第3話
飛雄は焦っていた。一刻も早く坂ノ下商店に向かわなければ――もしバレー部員に遭遇されでもしたら面倒だ。その前になんとしてでも回収してやる。
飛雄が静かに決意をしていると、遠くから手を振りながらこちらに近づいてくる人影が見えた。
「とっびっおっちゃーーーん!!」
「っ姉貴!」
は迷わず飛雄の胸に飛び込み、その胸に頬をすり寄せた。高校生になっても一切弟離れをしない姉に長いため息がこぼれる。
「今日の晩ご飯の買い出し付き合って!」
「それならヨークで待ち合わせすりゃよかったじゃねーか」
「だって! だって! 飛雄ちゃんに早く会いたくて……っ!」
弟相手にもじもじと恋する乙女のように顔を赤くする姉は、世間一般からすれば美少女なのかもしれない――しかし飛雄にとってはひたすらに愛が重いただの姉だ。
とりあえず面倒なことにならないうちにこの場から離れよう。ここはバレー部員たちの帰り道だ。
「あーっ!! 影山がカノジョ泣かしてるー!!」
びくーん!日向の叫びに飛雄の背筋が伸びる。
まさかバレー部が全員集合してるなんてことは――見たくもない現実を見るためにギギギと後ろを振り返ると、飛雄の思いは虚しくも崩れ去り、烏野バレー部は全員集合を果たしていた。苦笑を浮かべる澤村の隣には楽しそうに笑う菅原が立っている。
「そりゃダメだべ影山、彼女はもっと大事に……って?!」
飛雄に隠れていたがひょっこり顔を出すとニヤニヤしていた菅原と目が合い、ひらひらと手を振った。
「あっスガくんやっほー! うちのかわいいかわいい弟がお世話になってまーす!」
烏野バレー部の姉ぇっ??!!!という雄叫びがあがるまであと2秒。
(コープ派ではなくヨーク派です)