「ユール、おまえには執事科に行って、学んで貰いたい」



　数ヶ月前、夕食の時に父が思い詰めた顔で突然言い出した言葉だ。



　１５歳になり基礎教育学校を卒業した。そして、僕が今行っているのは総合専門学校と言うところかな？学園には、多くの専門的コースがあり、貴族科、執事科、騎士科、商人科、芸術科、音楽科など様々なコースがある。



　僕は父様と母様の強い要望で執事科に行く事が決まった。学園に行くなら商人科が良かったんですけど……。執事科なら領地経営の事なども学べるので妥協した。



??????育てて貰っている僕は我が儘言えません。



　執事は主人が収める所有地運営の補佐もするので、経営学で領地経営なども学びます。立ち振る舞いや礼儀作法に言葉遣いなども学ぶし、食事の時の正しい給仕の仕方などもあった。まだ、基礎の基礎って言うところかな？そして、ありとあらゆる学問を学ぶ。あま、出来る事は多いい方が良いと言う事です。だから、一番大変な科でしょう。



??????頑張ります……。



　もちろん、この学園にはリナリアお嬢様も貴族科に通っていらっしゃいます。リナリアお嬢様と言うのはアスター・スターチス公爵、父が仕えている人の一人娘リナリア・スターチスの事です。ちなみに奥様はローズマリー・スターチスと言う。リナリアお嬢様は馬車（もちろんボックス型の箱馬車）で送り迎え付きの通学です。



??????僕は徒歩通学、悲しい……。





　アルフは学園には行かずにマイスター制度を取った。マイスター制度とは親方、職人、徒弟の三階層による技能教育を行う制度のことでアルフはお金を貰いながら勉強する道を選んだのです。アルフは豪商人に商売の基本を教わる為に弟子入りした。



　ここビオラは人を教育するのが大変上手な街です。主な、例としては学園都市であることや職人の育成、職人の技術力は世界一と言われている。ダグの親父がこの街一番なら世界一の腕を持っていると言う事だね。



　そして、やっと今日は休日です。今日は街に一人で遊びにでも行こうと思う。迷路の様な入り組んだ道を進んで人形芝居の小屋に行く途中、言うなら街の中間辺りにレンガ作りの可愛い文房具屋がある、インクと羽ペンがモチーフの鉄製の透かし看板が壁から張り出されている。僕は学園で使うインクが少なくなって来ているのを思い出しインクを買うことにした。文房具屋の中に入ると狭い店内には商品が溢れており、目的のインクを探すのにちょっとだけ手間取いました。見つけたインクを握りしめて店のおババにお金を払った。



「坊や。また、おいで」



　おババにお金を払うとクッシャっとおババは微笑み言った。



「ありがとう」



　僕はお礼を言って文房具屋を後にした。



　そして次は隣り合う店に入った。ここは僕が研究とかする為に使う実験器具がたくさん置いてある店で、今日は温度計を買いに来た。　ここの店は理科室見たいな感じで、丸メガネを掛けたお爺さんが経営している。



「温度計下さい」



　僕は、入って直ぐ横にある棚から温度計を取った。僕がお金を払い終わると丸メガネのお爺さんは眠りこけてしまった。



??????いつもこの丸メガネのお爺さんは眠りこけています……。









　家に帰り、森の中に植物観察に行く事にした。森の中には様々な植物が生えており僕は一つ一つをじっくり観察していたら夕方になった。そんな時、何気なく見た方向にバニラに良く似た植物が生えている事に気が付いたのです。バニラは熱帯地帯で栽培される植物なので僕はその植物を見た時信じられなかった。今日は、その植物を採取して家に持ち帰る事にしたのです。



??????バニラ、ゲットになるのかな？







　そして、植物学の本で確認をしたところどうやら、この世界のバニラに酷似した植物は熱帯ではなく寒帯を好む様です。このバニラに酷似した植物はタバコの香り付けに使われている事がわかった。毒性は無い事もわかったのです。僕はこのバニラに酷似した植物の実験を始める事にした。この植物の名前はバイナと言う。

バニラ・ビーンズを作る事にした。数日後、種子を含んだ種子鞘ごと半発酵の状態で時間をかけて乾燥させて匂いを嗅いでみた。甘くて濃厚な匂いがしたのです。バニラ・ビーンズが出来た。



