No3
「たっだいまー!」
は八木の取ったホテルへと帰ってきた。
八木はソファで寛ぎながらニュースを見ていたが、が部屋に入ってくるとソファから立ち上がってを抱き上げた。華奢なはトゥルーフォームの八木でも簡単に持ち上がり、もいつもより顔が近い八木に甘えるように首に腕を絡ませ頬を擦り寄せる。八木はの心地よい体温と感触を楽しみつつ、元いたソファへと共に沈み込んだ。
「俊典さん、おつかれさまっ」
「ああ、も。今日は敵騒ぎで約束をまた破ってしまったな……すまない」
「んー、今日はクレープ食べられたから満足なんだけど……じゃあお詫びに……」
とびっきり甘い、ちゅうして。
蠱惑的な瞳で誘うは、普段の天真爛漫さは吹き飛んでいた。
敵退治で無理をした八木の身体を手っ取り早く再生するには、直接的な再生を施すこと――つまりお互い身体を密着させることにより、集中力や個性が強まり、よりの持つ力の恩恵を受けやすいのだ。まだ中学生のは、余りある力を行使することに躊躇もなく、身体的な負担も少なかった。どちらかというと、八木に与えられる快楽に興味があって、時々甘えたように雌のにおいを発しながら八木を誘うのだ。
「まったく、イケナイ子だ」
「俊典さんは元気になって、私も気持ちよくなる。イイコトだらけじゃない」
ふふとは八木の筋肉の落ちた細い首筋に吐息を落とす。唇を舐める舌が八木の目にやけに赤く艶めかしく映った。
八木はキスから先を教えてはいなかったが、こんなことをしたら男のどこが元気になるのかをは知っていた。は雄を刺激させるおねだりをして、雌の本能に従って着実に快楽を得ようと積極的に肌を密着させた。もっと先に進みたいと強請るが、まだ中学生の彼女には早いと八木は崩れそうになる理性と戦いながら諭していた。その牙城を崩そうとが更に迫ってくるものだから、いつまでも続く意地と意地の張り合いはいまだ続いている。
「んっ……ふ」
「ほら、舌、出して」
「は……ぁっ……ん」
熱と熱の交換に、はぶるりと身体を甘い痺れで震わせ、八木はからとめどなく流し込まれる再生の力を受け止めていた。同時に雄の部分にも活力が襲いかかり、八木はいつもその乱暴な性欲を鎮めるのに必死だ。過去何度もが八木の充血した精力を解放しようと手を這わせようとしたが、寸前のところでまだには早いと八木の制止が入り、そこで強制終了されるのがお決まりのパターンだった。
「俊典さんもしょーたくんもひざしくんもちゅーしかしてくれない……」
「ここで他の男の名前を出すなんてまだまだお子ちゃまなんだよ、は」
「……嫉妬して欲しくてわざとって言ったら?」
「本当に君は……イケナイ子だ……」
毒だとわかっていても、その唇に噛み付く。まるで知恵を失った獣のように、目の前にある罠に引っかかるのだ。
「俊典さん? お仕事?」
との戯れが済んだ後、八木はパソコンの電源を入れた。彼がパソコンに触れることはあまりない。ヒーロー活動における事務的な処理は専門の人間を雇っているし、敵の情報は全て携帯に通知される。八木自身も電子機器は苦手としており、そんな八木がパソコンを開くなど珍しくて思わずは疑問を口にした。
「ああ、にも話しておこう。実は、後継者が見つかったんだ」
「後継者って……ワンフォーオールの?!」
「そう。後継者の名は緑谷出久。今日敵に襲われた無個性の少年さ」
は遅れて到着して見れなかったが、なんと緑谷は友達である爆豪を助けようと単身敵に飛びかかったそうだ。無個性で、非力にもかかわらず、他のプロヒーローを差し置いて。オールマイトはその姿こそ真のヒーローだと見込み、彼に自分の個性を渡そうと決めたのだ。
「そっか……あの子が……」
「でもあの子の肉体はまだ器としては未完成。だから、少年の為に目指せ合格アメリカンドリームプランを作成しようと思ってさ!」
「わあっなにそれ面白そー! 私にもお手伝いさせて!!」
「ハッハッハァ! ならそう言ってくれると思ってさ! パソコン入力よろしく頼むよ!」
「ええぇ? なぁんか、俊典さんにうまいことのせられた気がするなあ……」
「いいからいいから」
結局2日かけてトレーニングとスケジュール作成したふたりだった。