作品ID:259
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Devil+Angel=Reo
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
第二部・第13話。
前の話 | 目次 | 次の話 |
プルルルル・・・とコール音。元は、リビングに置かれた固定電話。
皆、すっかり調理に没頭してしまっているので私が電話に出る。
「もしもし?」
『そろそろ夕食か、と思ったのですが……』
「もしかして朝日奈さんですか……?」
電話をかけてきた相手は、ラファエル・朝日奈翼だったらしい。
『すいません。こんな時間に』
電話の向こうで、翼が謝罪する。しかし、それに騒音が入る。
『翼ーっ! また、ガブリエルと……!』
『ああ、もう! お姉ちゃん、煩いよ! 黙っててっ!』
『黙っててとはなんだ! 私はただガブリエルと接触したことにだな!』
『それ、お姉ちゃんに関係ある!? それは私の問題でしょう!?』
翼のキレた表情が思い浮かぶ。どうやら翼は翼の姉と口論しているようだ。
しかし、口調を丁寧なものに変えて。
『ごめんなさい。姉が口をはさんできて……』
「いえ」
『お気になさらないでくださいね。いつも姉はこうですから』
いつも? と疑問を覚えずにはいられなかったが、口にはしない。
『今日、今この時間に伝えなくてもいいとは思ったんですけどね。
伝えとくのは早いほうがいいと思ってまして』
苦笑の気配が声に加わる。
『桐生刹那さん』
急にフルネームで呼ばれて背筋がのびる。
声にも苦笑などなく、真剣そのものだったから。
『ラファエロ・サンティの一員の貴女に聞きたい事があります。
……今、貴女の手元には鎌をモチーフとした何か、ありませんか?』
「え、鎌をモチーフにした、何か?」
『たとえば、ストラップ』
「あ! ちょっと待ってくださいね」
このレオ争奪戦に参加するにあたって、ウォークマンも一応持ってきておいた。
そのウォークマンについている鎌をモチーフにしたストラップがついていた。
「ありましたけど……」
『では、銀色のブレスレットは?』
「それは、多分、璃維が」
『……璃維君ですか……厄介ですね』
「?」
疑問に思っていることを感じたのか、慌てて朝日奈さんが弁解する。
『あ、そのストラップ。レオ争奪戦予選のときも持っていてくださいね』
「え、どうしてですか? 必要なさそうなのに」
『聞いてないんですか? 璃維君から』
てっきり、聞いていると思っていたのに――そう述べた朝日奈さんは意外そうな声をだした。
『璃維君の暴走時にはそのストラップとブレスレットがないと、暴走を止める事などできないのです。
つまり、そのストラップ、ブレスレットさえあれば、璃維君は止められる』
「それで、持ってたほうがいいんですね? 朝日奈さん」
『はい。あとそれとですね』
「?」
『朝日奈さん、はやめてくださいね。姉とかぶってしまいます』
「あ」
『ですので、これからは名前の方でお呼びいただけると嬉しいです。では』
ブツッ、と切れた電話。
プープーと何回も電話から鳴る。
「あ、刹那。夕食できたよん」
笑顔でお盆を持ってきた春袈。にしても凄くご機嫌だ。
「どうしたん? 刹那?」
電話を持ったまま立ち尽くす刹那に違和感と異変を感じたのか、春袈がお盆をテーブルに置き、こちらへと歩み寄ってくる。
「あ、何? 春袈」
「あ、何? じゃないよ。全く。人の言葉無視するなんて、いい度胸じゃない? 刹那」
これが璃維だったら、璃維すごく落ち込んでるよ、と春袈は言った。
「どうして、璃維が?」
テーブルに置かれたお盆から、料理がのったお皿をテーブルにおいていく作業を手伝いながら問う。
「あのね。自分が大切にされてるってわかってないの?」
溜息混じりに、春袈は言う。
首をかしげて、考え込む私に春袈はさらに、溜息。
「……これじゃあ、あの紅來璃維も大変だわ」
首を振りながら、俯いてキッチンへと引き返す春袈の後姿を見ながら、私は考えていた。
〈何で、璃維が私を大切にするの?〉
心からの疑問であった。
夕食を済ませ、媛とライナが寝た後、私は璃維と春袈をリビングに残るようお願いした。
「ねえ、璃維。朝日奈さんからなんだけど」
「ちょっと待ち。朝日奈さんってどっちよ? 朝日奈翼? 朝日奈騎士?」
「あ、そうか……朝日奈翼さんの方なんだけど」
「そうそう。朝日奈さんじゃ、どこの朝日奈さんか分からないからね。気をつけて」
春袈から注意され、訂正する。
つい先程、当の朝日奈翼からも注意されたばかりだというのに。
「で? その翼が?」
「あ、えーと……」
やっぱり、話すのには勇気がいる。
だって。
話す内容は、あのストラップとブレスレットの事だから。
「えーと。璃維、あのブレスレット持ってる?」
「それが?」
璃維の声に強さが加わる。