　食べても大丈夫なことがわかりそれから数日後、バニラ・ビーンズでお菓子を作る事にしたのです。



　部屋を出て母様を探すと窓際にいた。



「母様。キッチン使っても良いですか？」



　僕は窓際で刺繍をしている母様に聞いたのです。



「あら、いいわよ。何作るの？」



　母様が微笑みながら僕の方に柔らかい視線を向けて来た。



「成功したら教えます」



　僕は母様にニッコリ笑い、キッチンに急いだのです。







　キッチンに入りボールをさがして、材料を用意した。そしてボールに小麦粉、砂糖、卵の黄身を入れて混ぜる。温めた牛乳をゆっくりと少量ずつ加えて、弱火で混ぜながら数分煮て火から降ろしてバニラ・ビーンズを入れて出来上がりです。一口食べてみると甘くて濃厚なそうあれです。



??????カスタードクリーム！



　僕が最初に取りかかったのはカスタードクリーム作りです。カスタードクリームは様々なお菓子に使われて使用方法もたくさんあると思った。良質なカスタードクリームは良いお菓子になるでしょう。



　そして、カスタードクリームの菓子を一品作った。そうあれです。カスタードと言えばシュークリームですよ。僕はシュークリームを作り終えて母様と食べる事にした。



「母様。完成しました！」



　僕はテーブルの上にシュークリームを大量に置いたのです。



「あら、良い匂いね。美味しそうだわ」



　母様はとっても嬉しそうな顔をしている。



「食べてみてよ」



　僕は、そわそわしながら母様にシュークリームを勧めた。



「まあ、このお菓子は濃厚でとっても甘い匂いがするわね」



　母様はシュークリームを食べる前に香り確かめて言った。そして、シュークリームを一口食べると目を丸くして驚いている。



「美味しいわ！とっても濃厚な甘みね」



　シュークリームを一個完食すると言ったのです。



「美味しいでしょ」



　僕も一個シュークリームをすぐに完食した。



??????シュークリーム大成功です！



　このシュークリームは母様から父様に伝わりさらに僕は次の休日に、旦那様達のティータイムにお出しすることになったのです。



??????ちょっと面倒くさい事になりそうな予感……。









　次の休日に朝から大量のシュークリームを作っていると父様が僕に話しかけて来た。



「ユール、すまんな。あまりにもシュークリームと言う物が美味しかったので旦那様達にも召し上がって頂きたくなってな……」



　父様は、すまなそうな顔で頭を掻いた。



「お菓子作りは楽しくて好きなので平気です」



　僕は父様に目線を向けてヒッコリ笑った。



「ここにあるシュークリーム持って行ってもいいか？」



　既に出来ている分を指差して父様が聞いて来た。



「お願いします。お屋敷の分ですから」



　僕が答えると父様は既に出来上がっているシュークリームを持ってお屋敷に向かった。



　さて、今作っている分は家の分で後はアルフの分かな？今日はアルフも休みが取れたので僕の家に来る予定になっている。



「ユール、来てやったぞ」



「アルフ、キッチンにいるよ」



　アルフが来たみたいです。アルフは勝手に家の中に入り僕の声を頼りにキッチンまでやって来た。



「また、面白いもん作っているのか？」



　アルフは忍び笑いをしている。



??????笑うなら、ちゃんと笑えーーーアルフ！！！



「今日はまともなお菓子作りだよ」



　僕はアルフをちょっとだけ睨んだ。



「なんだ。つまんない」



??????そうじゃないでしょ。アルフ……。



「これ食べてみな」



　僕はアルフにシュークリームを一個渡した。



「なんか美味そうな匂いだな」



　アルフは手渡されたシュークリームをアッと言う間に完食していた。



「たまげた！すごく美味いなこれ」



「ありがとう」



　僕が後片付けをしながら言うとアルフも一緒に片付けを手伝ってくれたのです。



??????やっぱ、アルフ良い奴だ。





　僕の部屋のテーブルにシュークリームを数個置いて紅茶も用意しティータイムをしてみた。



??????授業のお浚いです。



　僕の部屋の棚は本がキッジリと詰まっていて、その隣の棚には実験器具が乱雑に置かれている。



　そして今日は、アルフと近況報告をした。アルフは親方に怒られてばかり居るらしいですが商売の事を学ぶのはとても楽しいらしいです。そして豪商の人達とも上手くやっているらしいので僕は安心した。僕は学園の礼儀作法の授業の話などを聞かせた。後は今日のお屋敷のティータイムでシュークリームが出ている事も話したのです。アルフは笑いながら災難だなとか言っている。アルフは僕と一緒に商売がしたかったと行って帰って行った。



??????お土産分のシュークリームも、しっかり持って帰ったよ。



　お屋敷のティータイムは大高評で今日来たお客様は、またシュークリームが食べたいと言っていたそうです。



　そして、このシュークリームが思わぬ話を持って来る事を僕はまだ知らずに今日は就寝した。