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作品ID:2263
「私は犬と生きていく」へ

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私は犬と生きていく

小説の属性:一般小説 / 現代ドラマ / 批評希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

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父と母

目次 次の話

 私の家は貧乏だ。父は化学工場の作業員で、当然の事ながら必死に働く割には給料は安かった。そのせいか、父はケチである。母だってホテルの従業員として働いていたが、彼女が自分の稼ぎから幾ばくかを使って服などを買うと、父は烈火のごとく怒るのである。
 
「この野郎、また服なんか買いやがって! 服なら他にもあるだろう。無駄遣いするな!」
 
と怒鳴りながら母を殴る。母にだって言い分がある。
 
「だって私は接客業なのよ! 街でお客さんに会った時にみすぼらしい格好で居るわけにいかないでしょう!」
 
 こんな具合に喧嘩は始まり、やがて殴り合いになるのだった。そんな時、私は飼っている柴犬、風連の所へ避難する。風連はドキドキした眼差しで、外から喧嘩が繰り広げられている居間の様子に耳を傾けていた。心臓がバクバクいっている。こんな天使の様に純真な風連が、我が家に来たばっかりに不安とストレスに晒されねばならないとは、不憫である。
 
「大丈夫だよ、お前の事で喧嘩してるんじゃないからね。私が付いているよ」
 
そう言いながら、私は風連の頭を優しく撫でてやった。風連はつぶらな瞳で私を見つめる。
 
「風連。私がこの家で耐えていられるのはお前のお陰よ」
 
私は無理やり笑顔を作った。この家では、こうして風連と一緒に居る時が私の唯一の安らぎなのだった。
 
 その日も父と母は言い争っていた。
 
 「何だ、この魚の焼き方は! 生焼けじゃないか。俺は魚は良く焼いたやつが好きなんだ!」
 
「何よ! 私だって仕事帰りでゆっくり作る時間なんて無いのよ! そんなに言うんなら自分で焼けば良いでしょ!」
 
激しい怒鳴り合いに怯えた私は、居たたまれなくなってガチャン、と箸を置き、衝動的に外へ飛び出した。
 
「人から食事を作ってもらっておいて、文句を言うなんて。そんなに怒ることないじゃない! 母さんも母さんだわ、父さんの好みは分かっている事なんだから、もっと気を付ければ良いのに。どうして二人とも私が安らかに食事をする時間をくれないのかしら。私は何だってこんな二人の間に生まれたんだろう?」
 
私は怒りとも悲しみともつかない思いを腹に抱えながら、近所中を歩き回った。涙は出なかった。自分が何処をどう歩いているのかも分からなかったが、そうするしか無かったのだ。脚がクタクタになるまで歩き回って、私は帰宅した。家に帰ると、
 
「何故皆とご飯を食べないんだ! 自分勝手だ!」
 
と父が怒る。私は
 
「具合悪いから」
 
とだけ言って、部屋へ引きこもった。

 
 
 

後書き

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作者:コツリス
投稿日:2020/02/05 21:23
更新日:2020/02/05 22:23
『私は犬と生きていく』の著作権は、すべて作者 コツリス様に属します。

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作品ID:2263
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