作品ID:1691
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人魚姫のお伽話
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
「無邪気な声と生温い視線」
前の話 | 目次 | 次の話 |
『……ですから、私にはたかはる王子がいるのです!!』
『それなら、お前がたかはるをあきらめてこちらを見るまで、ここにいてもらおう』
言葉に泣き崩れた姫君は、与えられた椅子にもたれかかりながら嘆きます。悪者に攫われてしまった姫君は、嘆きの涙を零すだけ。
『…………ああ、たかはる王子……』
『受け入れることだな、たかはるは来ない』
泣き崩れて嘆く姿に、伸ばされかけた手…………。嘆く姫君は、差し出された手に怯えたように竦むばかりで、姫君の怯えが伝わるよう……。
――そこに、凛とした声が響く。
『その汚い手を離せ!! ……ああ、間に合った。姫は返してもらう!!』
『な!!』
『たかはる王子!!』
攫われ監禁されていた部屋から、自分を助けるために駆け回った、姫の愛する王子によって、姫君は悪者から無事に助け出されたのだ。
『…………ゆう姫、助けが遅くなったことをお許しください』
『そんなことはありません。こうして助けていただきました』
瞳に涙を滲ませた姫君に、王子が微笑む。
『戻りましょう、私たちの城へ。ゆう、二度と悪いやつらに渡しませんから』
『ええ、二度と離れたくありません。たかはる王子、私の愛する方』
部屋に広がっていた絵本の世界は、姫君と王子が二人で手を取り合った場面で終わりを告げ、小さな子ども達の声が室内に響く。
「つぎ!! わたし、はるちゃんせんせ、やりたい」
「あ、あたし、じゃあ、ゆうちゃんせんせ!!」
「えー、はるちゃんせんせは男の子だよぉ? ボク、はるちゃんせんせがいい」
「ぼくもはるちゃんせんせやりたい!!」
「じゃあ、ジャンケンで決めようよ?」
…………目の前で繰り広げられた会話と光景に、貴悠は気絶しそうになる感覚をはっきりと覚えた。病棟の先輩方の目がここ数日、いつにも増して生温いことに疑問を浮かべていたのだが……。
何気なく訪れた小児病棟の遊戯室で繰り広げられた会話と光景を見て、疑問は解消したが、代わりに堪えきれない頭痛と眩暈に襲われるとは、流石の貴悠でも、予想だにしなかった。
「あれ? はるちゃんせんせだ!!」
「あ、せんせ!!」
引き攣りきった貴悠になど臆することなく、子ども達は無邪気に貴悠の姿を見つけて駆け寄ってくる。
「……アヤ、サトル、ヒロキ? 今の、何か訊いてもいいか?」
貴悠の言葉に、子ども達は、それはそれは無邪気に笑って、声を上げた。
「あのねー、絵本で読んだのとおんなじって聞いたの」
「…………何が?」
「えー? ゆうちゃんせんせ、来るの少なくなって、ピアノで遊べなくなっちゃったし」
「……で?」
「遊ぶのなんかつまんないなぁって言ったら、怖い看護婦さんと優しい看護婦さんが教えてくれたの」
「…………何を?」
「えとね、こないだ、悪い人に連れ去られそうになったゆうちゃんせんせを、はるちゃんせんせが王子様みたいに助けに来たよって」
「……へぇ?」
「怖い看護婦さんと優しい看護婦さんが教えてくれたの聞いて、絵本みたいで、すごく面白そうって思ったから、お芝居にしてみんなで遊んでる」
「…………」
――――休憩時間、小児科ドクターからの呼び出しの意味を既に察知したらしい友人は、他の人間と交代時間を入れ替えて逃げた。小児病棟看護師長もまた然り……。
「ふ、ふ、ふざけんなぁ~っ!!」
貴悠の叫びが誰もいない屋上の休憩スペースに空しく木霊した…………。
『それなら、お前がたかはるをあきらめてこちらを見るまで、ここにいてもらおう』
言葉に泣き崩れた姫君は、与えられた椅子にもたれかかりながら嘆きます。悪者に攫われてしまった姫君は、嘆きの涙を零すだけ。
『…………ああ、たかはる王子……』
『受け入れることだな、たかはるは来ない』
泣き崩れて嘆く姿に、伸ばされかけた手…………。嘆く姫君は、差し出された手に怯えたように竦むばかりで、姫君の怯えが伝わるよう……。
――そこに、凛とした声が響く。
『その汚い手を離せ!! ……ああ、間に合った。姫は返してもらう!!』
『な!!』
『たかはる王子!!』
攫われ監禁されていた部屋から、自分を助けるために駆け回った、姫の愛する王子によって、姫君は悪者から無事に助け出されたのだ。
『…………ゆう姫、助けが遅くなったことをお許しください』
『そんなことはありません。こうして助けていただきました』
瞳に涙を滲ませた姫君に、王子が微笑む。
『戻りましょう、私たちの城へ。ゆう、二度と悪いやつらに渡しませんから』
『ええ、二度と離れたくありません。たかはる王子、私の愛する方』
部屋に広がっていた絵本の世界は、姫君と王子が二人で手を取り合った場面で終わりを告げ、小さな子ども達の声が室内に響く。
「つぎ!! わたし、はるちゃんせんせ、やりたい」
「あ、あたし、じゃあ、ゆうちゃんせんせ!!」
「えー、はるちゃんせんせは男の子だよぉ? ボク、はるちゃんせんせがいい」
「ぼくもはるちゃんせんせやりたい!!」
「じゃあ、ジャンケンで決めようよ?」
…………目の前で繰り広げられた会話と光景に、貴悠は気絶しそうになる感覚をはっきりと覚えた。病棟の先輩方の目がここ数日、いつにも増して生温いことに疑問を浮かべていたのだが……。
何気なく訪れた小児病棟の遊戯室で繰り広げられた会話と光景を見て、疑問は解消したが、代わりに堪えきれない頭痛と眩暈に襲われるとは、流石の貴悠でも、予想だにしなかった。
「あれ? はるちゃんせんせだ!!」
「あ、せんせ!!」
引き攣りきった貴悠になど臆することなく、子ども達は無邪気に貴悠の姿を見つけて駆け寄ってくる。
「……アヤ、サトル、ヒロキ? 今の、何か訊いてもいいか?」
貴悠の言葉に、子ども達は、それはそれは無邪気に笑って、声を上げた。
「あのねー、絵本で読んだのとおんなじって聞いたの」
「…………何が?」
「えー? ゆうちゃんせんせ、来るの少なくなって、ピアノで遊べなくなっちゃったし」
「……で?」
「遊ぶのなんかつまんないなぁって言ったら、怖い看護婦さんと優しい看護婦さんが教えてくれたの」
「…………何を?」
「えとね、こないだ、悪い人に連れ去られそうになったゆうちゃんせんせを、はるちゃんせんせが王子様みたいに助けに来たよって」
「……へぇ?」
「怖い看護婦さんと優しい看護婦さんが教えてくれたの聞いて、絵本みたいで、すごく面白そうって思ったから、お芝居にしてみんなで遊んでる」
「…………」
――――休憩時間、小児科ドクターからの呼び出しの意味を既に察知したらしい友人は、他の人間と交代時間を入れ替えて逃げた。小児病棟看護師長もまた然り……。
「ふ、ふ、ふざけんなぁ~っ!!」
貴悠の叫びが誰もいない屋上の休憩スペースに空しく木霊した…………。
後書き
作者:未彩 |
投稿日:2016/01/19 12:46 更新日:2016/01/19 12:46 『人魚姫のお伽話』の著作権は、すべて作者 未彩様に属します。 |
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