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人魚姫のお伽話
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
「おとぼけ貴悠と保護者な友人の学生時代」
前の話 | 目次 | 次の話 |
「あ~!! いたいた!! も~っ、仁科君ってば、何処消えてたのぉ?」
「そうだよ~。あたし達探してたんだよ?」
ひろぉ~い、ひろぉ~い、ひろすぎぃ~る、有名私立大学構内で。いきなり背後から腕を掴まれた貴悠は、掴まれた腕とかけられた言葉に困惑した。
振り向けば、何やら徒党を組んだ女性陣に、『探していたのに何処へ消えていたのか!?』と。いきなり責められても、わけが解らない貴悠には困惑しか残らない……。
それも、貴悠に詰め寄ってくる女性達に、見覚えが全くないのだ。はっきり言って、何を責められているのも解らなければ、彼女達が貴悠を探していたという理由も見当がつかない。
貴悠が通うは、有名難関私立大学。言わせてもらえば、そこらの国公立より偏差値も知名度も高い名門校。キャンパスの広さからして尋常ではない。
貴悠が探されていた理由は知らないが、そんな場所で、貴悠とは面識もないはずの女性達が、よくぞ見つけたな、と。妙な所に感心した。
「ええと? すいません。少し講義の合間に余裕があったので、附属病院の子ども達のところへ行っていたんですが……」
貴悠の答えた言葉に、女性達は驚いている。
「え? 仁科君、まだ二回生でしょ?」
「医学部って、実習とかは三回生からだよね?」
女性陣の言葉に、貴悠の方は更に疑問符が浮かぶばかり……。貴悠の答えた言葉に対する反応から見て、同じ学部の生徒ではなさそうだ。何処かで面識があるはずのようだが……。
「サークル活動で、小児病棟でのボランティアを引き受けてるんです。今は偶々時間が空いてたから、僕一人でですけど……」
と、いうか、…………。
「あの、すみません。何か僕にご用でしたか?」
貴悠の当然の疑問。だが、女性陣の言葉は、貴悠の求めたモノではなく……。
「えぇ~? 医学部の勉強だけでも大変でしょ? なのに、ボランティアやってるんだぁ!?」
「すっご~い! 尊敬しちゃう!! お医者さんだけじゃなくて、優しいパパにもなれそうだよね?」
「あ、それ、私も思った!! 仁科君て、絶対に優しそうだし!」
「あ、でもでも!! じゃ、あたし達絶対に話が合うと思うんだよね!」
「あ~、ずるい! ね、仁科君、私、こう見えてもお料理とか得意なんだよ? 仁科君が優しいパパなら、私も絶対にいい奥さん出来ると思うの!」
「う~わ!! 抜け駆けなしって言ったじゃん!? ねぇ、ねぇ、子ども好きなのって、昔から?」
…………スミマセン。こちらの疑問には答えてもらえないんでしょうか……。と、いうよりも、一体全体、唐突に何の話を降られてるんだ?
貴悠は、女性陣に囲まれたまま、困り果てた。
「あ~!! タカ!! みっけたぁ!!」
その場にいきなり響いた第三者の声。だが、その声の持ち主ならば、貴悠もよく知っている。案の定、見慣れた顔が、『作った怒り顔』で、ツカツカと歩み寄ってくる……。
――――アイツ、なんで『他所行きバージョン』の『怒り顔』してるんだ?
