目の前をひらひらと薄紅の花弁が舞う。肌を撫でる風はやわらかく、穏やかなあたたかさが身を包む。時々強い風が吹いて、額当てをしていない髪をぐしゃぐしゃにして去っていく。陽だまりのにおい。小さな子ども達が鬼ごっこに燥ぐ賑やかな声が響いている。
 始まりと終わりの節目の季節、わたしは特別上忍に昇格した。
 今日は久し振りに任務もなく、朝から部屋の掃除に買い物、本屋に寄って好きな作家の半年振りの新作の本を買い、休憩にと茶屋に足を運んだ次第である。ひたすらもっちゃもっちゃ団子に齧り付いていてもわたしに文句を言う輩はいない。友人を誘っても良かったが、ひとりは長期任務明けで泥のように眠りたいからと断られ、もうひとりは書類の山に囲まれていて雪崩を発生させないようにと必死だった。どちらも鬼のような形相だった。
 非番万歳。
 明日には我が事なのである。たまの休みは十分に満喫せねばならない。わたしだって任務中はあんな顔をしているのだろうな、とぼんやり想像しながら最後の一口となった団子を口の中に放り込んで、濃い抹茶を飲み、思わずしあわせで装飾した息を吐いた。店主のおばちゃんがそんなわたしの様子を見て孫を見るような顔をした後、堪え切れずに笑いを零していた。休みの度にこの茶屋に通っていたので、すっかり顔を覚えられていたらしい。
 茶屋のすぐ隣に植わっている桜の木を見上げ、団子と抹茶で十分に満たされた自分の腹を撫でる。今度は友人二人の非番の日に合わせて、美味しい晩ご飯にでも誘おう。二人とも昔ながらの洋食屋さんが好きだったな、と考えていると、茶屋の暖簾を潜って、小さな男の子がひとり入ってきた。

「こんにちは。いつものください」
「はいよ、ちょっと待ってておくれね」
「はあい」

 にこにこと笑顔を振り撒く男の子は随分幼い。舌足らずな声音は丸みを帯びたひらがなの印象を与える。店主のおばちゃんに微笑みかける様子があまりにも可愛い。持って帰りたい。いや、犯罪者予備軍になる予定はないので自重するが。見るだけならタダである。
 白く大きな瞳。相反するように漆黒の艶やかな長髪。色素の薄い肌。その辺で走り回っている子どもとは纏っている空気が随分違う。どことなく知的な雰囲気が漂っているし随分大人しい。ふくふくとした頬が少し赤味を帯びているのと、ぱちぱちとまばたきをする様子は、やはり幼子のものだが。
 おばちゃんから手渡された包みを大事そうに抱え、ぴったりの代金を出して、愛想良くお礼を述べてちびっこは去っていった。その一連の動作が微笑ましい。最近には珍しく礼儀正しい子どもだ。わたしとは大違いである。
 さて、わたしもそろそろ勘定を済ませてしまおう。買った本を早く読んでおかないと、いつ長期任務が宛がわれるか分かったものではない。

「ご馳走さまでした」
「毎度あり、今度はいつ来てくれるんだい?」
「おばちゃん気が早いですよ」

 食べ終えたばかりの客に次の来店を急かすおばちゃんは、苦笑するわたしの頭を撫で繰り回した。髪の毛がぐしゃぐしゃになろうともおばちゃんはけらけら笑うだけで、その手を止めようとはしない。人の手の温度は容易く涙腺を緩めてしまうなあと思いつつ、すっかり鳥の巣になってしまった頭を撫で付けながら、財布を取り出す。




 任務から帰ってきたので手早くお昼ご飯を済ませ、いつもの茶屋に向かう。また来たのかい、と憎まれ口を叩く店主のおばちゃんにへへ、と笑ってみせる。おばちゃんの手元の網には火に炙られている真っ最中の団子がずらりと並んでいる。任務中ずっと空腹と戦っていて、甘いものとも無縁の数日間だったので、噛めばやわらかな弾力を返すそれらがいつも以上にきらきらと輝いて見えるが仕方あるまい。濃い蜜色のたれが日差しを浴びて光った。香ばしいお醤油の匂い。いかんいかん、涎が。ここのみたらし団子は絶品と例えるのが正しいのだ。

