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作品ID:1459
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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)

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前書き・紹介


第六章「死闘」:第2話「グンドルフ北上」

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第6章.第2話「グンドルフ北上」



 雪の月第五週水の曜(一月二十四日)、グンドルフ一行は、ウンケルバッハ領民のカードと守備隊の証を手に入れ、装備も守備隊の標準装備に変更していた。

 柄は悪いが、傭兵上がりの守備隊員として充分通用するため、堂々とクロイツタール街道を北上していった。



 ケシャイトの町に入る時、ケシャイトの守備隊より、身分証明と目的等を確認されるが、大きな混乱はなかった。

 検問の責任者より、



「グイド殿は今宵、何時頃ご都合がよろしいですかな」



 グンドルフは話の流れがわからず、少しイラついている。



「失礼しました。我が隊長が表敬訪問させていただく時間の話です」



 そのようなしきたりがあることを知らないグンドルフは、



「今から詰所に赴き、調整しようと思っておりましたよ。はっはっはっ」



 この時、検問責任者クステラーは、訓練嫌いのウンケルバッハ守備隊が迷宮に訓練に行くという話を胡散臭く思っていた。

 そこで、同格以下の伯爵領の守備隊の一隊長を公爵領の守備隊隊長が表敬訪問するというという、ほとんどあり得ない話を持ち出し、相手の素性を確認したのだった。



「そうですか……判りました。私の方から隊長に連絡しておきましょう。お疲れでしょうし、後ほど宿の方に連絡入れさせます」



 クステラーは、すぐにケシャイト守備隊隊長のフィードラーに、状況を報告する。

 フィードラーも、訓練のため迷宮に入るという理由と、表敬訪問の話に気付かないグイドなる隊長に胡散臭さを感じ、



「よくやった。済まぬが、午後七時に宿に行くと連絡を入れておいてくれ」



といった後、伝令を呼び、早馬でクロイツタールのバルツァー副長に、連絡を入れるよう指示を出す。



 午後七時にフィードラー隊長は、ウンケルバッハ守備隊を表敬訪問する。

 必死に隠そうとしているようだが、グイドと名乗る隊長や他の隊員を見ると、傭兵というよりゴロツキと評する方が良いほど規律が緩い。

 三十分ほど話しをしたあと、



「クロイツタールでは、副長のバルツァーが対応することになろうかと思います。城門でその旨をお伝えいただければ、スムーズに行くと思います」



 フィードラーは、詰所に戻るとバルツァー副長に送る報告書を作成し始めた。



『……ウンケルバッハ守備隊を名乗る二十八名の兵士は規律も緩く、傭兵としての経験も少ないものが多く見受けられた。このように一見して傭兵ではないと看破される集団であるため、帝国の工作員である可能性は低いと思われるが、囮、陽動の可能性は否定できない。また、アウグスト・ウンケルバッハ前伯爵が、策を巡らせた可能性も否定できないため、クロイツタールでの継続調査を強く要請するものである。……』



 グンドルフは傭兵経験者を捕まえ、



「こんなしきたりがあるとは聞いてねぇぞ! どういうことだ!」



「そんなこと言われても……俺も何年か傭兵稼業をやってましたが、こんなことは初めてで。クロイツタール独特のしきたりじゃねぇんですかね」



 数人の傭兵経験者に聞くが、守備隊の一員としてクロイツタール領内を通過したことがなく、だれも知らなかった。

 ただ、グンドルフは自分たちの規律の低さが、クロイツタール騎士団の疑惑を呼んでいることを何となく感じていた。



「おい! 全員聞け! 傭兵をやったことがある奴は少しでもおかしいところがあったらすぐに言え! 俺のことは間違っても”頭”と呼ぶな。”隊長”と呼べ! 返事も”へい”じゃねぇ”はい”だ判ったな!」



「「へい!」」



 その返事にグンドルフは激怒するが、グンドルフも自身の言動も疑惑を呼んでいる一因だということに、気付いていなかった。







 雪の月第五週土の曜(一月二十五日)翌朝、朝食後すぐに出発しようとしたグンドルフ一行であったが、フィードラー隊長の訪問により、出発時間を遅らされることになる。

 フィードラーは報告書を持たせた早馬を、朝一番に出発させたが、バルツァー副長が対応できる時間を少しでも増やそうと、遅延工作を行っていた。

 贈り物と称して酒などを渡したり、クロイツタールの名所の話などをしたりして、一時間以上時間を遅らせることに成功。

 グンドルフが強引に出発するまで粘り、彼らが出発してからは密かに追跡させるよう部下を出発させていた。



(何が目的か判らんが、あの連中はおかしい。副長なら何とかしてくれるかもしれんが、何事も起こらないことを祈ろう)







 グンドルフ一行は、フィードラーの遅延工作のせいで午前九時頃にケシャイトの町を出発した。天候は少し雲が出ているが、雪もなく、移動に支障はない。

 クロイツタールまでは二十五マイル=約四十kmであるので、馬で移動する彼らにとってはそれほどの遅れではない。

 だが、グンドルフはかなり焦っていた。



(あの騎士はなにか勘付いていたな。クロイツタールに入ると、厄介なことになりそうだ……)



