作品ID:1701
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人魚姫のお伽話
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
「幸せの景色に奏でる『人魚姫のLove song』」
前の話 | 目次 | 次の話 |
届かないLove Song 歌っている
今日も明日も わたし歌ってる
伝えたい 云えない
もう 届かない
人魚の声で わたし 歌ってる
君に一番近い場所 ボクがいると想ってた
いつも優しく笑ってくれたよね それが とても嬉しくて
君と弾いたあの曲を ボクは今も覚えてる
君と弾いたあの曲を ボクは今も覚えてる
だけど無邪気な季節(とき)は いつしか通り過ぎて…………
……笑うあの子 笑い返す君 ボクは見てる
どうして と どうして と
こころ叫んでも ボクの声 涙でもう届かない
ボクの声 涙で もう届かない
届かないLove Song 歌っている
今日も明日も わたし歌うから
伝えたい 云えない
もう届かない
人魚の声で わたし 歌ってる
…………君の幸せ 遠く歌ってる……
「これ、去年に作ったやつ? あ、去年って言うより、一昨年に近いかな……」
唐突に話を振られて、何のことだろうと首を傾げると、婚約者が古い譜面を持っていて。婚約者が持っていた譜面のタイトルに、慌ててそれを取り返す。
「きゃ!! か、勝手に……」
少し咎めるような声と視線を送ると、婚約者は素直にごめんと謝った。
「あ、ごめん。でも、リビングに広げてあったから」
婚約者の言葉に、そう言えば、処分してしまおうかと、古い譜面をリビングにそのまま広げていたのは、自分の方だったと思い返す。
「あ、いいです。処分しちゃおうと思って、リビングに散らけてたの、私の方でしたし……」
私の言葉に、婚約者は何故か首を傾げた。
「え、捨てちゃうの? これ、きっちり左の伴奏も書き込んであるし、出来上がってるやつじゃないの?」
「それはそうなんですけど……。使わないし、使う機会もなければ使おうとも思わないものだし」
彼女の言葉に、うーんと首を傾げる。
「出来てる曲なんだよね?」
「まぁ、出来てはいますよ? なに、やけにこだわりません?」
こちらの言動の意図が読めないと言いたげに、彼女は不思議そうに瞳を瞬かせている。
「…………じゃあ、折角だから弾いてほしいな。勿論、歌付きで。聴いてみたい」
「……へ?」
意図が読めないままに、いつの間にかグランドピアノの前に腰掛けている私。古い譜面に目を走らせてから、婚約者を見上げると、どうしてなのか、期待に満ちた瞳を輝かせている。
「ええと、これ、そんなに興味惹きました?」
「うん。初めて逢ったときに歌ってた。出来上がってるとは知らなかったけど……」
懐かしい話を持ち出すから、苦笑するしかない。
「…………いいですけど、昔の曲だし、きちんと弾けるか歌えるかどうか、知りませんからね」
「ご謙遜!! 去年一昨年の曲ぐらい、余裕で弾けるし歌えるくせに」
茶化すような言葉に、何か不穏な流れを感じて、一応の釘は差しておく。
「……先に言っときますけど、歌いませんからね? 弾かないから!!」
「ん?」
とぼけてみせるけれど、その態度に、やっぱりと思う。
「弾くのも歌うのもこっちの譜面だけ!! とんでもない思いした曲は歌わないし弾かないから!!」
どうやら、聡い彼女は気付いていたらしい。こちらを睨み付けながら、昔の出来事を思い出したようで、頬をうっすらと染めている。
「それは残念。もう、あれは、弾いても歌ってもくれないんだ?」
「…………たぬき!! こっちがどんな思いしたか知ってて言う? 死んだ振りしたかったのに!!」
