作品ID:1806
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異界の口
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
三章 小夜子 八
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首都がどんどん遠ざかっていきます。汽車は汽笛を高く、長く鳴らして駅舎を出ました。
私は、その景色から目が離せなくなりました。
「どうしたの、小夜子嬢。」
向かいに座ったホタル様の声は、ささやくようでした。
「……いえ。ただ、もうこの景色を見られない気がして……。」
ぽろり、と涙がこぼれました。
どうしてでしょう。私は、冬休みもこうやって帰ってくるはずなのに。
ホタル様は、黙って外へと目を向けました。
「――小夜子嬢の伯父上に会ったよ。」
唐突に言われて、私はふり返りました。
「おじさまに?」
「うん、この一週間、時間があれば話していた。」
「では、私のこともお聞きになって?」
ホタル様はうなずかれました。
「末の妹の、かわいい娘だと言っていたよ。」
私は、少し残念に思いました。
「ホタル様。ホタル様は、私のことを聞いて、どういう風に思われましたか?」
「どうりで丁寧なしゃべり方をすると思った。」
「……それだけですの?」
「うん。」
ホタル様は、私をきょとん、と見ていました。
「だって、友達に身分なんて関係ないだろう?」
いかにも不思議そうに聞くので、私は笑ってしまいました。
何も心配することはなかったのです。
「安心いたしました。」
「何が?」
「ホタル様はホタル様ですね。」
不思議そうに、ホタル様は首をかしげていらっしゃいました。
その後も私がけらけらと笑うので、ホタル様は急に会話の舵を切りました。
私は、その景色から目が離せなくなりました。
「どうしたの、小夜子嬢。」
向かいに座ったホタル様の声は、ささやくようでした。
「……いえ。ただ、もうこの景色を見られない気がして……。」
ぽろり、と涙がこぼれました。
どうしてでしょう。私は、冬休みもこうやって帰ってくるはずなのに。
ホタル様は、黙って外へと目を向けました。
「――小夜子嬢の伯父上に会ったよ。」
唐突に言われて、私はふり返りました。
「おじさまに?」
「うん、この一週間、時間があれば話していた。」
「では、私のこともお聞きになって?」
ホタル様はうなずかれました。
「末の妹の、かわいい娘だと言っていたよ。」
私は、少し残念に思いました。
「ホタル様。ホタル様は、私のことを聞いて、どういう風に思われましたか?」
「どうりで丁寧なしゃべり方をすると思った。」
「……それだけですの?」
「うん。」
ホタル様は、私をきょとん、と見ていました。
「だって、友達に身分なんて関係ないだろう?」
いかにも不思議そうに聞くので、私は笑ってしまいました。
何も心配することはなかったのです。
「安心いたしました。」
「何が?」
「ホタル様はホタル様ですね。」
不思議そうに、ホタル様は首をかしげていらっしゃいました。
その後も私がけらけらと笑うので、ホタル様は急に会話の舵を切りました。
後書き
作者:水沢妃 |
投稿日:2016/08/15 08:18 更新日:2016/08/15 08:18 『異界の口』の著作権は、すべて作者 水沢妃様に属します。 |
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