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あふがにすタン&ぱきすタン

作者 ちまきing あふがにすタン&ぱきすタン
単行本数 各1巻(連載終了)(三才ブックス)
掲載誌 Web連載でした。サイトは現在消滅しています。
Wikipedia あふがにすタン
チャート
内容 アフガニスタン・パキスタンを中心に、周辺諸国やアメリカ、そして日本を擬人化し、その関係やアフガニスタン・パキスタンの近代の歴史をかみ砕いて4コマ化した異色作品。
擬人化漫画のため一部脚色や事実と異なる点もあるが、あくまでも事実を基にした作品であり両国や周辺諸国を知る一助となる。
両国の辿った歴史というものは非常に重いものではあるが、4コマ自体は明るく可愛らしいノリで描かれている。
キャラクターは所謂ロリキャラで描かれており、可愛らしい画風と扱っている内容の重さとのギャップが特徴。
左のページに4コマが、右のページにはその元となった歴史的事実と作者コメントが書かれており、事実をイメージとして認識しやすい作りとなっている。
アフガニスタン・パキスタンという国を知る一つのきっかけとなる作品。

アフガニスタンを中心に描かれた「あふがにすタン」、
同様に、パキスタンを中心に描かれた「ぱきすタン」が出ている。
感想 特に笑える作品ではありません。特にお気に入りというわけでもありません(あくまでも“笑いが命”の管理人ですので)。
ただ、こういうサイトでこの作品を扱う、ということ自体に意味があるような気がしたのでレビュー対象とさせて頂きました。

●あふがにすタン
最初に表紙を見た時の印象は「何でもかんでも“タン”を付けて萌え化すればいいというもんでもないやろ・・・」でした。
とはいえ、タイトルから色々と話題になった「アフガニスタン」をモチーフとしていることは容易に想像できますので、それらをどのように融合させたのか、それに興味があり手に取りました。
軽く立ち読みして、思った以上にしっかりした内容だったため、ネットで注文したのです(定価は1,500円と高価ですが、ブックオフ店頭で450円、ブックオフオンラインでは150円とお手頃価格でした。)。
正直、チャートを書く時もどのような数字にするか悩みました。単純に一つの作品として扱うのか、作品の方向性を考慮すべきなのか。
一応、特別扱いはせずに、率直に感じたまま点数化しています。ただ、“社会性”の項目があるように、それだけではない作品という事だけは言っておきます。

正味な話、私もこの作品を読むまでは、あまりアフガニスタンに対して何も知らない側の人間でした。
「タリバンやラディンの隠れ家の国」くらいのイメージでした。
それだけに、色々考えさせられる作品です。
アフガニスタンの国際的立場、周囲や欧米諸国との関係、マスコミの偏った報道による誤解や無知(確かに一連の騒動が起きるまで、「アフガニスタンって・・・どこ?アフリカの辺り?(実際は中央アジア)」くらいの認識でしたからね)。
何よりも、国際社会で最も恐ろしい事が「忘れ去られる」ことであるということ。
特に日本ではトルコに対しても「エルトゥールル号の事件に対して無知であったため、イラン・イラク戦争での邦人救出の際にマスコミが失礼な発言をした」なんて事もありますし(トルコはオスマン帝国時代からの最も深い親日国の一つです)。
個人的には「無知は罪」とも思っていますので、「知ること」の導入として非常に意味のある作品だと感じています。
この作品でアフガニスタンや周辺諸国の事が完璧に理解できる、というわけではないですが、知るきっかけにはなり得る。そう思います。
「大切な事はみんな学校以外が教えてくれた」なんて言いますが、こういう事こそ、教育の場で伝えていってほしいものです。
日本が戦争で侵略した国の数を教えることも大切ですが、日本と友好を結んでいる国の事、ODA等の多くの支援をしている国や地域(アジアの某国も支援の対象国です)、日本を嫌う国は多い一方で親日国も多いという事実。
この国が犯した罪だけでなく、国際的に評価されることも学校で教えるようになってほしいものです(どうも日本は自分達の功績を語らない“奥ゆかしさ”が美徳とされていますので)。

●ぱきすタン
前作同様、色々な意味でディープな内容でした。
「民族の争いに他人が首を突っ込むとロクな事にはならない」という言葉を聞いたことがありますが、それに加え本作の最後で語られる「積もり積もった互いへの不信感は悲しい事に簡単に払拭できるものではありません」という言葉。
自分の利権と大国の都合。
その結果、隣人が隣国に、隣国が敵国になってしまう。
日本は「国境」という物に対して意識が薄いと言われています。
日本は島国であり他の国と陸続きの国境がないため、他の国と比較して普段から意識することが少ないからです。
そして、現在では良くも悪くもすっかり平和馴れしてしまっています。
「日本の当たり前を世界の当たり前と思うな」という言葉も聞いたことがあります。
もしも、この国も数々の大戦の中で、勝手に分割され、国中でいがみ合うことになっていたらと想像すると、ゾッとします。
複雑化し、文化や風習、宗教や感情が入り混じった問題というものに対しては特効薬や銀の弾丸はありません。
ですが、作中のラストで描かれた「パキスタン震災」での両国の歩み寄りのように、決して共存が不可能ではないとも思っています。
今回の東北地方太平洋沖地震でも、このところちょっとギスギスしていた隣国からの温かい支援や励ましの言葉があります。
国際問題というもの、決して楽観視は出来ませんが、絶望をする必要もない。
個人的にはそう思っています。

まあ、一人の大阪人がこういうことをふと考えてしまう。それだけでもこれらの作品は非常に意味のあるものなのではないでしょうか。
単行本 発売日 ・あふがにすタン:2005年7月22日
・ぱきすタン:2008年8月30
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