツが居なくなった分働かないとな」

 頭に浮かんだ疑問を一度大きく伸びをすることで吐きだし、バロンは自らの仕事に戻った。




 バロンが自らの仕事に戻っている頃、ウィリアムはぶらぶらと街を探索していた。
 と、そこに見知った顔を発見してウィリアムは手を上げる。

「よっ、エンタ」
「お、ウィリアムじゃねぇか。どうした、今日は仕事早く終わったのか?」

 茶髪の髪を揺らして、活発で人懐っこそうな雰囲気を持つ少年であるエンタはウィリアムの挨拶に答えた。
 エンタの問いにウィリアムは頷くと、今日は早く終わらして身体を動かすように言われた旨を話す。

「ふーん、バロンさんがそう言ったのか」

 少し意外そうに口を尖らせるエンタは「確かに」と、すぐに顔を意地悪い笑顔に変化させる。

「お前休憩中もずっと本を読んでるしな。そんなんじゃあ何時かちょっとした拍子に腕が折れちまうぜ」
「はいはい、ご注意どうも」

 意地悪く笑う時は大抵エンタが説教してくることは知っているので、ウィリアムは生返事で流すのがいつもの流れだ。
 だが、今日違うのはウィリアムが早く仕事が終わったことだろうか。

「じゃあ行くぞ」
「は?」

 それ故か何故か、エンタは手招きする。
 どこに行くのだろうかと首を傾げるウィリアムに、エンタは「決まってるだろ」と楽しそうに顔を歪めた。

「訓練場だよ」
「えぇ……」

 至極嫌そうな表情になるウィリアム。
 元々本を読むことが好きなウィリアムだが、その代わりと言っては何だが運動をしたくない病にかかっている。
 体を動かす、という行為自体が嫌なのだ。

 嫌そうな反応をすることを予想していたエンタは、そんな顔するなよと脚を進める。

(行くしかない……か)

 面倒だなとウィリアムは思いながら、仕方なく友人の背中を追うことに決定し脚を進めようとして――

「舐めてんのかこのアマァ!」
「きゃあッ!」
「ッ!」

 ――悲鳴が鼓膜を揺さぶるのを感じた。

 考える暇なく、ウィリアムは先ほどの声がした方へ走り出す。
 後ろで「おい待てよッ!」と誰かの声がしたが、知ったことではないと全力疾走。

 前を歩く人々をすり抜け、前から歩いてくる人々を避けてウィリアムは声のした場所へ辿り着く。

「ひ、ヒィッ……!」
「おい、良いだろう別に安くしてもさァ?」

 顔が知らない男が、街で果物を売っている女性を蹴飛ばしているのが視界に入る。
 ただ怯えることしか出来ない女性に、男は青筋を立て殴ろうと右腕を振り上げ――

「あァ、何の真似だ餓鬼」
「…………」

 ――その腕を受け止めている、誰かも知らない少年を睨み付けた。

 睨み付ける男の視線を一直線に受け止め、それでもウィリアムは普段よりかなり低い声で男を静止させる。

「止めろ」
「あ?」

 だが、変に振りかざす正義感ほど男がイラつきやすいものはない。
 邪魔をした少年を先にぶん殴ろうと、男は標的を女性からウィリアムへと変える。

「おい餓鬼、俺は定価よりも高い果実を売ってたこのアマに制裁を下しただけだ。文句言われる筋合いはねぇぞ」

 男にそう言われ、ウィリアムはチラリと果物を売っている店の立札を読む。
 けれどその値段は果物の平均的な値段そのものだった。
 眉を潜め反論しようとしたウィリアムの腹に、男は迷いなく蹴りをぶち込んだ。

「がぁッ……!」

 「定価より高い」という言葉でウィリアムの視線を男から逸らし、その間に隙だらけの腹を蹴りこんだのである。
 油断しきっていた腹に入れられた蹴りは、見事にウィリアムの鳩尾を突いた。
 体中を支配する吐き気と腹痛で動けなくなったウィリアムの頭を、男は何の躊躇も無く足を乗せる。

「真面目な餓鬼が一番嫌いなんだよ、俺は」

 痛みでもがくことしか出来ないウィリアムは、怒りと悔いを溜め込んだ瞳で男を睨む。
 その純粋にして真正面な視線を浴び、男は更に青筋を浮かび上がらせた。

「おいおいおいおい、お前今の状況わかってんのか?そんなどっかの英雄みたいな正義感振りかざしてもな――」

 男はニヤリと嘲笑う。

「――結局、力なんだよ。この世界は」

 男の言葉を聞いて、ウィリアムは多少なりともそれに賛同する。

 力が欲しいと思った。
 護れる力が欲しいと思った。

「―――――か」
「ぇ……?」

 不意に脳を揺らす声が聞こえ、ウィリアムは瞳孔を大きく開ける。
 その聞こえた声が、鼓膜ではなく直接脳に働きかけたように思えたから。

「テメェ、何してやがる――!」
「ごふッ……!」

 ふと誰かがそう叫ぶのが聞こえた瞬間、ウィリアムの頭に足を乗せていた男は息を吐きだしながら殴り飛ばされていた。
 いきなり男が殴られたのを見て、ウィリアムは一体誰がしたのかと視界を巡らせて殴った張本人を見つける。

「エンタ!」
「よう。ボコボコじゃないか、ウィリアム」

 指を鳴らしながら挑発的な笑みを浮かべてみせるエンタ。
 だが、その笑みも男に顔を向けた瞬間には背中が凍るほどの真顔になっていた。

「おいワレ、俺のダチになにやってんだ?あァ?」

 そう告げただけ。
 だとしても仲が良いウィリアムでさえ硬直してしまうまでの怒りが、その言葉には詰まっていた。

(……流石傭兵の一人息子)

 エンタは、昔中々に評判があった傭兵の一人息子。
 故に幼い頃から父親から一対一でも禍族と戦えるようあらゆる武術を習い、それを十全に使いこなす為の戦術を学んできた。
 傭兵仕込みの威圧は、この場の温度が低くなったのではと思えるほど重く強い。

「エ、エンタ!?傭兵アルタの一人息子の!?」
「おい無視してんじゃねェぞワレ。俺の話を聞けやオラ」

 圧倒的なまでの威圧に一回りも年を食っているであろう男は、歳に似合わず10代の少年に怯えだす。
 そしてこの空気に耐えられなくなったのか、「す、すみませんでしたッ!!」と叫びながら走って逃げて行った。
 男が完全に見えなくなった瞬間、エンタは人が変わったように焦ってウィリアムへ駆け寄る。

「おい、大丈夫か!」
「あ、あぁ……」

 あまりの変わり様を見て、心の底からエンタと仲が良くて良かったと安堵するウィリアムだった。

後書き

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作者:清弥
投稿日:2018/08/29 00:26
更新日:2018/08/29 00:26
『セブンスナイト ―少年騎士の英雄記―』の著作権は、すべて作者 清弥様に属します。

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作品ID:2022
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