「丹実? なんだよ、おまえまで。ていうか、なんでそのカッコだよ?」
「ひぃっど!! その言い草はないよ! も~、タカ、昨日ウチ来たときに約束してたじゃん? このカッコ? タミの意地だけど?」
「へ? なんか約束してたっけ? てか、意地って何の……」
「あ~!! 忘れたふりしようったってのムダ!! こないだの授業のレポート、一緒に仕上げる約束じゃん!?」
「あ、あれか。でも、資料集めをお互い分担して、それから一緒にまとめるんだろ?」
「ざーんねん!! タミ、結構集まってるんだけど? タカの方の待ってるだけ!!」
「うわ! 嘘だろ?」
「ホント!! タミ、出来れば早いとこ出したいし、資料集めは手伝うから、今日はタカの家で徹夜!!」
自分達が受ける鬼教授の講義に提出するためのレポートには、それこそ鬼のような資料を集めなければならなかったはずだが、丹実は既に集めてしまったと聞かされて、貴悠は頭を抱えた。
――――これでは、また、丹実に何をされるか……。
「……勘弁してくれよ…………。で、そのフリルとひらひらは何なんだ?」
「しつっこいな~!! タミの意地って言ってんの!! タミはタミの本業弁えてるけど、偶にはいいじゃん」
「で? タカ、その子たち、誰?」
「へ? あ、そう言えば……。なんか彼女達も僕を探してたらしいんだけど、理由はまだ訊けてない」
答えた貴悠に、女性陣は何やらひそひそ言い交している……。
「ね、ねぇ、仁科君。その子って……だれ?」
「え? あ、同じサークル仲間で、同じ医学部の知り合いです」
「……タカさぁ、お互いの家を行き来して、同じ部屋で眠る仲なのに、タミ、『ただの知り合い』なんだ?」
「変なところで突っかかるなよ!! 大体、おまえが押し掛けてくるのが殆んどだろうがっ!!」
貴悠と丹実のやりとりに、何故か女性陣がざわついた。
「え、それって……」
そこに、『作られた天使の笑顔』で、丹実が一言。
「タミのお祖父ちゃん、『院長先生』って呼ばれる人なんだ。でね、お祖父ちゃん、タミとタカが一人前になるのを楽しみにしてるんだけど、意味、解る?
タミはお祖父ちゃんにとっくにタカを会わせてて、だからお祖父ちゃんはタミとタカが早く一人前になれる日をすっごく楽しみにしてる。
だって、タミ、跡継ぎだしね。……ごめんね? タミの言葉の意味が解るなら、タカのことは諦めてもらえる?」
貴悠には何が何だか解らない内に話はまとまったようで、女性陣は貴悠の周りから引き上げていく。その姿が全部見えなくなったところで、貴悠はいきなり怒鳴りつけられた。
「……~っの、バッかやろ!! もう少し要領よくやるっつうことを覚えろって、オレは常日頃からアドバイスしてやってるだろうに!!
『未来のお医者様』で、出来れば『ルックスも整ってるヤツ』を、アクセと財布の感覚で狙ってる女どもの相手、一々まともにさせられやがってるんじゃねぇっ!!」
「へ?」
「女どもはお前の取り合いしてたんだよっ!!」
「ええと、でも、僕、彼女らに見覚えないぞ?」
「あ~、そら、そうだろうよ。サークル部長の仕業だよ! こないだの合コン、お前の写真と学部、ばらまいて餌にされてたんだよ!!」
「はぁ~っ!!?」
「うちの部長はそれくらいは平気でやる人種だって知ってるだろうが!!」
「なんで僕だよ!!」
「てめぇのルックスとブランド価値を自覚しやがれ!」
丹実の言葉は貴悠からすれば理不尽過ぎる。否、一番の元凶はサークル部長だろうが……。
「抗議しようだなんざ思うなよ? どうせ、のらりくらり交わされるのが目に見えてる」
「わかってるよ!! で、何でおまえはそんなことを知ってるんだよ?」
「お前に群がった女どもが、キャンパス内うろちょろしてるとこに出くわしたんだよ。『あの~、わたしたちぃ、医学部の仁科さんを探してるんですけどぉ』って、猫撫で声出しながら。
幸い、そのときにオレは見つかってなかったから、わざわざ着替えまでしてきて、追い払ってやったんだろ! ったく、ざっけんな!! オレはお前の保護者じゃねぇ!!」
「助かったし礼は言うけど……」
ちなみに、貴悠が丹実の服装に疑問を持ったのは当たり前で、丹実は現在、サークルの女先輩方が丹実に面白がって購入してきた女装用の衣装を着込んでいる。部室に備え付けだと言うから恐ろしい……。
中性的で可愛らしい顔の丹実は、女物の衣をまとえば女に見えてしまうから怖かったりするのだが、誤解無きように追記しておけば、丹実は貴悠と同じ、れっきとした男性だ。
「ったく。卒業後までは面倒見切れねぇんだかんなっ!」
「いきなりで対応出来なかっただけだろ! 悪い、助かった」
「わかってんならいいんだよ。世話掛けさせやがって!! ……お前さぁ、オレが認めてやったヤツなんだから、あんまりふざけたのに引っ掻かんなよ?」
「最後の一言、余計だよ!」
――――なんて、これは、王子様の学生時代のお話……。
「そうだよ~。あたし達探してたんだよ?」
