作品ID:664
あなたの読了ステータス
(読了ボタン正常)一般ユーザと認識
「黄昏幻夢」を読み始めました。
読了ステータス(人数)
読了(49)・読中(0)・読止(0)・一般PV数(166)
読了した住民(一般ユーザは含まれません)
黄昏幻夢
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
プロローグ 魔術士細
目次 | 次の話 |
渡辺細(さい)は、怒っていた。
「まったく、ジャムパン一個であんなに怒らなくてもいいだろ! まったく」
怒りのあまり、まったく、と二回言ったことなどわかっていなかった。
親友の坂崎佑香の移動は遅い。
理科から帰る途中、購買でパンを買いに行くといって先に行った細が買ったのは、残り一個だったジャムパンと、メロンパン、チョココルネ、クリームパン、その他いろいろ。空腹のあまり、佑香の好物がジャムパンで、彼が人が買った物に絶対に手を出さないと決めているのも忘れていた。
その結果。
「な、なんでお前の手元にジャムパンがぁっ!」
「……あ、忘れてた」
という会話が生まれ、そして、
「親友のことはみんな分かっていて生きていると思ってたのに! ……細、俺はお前に失望した!」
「いや……いいだろ、ジャムパン一個だし。――ほら、やるよ」
「絶対にもらわない! それが俺のポリシーだっ!」
「変なポリシーだなあ」
ぱくっ。
「ひ、人の前でジャムパンを食うなあ!」
「うん? ああ、すまんすまん」
ぱくぱく。
「ふぁぁぁぁぁぁあ!」
「……さっさと食えよ」
いつまでものんきな細に、佑香は絶交を宣言したのだった。
いつもは、家が近いから二人で帰ったりしていたのだが、今日はさすがに帰っていない。帰りの会の後、佑香はさっさと帰って行った。
細は、温厚でマイペース。いつもの通りに路地裏を猫とともに駆け抜けて、家路を急いでいた。
「ああ、明日、どうすっかな。あいつに買ってきたジャムパンを渡したとしても、絶対に受け取らないし。いっそのこと、売りつけるか。うん、それがいい」
教科書を全て置いてきているので、ぺしゃんこのカバンを頭に載せて走る細は、竹林の道に出た。
ここは、神社の一部。小学生は、変な怪談と神主のじーさんが怖くて来ない。
その神主の姿が見えてきて、細はカバンを下ろした。しっかり手で持つ。走っていくと、お堂の前で掃き掃除をしていた神主の仙人みたいな白髪、白いひげのじーさん――山座河精進がこちらを向いた。
「よう、幻成の魔術士」
じーさんは細のことを幻成の魔術士と呼ぶ。なんでも、この神社に祭られている巨大な魔術士の力を知らず知らずのうちに“受信”し、自然とその力を振り撒いてしまう力を、細が持っているのだとか。
「そんな呼ばれ方をしても、まだ何も成らせた覚えはないんだよなあ、実際」
「気づかなくて当然じゃ。気づいたら、お前はその力を自由に使えるようになる。それは、魔術士の力を解放するに値する。……そんなことをされては困るからの」
「へー」
そんなことがあって、じーさんは細にだけ優しい。
「じゃあ、なんか出てきたら言いにきますわ」
「おう。楽しみにしているぞい」
細は、走りながら後ろに向かって手を振った。
後書き
作者:水沢はやて |
投稿日:2011/04/29 22:35 更新日:2011/04/29 22:35 『黄昏幻夢』の著作権は、すべて作者 水沢はやて様に属します。 |
目次 | 次の話 |
読了ボタン