「はい、お待ちどうさん」

 目の前に待ち焦がれた黄金のみたらし団子。生きてて良かった。

「そりゃ、団子屋冥利に尽きるねえ」

 からから笑うおばちゃんに、わたしは心の声がぼろぼろに露見していたことを知る。恥ずかしさで縮こまりながら長椅子に戻ると、おばちゃんの琴線に触れたのか爆笑された。よく笑うおばちゃんである。だからこそ、このお店には常連客が多いのだろう。大事に大事に一口齧る。
 あー、うまー。

「こんにちは。いつものください」

 以前聞いた声におや、と思うと、こないだのちびっこがまた来ていた。男の子の口振りからするに、お客人に出すためのお茶菓子のお使い、といったところだろうか。偉いなあ。この茶屋はきなこ餅も美味しいし、黒豆煎餅だって最高だ。塩豆大福も水饅頭も格別の味わいなので、とりあえずお茶菓子に困ったらこの茶屋を訪問すれば問題は即解決である。
 たれを触らないように串を摘み、柔く弾力のあるみたらし団子に齧り付く。ああ幸せ。普段は質素な生活を心掛けているのだから、任務後の贅沢は誰にも邪魔させない最高の時間だ。ほうじ茶を啜る。

「おねえさん」

 近くから鈴を転がすような幼い声音が聞こえた。
 最初、自分のことだとは思わずまた団子に齧り付いていると、さっきより少し強めの声でおねえさん、と声がした。主を辿ればちびっこ。困った顔でわたしを見ているように見える。んん? 不思議に思って周囲に視線をやると、茶屋に居るのはわたしと遠くの席に腰掛けているおじさん二人組のみである。そうか、わたしを呼んだのか。何で? まだ何もしてないぞ。

「はい、なんでしょう」

 とりあえず無視することもできないので返事をすると、男の子は自分より年上の者全てがイチコロになるような笑顔を浮かべた。何コレあかん。持って帰りたい。

「いっしょに、きてください」
「は」

 えっもしかしてブタ箱行き? 思考を読み取られた? でも実行には移していないしその予定もない。全くない! わたしは無実である。少なくともこの少年に何の危害も加えてないのは確かだ。わたしはこの茶屋で団子を大人しく食していただけだ。考えるだけで罪になるというなら、忍など全員逮捕である。
 任務中のように背中に冷や汗が流れるが、これでも忍の端くれ、表情筋を動かさずに相手の様子を伺うことに専念する。仏頂面とふてぶてしい顔なら得意だ。
 この男の子と知り合いでないのは確かな事実だ。と思う。思ってる時点で確かじゃないとか言われそうだが生憎とこの茶屋でそれを指摘するような陰険な奴はいない。
 日向一族の友達はアカデミー時代にいたけど、下忍の時の班も違うし、今や年賀状だけのやり取りしかしていない。わたし本当に何かしたんだろうか、警察の手からは逃れられないのだろうか。うちは警務部隊めっちゃ怖いので勘弁していただきたい。
 真っ白な目がわたしを見上げたまま、こちらが動くのを待っている。わたしも思わず固まったまま、三十秒が過ぎた。ちびっこはじっと待っている。
 いや、うん、うだうだ言っても仕方ない。腹を括ろう。わたしは人生で最後になるかもしれない団子を噛み締め、お勘定を済ませる。おばちゃんは不思議そうにわたしをちびっこを見ていたが、不思議なのはわたしも同じです。シャバに戻れることを全力で祈る。
 にこにこと嬉しそうに包みを抱えた男の子は、こっちです、とわたしの左の人差し指を掴んで歩き始めた。案内の方法まであざとくて慄く。恐ろしい少年である。




