其之十八
※ブルー将軍絡みの話はあまりネタが思いつかなかったためばっさりカット
孫悟飯の形見であるドラゴンボールをさがす旅は思いの外難航し、そしてと悟空を成長させた。更なる苦難が待っているとは知らないふたりは筋斗雲で西へと走っていた。
「まだまだずっと西の方か……もしかしたら次の目的地はカリン塔の近くかもしれないな」
「かりんとう?」
「ああ、昔師匠から聞いたことがあるんだ」
ずっとずっと西に在る、天までむかって聳え立つカリン塔。その塔の天辺には仙人様が住み、自らの力のみで塔をのぼりつめた者には仙人様から己の力を何倍にもする聖水を与えられる――今までその頂を見た者は亀仙人ただひとり。
「俺の師匠も、悟空の師匠の悟飯さんも、とうとう頂上には行けなかったらしい」
だからこそは亀仙人に憧れ、そして師匠が成し遂げられなかった偉業を果たそうと旅の目的にしていたのだ。形見のドラゴンボールを悟空がさがし終えたら行こうと思っていた西の都に引き続き、カリン塔にも行けるかもしれないだなんて、今回の旅はにとっても実りのある旅となった。
「助けて父上ーーーっ!!」
の予想通り、どうやらカリン塔付近にドラゴンボールがあるようで、細長い建物を指差して悟空にあれがきっとカリン塔だと話していると、子供が必死に叫ぶ声がふたりの耳に入った。飛んでいる飛行機を追いかけて横につけると、真っ先に目に飛び込んできたのはレッドリボン軍のマークだ。
「悟空は子供を!! 俺は飛行機をやる!!」
は言うなり天叢雲で飛行機の左翼を斬り落とすと、みるみるうちにバランスを崩し、虎男はたまらず子供から手を離した。悟空が子供を難なくキャッチするのを見届けると、は機体を前後真っ二つに斬りつけた。当然前後に分かれた飛行機は飛行能力を失って森へと落ちていった。
聖地カリンを守る一族、ウパを助けたと悟空はウパの父であるボラが持っているドラゴンボールを見つけた。間違いない、孫悟飯の形見だ。レッドリボン軍に襲われたり、またまたレッドリボン軍に襲われたりとごたごたがあったが、遂に目的の四星球を手に入れた。なぜこんなにもと悟空が喜んでいるのか疑問に思った親子に、説明下手な悟空に代わってが説明する。
「……なるほど、その球にはそんな秘密が……」
「ところで、この塔はカリン塔ですか?」
の説明に納得したボラに、今度はが質問し返す。の質問にボラは頷くと、やはりと瞳を輝かせた。ちょうど悟空の形見さがしも一段落ついたし、目の前にはの目的のひとつであるカリン塔があるし、これはもうのぼるしかない。
が気合を入れ直していると、ウパが上空を指差しながら声をあげた。つられてと悟空も空を見上げると、何かに乗ってすごいスピードでこちらに向かってくる人影が見えた。
「こっちにくるぞっ!!」
悟空の声を合図に一斉にその場から離れると、たちが元いた場所には石造りの柱が斜めに地面に突き刺さった。その反対側の先端には、殺と書かれた服を着て三つ編みをひとつ結えた男が立っていた。
「アロ~~~ハ~~」
世界一の殺し屋、桃白白と名乗る男は不敵な笑みを浮かべた。レッドリボン軍に依頼されてと悟空を殺しにきたらしい。それを聞いたと悟空は鋭く顔つきを変えて応戦しようとするが、庇うようにボラが前へと出た。息子を救ってくれた礼と、聖地カリンを守る役目を果たすためだ。と悟空は止めるが、ボラの有無を言わさぬ表情に口を噤んだ。
「さあこい!!」
ボラは槍を構えた。と悟空はボラの後ろで、ウパはまたさらに後ろの木に隠れてボラの背中を見守る。
「では遠慮なく、こっちからゆくぞ」
桃白白は言うが否や、残像を残しつつも一瞬でボラの前まで移動して槍を掴んだ。体格では断然ボラに分があるが、桃白白はそんなこと塵ほども感じさせないくらいの圧倒的なパワーでボラの動きを封じていた。
「どうした? 動かんならわたしが動かしてやろうか?」
ボラを槍ごと持ち上げ、そのまま槍をすっぽ抜けさせると、ボラがカリン塔に向かって吹っ飛んでいった。そして桃白白がそのボラに向かって槍を投げつける。
「まずいっっ!!!」
このままではあの槍で心臓を串刺しにされる。
はボラと槍を追うように、誰よりも早く飛び出した。その速さは桃白白の目ですら追いつけなかったが――
「ーーーっっ!!!!」
最後にの耳に聞こえたのは悟空の悲痛な叫び声だった。あの悟空があんな余裕をなくすなんて意外だ。
混濁する意識の中、やけに落ち着き払った思考はやがて闇に落とされた。
『えっえっ死ぬの? まじで死ぬの? 一応ヒロインなのに? この物語はただの冒険ありおふざけありシリアスありのちょっとエッチなラブコメじゃなかったのーーーっっ?!!』
次回に続く。