ひろぉ~い、ひろぉ~い、ひろすぎぃ~る、有名私立大学構内で。いきなり背後から腕を掴まれた貴悠は、掴まれた腕とかけられた言葉に困惑した。
振り向けば、何やら徒党を組んだ女性陣に、『探していたのに何処へ消えていたのか!?』と。いきなり責められても、わけが解らない貴悠には困惑しか残らない……。
それも、貴悠に詰め寄ってくる女性達に、見覚えが全くないのだ。はっきり言って、何を責められているのも解らなければ、彼女達が貴悠を探していたという理由も見当がつかない。
貴悠が通うは、有名難関私立大学。言わせてもらえば、そこらの国公立より偏差値も知名度も高い名門校。キャンパスの広さからして尋常ではない。
貴悠が探されていた理由は知らないが、そんな場所で、貴悠とは面識もないはずの女性達が、よくぞ見つけたな、と。妙な所に感心した。
「ええと? すいません。少し講義の合間に余裕があったので、附属病院の子ども達のところへ行っていたんですが……」
貴悠の答えた言葉に、女性達は驚いている。
「え? 仁科君、まだ二回生でしょ?」
「医学部って、実習とかは三回生からだよね?」
女性陣の言葉に、貴悠の方は更に疑問符が浮かぶばかり……。貴悠の答えた言葉に対する反応から見て、同じ学部の生徒ではなさそうだ。何処かで面識があるはずのようだが……。
「サークル活動で、小児病棟でのボランティアを引き受けてるんです。今は偶々時間が空いてたから、僕一人でですけど……」
と、いうか、…………。
「あの、すみません。何か僕にご用でしたか?」
貴悠の当然の疑問。だが、女性陣の言葉は、貴悠の求めたモノではなく……。
「えぇ~? 医学部の勉強だけでも大変でしょ? なのに、ボランティアやってるんだぁ!?」
「すっご~い! 尊敬しちゃう!! お医者さんだけじゃなくて、優しいパパにもなれそうだよね?」
「あ、それ、私も思った!! 仁科君て、絶対に優しそうだし!」
「あ、でもでも!! じゃ、あたし達絶対に話が合うと思うんだよね!」
「あ~、ずるい! ね、仁科君、私、こう見えてもお料理とか得意なんだよ? 仁科君が優しいパパなら、私も絶対にいい奥さん出来ると思うの!」
「う~わ!! 抜け駆けなしって言ったじゃん!? ねぇ、ねぇ、子ども好きなのって、昔から?」
…………スミマセン。こちらの疑問には答えてもらえないんでしょうか……。と、いうよりも、一体全体、唐突に何の話を降られてるんだ?
貴悠は、女性陣に囲まれたまま、困り果てた。
「あ~!! タカ!! みっけたぁ!!」
その場にいきなり響いた第三者の声。だが、その声の持ち主ならば、貴悠もよく知っている。案の定、見慣れた顔が、『作った怒り顔』で、ツカツカと歩み寄ってくる……。
――――アイツ、なんで『他所行きバージョン』の『怒り顔』してるんだ?
「丹実? なんだよ、おまえまで。ていうか、なんでそのカッコだよ?」
「ひぃっど!! その言い草はないよ! も~、タカ、昨日ウチ来たときに約束してたじゃん? このカッコ? タミの意地だけど?」
「へ? なんか約束してたっけ? てか、意地って何の……」
「あ~!! 忘れたふりしようったってのムダ!! こないだの授業のレポート、一緒に仕上げる約束じゃん!?」
「あ、あれか。でも、資料集めをお互い分担して、それから一緒にまとめるんだろ?」
「ざーんねん!! タミ、結構集まってるんだけど? タカの方の待ってるだけ!!」
「うわ! 嘘だろ?」
「ホント!! タミ、出来れば早いとこ出したいし、資料集めは手伝うから、今日はタカの家で徹夜!!」
自分達が受ける鬼教授の講義に提出するためのレポートには、それこそ鬼のような資料を集めなければならなかったはずだが、丹実は既に集めてしまったと聞かされて、貴悠は頭を抱えた。
――――これでは、また、丹実に何をされるか……。
「……勘弁してくれよ…………。で、そのフリルとひらひらは何なんだ?」
「しつっこいな~!! タミの意地って言ってんの!! タミはタミの本業弁えてるけど、偶にはいいじゃん」
「で? タカ、その子たち、誰?」
「へ? あ、そう言えば……。なんか彼女達も僕を探してたらしいんだけど、理由はまだ訊けてない」
答えた貴悠に、女性陣は何やらひそひそ言い交している……。
「ね、ねぇ、仁科君。その子って……だれ?」
「え? あ、同じサークル仲間で、同じ医学部の知り合いです」
「……タカさぁ、お互いの家を行き来して、同じ部屋で眠る仲なのに、タミ、『ただの知り合い』なんだ?」
「変なところで突っかかるなよ!! 大体、おまえが押し掛けてくるのが殆んどだろうがっ!!」
貴悠と丹実のやりとりに、何故か女性陣がざわついた。
「え、それって……」
そこに、『作られた天使の笑顔』で、丹実が一言。
「タミのお祖父ちゃん、『院長先生』って呼ばれる人なんだ。でね、お祖父ちゃん、タミとタカが一人前になるのを楽しみにしてるんだけど、意味、解る?
