作品ID:1700
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人魚姫のお伽話
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
「見てるから」
前の話 | 目次 | 次の話 |
――――泣いてるおまえに何もしてやれなかった私を、おまえが泣くことになると知っていて、何もしてやれなかった私を、どうか許さないでおくれ。
「あのね、今日はね、……」
おまえはいつも嬉しそうに彼の話を聞かせたね。おまえは気付いていないみたいだったけれど、とても幼い頃から、おまえにとって特別な存在だったんだ。
「あのね、それでね……」
おまえが自分の心に気付いたとき、私はおまえを応援しようと決めた。私達はおまえから沢山のものを奪い過ぎた。償いとはいえない、だけど、決めていた。
「……うん、でもね…………」
おまえが彼の話をするときに、辛そうな表情を浮かべ出したのは何時ぐらいだっただろうか? 私は気付いてやれなかった。私達がまた、おまえから奪ってしまっている、そのことに。
『お母さんの身体が心配なら、いい子で居るんですよ』
――――この一つの言葉が、おまえから、幾つの数え切れない大切なものを、取り上げただろう。笑顔も子どもも亡くしてゆく、そんなおまえが心配だった。
「……いいの? 習いたい、わたし、習いたい」
おまえは言ったんだったね。
――――「いいわけないわ、お祖父ちゃん。どうして私があの子と彼のヴァージンロードを演奏するの? どうして笑っておめでとうなの?
どうして、どうして…………。いいわけないわ、お祖父ちゃん。いいわけがないわ、お祖父ちゃん!! どうして私が? どうして、どうして?」
泣いてるおまえに私はどうしてやることも出来なかった。おまえが泣くのを知っていながら、あの子がおまえではない子を瞳に映すようになったのを知ったとき、私は既に病に倒れて、私はやはり何もしてやれなかったのだ……。
――――四季が廻る。泣いていた、おまえの前に現われた青年、私はおまえがまた傷付くだけではと思っていた。
「あのね、今日……」
嬉しそうにおまえが告げる。
「もう、信じらんないっ!! ……」
頬をうっすら染めたおまえが恥ずかしそうに報告してくれる。
「ゆ、指輪、もらってから気付いたけど、これってとっても高価なんじゃ……」
嬉しそうに恥ずかしそうに、おまえは語る。
――――おまえが『写真』を入れ替えてから、どれくらい経った頃だろうか。おまえは今、私が眠るとされている場所の前で、幸せそうに微笑む。
泣いていた、おまえの前に現われた、あの青年と共に、私の前に訪れて、幸せそうに笑みを浮かべてる…………。
「仁科貴悠です。ええと、ご両親にはご挨拶を済ませたんですが、優卵の特別なお祖父さんにもきちんとご挨拶しておきたくて……。
お孫さんの優卵さんと結婚させて頂くことになりました。及第点、頂けるのかどうか、ちょっと自信ないんですけど……」
青年の言葉に、おまえが笑う。明るい笑みで、幸せそうに。
「なに? 随分、お祖父ちゃんの前では自信なさげに仰るんですね。両親の前じゃ、あんなに堂々としてたくせに!!」
「あー、あれは、職業が功を奏しただけというか……。人を前にして話すのは慣れてるけど、優卵の特別なお祖父さんだって知ってて、そのお墓の前じゃ……」
――――青年とじゃれあうおまえは本当に幸せそうで、ただただ、私は嬉しかった。ああ、ようやく、ようやく、私も務めを終えていける…………。
強がることばかりを覚えさせた。傷付きやすいおまえに似合いの、優しい心を持った強い青年だと思うよ。幸せにおなり。今度こそ、遠い場所で見てるから。
「あのね、今日はね、……」
おまえはいつも嬉しそうに彼の話を聞かせたね。おまえは気付いていないみたいだったけれど、とても幼い頃から、おまえにとって特別な存在だったんだ。
「あのね、それでね……」
おまえが自分の心に気付いたとき、私はおまえを応援しようと決めた。私達はおまえから沢山のものを奪い過ぎた。償いとはいえない、だけど、決めていた。
「……うん、でもね…………」
おまえが彼の話をするときに、辛そうな表情を浮かべ出したのは何時ぐらいだっただろうか? 私は気付いてやれなかった。私達がまた、おまえから奪ってしまっている、そのことに。
『お母さんの身体が心配なら、いい子で居るんですよ』
――――この一つの言葉が、おまえから、幾つの数え切れない大切なものを、取り上げただろう。笑顔も子どもも亡くしてゆく、そんなおまえが心配だった。
「……いいの? 習いたい、わたし、習いたい」
おまえは言ったんだったね。
――――「いいわけないわ、お祖父ちゃん。どうして私があの子と彼のヴァージンロードを演奏するの? どうして笑っておめでとうなの?
どうして、どうして…………。いいわけないわ、お祖父ちゃん。いいわけがないわ、お祖父ちゃん!! どうして私が? どうして、どうして?」
泣いてるおまえに私はどうしてやることも出来なかった。おまえが泣くのを知っていながら、あの子がおまえではない子を瞳に映すようになったのを知ったとき、私は既に病に倒れて、私はやはり何もしてやれなかったのだ……。
――――四季が廻る。泣いていた、おまえの前に現われた青年、私はおまえがまた傷付くだけではと思っていた。
「あのね、今日……」
嬉しそうにおまえが告げる。
「もう、信じらんないっ!! ……」
頬をうっすら染めたおまえが恥ずかしそうに報告してくれる。
「ゆ、指輪、もらってから気付いたけど、これってとっても高価なんじゃ……」
嬉しそうに恥ずかしそうに、おまえは語る。
――――おまえが『写真』を入れ替えてから、どれくらい経った頃だろうか。おまえは今、私が眠るとされている場所の前で、幸せそうに微笑む。
泣いていた、おまえの前に現われた、あの青年と共に、私の前に訪れて、幸せそうに笑みを浮かべてる…………。
「仁科貴悠です。ええと、ご両親にはご挨拶を済ませたんですが、優卵の特別なお祖父さんにもきちんとご挨拶しておきたくて……。
お孫さんの優卵さんと結婚させて頂くことになりました。及第点、頂けるのかどうか、ちょっと自信ないんですけど……」
青年の言葉に、おまえが笑う。明るい笑みで、幸せそうに。
「なに? 随分、お祖父ちゃんの前では自信なさげに仰るんですね。両親の前じゃ、あんなに堂々としてたくせに!!」
「あー、あれは、職業が功を奏しただけというか……。人を前にして話すのは慣れてるけど、優卵の特別なお祖父さんだって知ってて、そのお墓の前じゃ……」
――――青年とじゃれあうおまえは本当に幸せそうで、ただただ、私は嬉しかった。ああ、ようやく、ようやく、私も務めを終えていける…………。
強がることばかりを覚えさせた。傷付きやすいおまえに似合いの、優しい心を持った強い青年だと思うよ。幸せにおなり。今度こそ、遠い場所で見てるから。
後書き
作者:未彩 |
投稿日:2016/01/19 12:57 更新日:2016/01/19 12:59 『人魚姫のお伽話』の著作権は、すべて作者 未彩様に属します。 |
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