 グンドルフは、クロイツタールに入らず、一気にシュバルツェン街道の第一の村、グライスヴァイラー村に向かうことを選択する。



「一気にグライスヴァイラーまで行くぞ!」



 手下たちは一瞬嫌そうな顔を見せるが、グンドルフを怒らせることの恐ろしさが、身に染みついているので、不満の声も上げず黙々と馬を進めていく。



 クロイツタールからグライスヴァイラーまでは十五マイル。それほどきつい上り坂ではないが、森が深くなり、午後五時になると辺りは暗闇に包まれていく。



 グンドルフは夜目の利く、エルフと獣人を先頭にして街道を進んでいった。



 午後八時頃、グンドルフ一行は小雪がちらつく中、グライスヴァイラー村に到着した。

 これで大河たちより、二日先行することになった。





 クロイツタール城にいる騎士団副長ダリウス・バルツァーは、ウンケルバッハ守備隊が到着しないことに、焦りを感じていた。

 昨日の早馬と、本日昼頃に到着した報告書を見て、彼らを拘束することも視野に対策を練っていたのだが、午後三時を過ぎても守備隊一行は到着しない。

 午後四時頃、ケシャイト守備隊の騎士がバルツァーに急ぎの報告があると、駆け込んできた。



「報告いたします。ウンケルバッハ守備隊を名乗る一団は、クロイツタール市に入らず、直接グライスヴァイラーに向かう模様。追跡は継続中でありますが、グライスヴァイラー到着が午後九時を越えると思われ、兵の遭難の可能性があります。別途、追跡隊を進発させることを提案いたします」



 バルツァーはこの時間からグライスヴァイラーに向けて出発させても、遭難の可能性が高いと判断し、明朝一番に五名の騎士を送り出すことにした。

 彼らにはシュバルツェンベルクの代官及び守備隊への親書を持たせ、ウンケルバッハ守備隊に疑わしい点ありと、注意喚起するよう指示する。



(やられた! 予想しておくべきだった。直接会っていないが、フィードラーが怪しいと感じたのであれば、先手を打つべきであった)





 ウンケルバッハ守備隊が出発した翌日の雪の月第六週日の曜(一月二十六日)、俺たちはケシャイトの街に到着した。

 フィードラーは公爵に、ウンケルバッハ守備隊の一件を報告した。



「ウンケルバッハ守備隊に関しましては、ここケシャイトでは特に問題を起こすことなく昨日出発、クロイツタールには入らず、そのままグライスヴァイラーに向かったと、報告が来ております。バルツァー副長からは五名の騎士を、シュバルツェンベルクに向けて出発させたとの連絡も受けております」



 俺はクロイツタールに入らず、この真冬に無理をしてシュバルツェン街道に入ったことに胡散臭さを感じていた。



(後ろ暗いところが無ければ、クロイツタールに入るはず。フィードラー隊長の話では帝国の工作員ではあり得ないということだが、何を狙っているのだろう)



 公爵は同行しているレイナルドに、



「そなたはその守備隊について、何か知っておるか」



「はっ、小官自ら身元確認を行いました。ウンケルバッハ領民として五年以上の登録がありました。また、守備隊の登録についても不備はございませんでした」



「そうか。ロベルトが確認しておるなら間違いなかろう」



 俺は何か見落としが無いか、レイナルドに確認する。



「レイナルド殿、カードに不審な点はありませんでしたか?」



「いや、不審な点は……再発行されたカードであったことは記憶しておりますが……」



(再発行か。怪しいといえば怪しいが、グンドルフなら再発行時に魔力パターンから、身元が割れるはずだ。ウンケルバッハ行政当局は、コルネリウスの汚名返上のため、治安維持には積極的なはず。そうなると前伯爵が何か企んでいる線が強いな。どうもグンドルフを絡めてしまう。そもそもグンドルフと前伯爵の接点など何も無いのだから、グンドルフを恐れるあまり疑いすぎているな、俺は)



 俺を含め、騎士団関係者も同じことを考えていた。



「タイガ、この件に関し、そなたの意見は?」



 公爵が俺に意見を求めてきたので、今ある情報だけで推定することは危険だと、前置きした上で、



「レイナルド殿が確認しておられる通り、ウンケルバッハ守備隊であることは間違いないでしょう。ただし、後ろ暗い連中であることは、今回のクロイツタール通過で明らかです。クロイツタールの関係者で、シュバルツェンベルクに直接関係があるのは私のみ。ですが、ウンケルバッハ前伯爵が一騎士に過ぎぬ私に、これだけ大掛かりなことを仕掛けてくるとは考えにくく、帝国の罠若しくは別の思惑があるのでないでしょうか」



「確かにな。儂を狙うならまだしも、そなたを狙うのなら数名の手練に闇討ちさせればよい。いくらそなたが手練であっても、三十名近い兵を用意するのは、あまりにも常軌を逸しておる」



 公爵も俺の考えと同じようで、ウンケルバッハ伯爵家の思惑が判らないままだ。



「ウンケルバッハ伯爵家の監視を強化すべきでは無いでしょうか? 相手の思惑が判らないのでは対処のしようがありません。第三騎士団のぺテルセン殿に、閣下から指示を出されるべきと考えます」



「うむ。グローセンシュタインの頭越しになるが、仕方が無い。ロベルト、ウンケルバッハとドライセンブルクへの使者の用意を頼む」



 翌日、雪の月第六週火の曜(一月二十七日)、使者の早馬を見送り、俺たちはクロイツタールに向け出発。小雪が舞う天候であったが、無事クロイツタール城に到着した。



後書き


作者:狩坂 東風
投稿日:2013/01/18 23:02
更新日:2013/01/18 23:02
『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。

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