作品ID:594
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「White×Black=Glay?」を読み始めました。
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White×Black=Glay?
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中
前書き・紹介
White×Black=Glay? ?6色目?
前の話 | 目次 | 次の話 |
ごめんなさい。
そう、謝罪した少女が居た。少女の後ろには、怯えた様子の少女が居た。
また、違う形で出会えたならば。
そう、唇を噛んで俯いて、顔を上げて笑ったツインテールの少女が居た。
自分を、恨み、憎み、そして捨てた両親が、見えた。居た。
嫌な夢を見た。毎度、ではないが、たまにみる夢は、いつも自分にとっては嬉しくない夢ばかりだ。
額に浮かぶ大粒の汗は、自分の様子をあらわしているようで。
こんな、自分を妹には見せたくない、そう思った。
「……おねえちゃん」
横になった状態の自分に、歩み寄ってくる妹は、可愛らしい顔をゆがめていた。
「おねえちゃん、春袈さんが、おねえちゃんに、おはなし、あるって」
「……話?」
「うん」
ゆがめていた理由はそれか。
妹……草花 黒刃は、基本的に自分しか信じようとしない。
自分が他人と話していれば、黒刃も懐くが、自分もあまり他人とは話さないほうだ。そんな状態でどうやって黒刃を他人と話させようか。
「分かった。今行く」
掛け布団を退け、妹を連れて部屋を出る。
また、嫌な夢を見始めたのは……ここ、情報都市に来てからか――。
「で、お話って?」
とても、1つのチームを率いるリーダーに対する言葉遣いではないと思いつつも、まだ信用できない部分もある人物を相手にするとなると、どうしても言葉遣いが悪くなってしまう。
「魔王、日風哉河に聞いた」
リーダー、鋼夜 春袈はクリーム色のパーカーのフードを被ったままで、今、自分たちが泊まっている宿の玄関に佇んでいた。
「んじゃ、ちょっと歩こうか」
春袈の後姿を睨みながらも、自分、草花 舞葉は春袈の腰に装着されている、ポーチに目を離せずにいられなかった。
「うーん。私さ。魔王に聞いちゃったんだよね」
何を話されるのか、と不安になりながらも身一つで何の装備もなく、春袈についてきたが……いきなり魔王の名前を出されるとは……というよりも。
「……NEVと接触したの?」
「あー。昔のパスワードは使ったかなぁー?」
「あんなに、NEVとは接触しないでって言ったのに……!」
「うーん。でも、魔王はNEVであってNEVじゃないからねー」
「ごまかさないで。魔王はNEVのデータベースを護る番人ですらある。ゆえに、魔王はNEVのメンバーとして登録されている。これを魔王はNEVのメンバーだと言わない方法がどこにある?」
「魔王に聞いたのは、あんたたち双子の幼少期のこと」
自然と。
両目が見開いた。
「草花舞葉、黒刃。双子の子供。NEVに居た当時は、産まれて数ヶ月の赤子だった。魔王に連れられ、魔王が教育係となり、今まで能力を伸ばしていた。だが、それをよく思わない、私の同僚がキミたちを連れ去った……どこか間違ってるところ、あるかなぁ?」
「……」
魔王に聞いたとき、正直、同僚を捜そうかと思った。
何故、双子を連れ去ったのか。その理由を聞きたかったから。
「間違っては、いません。ただ訂正していただきたい箇所が」
「どこ?」
「貴女の同僚……遠藤唯納、夏原瓢臥が私たちを連れ去ったと思われているようですが……」
ついで、自分の背中に冷たいものが走る。
「もう1人、いらっしゃいました」
ポーチに手を伸ばす。
「名を」
ポーチから、ロッドを取り出す。
「……楓つつじ、といいます」
振り向きざまに薙ぐ。
「彼女は、私たちにいいました」
唄うような声を後ろに聞きながら、正面に立つ少女にロッドを突きつける。
いや……。
「『あなたたちは、全てを知る義務がある。意味がある。だから、外へ出なさい』」
「そして、レオを召喚しなさい」
少女が口を開く。
立つのではなく、宙に浮いた少女が。
「レオを召喚する……?」
自分が口を開くと、少女が答える。
「NEVは間違えてしまった。レオを召喚する相手を。レオを召喚すべき相手を」
「それが、草花双子だと?」
「正解。ただ、彼女たちでは足りない」
今の、双子にはレオを召喚する術を持たない。
「だから、貴女が手を貸す。私が、手を貸すの」
翼も、何もない状態で宙に浮かぶ少女に、怯えを覚えたことがある。
初めて出遭ったはずの、少女になぜか会った気がする。
「貴女のその疑問は、今は解かない。解いちゃったら、つまらないもの」
なぜか、少女の笑みが懐かしく思えた。
なぜか、少女の姿が同僚の姉と被さった。
そして、春袈は決めた。