 男の子は長い髪を揺らしながらゆっくりと歩く。わたしもその歩調に合わせる。手にしたお茶菓子が入った包みをちらちらと気にしている様子が可愛らしいがここで妙な声掛けなどすれば即刻切腹の気配がする。里の外れにある先程の茶屋から、ゆったり歩いて十五分。少年が不意に立ち止まった。
 表札にしっかりと刻まれた“日向”の文字。木目まで美しい門の向こうには、木々に彩られた中庭と屋根瓦の乗った母屋が見える。屋敷である。大きいか小さいかで言われると、それほど大きくはないが屋敷には変わりない。噂に聞く日向一族宗家の屋敷ではないのかもしれないが、一般人に緊張するなと言う方が無理がある。どっひぇー、と内心変な声を上げつつ、そんなわたしの心の声なんぞは微塵にも知らないであろうちびっこは、容易く門を跨いでいく。門番の人はいないのか? いや、そうじゃなくて。
 何故こんなお屋敷に案内されているのだろうか。警察のお世話にならなかったのは有り難いが、わたしは日向の人と関わったことなんて年賀状の友を除いて殆どない。呼ばれる理由が分からない。特別上忍になったばかりのわたしに、一体何のご用事なのだろうか。ああやべえ緊張してきたトイレに行きたい。漏らしたら打ち首で済むのかな。とりあえず死ぬな。
 ちびっこに促されるがまま玄関まで辿り着いてしまった。近くには勿忘草の青が一面に広がっている。ちびっこは玄関の扉をガラガラと引っ張って開けると、わたしの指を掴んだまま歩を進める。

「ただいまもどりました」

 このちびっこの丁寧な言葉遣いには恐れ入る。まだアカデミーにも通っていないくらいにしか見えないが、果たしてわたしが幼子だった時、こんなにもしっかりとした言葉遣いができていただろうか、否。
 脱いだ靴をきちんと揃えた男の子は、どうぞおあがりください、とまで言うじゃないか。英才教育が施されている。こんなに幼いのに随分としっかりした子である。しかし訳は分からないままなので、わたしは疑問符に塗れたまま玄関に上がった。

「お、邪魔いたします……?」

 某新喜劇なら「邪魔するんやったら帰ってー」とお決まりの言葉が返ってくるはずなのだが、勿論そんな声が飛んでくることはなかった。天下の日向一族がそんな風にふざけた真似をしてわたしの張り詰めた心を緩めてくださる訳はないので、大人しく靴を揃えるに留まる。
 妙に静かな屋敷だった。そろそろと廊下を歩く。裸足なのでぺたぺたと音が立つが、仕方ない。ちびっこは足音もちっちゃくて可愛いねえ。ああ、こんなことを考えているから連行されたんだろうか。わたし死刑? 処されるの?
 といった疑問を口にすることもできず、男の子に導かれるがままなすがまま。ちびっこの指先はとても小さくてあたたかく、柔らかい。まだ豆もできていない、ふくふくと肌触りが良くて、本当に子どもの手だ。
 廊下の一番奥の部屋の障子に小さな紅葉が触れる。するすると滑らかに障子を開けて、男の子はその中にいる人に向かって軽くお辞儀をし、わたしの指を引っ張って中に入った。

「ちちうえ、ただいまもどりました」
「あ、えっと、お邪魔、いたします」

 わたしも慌てて頭を下げた。中にいらっしゃったのは、日向家当主のヒアシさまと、穏やかな表情の女性。いくら日向一族との関わりがないと言っても、当主のお顔ぐらいは知っている。お待ちしておりました、とヒアシさまが口許を緩めた。ちびっこが女性の方に包みを渡すと、女性はその小さな頭を優しく撫でて腰を上げ、部屋の外へと出て行ってしまう。
 何故お偉いさんと謁見?
 ああーもう嫌だ帰りたい、任務中でもないのに心臓がばくばくと五月蝿い。寧ろ任務中の方がもっと穏やかな気持ちでいられるのではないか。帰りたい。お風呂入って晩ご飯食べて健やかな眠りを享受したい。
 ちびっこは畳の縁を踏まないように注意しているのが分かる足取りで、そろそろと座布団の上に座った。わたしの席らしき場所にも座布団が用意されていたが、これに座って良いものなのだろうか。我が家にはない厚みの座布団である。絶対ふかふかしてるぞ。実家の煎餅みたいな座布団が恋しい。