タミはお祖父ちゃんにとっくにタカを会わせてて、だからお祖父ちゃんはタミとタカが早く一人前になれる日をすっごく楽しみにしてる。
だって、タミ、跡継ぎだしね。……ごめんね? タミの言葉の意味が解るなら、タカのことは諦めてもらえる?」
貴悠には何が何だか解らない内に話はまとまったようで、女性陣は貴悠の周りから引き上げていく。その姿が全部見えなくなったところで、貴悠はいきなり怒鳴りつけられた。
「……~っの、バッかやろ!! もう少し要領よくやるっつうことを覚えろって、オレは常日頃からアドバイスしてやってるだろうに!!
『未来のお医者様』で、出来れば『ルックスも整ってるヤツ』を、アクセと財布の感覚で狙ってる女どもの相手、一々まともにさせられやがってるんじゃねぇっ!!」
「へ?」
「女どもはお前の取り合いしてたんだよっ!!」
「ええと、でも、僕、彼女らに見覚えないぞ?」
「あ~、そら、そうだろうよ。サークル部長の仕業だよ! こないだの合コン、お前の写真と学部、ばらまいて餌にされてたんだよ!!」
「はぁ~っ!!?」
「うちの部長はそれくらいは平気でやる人種だって知ってるだろうが!!」
「なんで僕だよ!!」
「てめぇのルックスとブランド価値を自覚しやがれ!」
丹実の言葉は貴悠からすれば理不尽過ぎる。否、一番の元凶はサークル部長だろうが……。
「抗議しようだなんざ思うなよ? どうせ、のらりくらり交わされるのが目に見えてる」
「わかってるよ!! で、何でおまえはそんなことを知ってるんだよ?」
「お前に群がった女どもが、キャンパス内うろちょろしてるとこに出くわしたんだよ。『あの~、わたしたちぃ、医学部の仁科さんを探してるんですけどぉ』って、猫撫で声出しながら。
幸い、そのときにオレは見つかってなかったから、わざわざ着替えまでしてきて、追い払ってやったんだろ! ったく、ざっけんな!! オレはお前の保護者じゃねぇ!!」
「助かったし礼は言うけど……」
ちなみに、貴悠が丹実の服装に疑問を持ったのは当たり前で、丹実は現在、サークルの女先輩方が丹実に面白がって購入してきた女装用の衣装を着込んでいる。部室に備え付けだと言うから恐ろしい……。
中性的で可愛らしい顔の丹実は、女物の衣をまとえば女に見えてしまうから怖かったりするのだが、誤解無きように追記しておけば、丹実は貴悠と同じ、れっきとした男性だ。
「ったく。卒業後までは面倒見切れねぇんだかんなっ!」
「いきなりで対応出来なかっただけだろ! 悪い、助かった」
「わかってんならいいんだよ。世話掛けさせやがって!! ……お前さぁ、オレが認めてやったヤツなんだから、あんまりふざけたのに引っ掻かんなよ?」
「最後の一言、余計だよ!」
――――なんて、これは、王子様の学生時代のお話……。
後書き
作者:未彩 |
投稿日:2016/01/19 12:43 更新日:2016/01/19 12:43 『人魚姫のお伽話』の著作権は、すべて作者 未彩様に属します。 |
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