少女が飛び立つ。
「ねぇ、舞葉」
少女が完全に見えなくなったところで、ロッドを仕舞う。
「私、決めたんだ」
振り返る。目を見開いた草花 舞葉が居る。
「私、チームを辞めてみる」
簡単には、口にできない。
だから、決めるには相当の時間を必要とするはずなのに。
「……分かりました。チームメンバーには、私のほうから説明いたしましょう」
即答ではないものの、舞葉は頷いてくれた。さらには、説明もしてくれると約束してくれた。
「ウォークマンの手がかり。私、見つけてくる」
最初は、ウォークマンの秘密を暴くために動くはずだった。
それだけのために、動くはずだったのに。
「んで、あんたたちを、NEVから本当に解放してみせるから」
新しい目的や、理由が見つかってしまった。
「NEVから、逃げながら過ごすなんて、嫌でしょ?」
問い掛ける。舞葉は、苦笑いしながらも笑う。頷く。
「なら、私も頑張ってみる」
NEVから逃げながら、ウォークマンの手がかりを捜すことは、単独でできないようなこと。
必ず、どこかでNEVに見つかる。
それでも。
「完全には連絡を絶たないでください。NEVの潜伏場所、NEVの地方基地の場所、NEV兵士のルートなどをお伝えします。……私には、これぐらいしかできませんから」
1人、ここに頼もしい仲間が居る。いや、1人じゃない。他にも頼りになる仲間が居る。
「ありがと」
だから、安心して、捜してみる。
安心して捜せる。
最初は、不安だった。
いや、いまも不安で仕方ない。
だから、その不安を妹を護るっていう理由で隠してきた。
だけど、そんな隠し事はできない。
それよりも、この不安が、この人の力になれるのか。そんな不安がある。
それでも、この能力とも才能ともいえない、力ともいえないモノがある限り、私はNEVというものから逃げ続けなければいけない。それでも。
「私には、予知夢があります。不定期に見ることのできる予知夢」
そんな、忌まわしい夢が見える限り。
「私、その夢を利用してやりたいと思います」
心から笑う。
「だから、貴女も頑張って」
こんな忌まわしい夢を、この鋼夜 春袈という人物のために使えるならば、それはとても幸福だ。
理由……は残念ながらわからない。それでも、幸福だと思う。
「ありがと」
再度、お礼を言われた。
こうやってお礼を言われる事はないので、照れてしまう。
予知夢。私にとっては忌まわしい夢。
だけど、この人にとって、とても便利なものになるというなら。
忌まわしいものじゃなくて、楽しいものにしてみたいと思う。
そう、謝罪した少女が居た。少女の後ろには、怯えた様子の少女が居た。
また、違う形で出会えたならば。
そう、唇を噛んで俯いて、顔を上げて笑ったツインテールの少女が居た。
自分を、恨み、憎み、そして捨てた両親が、見えた。居た。
嫌な夢を見た。毎度、ではないが、たまにみる夢は、いつも自分にとっては嬉しくない夢ばかりだ。
額に浮かぶ大粒の汗は、自分の様子をあらわしているようで。
こんな、自分を妹には見せたくない、そう思った。
「……おねえちゃん」
横になった状態の自分に、歩み寄ってくる妹は、可愛らしい顔をゆがめていた。
「おねえちゃん、春袈さんが、おねえちゃんに、おはなし、あるって」
「……話?」
「うん」
ゆがめていた理由はそれか。
妹……草花 黒刃は、基本的に自分しか信じようとしない。
自分が他人と話していれば、黒刃も懐くが、自分もあまり他人とは話さないほうだ。そんな状態でどうやって黒刃を他人と話させようか。
「分かった。今行く」
掛け布団を退け、妹を連れて部屋を出る。
また、嫌な夢を見始めたのは……ここ、情報都市に来てからか――。
「で、お話って?」
とても、1つのチームを率いるリーダーに対する言葉遣いではないと思いつつも、まだ信用できない部分もある人物を相手にするとなると、どうしても言葉遣いが悪くなってしまう。
「魔王、日風哉河に聞いた」
リーダー、鋼夜 春袈はクリーム色のパーカーのフードを被ったままで、今、自分たちが泊まっている宿の玄関に佇んでいた。
「んじゃ、ちょっと歩こうか」
春袈の後姿を睨みながらも、自分、草花 舞葉は春袈の腰に装着されている、ポーチに目を離せずにいられなかった。
「うーん。私さ。魔王に聞いちゃったんだよね」
何を話されるのか、と不安になりながらも身一つで何の装備もなく、春袈についてきたが……いきなり魔王の名前を出されるとは……というよりも。
「……NEVと接触したの?」
「あー。昔のパスワードは使ったかなぁー?」
「あんなに、NEVとは接触しないでって言ったのに……!」
「うーん。でも、魔王はNEVであってNEVじゃないからねー」
「ごまかさないで。魔王はNEVのデータベースを護る番人ですらある。ゆえに、魔王はNEVのメンバーとして登録されている。これを魔王はNEVのメンバーだと言わない方法がどこにある?」