「えっと! あのブレスレットとストラップが璃維の暴走を止めるって聞いたから」
バンッ! とテーブルを叩き、椅子から立ち上がる。
びくり、と体が震える。
璃維の両目が、鋭く光っていて。
こちらを睨みつける彼の両目が私を貫く。
「それを翼から聞いた?」
「違うの、それを翼さんが言っていたから!」
「だから、ブレスレット? なぜ?」
「そうじゃなくって、話の流れでストラップとブレスレットの話になって……!」
「でも翼には関係ないはずだろ? 俺の暴走とは」
「関係ないけど、私、聞かれたの! ストラップとブレスレット持ってるか、って!」
それでも尚、口論を続けようとする璃維を遮ったのは春袈だった。
黙って、木製の椅子に座り、目を閉じたその姿。
茶色い髪を手で梳き、目をゆっくりと開ける。
「璃維。このことに関しては、刹那を責めるわけではないだろう」
口調を変え、学校では不良少女とも言われている少女。それが鋼夜春袈だ。
目を開けたその姿。両目は細められ、それはどこか睨んでいるようにも思えた。
誰に? 勿論、紅來璃維に睨んでいるのだ。
「璃維。これを責めるべきは翼にもないぞ」
「……何?」
「いいか。もしも朝日奈翼を責めたとしよう。しかし朝日奈翼に本当の責がないと判明した。
さぁ? どうする?」
この問いは、問いですらなかった。
この問いの答えは、璃維も刹那でさえも分かっていた。
「さて。責が朝日奈翼にない以上、こちらには誤認で勝手に疑いをかけたこととなる。
この責任を取れるのか? 璃維」
「それは」
「それは?」
「…………もういいだろ。別にこの口論に何か、意味があるわけでもないんだし」
そういいながら、璃維は自室へと戻っていく。
その後姿を見ながら、春袈はこう呟いた。
「全く。いくら、自分の過去が過去だからって、何もあそこまで隠そうなんて思わなくてもいいと思うんだけどなぁ」
茶髪を右手で掻きながら、呟く。
「過去?」
「あ」
しまった、という表情。
「璃維の過去って?」
「え、刹那知らなかったの?」
今度は驚きの表情。
「え、何が?」
「刹那ですら知られたくないのなら、ダメだよね」
「春袈?」
「え、いや。大丈夫。アイツの過去なんてつまらない上に、どシリアスだからさ」
ウインクを残して、春袈も自室に戻る。
「……璃維の過去?」
それは、刹那ですら知らない紅來璃維の過去。
それは。
後に発見される紅來璃維の手記にすら記述がないため、その過去は本人しか知らない。
皆、すっかり調理に没頭してしまっているので私が電話に出る。
「もしもし?」
『そろそろ夕食か、と思ったのですが……』
「もしかして朝日奈さんですか……?」
電話をかけてきた相手は、ラファエル・朝日奈翼だったらしい。
『すいません。こんな時間に』
電話の向こうで、翼が謝罪する。しかし、それに騒音が入る。
『翼ーっ! また、ガブリエルと……!』
『ああ、もう! お姉ちゃん、煩いよ! 黙っててっ!』
『黙っててとはなんだ! 私はただガブリエルと接触したことにだな!』
『それ、お姉ちゃんに関係ある!? それは私の問題でしょう!?』
翼のキレた表情が思い浮かぶ。どうやら翼は翼の姉と口論しているようだ。
しかし、口調を丁寧なものに変えて。
『ごめんなさい。姉が口をはさんできて……』
「いえ」
『お気になさらないでくださいね。いつも姉はこうですから』
いつも? と疑問を覚えずにはいられなかったが、口にはしない。
『今日、今この時間に伝えなくてもいいとは思ったんですけどね。
伝えとくのは早いほうがいいと思ってまして』
苦笑の気配が声に加わる。
『桐生刹那さん』
急にフルネームで呼ばれて背筋がのびる。
声にも苦笑などなく、真剣そのものだったから。
『ラファエロ・サンティの一員の貴女に聞きたい事があります。
……今、貴女の手元には鎌をモチーフとした何か、ありませんか?』
「え、鎌をモチーフにした、何か?」
『たとえば、ストラップ』
「あ! ちょっと待ってくださいね」
このレオ争奪戦に参加するにあたって、ウォークマンも一応持ってきておいた。
そのウォークマンについている鎌をモチーフにしたストラップがついていた。
「ありましたけど……」
『では、銀色のブレスレットは?』
「それは、多分、璃維が」
『……璃維君ですか……厄介ですね』
「?」
疑問に思っていることを感じたのか、慌てて朝日奈さんが弁解する。
『あ、そのストラップ。レオ争奪戦予選のときも持っていてくださいね』
「え、どうしてですか? 必要なさそうなのに」
『聞いてないんですか? 璃維君から』
てっきり、聞いていると思っていたのに――そう述べた朝日奈さんは意外そうな声をだした。
『璃維君の暴走時にはそのストラップとブレスレットがないと、暴走を止める事などできないのです。
つまり、そのストラップ、ブレスレットさえあれば、璃維君は止められる』
「それで、持ってたほうがいいんですね? 朝日奈さん」