「どうぞお座りください。まずは急な無礼をお詫びします、殿」
「あ、いえ、そんな」

 軽くヒアシさまが頭を下げたので、わたしも慌てて正座して頭を下げて名乗る。脳味噌が現状把握に必死で、少しばかり反応が遅れたが許してほしい。何をしても失礼になるんじゃないかと気が気でない。

「私は日向一族分家の日向ヒザシと申します」

 早速失礼、ヒアシさまじゃなかった。

「唐突なお話ではありますが」

 日向一族の人って本当にみんな顔が似てるよな、と脳内で勝手な言い訳をするわたしを他所に、緩くまばたきをしたヒザシさまの視線はわたしの目を真っ直ぐに射抜いた。恐ろしく研ぎ澄まされていて身動ぎすら許してもらえないような心地である。世間話のクッションもなく、すぐさま本題に入ろうとする辺り、何か緊急の用件なのだろうという目星はついたが、それ以上の想像をする余裕はない。

「あなたに是非、このネジの家庭教師を務めて頂きたいのです」

 ……きみ、ネジ君っていうの?
 ここにきて初めてちびっこの名前を知ったわたしを置いてけぼりに、にこりとヒザシさまは微笑んだ。
 わたしの実力は大したものでは無い。先日特別上忍になったばかりで、そこら辺の中忍と大して変わらないし、幻術の才能は下忍レベルで止まっている。つまりダメダメな感じである。なのにどうしてわざわざ家庭教師などに任命されているのだろうか。わたしはいま、自分の責務を全うするだけで精一杯なんだぞ。
 と、言えない空気だった。緊張のあまり、はあとか、へえとか、情けない返答が零れるのみである。
 ヒザシさまは訝しむわたしの目を射抜いたまま、続ける。

「勝手なことを申し上げているのは承知の上ですが、ネジにはあなたが必要なのです。あなたの力を貸していただきたい」

 わたしははあ、と再び生返事をするばかりである。いや、さっぱり分からない。

「……あの、何故、わたしなのでしょうか」
「と、言いますと」

 逆に返された言葉に喉が詰まる。

「えっと、わたしは、何かをお教え出来るような立派な忍ではありません。むしろまだ修行中の身で、ご教示願いたいのはこちらの方です……」
「いいえ、あなたの実力をお聞きしているからこそ、お願い申し上げているのです」

 その言葉をどれ程信用して良いものなのか。背筋を流れ落ちる汗が冷たく気持ちが悪い。そもそも関わりがないのである。日向一族にお世話になった覚えもない。実力を褒められていることは素直に嬉しいが、何か大切なものをぼろぼろと見落としている気がしてならない。

「私達の息子をきっと大切にしてくださるだろうと思ったから、ですよ」

 と、今度は部屋の外から女性の声がした。ふわりと目元を綻ばせた彼女の白い手には、お盆の上に人数分のおしぼりと桜餅と湯飲み。どうぞお召し上がりくださいと女性に勧められるまま、わたしは訳も分からず黒文字を手に桜餅を一口。美味しい。いやそうじゃない。そんな場合ではないが桜餅は美味しい。無論、お茶も美味しい。
 わたしは視線をずらす。どうにも慣れない。この、何もかもを見透かされるような目の前では取り繕った言葉も態度も、簡単に看破されていることだろう。だが、日向一族のご子息の家庭教師なんていう大役を担えるとも思えないわたしは、恐る恐る言い訳を始めるしかなかった。