「魔王に聞いたのは、あんたたち双子の幼少期のこと」
自然と。
両目が見開いた。
「草花舞葉、黒刃。双子の子供。NEVに居た当時は、産まれて数ヶ月の赤子だった。魔王に連れられ、魔王が教育係となり、今まで能力を伸ばしていた。だが、それをよく思わない、私の同僚がキミたちを連れ去った……どこか間違ってるところ、あるかなぁ?」
「……」
魔王に聞いたとき、正直、同僚を捜そうかと思った。
何故、双子を連れ去ったのか。その理由を聞きたかったから。
「間違っては、いません。ただ訂正していただきたい箇所が」
「どこ?」
「貴女の同僚……遠藤唯納、夏原瓢臥が私たちを連れ去ったと思われているようですが……」
ついで、自分の背中に冷たいものが走る。
「もう1人、いらっしゃいました」
ポーチに手を伸ばす。
「名を」
ポーチから、ロッドを取り出す。
「……楓つつじ、といいます」
振り向きざまに薙ぐ。
「彼女は、私たちにいいました」
唄うような声を後ろに聞きながら、正面に立つ少女にロッドを突きつける。
いや……。
「『あなたたちは、全てを知る義務がある。意味がある。だから、外へ出なさい』」
「そして、レオを召喚しなさい」
少女が口を開く。
立つのではなく、宙に浮いた少女が。
「レオを召喚する……?」
自分が口を開くと、少女が答える。
「NEVは間違えてしまった。レオを召喚する相手を。レオを召喚すべき相手を」
「それが、草花双子だと?」
「正解。ただ、彼女たちでは足りない」
今の、双子にはレオを召喚する術を持たない。
「だから、貴女が手を貸す。私が、手を貸すの」
翼も、何もない状態で宙に浮かぶ少女に、怯えを覚えたことがある。
初めて出遭ったはずの、少女になぜか会った気がする。
「貴女のその疑問は、今は解かない。解いちゃったら、つまらないもの」
なぜか、少女の笑みが懐かしく思えた。
なぜか、少女の姿が同僚の姉と被さった。
そして、春袈は決めた。
少女が飛び立つ。
「ねぇ、舞葉」
少女が完全に見えなくなったところで、ロッドを仕舞う。
「私、決めたんだ」
振り返る。目を見開いた草花 舞葉が居る。
「私、チームを辞めてみる」
簡単には、口にできない。
だから、決めるには相当の時間を必要とするはずなのに。
「……分かりました。チームメンバーには、私のほうから説明いたしましょう」
即答ではないものの、舞葉は頷いてくれた。さらには、説明もしてくれると約束してくれた。
「ウォークマンの手がかり。私、見つけてくる」
最初は、ウォークマンの秘密を暴くために動くはずだった。
それだけのために、動くはずだったのに。
「んで、あんたたちを、NEVから本当に解放してみせるから」
新しい目的や、理由が見つかってしまった。
「NEVから、逃げながら過ごすなんて、嫌でしょ?」
問い掛ける。舞葉は、苦笑いしながらも笑う。頷く。
「なら、私も頑張ってみる」
NEVから逃げながら、ウォークマンの手がかりを捜すことは、単独でできないようなこと。
必ず、どこかでNEVに見つかる。
それでも。
「完全には連絡を絶たないでください。NEVの潜伏場所、NEVの地方基地の場所、NEV兵士のルートなどをお伝えします。……私には、これぐらいしかできませんから」
1人、ここに頼もしい仲間が居る。いや、1人じゃない。他にも頼りになる仲間が居る。
「ありがと」
だから、安心して、捜してみる。
安心して捜せる。
最初は、不安だった。
いや、いまも不安で仕方ない。
だから、その不安を妹を護るっていう理由で隠してきた。
だけど、そんな隠し事はできない。
それよりも、この不安が、この人の力になれるのか。そんな不安がある。
それでも、この能力とも才能ともいえない、力ともいえないモノがある限り、私はNEVというものから逃げ続けなければいけない。それでも。
「私には、予知夢があります。不定期に見ることのできる予知夢」
そんな、忌まわしい夢が見える限り。
「私、その夢を利用してやりたいと思います」
心から笑う。
「だから、貴女も頑張って」
こんな忌まわしい夢を、この鋼夜 春袈という人物のために使えるならば、それはとても幸福だ。
理由……は残念ながらわからない。それでも、幸福だと思う。
「ありがと」
再度、お礼を言われた。
こうやってお礼を言われる事はないので、照れてしまう。
予知夢。私にとっては忌まわしい夢。
だけど、この人にとって、とても便利なものになるというなら。
忌まわしいものじゃなくて、楽しいものにしてみたいと思う。
後書き
作者:斎藤七南 |
投稿日:2011/01/03 12:14 更新日:2011/01/03 12:14 『White×Black=Glay?』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。 |
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