『はい。あとそれとですね』
「?」
『朝日奈さん、はやめてくださいね。姉とかぶってしまいます』
「あ」
『ですので、これからは名前の方でお呼びいただけると嬉しいです。では』
ブツッ、と切れた電話。
プープーと何回も電話から鳴る。
「あ、刹那。夕食できたよん」
笑顔でお盆を持ってきた春袈。にしても凄くご機嫌だ。
「どうしたん? 刹那?」
電話を持ったまま立ち尽くす刹那に違和感と異変を感じたのか、春袈がお盆をテーブルに置き、こちらへと歩み寄ってくる。
「あ、何? 春袈」
「あ、何? じゃないよ。全く。人の言葉無視するなんて、いい度胸じゃない? 刹那」
これが璃維だったら、璃維すごく落ち込んでるよ、と春袈は言った。
「どうして、璃維が?」
テーブルに置かれたお盆から、料理がのったお皿をテーブルにおいていく作業を手伝いながら問う。
「あのね。自分が大切にされてるってわかってないの?」
溜息混じりに、春袈は言う。
首をかしげて、考え込む私に春袈はさらに、溜息。
「……これじゃあ、あの紅來璃維も大変だわ」
首を振りながら、俯いてキッチンへと引き返す春袈の後姿を見ながら、私は考えていた。
〈何で、璃維が私を大切にするの?〉
心からの疑問であった。
夕食を済ませ、媛とライナが寝た後、私は璃維と春袈をリビングに残るようお願いした。
「ねえ、璃維。朝日奈さんからなんだけど」
「ちょっと待ち。朝日奈さんってどっちよ? 朝日奈翼? 朝日奈騎士?」
「あ、そうか……朝日奈翼さんの方なんだけど」
「そうそう。朝日奈さんじゃ、どこの朝日奈さんか分からないからね。気をつけて」
春袈から注意され、訂正する。
つい先程、当の朝日奈翼からも注意されたばかりだというのに。
「で? その翼が?」
「あ、えーと……」
やっぱり、話すのには勇気がいる。
だって。
話す内容は、あのストラップとブレスレットの事だから。
「えーと。璃維、あのブレスレット持ってる?」
「それが?」
璃維の声に強さが加わる。
「えっと! あのブレスレットとストラップが璃維の暴走を止めるって聞いたから」
バンッ! とテーブルを叩き、椅子から立ち上がる。
びくり、と体が震える。
璃維の両目が、鋭く光っていて。
こちらを睨みつける彼の両目が私を貫く。
「それを翼から聞いた?」
「違うの、それを翼さんが言っていたから!」
「だから、ブレスレット? なぜ?」
「そうじゃなくって、話の流れでストラップとブレスレットの話になって……!」
「でも翼には関係ないはずだろ? 俺の暴走とは」
「関係ないけど、私、聞かれたの! ストラップとブレスレット持ってるか、って!」
それでも尚、口論を続けようとする璃維を遮ったのは春袈だった。
黙って、木製の椅子に座り、目を閉じたその姿。
茶色い髪を手で梳き、目をゆっくりと開ける。
「璃維。このことに関しては、刹那を責めるわけではないだろう」
口調を変え、学校では不良少女とも言われている少女。それが鋼夜春袈だ。
目を開けたその姿。両目は細められ、それはどこか睨んでいるようにも思えた。
誰に? 勿論、紅來璃維に睨んでいるのだ。
「璃維。これを責めるべきは翼にもないぞ」
「……何?」
「いいか。もしも朝日奈翼を責めたとしよう。しかし朝日奈翼に本当の責がないと判明した。
さぁ? どうする?」
この問いは、問いですらなかった。
この問いの答えは、璃維も刹那でさえも分かっていた。
「さて。責が朝日奈翼にない以上、こちらには誤認で勝手に疑いをかけたこととなる。
この責任を取れるのか? 璃維」
「それは」
「それは?」
「…………もういいだろ。別にこの口論に何か、意味があるわけでもないんだし」
そういいながら、璃維は自室へと戻っていく。
その後姿を見ながら、春袈はこう呟いた。
「全く。いくら、自分の過去が過去だからって、何もあそこまで隠そうなんて思わなくてもいいと思うんだけどなぁ」
茶髪を右手で掻きながら、呟く。
「過去?」
「あ」
しまった、という表情。
「璃維の過去って?」
「え、刹那知らなかったの?」
今度は驚きの表情。
「え、何が?」
「刹那ですら知られたくないのなら、ダメだよね」
「春袈?」
「え、いや。大丈夫。アイツの過去なんてつまらない上に、どシリアスだからさ」
ウインクを残して、春袈も自室に戻る。
「……璃維の過去?」
それは、刹那ですら知らない紅來璃維の過去。
それは。
後に発見される紅來璃維の手記にすら記述がないため、その過去は本人しか知らない。
後書き
作者:斎藤七南 |
投稿日:2010/07/31 19:50 更新日:2010/07/31 19:50 『Devil+Angel=Reo』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。 |
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