「わたしは、ただの新米特別上忍です。特別ずば抜けた能力がある訳ではありません。ですから、折角お声を掛けて頂いて本当に申し訳無いのですが、わたしには本当に、お教えする力なんてありません……。わたしよりも遥かに実力をお持ちになっている方々は沢山いらっしゃいます。その方々に頼まれた方が絶対に良いと思います」

 ヒザシさまがふふ、と小さく笑った。そして、謙遜される理由はありませんよ、と言ってわたしの目をじっと見据え、お願いします、と頭まで下げられてしまった。わたしは吃驚して喉から勝手にひっと音が零れた。
 これはお願いなんかじゃない、もう脅迫だ! 明らかにわたしより上の人々に逆らえるはずがない!
 なんてこった、どうしてこうなった。項垂れることすら許されない空気の中、ヒザシさまだけではなくネジ君の母君からも視線が肌に刺さる。終わった。もう抵抗しようとか考えるのやめよう。

「……わたしめで、よろしければ」

 非常に情けない、へろへろの声音が零れた。ああ、承諾してしまった。断れないと分かっていても、この状況は本当にどうにかならなかったのだろうか。

「ありがとうございます。これからよろしくお願いいたしますね」

 この選択が正しかったのか、わたしは今でも本当に分からない。




 ヒザシさまと母君は一度腰を上げて、わたしにこの部屋で待つように言うと、部屋の外へ行ってしまった。残されたちびっこ、ネジ君はえへへと無邪気に笑う。何だ天使か。そうか。

「おなまえをおしえてくれますか?」
「……と申します」
「ぼく、あ、わたしは、ひゅうがネジです。ことしでよんさいです!」

 こんなしっかりした四歳児がいるか。
 ああいや、日向一族の英才教育の賜物なのだろう。わたしが四歳の時なんて毎日のご飯とおやつのことしか考えてなかったような気がする。
 見ただけですべすべであることが分かる頬はふくふくと柔らかそうで、思わず摘まみたくなる愛らしさだが、出会って早々に犯罪を重ねるつもりもないので、ここは右手を大人しくさせておくに限る。きらきらと眩しい大きな白い瞳を直視できない。
 でもまあ、よく分からないまま引き受けてしまったとは言え、ネジ君の家庭教師というのは楽しそうだなと思う。ネジ君はわたしの手をおもちゃのようににぎにぎとするのに忙しそうである。君はわたしを犯罪者にしたいのか。そうか。

せんせい」

 わたしは固まった。とても破壊力のある言葉だった。

「せ、先生ですか」
「ちちうえが、せんせいとおよびしなさいって」
「なるほど」

 ちっともなるほどではない。先生と呼ばれるような立派な忍じゃないんだけどな、と思うものの、きらきらとした目で見つめられては断るに断れない。ネジ君はわたしの手に飽きたのか、「すきなたべものは?」「ごほんはよみますか?」「せんせいはつよいですか?」と怒涛の質問攻めを開始した。ちびっこの勢いは止まらない。答える時間が圧倒的に足りないぞ。

「そうだ、あとでせんせいのへや、ごあんないしますね! ぼくのおとなりです!」

 は?
 廊下を指差したネジ君の笑顔は守りたくなるそれ。発言内容はよく分からない。わたしの部屋? 部屋とは。

「まさか、住み込み……?」

 住み込みの意味が分からないであろうネジ君は首を傾げたが、えへへと声を弾ませてわたしに抱きついた。勢いに押されてしまい、わたしは情けなくも畳に強かに後頭部を打ちつけた。地味に痛い。
 よく考えたら、家庭教師を引き受けたものの、細かい話は全くしていないことに気が付いた。お給料は貰えるのか? どの程度? そして住み込みなのか? 家庭教師をする期間は? 特別上忍の仕事との兼ね合いは?
 もしかして、ブラックバイトとかじゃないよね、とわたしは畳の上に転がったまま考え込む。後で聞きに行って良いものだろうか。とりあえずネジ君は可愛いなあ。

01|太陽の巡視

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