蜜雨

 変化の術を利用しようとブルマはウーロンを仲間に引き入れ、南西へと進んでいた。ホイポイカプセルをどこかに落としてしまった都会育ちのブルマとウーロンは、木の棒を杖代わりにして荒野を辛そうに歩く。ブルマとウーロンに付き合って筋斗雲を使わずに歩く悟空とは日頃の修行の賜物だろうか、けろりとしている。

 ひいひい言いながらもなんとか耐えていたブルマはついに限界を迎えたのか、座り込んで願望を口に出すだけ出して石で出来た日陰で寝てしまった。そうなればたちもこの場で休むしかなく、今夜はここで野宿かと一息ついた。ウーロンも寝ようとゴロリと寝そべり、は空腹を訴える悟空になにか食べ物を探そうと立ち上がる。
 すると、音をたてながらもの凄い勢いでこちらに向かってくる人影が。荒野を根城にする大悪党ヤムチャとプーアルだ。殺されたくなければ金品を置いていけとたちを脅してくる。しかし、そんな脅迫などと悟空に通用するはずもなく、戦闘となった。はブルマを見張っているという理由で今回は悟空に譲る。孫悟飯の弟子、孫悟空のお手並み拝見だ。



其之五




 ヤムチャの必殺技である狼牙風風拳をまともに喰らい、石柱を何本もへし折るくらいふっ飛ばされた悟空は、どうやらお腹が空いて力が出ないようだ。
 しょうがないとブルマのそばでウーロンとともに観戦していたは立ち上がる。の強さを身を持って体験しているウーロンは今度こそ勝利を確信した。

「ガキの次は優男ときたものだ。そこまで死に急ぐか」
「ふむ……相手はブツを持っていないし、今回刀は置いておくか」

 ヤムチャの台詞など聞いておらず、は腰に括りつけてある刀を無防備に地面へ置いた。以外持つことを許されていない刀は、どうせ誰も持って行けやしない。

「ふん、なめくさりやがって!!」

 生意気な態度を取るに飛び掛かるヤムチャを軽く躱し、背後に蹴りを入れて悟空同様石柱を何本も折ってもらった。悟空の敵討ちみたいなものだ。

「っふ!」

 ヤムチャは崩れた石から体を起こすと、すかさずがこめかみを狙って拳を振るう。
 既の所でなんとか拳を躱すが、とかいう優男――なんとも末恐ろしい奴だ。確実に急所を狙ってくる技術もそうだが、細っこい体でどこからあんなパワーとスピードが出てくるのだろう。
 ヤムチャは今度は本気でやってやると、狼牙風風拳の構えをとった。

「おまえもあのガキと同じ目に遭わせてやる」
「させるかよっ!!」

 はヤムチャの雰囲気が変わったことにいち早く気づくと、狼牙風風拳を打たせてたまるかと間合いを詰めて懐に入り込み、脇腹に蹴りを先制した。またふっ飛ばされたヤムチャが行く先は、不運にもブルマとウーロンの元であった。

「っ逃げろ!!」

 自らの失態に早々に気づいたは、ブルマとウーロンに向かって叫ぶ。焦って大声を張り上げるの声がブルマにも届いたのか、むくりと起き上がると丁度ヤムチャと目が合った。それからヤムチャの動きがおかしくなり、プーアルとなにやら話して慌てて去ってしまった。

「ねーねー今の誰!? ほどじゃないけどわりといい男じゃなかった!??」

 元気を取り戻したブルマを見て、は思った――ブルマは長生きしそうだと。






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