頬を染めながら噛み付いてくる彼女に、ケタケタと笑えば、彼女はフンとそっぽを向いた。
「そこまで言われる? あ、遠慮せずに死んだ振りしてくれたら、きちんと蘇生処置もしてあげたのに」
こちらの言葉の意図に気付いたようで、彼女は瞳を大きく瞠った。
「……じょ、冗談じゃないです!! だから、イヤなの!! 子ども達の前で何する気!?」
「別に? 目の前で心肺停止して呼吸止めてる子、医者としては放っとけないよねって話」
彼女は今にも噛み付きそうな勢いでこちらを睨み付けている。
「いいから、弾いてよ、僕が最初に優卵に惹かれたきっかけ」
「へ?」
「あれ? 言ったでしょ、チャペルのピアノ弾いてるとこ、出くわしてたって……」
「あ、あのとき言ってた?」
「そ、弾いてよ。それとも、今もその曲は辛い?」
「…………貴悠さん、解ってて言ってるでしょ? これはとうに昔の曲!!」
クスクスと微笑めば、彼も微笑む。
「弾いてよ、僕らの出逢いの曲」
そんな風に言われたら、私だって断れない。
「……なに? これ、一応、失恋ソングなんだけど……。そんな優しい曲にいつの間に変わったの?」
笑いを堪えきれずに言えば、彼が微笑む。
「どんな意味に捉えるかってだけの話じゃない?」
「まぁ、そうなんだけど……。言っときますけど、もう一つの方は弾きませんし歌いませんからね!!」
念押しするように言葉にすれば、彼は残念と笑うけど……。どうせ、この人に本気で聴きたいと言われてしまえば、あのラブソングを弾いちゃうだろうなと、そんな自分を私は知ってる。
鍵盤に両手を構え、演奏の姿勢に入りながら、集中するために一度視線を閉じる。スゥッと息を吸い込んで、私は最初の人魚姫を紡ぎ始めた…………。
私に永久の春を連れて来てくれた人が微笑む温かくて幸せな空間で、くすぐったくて優しい気持ちに包まれながら、私は奏でる。生まれ変わる前の、傷付いていた人魚姫を……。
今日も明日も わたし歌ってる
伝えたい 云えない
もう 届かない
人魚の声で わたし 歌ってる
君に一番近い場所 ボクがいると想ってた
いつも優しく笑ってくれたよね それが とても嬉しくて
君と弾いたあの曲を ボクは今も覚えてる
君と弾いたあの曲を ボクは今も覚えてる
だけど無邪気な季節(とき)は いつしか通り過ぎて…………
……笑うあの子 笑い返す君 ボクは見てる
どうして と どうして と
こころ叫んでも ボクの声 涙でもう届かない
ボクの声 涙で もう届かない
届かないLove Song 歌っている
今日も明日も わたし歌うから
伝えたい 云えない
もう届かない
人魚の声で わたし 歌ってる
…………君の幸せ 遠く歌ってる……
「これ、去年に作ったやつ? あ、去年って言うより、一昨年に近いかな……」
唐突に話を振られて、何のことだろうと首を傾げると、婚約者が古い譜面を持っていて。婚約者が持っていた譜面のタイトルに、慌ててそれを取り返す。
「きゃ!! か、勝手に……」
少し咎めるような声と視線を送ると、婚約者は素直にごめんと謝った。
「あ、ごめん。でも、リビングに広げてあったから」
婚約者の言葉に、そう言えば、処分してしまおうかと、古い譜面をリビングにそのまま広げていたのは、自分の方だったと思い返す。
「あ、いいです。処分しちゃおうと思って、リビングに散らけてたの、私の方でしたし……」
私の言葉に、婚約者は何故か首を傾げた。
「え、捨てちゃうの? これ、きっちり左の伴奏も書き込んであるし、出来上がってるやつじゃないの?」
「それはそうなんですけど……。使わないし、使う機会もなければ使おうとも思わないものだし」
彼女の言葉に、うーんと首を傾げる。
「出来てる曲なんだよね?」
「まぁ、出来てはいますよ? なに、やけにこだわりません?」
こちらの言動の意図が読めないと言いたげに、彼女は不思議そうに瞳を瞬かせている。
「…………じゃあ、折角だから弾いてほしいな。勿論、歌付きで。聴いてみたい」
「……へ?」
意図が読めないままに、いつの間にかグランドピアノの前に腰掛けている私。古い譜面に目を走らせてから、婚約者を見上げると、どうしてなのか、期待に満ちた瞳を輝かせている。
「ええと、これ、そんなに興味惹きました?」
「うん。初めて逢ったときに歌ってた。出来上がってるとは知らなかったけど……」
懐かしい話を持ち出すから、苦笑するしかない。
「…………いいですけど、昔の曲だし、きちんと弾けるか歌えるかどうか、知りませんからね」
「ご謙遜!! 去年一昨年の曲ぐらい、余裕で弾けるし歌えるくせに」
茶化すような言葉に、何か不穏な流れを感じて、一応の釘は差しておく。
「……先に言っときますけど、歌いませんからね? 弾かないから!!」
「ん?」
とぼけてみせるけれど、その態度に、やっぱりと思う。
「弾くのも歌うのもこっちの譜面だけ!! とんでもない思いした曲は歌わないし弾かないから!!」
どうやら、聡い彼女は気付いていたらしい。こちらを睨み付けながら、昔の出来事を思い出したようで、頬をうっすらと染めている。
「それは残念。もう、あれは、弾いても歌ってもくれないんだ?」
「…………たぬき!! こっちがどんな思いしたか知ってて言う? 死んだ振りしたかったのに!!」
頬を染めながら噛み付いてくる彼女に、ケタケタと笑えば、彼女はフンとそっぽを向いた。
「そこまで言われる? あ、遠慮せずに死んだ振りしてくれたら、きちんと蘇生処置もしてあげたのに」
こちらの言葉の意図に気付いたようで、彼女は瞳を大きく瞠った。
「……じょ、冗談じゃないです!! だから、イヤなの!! 子ども達の前で何する気!?」
「別に? 目の前で心肺停止して呼吸止めてる子、医者としては放っとけないよねって話」
彼女は今にも噛み付きそうな勢いでこちらを睨み付けている。
「いいから、弾いてよ、僕が最初に優卵に惹かれたきっかけ」
「へ?」
「あれ? 言ったでしょ、チャペルのピアノ弾いてるとこ、出くわしてたって……」
「あ、あのとき言ってた?」
「そ、弾いてよ。それとも、今もその曲は辛い?」
「…………貴悠さん、解ってて言ってるでしょ? これはとうに昔の曲!!」
クスクスと微笑めば、彼も微笑む。
「弾いてよ、僕らの出逢いの曲」
そんな風に言われたら、私だって断れない。
「……なに? これ、一応、失恋ソングなんだけど……。そんな優しい曲にいつの間に変わったの?」
笑いを堪えきれずに言えば、彼が微笑む。
「どんな意味に捉えるかってだけの話じゃない?」
「まぁ、そうなんだけど……。言っときますけど、もう一つの方は弾きませんし歌いませんからね!!」
念押しするように言葉にすれば、彼は残念と笑うけど……。どうせ、この人に本気で聴きたいと言われてしまえば、あのラブソングを弾いちゃうだろうなと、そんな自分を私は知ってる。
鍵盤に両手を構え、演奏の姿勢に入りながら、集中するために一度視線を閉じる。スゥッと息を吸い込んで、私は最初の人魚姫を紡ぎ始めた…………。
私に永久の春を連れて来てくれた人が微笑む温かくて幸せな空間で、くすぐったくて優しい気持ちに包まれながら、私は奏でる。生まれ変わる前の、傷付いていた人魚姫を……。
後書き
作者:未彩 |
投稿日:2016/01/19 12:58 更新日:2016/01/19 12:58 『人魚姫のお伽話』の著作権は、すべて作者 未彩様に属します。 |
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